
ハンス・クナッパーツブッシュ(1888-1965)による、1962年のバイロイト音楽祭のライヴ録音。この「パルシファル」は、本邦のクラシック愛好家の間では有名な録音なので、説明不要でしょうか。(*^^*)
CDで良く聴いていた録音ですね。LPでも購入しました。1970年代のオランダ盤です。6747 250。

CDでもLPでも、特に音質に差はない方でしょうか。フィリップスらしい、全体が良く溶け合った録音で、デッカとかコロンビアよりは、EMIに近い感じの音質ですかね。輪郭線が強い分、CDの方が金管楽器などの強奏は目立つようです。
バイロイト劇場の柔らかい響きを目指して作曲された、この作品の雰囲気を伝えるかのように、柔らかさを基調とした、ステレオ録音です。

1951年の戦後初のバイロイト音楽祭の「神々の黄昏」。こちらもハンス・クナッパーツブッシュの録音です。SBTLP 6175。
ワーグナーの本懐を聴くのなら、有名なパルシファルの録音(上述のもの)より、自分はこちらを取ります。同年、同音楽祭のフルトヴェングラーの「第9」に比肩しうる、唯一のワーグナーの演奏だと思います。
パルシファルは動きの少ない音楽なので、この「神々の黄昏」の方が動きが多く、オペラを聴いている気になれます。モノラル録音ですが、有名なデッカのワルター「大地の歌」(1952)の名録音に匹敵するか、それ以上の録音でしょう。
そのため鑑賞には全く問題ありません。モノラルとは思えないほどの楽器の分離感と、明瞭さがあります。他にクナッパーツブッシュだと1955年(モノラル)の「さまよえるオランダ人」も割合に良い音質でした。ただ、オランダ人の方は、演奏の緊張感はちょっと落ちますね。
この「神々の黄昏」、何より演奏内容の素晴らしさは特筆されるべきだと考えています。
旅に向かうジークフリート、彼の持つ指輪を自分のものにしようとする、影の英雄ハーゲン。ハーゲンの張り巡らせた奸計にのせられて、グンターとハーゲンはライン川を下って来るジークフリートを大声で呼び止めます。
ジークフリートが行き過ぎてしまうのではないかと焦るグンター。するとハーゲンは両手をメガフォンにして大声で叫びます。
「Hoiho!Wohin,du Heitrer held?」 (ホイホー!どこへ行くのだ、朗らかな英雄よ!)
まだ物語の序盤、クナッパーツブッシュは巨大な迫力で、どんな細部も見逃さない深い意味合いを表出していきます。グンターの焦りとハーゲンの良く通る遠吠えのような単純なシーンでも、非常なリアルさを持って迫ってきます。まさに目の前にハーゲンとグンターがいるようです(゚Д゚)ノ!!
こんな迫力はフルトヴェングラーも、カラヤンも、ベームでも出せません!ショルティも同様です!
これほどワーグナーのオペラに精通した指揮者は珍しいでしょう。楽器の響かせ方もライトモティーフごとに変えて、魔法のような音色に徹しています。年代物の美酒を思わせる低弦、魔法の耳鳴りのように響く弦の合奏、金属の部品を思わせるような金管楽器の響かせ方、ワーグナーの書いた神話的な雰囲気がこれでもかと創造されていきます。
クナッパーツブッシュのゆったりとしたテンポの中、歌手たちは水を得た魚のように生き生きと歌いだし、破格の声量と太い声色のヴァルナイ、ヒロイックな雰囲気を湛えるヘルマン・ウーデなど素晴らしいです。
そして極め付きである、このオペラの影の主役である、ハーゲンそのものを思わせる、ルードウィッヒ・ウェーバー(1899-1974)。
ルードウィッヒ・ウェーバーは涎を垂らさんばかりの歌い方で、スケベ心満載のハーゲンの心情を表現しつつ、邪悪な本性をみせることもためらいません。なんという上手さ!(゚Д゚)ノ!!なんという卑劣な人物!

クナッパーツブッシュの指揮によって、徐々にハーゲンの暗い計画に心を開いていくブリュンヒルデの妖しさ、粗野なギービヒ家の集まりの卑俗な雰囲気など、その場で現場を目撃しているようなリアルな音楽が繰り広げられます。

そして遂に、ブリュンヒルデが、英雄が人間に生まれた宿命的な運命の苦しさを神々に歌い上げ、この巨大なオペラの総括を計ると、神々の黄昏のテーマがオーケストラ一体と成って信じられない迫力の音の柱となり、浄化を果たしていきます。バイロイト劇場の天井を突き破らんばかりの迫力は、フルトヴェングラーにも無理でしょう。
ジークフリートのテーマが最後の一撃で粉々に砕け散るまで、息もつかせぬ演奏です。
スゲエっす(゚Д゚)ノ!!(゚Д゚)ノ!!

音はCDとLPだとCDの方が好きです。まさにワーグナーの真髄を聴かせる、名演です!(*^^*)

ゲオルク・ショルティ(1912-1997)による「ジークフリート」(1962)。これも説明不要の演奏でしょう。クラシック音楽の録音史に残る金字塔です。SET242-246。英国盤。ED3とED4の組み合わせ。


CDで聴いてきた音がどうしても好きになれないので、LPに賭けました。CDの音が悪いわけではありませんが、ショルティの演奏がきつく、汚いので、CDだとその感じがはっきりしすぎます。LPで聴いてようやくその良さを体験できた気がします。

人間の持つ集中力はおよそ40分ぐらいが現界だといわれていますが、ワーグナーのオペラは4時間が標準サイズです。そのために聴き手が音楽を支配するのではなく、音楽が聴き手を支配することになります。その分、作られる音環境は重要で、これが良くないと聴いていて苦痛になります。
またワーグナーのオペラは無駄な会話が多く、例えば「ラインの黄金」における、ヴォータンを含む神々と巨人とのやり取り、また「ワルキューレ」第2幕、ヴォータンの苦悩を聴かされるブリュンヒルデの場面、また「ジークフリート」では始まってすぐの、ミーメとジークフリーとのやり取りなど、一言いえば済むことを、長文で展開させていきます。
正直、聴いていて嫌になるほど長く、特にワーグナー初心者には躓きの石となります。
こういう部分をワーグナーに精通している指揮者は意味深く、あるいは面白くやってくれるので良いですが、ショルティは全くできていません。まあ、できなくても構わないのですが、音の広がりは欲しいところでした。
LPだと確実に音の広がりは出ますので、それなりに音楽の中で呼吸ができます。ザッハリヒカイトな感じだと、どうしても指揮がせかせかしますので、呼吸が浅く聴こえます。個人的にはCDだとその感じが強調されている気がして、つらかったです。
CDでもボリュームを上げればいいのでしょうが、自分の装置は大したことがないので、結局音の輪郭線を強調されて、変に音の圧みたいのを感じてしまいます。ショルティの音にガンガン殴られている感じかな。それが4時間も続く・・・。それが嫌いでした。(+_+)
LPだと音の際は消えて、音と聴き手の分離感は減るように思えました。
多分プロデュ―サーのカルショーはその辺のところは意識していたような気がします。ショルティ特有の轟音はやや音を大きめにして、なるべく音楽の中で呼吸する感じで聴ければ、特に面白い演奏をしてくれなくとも楽しめます。
しかし、LPで聴いて、改めてこの録音の商品価値の高さというのを実感しました。
ショルティの作り出す、生気のある音色と濃厚なウィーンフィルの甘美な味わいが、よほどしっかりLPに定着していて、旧世代のワーグナー演奏とは違う、生々しい感じが魅力的です。ショルティも普段はザッハリヒですが、自分が理解できるところに来ると、突然爆発して、迫力のある指揮をします。「ジークフリート」だと第1幕の、途中から最後まで、魔剣ノートゥングを鍛え直す音楽の迫力は、誰にも負けない素晴らしい指揮ぶりだと思います(゚Д゚)ノ!!

ストコフスキーの「ニーベルンゲンの指輪」ハイライト集(1966)。フェイズ4ステレオ。PFS4116。英国盤。
ワルキューレの騎行、森のささやき、ジークフリートの葬送行進曲などの定番曲が、ストコフスキーの編曲版で納められています。純粋にワーグナーを聴く感じではないですね。面白いけど。
原曲の雰囲気は残してますが、原曲のあずかり知らない楽器の音が鳴ります。面白いから良いかな。
とまあ、上述のワーグナーの感想は全て自分の主観に基づいております。特に他人様に意見したいわけではありません。批判的にご覧いただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。m(__)m