ジェフリー・ディーヴァー 「ボーン・コレクター」
- ジェフリー ディーヴァー, Jeffery Deaver, 池田 真紀子
- ボーン・コレクター
ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。
やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた…女はどこに!?
NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。
彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだが…。
◆ ◆ ◆
ジェットコースター・サスペンスと呼ばれるだけあって、読み始めたら止まらない。
結構長い話ですが一気に読了。
四肢麻痺で頭と左手薬指しか動かせない<犯罪学者>リンカーン・ライム。
事件現場に、次の犯行場所のヒントを残ししていく犯人、ボーン・コレクター。
二人の対決の行方は。
ラストにそれほどの意外性があるわけではありませんが、その分全編に渡って楽しませてくれます。
本書のメインは確かにサスペンスですが、科学捜査の描写が本当に細かく、その点も見物。
これだけ細かく描写している作品を他に知りません。
非常に興味深く、本書を<科学捜査もの>と呼んでも違和感がない、というか。そのくらい捜査、分析のシーンが多い。
また、主人公のライムとサックスも魅力的です。
天才を描くのは難しいことですが、本書のライムはまさに天才、と思わせられました。
次作以降の活躍も楽しみです。
エンターテイメントとして優れたミステリ。
翻訳物で登場人物も多いのに、混乱もせず、また読みやすいです。
長くても面白い話が読みたい、と言う人にはお勧め。7点。
水田美意子 「殺人ピエロの孤島同窓会」
- 水田 美意子
- 殺人ピエロの孤島同窓会
日本から1500キロ離れた、東硫黄島。島の外輪火山が噴火し、住民は東京に強制移住させられ、現在は、観測所を守っている老人が1人住むだけの孤島である。
そんな島で同窓会が開かれることになり、4年ぶりに東硫黄高校同窓生が集まった。出席者はクラスメイト36人中、不登校だった1人を除いた35人。
和やかムードで進んでいた同窓会は、突如現れた殺人ピエロにより恐怖の孤島と化す。次々と同窓生たちを惨殺し始める殺人ピエロの正体は?
第4回2006年『このミステリーがすごい!』大賞特別奨励賞受賞作。
◆ ◆ ◆
これはレビューに困る作品です・・・・・・。
この人、自分より二歳も年下なんですよ。そんな年齢で、これだけ書けて、そして何より完結させて賞に応募する・・・・・・・というそれだけでも、本当に心から凄いと思います。
でも・・・・・・。作品として評価すれば、それだけなんですよね。
年齢を考慮せずに貶そうと思えば、いくらでも貶せるような内容です。
文章も拙いですが、構成はそれ以上にまずい。良くこの構成で最後まで書けたな、と思うと同時に、良く本になったな、とも思わざるを得ません。
実際これが出版されたのも、「話題性を買って」だと選評にも書いてあります。
このような傾向――質より話題性(年齢)――は、個人的にあまり好ましくない。きっと、多くの方がそう感じることだと思います。
本書は、その傾向について考えるにあたって、非常に重要な一冊です。「年齢だけ」だと先に書きましたが、本書の最大の価値が、そこにあるのは間違いない。その一点のみをもって、大きな意味があるといえます。
これがきっかけとなって、さらに”質より年齢”傾向が進むのか。あるいは、その傾向が消えていくのか。僕は後者だと思いますし、そうであって欲しいのですが・・・・・・。
各所で批判されるのは間違いない一冊ですが、これを機に「話題性のみ」の作品が減ってくれることを望みます。
年齢を考慮して、評価は4点。
内容はともかく、価値のある一冊です。ただし、これを出版した宝島社の判断は、果たしてどうだったのだろうか。作者を叩くような発言を見かけますが、それは筋違いでしょう。責任は、作者ではなく出版社のほうにある。
”若さの商品価値”、そんなものはいらないのだと。読者がいったい何を求めているのか。もう一度見直す必要があるのでは――と、偉そうにそんなことを考えてしまいましたが。結局、読んでしまった人間だからはっきりとは言えないんですよね。ううむ・・・・・・。
卒業
卒業式はなかったけれど、本日をもって中学校を卒業しました。
と言っても、何の実感も湧かないのですが・・・・・・。
こんな素っ気無い卒業は今後もないと思います。通知簿と一緒に、卒業証書をほいっと渡されて終わり・・・・・・。入学式なんてものも、多分ないのでしょう。
別にそれでも構わないんですけどね。他の中高一貫校はどうなんだろう? やはり、こんな感じなのか?
ともあれ、皆様、来年度もよろしくお願いします。
高校に入っても、自分は何も変わらないと思いますが・・・・・・。
大崎知仁 「屋上探偵」
『銀魂』ノベライズの大崎知仁のオリジナル小説!
◆ ◆ ◆
友人に勧められたので読んでみました。
ライトノベルとミステリの融合、という最近ではよく見かけるパターンですが、はっきり言って本書は最悪だと思います。あまりこういうことは書かないようにしているのですが、それでも酷いのだから仕方がない。
まず、イラストがどういう意図で添えられているのか意味不明。このあたり、乙一の初期作品もそうでしたが・・・・・・。全くと言っていいほど内容に合っていないばかりか、人によっては嫌悪感も覚えるかもしれません。
あまりにセンスが無いです・・・・・・。ノベルスの「花火と夏とわたしの死体」や「天帝妖狐」に比べれば、これでも遙かにマシだと思いますが・・・・・・。
そして、内容。
これをミステリというのはどうなんだろう。
真相が明かされる前に、自分で犯人を当てたりするのはまず不可能です。伏線なんてあるのかないのか、といったレベルですし。
その上、ライトノベルとしてもキャラクターが作り物っぽくて好きになれませんでした。イラストのせいもあるのですが。ちょっと気持ち悪いです。
ラストで明かされる、操りの構図は確かに一瞬驚かされましたが、いくら何でもこれはないだろう・・・・・・。
大げさな表現ではなく、本当に頭を抱えたくなりました。「ありえないだろ!」という突っ込みを期待して、ネタとしてやっているのでしょうか。・・・・・・本気でこれをやっているのだとは考えたくもありません。
さすがに笑えないんですが・・・・・・。
・・・・・・少し残念な一冊でした。
作者が悪いわけでも無いのに、イラストが作品の質を下げている・・・・・・なんて作品にはもう出会いたくありません。作者が報われないです。
4点。
独り言
昨日、友人と話をしていて、何気なく言われた一言。
「ああ、××(僕のこと)の傾向がわかった。××は難しい話書くのが好きなんだ」
「考え方が理系だ」
多分、こんな感じのことだった。
ああ、確かにその通りだな、と。
それだけでなく、好きだと感じる作品も、多くが難しい話ばかり。
軽いショックでした。
でも、一日たって考えるとどうなんだろう? 本当にそうなのか?
・・・・・・やっぱり、深く考えないほうがいいのかな。
若竹七海 「船上にて」
- 若竹 七海
- 船上にて
“ナポレオン三歳の時の頭蓋骨”がなくなり、ダイヤモンドの原石も盗まれた。意外な盲点とは―表題作「船上にて」。屋上から突き落とされたOLのダイイングメッセージの皮肉を描いた「優しい水」。五人が順繰りに出した手紙の謎に迫る「かさねことのは」など8編を収録。著者自らが選んだミステリー傑作短編集。
◆ ◆ ◆
一日一編ずつ読んで、今日読了。
一つ一つは短いのですが、どれも綺麗なオチがついています。
一番好きなのは、作者があとがきで生涯の駄作と決めつけていたなどと言っている「手紙嫌い」。
短い中に独特のユーモアと、ブラックな驚きが用意されていて、非常に上手いと思います。
ブラックさ、ということなら、「優しい水」も最高。
何より、このタイトルが上手すぎる。
「タッチアウト」もなかなか良いのですが、確かに少し複雑すぎるかな。
この構成をブラックなオチにつなげるあたりはさすが若竹さんとでもいうか。
「てるてる坊主」は、ラスト1ページが・・・・・・。驚くというよりも困惑しましたが、これも好きな話です。ミステリっぽくはないのですが、「時間」の読後感は綺麗で良いですね。これが冒頭に配置されている・・・・・・というのがまた。この後に、ブラックな作品がいくつも続きますから・・・・・・。「時間」も悪意が感じられる作品ですが。
他の作品も水準レベルに達しており、ミステリがあまり好きではない、という人も安心して読めるような作品が多いです。
薄いのですが、中身は豪華。お勧めです。7点。
加藤元浩 「Q.E.D. 証明終了 23巻」(漫画)
- 加藤 元浩
- Q.E.D-証明終了- 23 (23)
「ライアー」
船上で起きた殺人事件。容疑者には全員にアリバイが。
・・・・・・と、割とお約束のパターンの話です。
トリックよりロジック重視。
犯人を指摘するに至る論理は若干複雑ですが、伏線も良く張ってあります。無駄がないような。
伏線と言えば、ラストの一コマは別の漫画(C.M.B.)の伏線になっているのか・・・・・・?
シリーズ中では、そこまで目立たないようにも思えますが、良くできています。
「アナザー・ワールド」
このシリーズおなじみの数学関係の話。
しかも、扱われるテーマが今までで一番難しい。
ミステリとしてはそれほどでもないと思うのですが・・・・・・。
良くこれを描いたなー、とため息をついてしまいます。
自分はチェックしていないのですが、この作者のことだからきちんと作ってあるんだろうなぁ、あれ。
話自体よりも、それを構成する要素が好きな作品。
数学絡みは、やはり惹かれます。
ところで、帯に描いてある「正答率5%」というのはこの作品に対してなのか、それともQ.E.D.シリーズ全体のことなのか。
そもそも、どうやって出した数値なのか・・・・・・。色々気になります。
・・・・・・「ひぐらし」の正答率1%という売り文句が許せないだけに。
本書の場合はそれが納得できる数値なのですけどね。「アナザー・ワールド」のみでも、作品全体でも。
ミステリ部分は弱いかな、と思いましたが、「アナザー・ワールド」は好みだったので、最終的にはいつも通りかな。
このシリーズはまだまだ終わらないでほしいものです・・・・・・。
柄刀一 「ゴーレムの檻」
- 柄刀 一
- ゴーレムの檻
サンフランシスコ近郊の研究所に勤める博物学者・宇佐見護博士は、紅茶を飲みながら思索をめぐらし、幻想の旅に出る。
M・C・エッシャーの絵画が現実化した街へ。あるいはシュレディンガーの猫の生死の境へ。はたま
た未だ書かれ得ぬ空白の物語の中へ。そして、神に見捨てられた牢獄と、神の助けで脱獄した囚人の傍らへ…。
呪わしくも美しい、浪漫派本格推理の傑作!
◆ ◆ ◆
あの「アリア系銀河鉄道」の続編です!
これはもう、期待しないでいられるほうがおかしいだろう・・・・・・と思いつつ読んでみると、
うーん・・・・・・若干期待はずれか。
どれもレベルは高く、普通のミステリとして読んでいればかなり楽しめたと思うのですが、求めているのはそういったものではないんですよね。
ファンタジーとミステリの融合が完璧になされていた前作に比べて、本書はまともすぎる。
最初の「エッシャー世界」は、割と前作に近い形式で、これは楽しめたのですが。
それでも、「アリア系」所収の作品には一歩及ばないかな、と。
良くできてはいるのですが・・・・・・。
「シュレディンガーDOOR」は設定は面白いのですが、やはり事件そのものが普通・・・・・・というのが。
「シュレディンガーの猫」自体は大好きなテーマなのですが、そこまで深く関連づけられているわけではなく、それが残念でした。
ラストは面白いです。
「見えない人、宇佐見風」は・・・・・・そんなに印象に残らないです。
「ゴーレムの檻」と、その現代版という「太陽殿のイシス」は、かなり良くできた密室もの。
密室トリックそのものよりも、それが謎の「言葉」の意味に繋がるときに驚き。
しかし、「太陽殿のイシス」のラストは・・・・・・・。
三作目、出るのかな。
出ると信じたいですが。そのときは、また「アリア系」のような物を書いて欲しいです。
何だかんだ言っても、楽しめる作品集。
「アリア系」のようなファンタジーを期待しなければ、ということで。8点。
代わりに、「アリア系」が合わなかった人にはこちらの方がいいかも・・・・・・。
「デストラップ 死の罠」(映画)
- ワーナー・ホーム・ビデオ
- デストラップ 死の罠
前評判には聞いていましたが、これは凄いミステリ映画です。
漲る緊張感、どんでん返しの連続、意外な幕切れと、
まさに理想のサスペンスもの。
売れない劇作家の元に、かつて教え子の元から素晴らしいミステリー劇のシナリオが送られてきて・・・・・・。という序盤からもう目が離せず、話もわかりやすく進みます。
そして中盤に待ち受けるどんでん返し。
「読めた」と思ったらその先を行っていたとは・・・・・・。
思わずあっと声をあげてしまいました。
構図的に、近年の某ミステリ映画を思い浮かびますが、これが元なのかな?
色々と似ている部分が・・・・・・。こちらのほうが、純粋なサスペンス、ミステリとして見れば上だと思いますが。
この映画は、「死の接吻」を書いたアイラ・レヴィンによるミステリー劇の映像化とのことですが、そういわれてみると確かに「死の接吻」を思い起こさせるようなところも。さすがに天才と呼ばれるだけのことはあります。良くこんなに思いつくなぁ。
中盤のどんでん返し以降も緊張感はとぎれず、ラストにかけていくつかのどんでん返しもあります。
ただ、やはり最初のどんでん返しが一番驚く・・・・・・というのば、別にこの映画に限らず、(自分が知る限りの)大抵の多重どんでん返し映画ではそうですね。
しかし、この映画では、ラストで大きな意外性が用意されています。
これ自体は、途中で「もしかしたら」と思ったものだったので驚きはあまり無かったのですが、それでも考えさせられました。映画ならではの伏線も張ってあって、上手いなーと。
ただ、これはこの映画に限りませんが、雷のシーンがやたらと続くと、見にくくて仕方がありません。
目が痛くなります。確かに、雰囲気は出るのでしょうが・・・・・・。やや安直な演出にも思えます。
これは、もう少し見やすくしてほしかったな、と感じました。もちろん、わざとやっているのでしょうが。
今までに見たミステリ映画の中で、ベスト3に入るほどの面白さ。
少し古い作品ですが、現代でも十分通用します。
9点。
未見でしたら是非とも。1000円で購入できる、というのも良いですね。
TBS「白夜行 第八話・第九話」(ドラマ)
八話・・・・・・こういう展開か。 相変わらず引き込ませる力は強い。
でも、さらに面白くなるのはやはり九話からで。
特に後半。緊張感にあふれていて、原作読者向けの演出もあり。 「人が死ぬ」という場面をあっさり描かない、というのがこのドラマのオリジナ<ル部分の一つ。
確かに、ドラマとしてはそちらのほうがやりやすいんでしょうね。
これもまた良いと思います。原作の乾いたような感じも好きだったのですが。
この演出で失っているものも多いのですが、良くなっている部分とで半々・・・・・・といったところでしょうか。
少なくとも、一般の人にはこちらのほうが受け入れられやすいかと。
以前にも書いたのですが、やはりこれ、
原作→ドラマと見た人にはドラマが劣って、
ドラマ→原作と見た人には原作が劣って見えてしまう気がします。
実際にほかの人の意見を聞いてみないことにはわからないのですが。 ただ、どちらの場合も、後に見たほうでも驚ける、というのはいえると思います。
その点は良い、のかな。もちろんそれも考慮した上で、このドラマが作られているのだと思いますが。
もう残りは2話、一気にラストですが、また何か驚かせてくれることを期待します。
・・・・・・しかし、雪穂もそうですが、亮司の顔ずいぶん変わったな・・・・・・。