Tさんに連絡する。

そう決めたけれど、私の手は携帯を握り締めたままだった。

連絡して、また連れ戻されて・・・

また繰り返しそうで怖かった。

もしかしたら、Tさんは、逃げた私を許さないかもしれない。

今度こそ、殺されるかもしれない。

どうして、別れられないのだろう。

誰に聞いたって、きっと別れればいいじゃない、そう言われるに決まっているのに。

私も、もし、そういう話を聞いたら絶対そう思う。

でも、いざ自分になってみたら、自分が殺されるか、相手を殺すかでしか、別れる方法がないのではないかと思ってしまう。

Tさんを思うと、憎しみの他に別の感情も確かにあった。

考えていても仕方ない。

握り締めていた携帯の発信ボタンを押した。

Tさんが出た。

途端に、恐怖で何も言えなくなった。

Tさんの声が聞こえる。

でも、何を言われているのか、私の耳には聞こえなかった。

私が黙ったままで居たら、Tさんも黙った。

私は深呼吸した。

そして、Tさんに告げた。

「別れて下さい。」