The Key of Midnight -26ページ目

小林泰三 「脳髄工場」

小林 泰三
脳髄工場

犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれは一般市民にも普及していった。両親、友達、周囲が「人工脳髄」を装着していく中で自由意志にこだわり、装着を拒んできた少年に待ち受ける運命とは?

人間に潜む深層を鋭く抉った表題作他、日常から宇宙までを舞台に、ホラー短編の名手が紡ぐ怪異と論理の競演。

 

 ◆ ◆ ◆

 

過去の作品に比べるとインパクトは薄いですが、その分クセが無く多くの人に読まれそうな作品集。

どの作品も、非常に小林泰三らしいものばかりです。

特に表題作の「脳髄工場」などは、作者名伏せていても読めば誰だかわかる・・・・・・というくらい。

いかにも、この作者が描きそうなテーマです。「玩具修理者」を思い浮かべました。

丁度、「自律」とは存在するのか、とかそのようなことについて考えていたときに読んだので、読んでいる間中思考回路を働かせっぱなしでした。

また、小林泰三らしいといえば、「友達」のラストや「綺麗な子」の二人の問答なども過去作品でこんな感じのものがあったなー、と。なかなか面白いです。新鮮味はあまり感じないのですが。

「C市」は、ここ最近ラヴクラフト作品をまとめ読みしていたので結構楽しめましたが、クトゥルーに興味が無い人はどう感じるんだろう?

その他、ショートショートも良かったですし、全体的には満足。どれも安定した出来だったと思います。

もっとも、個人的には安定性より、一編でも突出した作品があったほうが嬉しかったのですが・・・・・・。贅沢な望みでしょうか。


ホラーだけでなく、SFが好きな人にもお勧め。7点

加藤元浩 「Q.E.D. 証明終了 24巻」(漫画)

加藤 元浩
Q.E.D-証明終了- 24 (24)

「クリスマスイブイブ」

一つ一つは小粒なものの、いくつかの「謎」と「解決」が集まって、何処となく豪華な雰囲気が出ている一編。

・・・・・・しかし、これだけの推理を一瞬に導き出す主人公は一体。

ちょっと無理があるのでは? と思ってしまうような考え方もありますし。

・・・・・・もはや天才の域を越えかけている。

どういう思考回路をしているのか見てみたい、とこのシリーズを読んでいて初めて思いました。



「罪と罰」

ここでこういう話を持ってくるとは思わなかったです。

実に描き方が巧いですねー。

ある意味、漫画ならでは、の作品。小説にしようと思えばできますが、この形式が一番効果高いと思います。

最初感じた違和感も、見事に解決に結びついていて驚き。

まさに、本格ミステリコミック、という感じです。

ラストの台詞にも思わずうなってしまいました。

たまにこういう話が入るから、このシリーズは常に軽い緊張感(?)を持って読むことができるのです。



はやみねかおる 「都会のトム&ソーヤ4 四重奏」

はやみね かおる, にし けいこ
都会のトム&ソーヤ(4)

内人と創也が幽霊屋敷でロケ開始!ロケ先で仕組まれた頭脳集団の罠から逃げきれるのか!?

―同級生のピンチを救うため、マラソン大会で脱走計画を実行した創也と内人は、幽霊屋敷の謎を追って、さらなる冒険へ。

また、栗井栄太から新たな招待状がとどき、究極のゲーム制作競争にも新展開が…。

シリーズ第4作。にしけいこ先生描きおろしコミック巻末収録+しおりつき。

 

 ◆ ◆ ◆

 

今回は短編集。

このシリーズはミステリではないので読んでいない、という方もいるかもしれませんが、

ミステリ以外のはやみね作品も、結構面白いですよ。

いつもながらの文章、キャラクターで、あっという間に読み終えてしまいました。

ジュブナイルでも、はやみね作品は大人が読んでも楽しめるのではないかというものが多いですね。

このようなミステリ外の作品でも、伏線はしっかりと張ってありますし。

ちょっとした小ネタも楽しめます。

やっぱり、はやみねさんは本当にミステリがお好きなんだなあ、と。

ジュブナイルなだけあって読後感も良く、重い作品を読んだ後の口直しにもお薦めです。

ただ、印象に残るような話は少なかったかも・・・・・・。


ストーリー全体から見るとそれほど進展はないですが、張ってある伏線を考えると、次は大きく動きそうです。

次回に期待したいと思います。7点


文化祭

ようやく、文化祭関係の色々なことがほぼ全て終了。

実際の文化祭は土曜・日曜でしたが、それから片づけや打ち上げ等々があったため、結局昨日まで文化祭モードのままでした。

一年の内で最も楽しい時期であるため、終わってしまうのは本当に寂しいのですが・・・・・・。

仮にこれ以上続けたとしても、もう騒ぐ気力が残っていません。

ダウン状態です。

実際、自分だけでなく、学年全体が疲労による風邪やインフルエンザにやられて今日は学年閉鎖。

本当、動き回りすぎたな・・・・・というのが一番の感想。

今回の文化祭では、当日に風邪等で来られなくなった人が数名いたため、ほとんど全員、休みなしで演技をし続けるような状況でした。

もちろん立ちっぱなし、喋りっぱなしで一日中・・・・・・それが二日間。しかも前日には遅くまでの準備で体力をかなり消耗しているというのに。

その上、ろくに昼食を取る時間もなく。栄養ドリンクと抗生剤、差し入れで何とかその場をしのぐ程度。

良くこれで、みんな耐えられたものです。

その甲斐あってか、今回のマジックサークルの催し物は、過去の全ての中で最高と断言できるような完成度でした。

今度こそは、自信を持って断言できる。

・・・・・・恐らく、当日演技していた人は全員がそう感じているはずです。

本当に、みんなに感謝したいです。

見に来てくださった方も有り難うございました。


実際は、こんな少ない言葉で表せないほどの出来事があって、そして感じたこともあるのですが。

もう、言葉にする必要もないかな、と。


とにかく、今は休みたいです。・・・・・・でも、会誌の原稿があるのでそうも言っていられず・・・・・・。その上、一週間と少ししたら、今度は中間テストが。

結構・・・・・・きつい。


また、更新は明日から再開します。


大場つぐみ 「DEATH NOTE 11巻」(漫画)

大場 つぐみ, 小畑 健
DEATH NOTE 11 (11)

文化祭の準備があるというのに、「Remember11」をプレイしてしまったおかげで、あらゆる時間が考察のために消えていく今日この頃。

常時頭が混乱状態。

そんな中、手にとったこのデスノート11巻。

・・・・・・頭を休めるためにかるく読めるコミックでも、と思ったのに、

更なる混乱が訪れるばかりで、軽い頭痛が。

夢の中でまで「考える」ことを休めない今の状況は、一体どうすればいいのか・・・・・・。


・・・・・・とりあえず、本書は複雑です。

いつものことですが大量の伏線が張り巡らされ、それが一体何に繋がるのか分からない状況。しかも、今回の伏線は、完結に向けたもののよう。

10巻の感想で、「終わらせることより長引かせることを考えているように思える」と書きましたが、読み違えていましたか・・・・・・。

読了語、もうそろそろ終わるのかな? と思ったら、実際次が最終巻ということ。

果たしてどういう形に落ち着くのか。

・・・・・・前の巻を読み返しつつ予測でもと考えてみましたが、さっぱりですね。伏線の回収は疲れました・・・・・・。というか、全然回収できていませんし。

とにかく、12巻を待ちます。

何だか悪い予感もするのですが、きっと綺麗に終わる・・・・・・はず。

そう信じたい。・・・・・・まさか第三部なんて言わないですよね?

天藤真 「大誘拐」

天藤 真
大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉

三度目の刑務所生活で、スリ師戸並健次は思案に暮れた。しのぎ稼業から足を洗い社会復帰を果たすには元手が要る、そのためには―早い話が誘拐、身代金しかない。

雑居房で知り合った秋葉正義、三宅平太を仲間に、準備万端調えて現地入り。片や標的に定められた柳川家の当主、お供を連れて持山を歩く。

…時は満ちて、絶好の誘拐日和到来。三人組と柳川としの熱い日々が始まる!

第32回日本推理作家協会賞長篇賞受賞作。

 

 ◆ ◆ ◆

 

政宗九さんSAMANAさん に、大変強くお薦めしていただいた作品です。

これだけの言葉を頂いて、どうして読まないでいられようか! というほどに。

実際読んでみて、その理由が良くわかりました。

まだこんな大傑作を読んでいなかったなんて!

これこそ、誰もが認める傑作というものではないでしょうか。

誘拐された本人が、「誘拐犯」の実質的なリーダーになって指揮を執るという奇抜な設定。

数々のユーモアに笑え、勿論ミステリとしての構成も完璧で、読後感は非常に良し。

キャラクターもユニーク。文章も読みやすく、途中でだれることはない。

これが今から約三十年も前に書かれたものだなんて、驚きです。

今読んでも相当面白く、新鮮味さえ感じる内容。

これは本当、読まないと損!

政宗さん、SAMANAさん、お薦めしていただいてどうもありがとうございました。

10点に近い9点

子供からお年寄りまで、多くの方に読んでほしい作品です。

これが絶版なんてことにはならないでほしいものですが・・・・・・。

量子力学

何故か、小説はあまり読んでいません。

最近読んだのはこの二冊。小説ではなく、興味のある人も少なそうなので、感想はまとめて。


佐藤 敏明
図解雑学 三角関数
竹内 淳
高校数学でわかるシュレディンガー方程式

先日「『量子論』を楽しむ本」 を読んだからそのつながりで――というよりは、「Remember11」などをより楽しむために、前準備として理解しておこうと思い読んでみました。

まず、「高校数学で分かるシュレディンガー方程式」の本を買ってきたのですが、

実際読んでみたら「大学一年生向け」の本で、とても理解できない内容。

・・・・・・これでは意味がない、と思い、せめて使われている数学の知識だけでも身につければなんとかなるだろう、と「三角関数」の方を借りてきて読了。

こちらは分かりやすく、微分・積分やテイラー展開なども割と楽に理解できました(フーリエ変換はまだあやふやですが)。

そして、再度「シュレディンガー方程式」に挑戦。

・・・・・・一応概要は分かったものの、途中からは頭が混乱状態。

やはり無謀な挑戦でした・・・・・・。

でも、「『量子論』を楽しむ本」→「三角関数」→「シュレディンガー方程式」の流れで、段階的に一つ一つを抑えていけば、中学生でもシュレディンガー方程式の内容を理解するくらいは出来そうな気がします。

量子力学を少しでも理解したい、という人には、このセットはお薦めです。


それにしても、今回改めて量子力学の難しさがよく分かりました・・・・・・。

そのうち感想を書くと思いますが、これで「Remember11」のために(間接的ではありますが)使った時間が100時間を超してしまいました。

・・・・・・まだ実際に読み終えてもいないのに。

でも、量子力学はSFなどを読むときには抑えておきたいものです。

尤も、方程式まで理解する必要があるかどうかは疑問なのですが・・・・・・。



さて。

明日からは三連休。ゴールデンウィークなのに休みがほとんど連続していないのが少し残念ですが、文化祭準備もないのでゆっくり過ごせそうです。

ようやく小説が読める・・・・・・。

中町信 「十和田湖殺人事件」

中町 信
十和田湖殺人事件

上野署の鹿角圀刑事は、自宅で2カ月前、旅行先の十和田湖で急死した妻の容子の事件を思い出していた。

その時、TVのニュース速報が釧路空港を離陸した大和航空機134便が50分後に消息を絶ったと報じた。搭乗者名簿が公開され、その中に容子と同宿した夫人4人の名があり、1名は生存しているという。

10日後、鹿角は十和田署の真弓刑事から、遭難事故現場で発見された遺書の中で、容子の死は他殺だったと書きとめられていたことを聞く。十和田湖畔に投宿した男女に何があったのか?

鹿角は、真相究明に乗り出した。

 

 ◆ ◆ ◆

 

タイトルや装丁だけ見ると、到底手に取ろうという気は起きないような一冊。

幻影の書庫 さんのミステリ百選に入っているのを見なかったら、きっと読むことはなかったでしょう。

絶版になっていますし・・・・・・。


でも、タイトルなどはともかく、この本の著者はあの中町信。そう単純な作品でないことは間違いなく。

実際、退屈に感じる部分はあるとはいえ、プロローグ・エピローグや、真相はなかなか面白い。

中盤の展開も、読み始めたときには全く予想できなかったです。

さすが中町信。現代ではともかく、新本格以前にこれだけのものを書いていた作家は、そう多くないはず。

本書は、ミステリが好きなら今でも十分に読む価値があります。

特に、プロローグとエピローグは相当巧いです。

また、真相はとある「知識」がないと完全にはたどり着けないですが、その「知識」が結構驚きでした。こんなことがあるのか、と。実際に調べてみたら、やはり本当にあるようで、どこからこんな知識を得たんだろう? と少し不思議に思ったり。


最近、東京創元社で中町信の作品がいくつか復刊されていますが、是非これも復刊して頂きたいです。

少し改稿すれば、十分通じると思うのですが。読みにくくもないですし。

見つかりにくい本なので、どこかで見かけたら、読んでみることをお薦めします。

ブックオフには置いていないかもしれませんが、図書館には多分あると思います。

7点




松原秀行講演会

正しくは、放課後ゼミナールであって講演会とはまた違ったものなのですが。

予定通り、参加してきました。

参加者は30人程度。・・・・・・かなり少ないです。

開始15分ほど前に行ったら、誰一人来ていなかったり。おかげで最前列を確保できましたが・・・・・・。

学校の生徒でも存在を知らない人が多かったのでしょう。

しかも、元は高校一年のゼミナールにも関わらず、中学生が半分を占めていました。


松原秀行さんは「パスワードシリーズ」で有名な、児童文学作家です。

一応、推理小説、という体裁をとった話を書かれていますが、同じ児童文学作家のはやみねかおるさんに比べると、ミステリ色は極めて薄く、むしろパズル的な要素を前面に押し出しているのが特徴。

そのため、小中学校では「はやみね派」「松原派」と、結構分かれることが多い(らしい)です。

自分は小学校のころに数作読んで、はやみねさんのほうに傾いてしまったタイプの人間なのですが・・・・・・。


それはともかく、ゼミナールの内容ですが、

「作家という職業について」というようなテーマのゼミだったため、非常に有意義なお話を聞くことができました。

フリーライター、コピーライターなどの仕事の詳細、作家になろうと思ったら何をすればいいか、作家になることの厳しさ、などなど。

どのくらい稼げるのか、ということについて、

デビューして数年は、「半年で6000円」ということもあった、というのは驚きでした・・・・・・。

作家は儲からない、とは良く聞きますが、まさかこれほどまでとは・・・・・・・。

しかも、デビューしてから十年あまりは、ひたすら作品を没にされ続け、コピーライターの仕事で稼ぐ日々が続いていた、とのことで。

そんな中、「パスワードシリーズ」を書くきっかけになったのが、はやみねさんの「バイバイスクール」だそうです。ここから、児童文学+推理小説のアイデアが生まれた――というのは、意外なものを感じたり。


また、文章が書けなくなる時、今現在でも二ヶ月間何も書かない、ということもあるそうです。

作家の大変さがよく分かるお話でした・・・・・・。


ところで、今回のゼミで非常に意外だったのが、

松原さんが、綾辻さんのびっくり館の殺人、面白かったよね、と仰っていたこと。

・・・・・・正直、松原さんはミステリはあまり読まない人なんだろうな、と勝手に思っていたので・・・・・・。やっぱり読まれているのですね。


ゼミの後は、持っていった本にサインを頂きました。

30人、という少人数のためか、その際にもいくつかのお話を聞かせていただきました。

松原さん、有り難うございます。


・・・・・・そして、ゼミに参加する代わりに、ただでさえ少ないサークルの練習を半分ほど抜けてしまったので、

明日からはよりまじめに取り組まないといけない・・・・・・。

それでも、参加して良かったな、と。

自分の学校も、もっとこのようなゼミを増やして欲しいものです。でも、学校の卒業生では他に作家は誰もいない・・・・・・。それだけ珍しい職業、ということでしょうか。残念です。

法月綸太郎 「怪盗グリフィン、絶体絶命」

法月 綸太郎
怪盗グリフィン、絶体絶命

ニューヨークの怪盗グリフィンに、メトロポリタン美術館(通称メット)が所蔵するゴッホの自画像を盗んでほしいという依頼が舞いこんだ。いわれのない盗みはしないというグリフィンに、依頼者はメットにあるのは贋作だと告げる。

「あるべきものを、あるべき場所に」が信条のグリフィンがとった大胆不適な行動とは(第一部)。

政府の対外スパイ組織CIA(アメリカ中央情報局)作戦部長の依頼を受けたグリフィンは、極秘オペレーション「フェニックス作戦」を行うべく、カリブ海のボコノン島へ向かう。

その指令とは、ボコノン共和国のパストラミ将軍が保管している人形を奪取せよというものだったが…(第二部)。

 

 ◆ ◆ ◆

 

・・・・・・三日間でミステリーランド一冊しか読めないとは。

実質、これから三週間は、通学時間以外に読書が出来そうにないのが辛いです・・・・・・。

それはともかく。

ようやく予約が回ってきた、法月さんのミステリーランド最新作。

法月さんなのだから、きっといつも通りのロジック重視の本格に違いない・・・・・・と思っていたら怪盗ものだったので、タイトルが発表されたときにはかなり驚いた覚えがあります。

実際読んでみても、「これが法月作品?」と思ってしまうほど。

最後のほうは、法月さんらしさも伺えるのですが。

後、章分けの細かさも、「密閉教室」の法月さんらしい・・・・・・。


ミステリーランドにはぴったりの作品で、これは「子供にも薦められる」タイプの話です。

もちろん、大人読者でも楽しめるはず。 

非常にバランスが良いのではないでしょうか。「大人にも、子供にも」という点で、ミステリーランドの中でもかなり上位に位置すると思います。

後味は良く、ボリュームも適度にまとまっていて。

ミステリ部分も、それなりに読み応えありますし。

怪盗ものはあまりなじみがないですが、「これは面白いな」と心から思わせられた一冊でした。

8点

ところで、本書の背表紙のタイトルの印字はなかなか面白いですね。

ミステリーランドを揃えて立ててあると、結構目立ちそう。

イラストも、ミステリーランドには少な目の(?)ユニークな絵で、雰囲気に良くあっています。・・・・・・って、同じことを毎回毎回言っている気が。

ミステリーランドは、どれをとっても挿絵が本文に巧くマッチしていますね。これを決めているのは誰なんだろう?