The Key of Midnight -28ページ目

綾辻行人 「びっくり館の殺人」

綾辻 行人
びっくり館の殺人

とある古書店で、たまたま手に取った一冊の推理小説。
読みすすめるうち、謎の建築家・中村青司の名前が目に飛び込む。
その瞬間、三知也の心に呼び起こされる遠い日の思い出…。
三知也が小学校六年生のとき、近所に「びっくり館」と呼ばれる屋敷があった。
いろいろなあやしいうわさがささやかれるその屋敷には、白髪の老主人と内気な少年トシオ、それからちょっと風変わりな人形リリカがいた。
クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、「リリカの部屋」で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に!あれから十年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていないというのだが…。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ミステリーランド」の中でも、特に期待していた綾辻さんの「館シリーズ」第八作。

シリーズ最長の作品の後は、シリーズ最短。

「暗黒館」の十分の一くらいの時間で読み終えてしまいました。

世間的には、また微妙な評価なんだろうなーと思われる本書ですが、自分はなかなか面白く読めました。

確かに仕掛けはすぐに気づきますが、よく考えれば過去の館でも途中で気づいたものは多いですし、それでも「面白かった」というものばかりなので、この際そういうことはあまり関係ないのかもしれません。

むしろ、館シリーズの魅力は、この独特な「雰囲気」にあると思っています。

本書は、子供向けでも「雰囲気」はいつもの綾辻さんと同じ。

この不気味さと、それと同時に存在する美しさが、とにかく好きです。

挿絵も「これしかない」というほどに本文に合っていて良かったです。表紙絵も・・・・・・読み終わってから見ると、いっそう不気味。


そして本書の素晴らしいところは、ラスト1ページ。

・・・・・・これをどう感じるかで、評価は分かれると思うのですが。

僕はこのラスト、良いと思いますよ。

「意味わからない」という声が聞こえてきそうですが、これでこそ綾辻行人。

余韻が長く残ります。とても綺麗・・・・・・。


ところで、本書は、以前から綾辻さんが良く話しておられた、あの有名なミステリに対するオマージュ作品なのだそうです。

サイン会で、「例の作品に対するオマージュ作品などを書くご予定は・・・・・・」とお聞きしたら、編集の方と綾辻さん、そろって「これです」と目の前の本書を指されていました。

読んでみると、確かに、ミステリファンなら必ずと言っていいほど聞き覚えがあるに違いない「名前」などが出てきます(漢字は一字違いますが)。

それだけでなく、「船」や、トリック部分などもあの作品に対するオマージュだな、と一目で分かる内容。そのもの自体の名前も出てきますし・・・・・・。

でも、「ミステリーランド」であのオマージュ作品を書くとは・・・・・・。凄い試みだと思います。


ただ、冒頭で、過去のとある館シリーズ作品のネタバレがあるのは、「今の子供たち」という読者に対してどうだろう、と感じました。

これを最初に読んでしまって、しかも内容をはっきりと覚えていたら・・・・・・。もっとも、この作品を読むほとんどの人はシリーズ既読者だと思うので、たいした問題ではないのでしょうが。

ファンサービスは良いけれど、ネタバレは止めてほしかったな・・・・・・・というのはやはり無理な話ですか。それを言ったら、「時計」も「黒猫」も「暗黒」も、みんなネタバレですし。


ともかく、本書はシリーズ既読者は絶対に読むべき作品です。

逆に読んだことがないと言う人は、出来れば最初の3作は読んでおいたほうが後悔しないですむと思います。

短くても、十分に良さを味わえる一冊。8点

さて、次作の構想はすでにあるようですが、次の館は一体どんなところなのでしょう?

楽しみです。

綾辻行人サイン会

一昨日の福井晴敏さんのサイン会に続き、今日は吉祥寺のTRICK+TRAP で行われた、綾辻行人さんのサイン会に参加してきました。

今回は遅めの時間だったのですが、綾辻さんなら絶対参加! ということで、友人を連れて18:30の回に。

一時間ほど早めに着いて、BOOK OFFなどで時間をつぶしてからTRICK+TRAPへ。

やはり1人だと入りづらい構えですね。友人と一緒で良かったです・・・・・・。


前回の北村さんの時と同じように、少し店内を見回って質問を考えてからサインを貰おうかな、と思っていたのですが、何故かその回の一番最初になってしまい、少しあわててしまったり・・・・・・・。

綾辻さんは、知的な感じの物凄く格好良い方でした。

色々とお話をさせて頂いたのですが、

「暗黒館が一番好きです」

と言った時、「・・・・・・ありがとうございます」と苦笑混じりな寂しげな顔で答えてらしたのがとても印象的でした。

なんか・・・・・・色々と思ってしまいますね。僕は本当に好きなんですけれど・・・・・・。

場の雰囲気が・・・・・・少し重かったです。

また、福井さんの時と同じように、

「暗黒館より長い作品は・・・・・・」とお聞きしたら、

「絶対に書かないです」と即答されました。

これからは、ボリューム抑えめの作品を書いていくそうです。

他にも、「虚無への供物」に関するお話や、館シリーズ、囁きシリーズの構想などのお話も聞かせて頂いて、とても楽しい時間を過ごせました。

綾辻さん、TRICK+TRAPの方々、どうもありがとうございました。

こんな遅い時間につきあってくれた友人にも感謝です。


・・・・・・ちなみに、帰宅したのがPM10:00前くらい。遅すぎる・・・・・・。もう少しで補導されかねない時間では。

さすがに、一日あけてまたサイン会は疲れました・・・・・・。

明日は一日中、「ローズダスト」と「びっくり館」を読んで休みます。




福井晴敏サイン会

本日、紀伊国屋の新宿本店で行われた福井晴敏サイン会に行って参りました。


今日のサイン会のことは成宮さんに教えて頂いて、しかも整理券も取って頂いていたのですが、そんな成宮さんとの待ち合わせの時間に遅れること20分以上・・・・・・。

そんなに遅れても、成宮さんはその場にいらして下さいました。

本当に申し訳ありませんでした。

新宿には紀伊国屋が二つあったのですね・・・・・・。

新宿南のほうで待っていました。途中で気づかなかったら・・・・・・と考えると恐ろしいです・・・・・・。


来た順に並ぶシステムだったので、自分が遅れたためかなり後ろの方に並ぶことになってしまったのですが、並んでいる人の多さの割には、思ったより時間がかからなくてほっとしました。

それにしても、福井さんの読者は、本当に年齢層などの幅が大きいですね。

やはり、女性の方も多かったですし・・・・・・。

自分もサイン会などそんなに行っているわけではありませんが、今まで行った中で最も参加者の偏りがなかった気がします。


そして福井さんですが、よく写真やTVで見かける通りの方でしたね(当たり前ですが)。

参加者1人1人にお声をかけて、握手もされていました。

自分もサインを頂く時に話をさせて頂いたのですが、とても丁寧な方、という印象でした。

「ローレライより長い話を書いて下さい」とお願いしたら、苦笑されましたが・・・・・・。

しかし、話す時間が結構あったのは意外でした。非常に良かったと思います。

・・・・・・でも、名前の漢字を間違えられてしまいましたが。まあその位のことは気にしてはいけません。


それにしても、今回は最初から最後まで成宮さんにお世話になってばかりでした。

感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。

これに懲りずに、今後も宜しくお願いします。



さて、明後日はTRICK+TRAPの綾辻さんのサイン会。

18:30からの回、と遅めですが、友人と二人で行ってきます。こちらもとても楽しみですが・・・・・・一日あけてまたサイン会、というのはやはり疲れそう・・・・・・。


佐藤勝彦 監修 「『量子論』を楽しむ本」

佐藤 勝彦
「量子論」を楽しむ本―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!

相対性理論とともに、現代物理学のもう一つの柱といえる「量子論」。
人間の構造・進化から宇宙のはじまりまで、あらゆる現象を解明するとされるこの物理法則は、我々に未知の世界を垣間見せてくれる。
本書は、難解とされる量子論のポイントが一目で理解できるよう図やイラストを多数使って初心者向けにわかりやすく解説。
最先端物理学の世界が手軽に味わえる画期的な入門書。

 

 ◆ ◆ ◆

 

読み終わってから10時間近く経ちますが、その間何も手に付きませんでした。

またまた小説以外の本ですが、これは何が何でも感想を書いておかないと。

ある意味、「夏と冬の奏鳴曲」、Infinityシリーズ以来の衝撃。


本書は、量子論について初心者向けに解説した入門書です。

量子論――という物について、個人的に非常に強い関心があったので、書店に積んであったこの本を何気なく買ってきたのですが、これが大当たり。

実に読みやすく、また理解しやすく書かれており、楽しみながら「量子論」について学ぶことが出来ます。

この量子論、SFやミステリが好きな人なら、誰もが一度は聞いたことがあるもの。

「シュレディンガーの猫」の話は、特に有名でしょう。

波動関数、コペンハーゲン解釈、多世界解釈、不確定性原理、EPRパラドックス・・・・・・。

こうしたものに興味がある人は、絶対に読むべきです。少なくとも、損はしません。

今まで色々な量子論についての文章を読んできましたが、こんなにわかりやすいのは初めてです。

と言っても、やはり完全な理解にはほど遠く、頭がパンク寸前ですが・・・・・・。


「面白さ」で言えばトップクラスの本。

難解な部分もありますが、絶対に読むべきです。

常識の崩壊、そしてそれに伴う酩酊感。「世界が変わる」というのはこういうことなのだ、と感じました。

もっとも、本書は「入門書」に過ぎないので、これからもっと専門書を読んでいく必要があるのだとは思いますが・・・・・・。

「量子論がどんなものか知りたい」という人なら、これ一冊でも十分。

興味がない、と言わずに、読んでみてほしい本です。9点


実は今年入ってから読んだ中で、一番面白かった本でした。


「シナオシ」の伏線に関して

先日、幻影の書庫 さんの記事で、拙ブログの「シナオシ」の感想 を紹介して頂き、ここ数日アクセス数が急に伸びております。

今読み返すと、読了時の興奮も冷めぬまま勢いで書いた感想なので、ずいぶん滅茶苦茶で恥ずかしいのですが、ともあれありがたいことです。

これを機に、「シナオシ」に興味を持っていただける方が増えれば、嬉しいことこの上ありません。


そして、今更なのですが、若干伝わりにくい(と言うよりは説明不足)箇所があったので、それに関して少し補足させて頂きます。


注意:以下には田代裕彦「シナオシ」及び、麻耶雄嵩「鴉」のネタバレが含まれます。一応背景色で書いておりますが、未読の方はご注意ください。


先の感想で、自分は


>途中に麻耶雄嵩氏の「鴉」のような、あまりにも大胆な伏線があるのですが、この「?」が解ける瞬間の爽快感は凄いです


という様なことを書いていたのですが、この部分がどこなのか、というご指摘をとある方から頂きました。

これについて、自分が思っていたのは、(以下、「シナオシ」ネタバレ)

第六章、中でも本書158ページの「今、僕とあいつは二人きり」という文章です。

第七章を読むと、「トラック事故の現場」には、<僕>とかずみだけではなく、舞という三人目の人物がいるとはっきりわかります。

しかし、第六章を読む限りでは、明らかにその場には二人しかいない。

この時点で、第六章と第七章の舞台は別である(時間的か、空間的かはともかく)か、その他の「仕掛け」があることは判明します。

ただし、自分はその時点で、そこまで考えが及びませんでした。

<僕>の視点では二人なのに、<私>の視点では三人。

この違いが、大きな違和感となって残っていました。

これが、先に書いた「鴉を彷彿とさせる伏線」です。

実はこれだけではなく、前半部――<僕>が学校で最初彼女に声をかけるシーン――にも、これと似たような違和感を感じました。

ただこれは、トラック事故ほど明らかな差ではない(それでも良く読むと明らかにおかしい)ので、作者のミスか何かだと思ってそのまま読み進めていたのです。

このような違和感の積み重ねが、解決の爽快感へ結びついていったのだと思います。


(以下、「シナオシ」及び「鴉」ネタバレ)

蛇足だとは思いますが、自分がこの伏線に対し「鴉」を例に挙げたのは、「鴉」のラストにおける「死者が唐突に蘇る」という伏線が本書に近いものに感じたからです。

二つの視点は一見同一軸にあるようで、実際は全く別の舞台であった、ということを示す大胆な伏線。

もちろん、鴉のほうが「大胆さ」という点を含め、様々な意味で伏線の出来が良いのは確かですが。

これほどあからさまな違和感を読者に突きつけておきながら、なお仕掛けには気づかせない。

この試みは、大変素晴らしいものだと思います。

また、「鴉」「シナオシ」共に、違和感の元が「いないはずの人間がいる」ところにある、という点も似ているかと思います

 

・・・・・・やはり、いつものごとく長くなってしまいましたが。

「シナオシ」は、確かに「推理するための伏線」には欠けるかもしれませんが、後で読み返して「納得するための伏線」は十分に張られている、と思います。


しかし、本書はやはり時間物のSFにも興味がないと辛いのかもしれませんね・・・・・・。

何しろ、難解なほどに複雑なので。

それでも、そういったものが好きな方は読む価値があると思うので・・・・・・・未読の方は是非、この機会(?)に。



乾くるみ 「マリオネット症候群」

乾 くるみ
マリオネット症候群

とにかく私は驚いた。
ある晩、目覚めたら、勝手に動いている自分の身体。
意識はハッキリしてるのに、声は誰にも通じない―まさか私、何かに乗っ取られちゃったの!?

誰の仕業かと思っていたら、なんと操り主は、あこがれの森川先輩らしいの。
でも、森川先輩って、殺されちゃったらしくって…それっていったい、どういうこと?

とっても奇妙なパラサイト・ストーリー。

 

 ◆ ◆ ◆

 

人格転移もののミステリというと、西澤保彦の言わずとしれた代表作「人格転移の殺人」や、田代裕彦の「シナオシ」、そして僕が「夏と冬の奏鳴曲」と同程度に凄いと思っているゲーム「Remember11」などがあります。

このジャンルのミステリは、何らかの驚愕を与えてくれる――少なくとも今までに見たことがある物は全部――ので、本書も期待して読み始めました。

確かに、その法則通り本書でも驚愕。

・・・・・・いや、どちらかというと驚きより笑いの要素が強めですが。

何とも表現しづらい内容です。

変な話、という表現が一番ぴったりくる。

中盤までは普通のライトノベルのように進み、一つの転換からひたすら変な方向に転がっていって・・・・・・予定調和のような結末に落ちます。

先に挙げた人格転移物のようなミステリとしての「凄さ」はないのですが、バカミスっぽくて笑えます。

こんな展開予想できない・・・・・・。やっぱり、乾くるみは変わっている。


今までに読んだ乾くるみの作品の中では「リピート」と並んで最も一般受けしそう。

まともなミステリを期待しなければ楽しめる本。

1時間かからずに読めてしまうので、ちょっと物足りない感はありますが、このネタで長編書かれてもつまらないだけなので、長さ的にはこれくらいが丁度良いです。

もう一般の書店には出回ってないようなので、少しでも興味がある方は古書店などで見かけたら買っておいたほうが良いです。

6点


高橋昌一郎 「ゲーデルの哲学」

高橋 昌一郎
ゲーデルの哲学―不完全性定理と神の存在論

あなたが矛盾しないことをあなたは証明できない―人間の理性に限界があることを証明し、神の存在証明をも行った“アリストテレス以来の天才”。

その思想の全体像を、はじめて平易に解き明かす。

 

 ◆ ◆ ◆

 

今まではこういうタイプの本は紹介していなかったのですが、本書は非常に面白く、またわかりやすいため、感想を書くことにします。

 

本書で扱われているテーマはいくつかありますが、そのほとんどはゲーデルが考え出した「不完全性定理」に関わるもの。

不完全性定理とはすなわち、ある程度複雑で、正常なシステムが存在するならそのシステムは不完全である。また、そのシステムは自己の無矛盾性を証明できない――という定理。

こう書いても全然伝わらないと思うのですが、読めばわかります。これによれば、例えば人間は自己の無矛盾性を証明できない・・・・・・ということも、論理的に理解できます。

「不完全性定理」がどんなものなのか、と言うことを知りたい人は、まず本書を読むのが良い・・・・・・というほど、不完全性定理のイメージが容易につかめる様になっていて、中学生以上ならほとんどの人が「わかった気分」にはなれるでしょう。

数式などは使われず、論理クイズ風に問題を解いていくことでイメージが伝わるようになっているので、少しでも興味を持てば楽しんで理解できるようになります。

また、ゲーデルの人生についての記述が、本書の約半分を占めており、ゲーデルがどのような天才だったのか、ということも良く伝わってきます。1人の数学者の伝記、として読んでも楽しめる。

 

後半では、神が存在する(あるいはしない)ことの証明がいくつも出てきますが、このあたりは若干難解。それでも、全く意味不明といった内容ではないので、考えばそれなりに理解できるはず。

大変興味深いテーマです。

 

不確定性原理の本を借りにいって、間違えて手にとってしまった一冊でしたが、こんなに面白い本とは思ってもみませんでした。

大げさな表現ですが、これを読むとものの見方が変わります。

論理的なものが好きな人は、是非一読を。8点

乙一、恩田陸 他 「七つの黒い夢」

乙一, 恩田 陸, 北村 薫, 誉田 哲也, 西澤 保彦, 桜坂 洋, 岩井 志麻子
七つの黒い夢

天使のように美しい顔をした私の息子。幼稚園児の彼が無邪気に描く絵には、想像を絶するパワーがあった。そしてある日―。

乙一の傑作「この子の絵は未完成」をはじめ、恩田陸、北村薫、岩井志麻子ら、新感覚小説の旗手七人によるアンソロジー。

ささやかな違和感と奇妙な感触が積み重なり、遂に現実が崩壊する瞬間を描いたダーク・ファンタジー七篇。

静かな恐怖を湛えたオリジナル文庫。

 

 ◆ ◆ ◆

 

まず、執筆陣が豪華です。

乙一に恩田陸、北村薫に西澤保彦。

これだけ豪華なアンソロジーも久々に読みました。

でも、内容は当たり障りのないような、至って普通のものばかり。


岩井志麻子は個人的に肌に合わない作家なので、スルーしようかとも思ったのですが、一応読んでみて・・・・・・やっぱり、合わなかったです。

この中で唯一未読だった誉田哲也の作品は、読み終わってもさっぱり。あまり面白くなかったです。

桜坂洋は、「よくわかる現代魔法」の嘉穂が20代半ばの年齢で出てくる短編。

「現代魔法」は全部読んではいるものの、全く相性が合わなかったので感想も書いていないのですが、この短編はまあまあ楽しめました。嘉穂は唯一覚えていた登場人物だったので・・・・・・。

でも、何故このアンソロジーに収録されているのか気になります。恐怖どころか、少しのブラックさも無いような。


そして、ここからが期待の四人。

まずは西澤。いつも通りのロジック、と言ってもそんなに意外なものはありません。

その上、何だか消化不良気味・・・・・・。これってもしかして、何かのシリーズ作品?

北村薫は、正統なホラー。ありがちといえばありがちですが、なかなか良かったです。短編と言うよりはショートショートに近いですが。さすがに上手い。

恩田陸も同様で、ノスタルジックなホラー。この人は何を書いても雰囲気が素晴らしいので、オチがついていてもいなくても「良かったな」という気になります。このアンソロジーの中で一番好きな短編。

乙一は、得意の「日常の中の特殊設定」もの。自然に「特殊設定」がとけ込んでいて、独特な味わいがあります。この人も、どんどん上手くなっていますね。こんなアンソロジーなのに、何故か白乙一風。

もう長編は書かないのかな・・・・・。


特にこれといって印象に残るような話はないのですが、400円ちょっとという安価でこれだけ読めれば十分でしょう。コストパフォーマンスは悪くないです。

薄く、活字も大きめなので、軽く読めるという点でも良いかも。こういう短編集も、もっとあると良いですね。6点

荻原浩 「噂」

荻原 浩

「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。

香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。

衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「都市伝説(噂)が現実のものになる」という内容から、朱川湊人のフクロウ男のようなものかと思っていたのですが、全く違うタイプの小説。

サイコ・サスペンスとありますが、内容的にはむしろ警察小説に近い。

先日読んだジェフリー・ディーヴァーの「ボーン・コレクター」は科学捜査ものでしたが、こちらは純粋な捜査ものと言っていいかも。

主人公のコンビがいい味を出しており、退屈することなくさくさくと読めます。

リーダビリティの高さは、今年入ってから読んだ本の中でもトップクラス。

その上、オチも大変優れています。途中で大方読めたので意外性は帯に書いてあるほど感じませんでしたが、上手く引き締まっています。後味は悪いのですが、本書のテーマに沿っている。

最後になって、いきなり強烈な悪意を「突きつけられた」感じでしょうか。


また、本書には都市伝説テーマということ以外に、もう一つ特徴的な点として、「現代の若者」が描かれている、ということが挙げられます。

渋谷が重要な舞台の一つになっているのですが、そこを中心に活動(?)する高校生たちの描き方がリアル。

現実にはどうかはともかく、まさにそれっぽい。「こんな感じかー」と納得。

「渋谷系ミステリ」の広告もなるほどと頷けます。

最近文庫落ちしたばかりなので、入手は容易でしょう。

これから読む人は、解説は絶対読了後に読むように。「衝撃のラスト一行」が見えてしまう可能性があります。

7点

TBS「白夜行 第十話・最終話」(ドラマ)

TBS「白夜行」


第十話は、まさに怒濤の展開。

今までに驚いた場面はいくつもありますが、このラストはその中でも一番。

全く予想不可能で、多くの人がここで驚愕したのでは。

原作との違いを利用したどんでん返しは、見せ方によっては、こんなに良いものになるのか、と感心しました。


そして最終話。

第十話で期待も高まっていたのですが、これはこれまでに比べると劣るような。

原作とずいぶん違うラストです。

また、原作にはない設定を持ってきているのですが、これはいらなかったような。好みの問題ですが。

展開的に原作のラストをそのまま映像化することは不可能なので、何らかの変更があるのは確実でしたが、こうなるとは。救いがあるのかないのか・・・・・・。

最後の一場面は綺麗でした。何となくAIRを連想します。

しかし、見ていてどうも引っかかったのですが、急に演技、演出が悪くなっているように感じます。

特にCGがあからさますぎて興ざめ・・・・・・。

これはどうにかならなかったのか。


また、最終回に限らず全話にわたって、良く子供時代の主人公二人の回想が挿入されるのですが、最後まで見てもやはり子役の選択は間違いだったとしか思えません。原作の二人だけでなく、大人の雪穂、亮司のイメージにも合わないです。このドラマで一番問題があるとしたら、これでしょう。

・・・・・・毎週泣いている雪穂もどうだろう? とは思いますが。


演技はともかく、シナリオは相当良くできていたドラマでした。概ね満足です。

小説の映像化では、間違いなく上位に入ります。

多分、そのうちにまとめて再放送されるでしょうから、興味がある方はそちらで見るのが良いでしょう。

原作を読んでおいたほうが楽しめます。