The Key of Midnight -15ページ目

2006小説ベスト

初日の出までにアップすると書いたは良いものの、終わる気配がなく。
とりあえず・・・・・・。順位と作品だけアップしておきます。
気が向けばちょっとしたコメントでも書くかもしれません。

<物語部門>

1位 福井晴敏 「Op.ローズダスト」
2位 森絵都 「DIVE!!」
3位 加納朋子 「モノレールねこ」
4位 東野圭吾 「白夜行」
5位 広瀬正 「マイナス・ゼロ」
6位 古橋秀之 「ある日、爆弾が落ちてきて」
7位 米澤穂信 「ボトルネック」
8位 瀬尾まいこ 「幸福な食卓」
9位 新城カズマ 「サマー/タイム/トラベラー」
10位 平山夢明 「独白するユニバーサル横メルカトル」

<ミステリ部門>

1位 道尾秀介 「骸の爪」
2位 天藤真 「大誘拐」
3位 ダン・ブラウン 「天使と悪魔」
4位 北村薫 「夜の蝉」
5位 大阪圭吉 「銀座幽霊」
6位 米澤穂信 「夏期限定トロピカルパフェ事件」
7位 岡嶋二人 「99%の誘拐」
8位 ポール・アルテ 「第四の扉」
9位 東野圭吾 「眠りの森」
10位 久住四季 「トリックスターズD」

評価基準はかなり迷ったのですが、
より「印象に強く残っている」作品の順に選んだ、という感じです。
<物語>のほうは大体これで変わりませんが、
<ミステリ>のほうは結構滅茶苦茶です。好きな作品の順、というのが最も近いでしょうか。
少なくとも、<ミステリ度の高さ>などでは選んでいません。
物語のほうは普段と変わらず2006年も良作ばかりでしたが、
ミステリは何となく無難なものばかり読んでたかなあ、という感じはします。
普段はすんなり順位が付くのですが、今年はどうしても引っかかってしまったので。
それでも、こうして見返してみると、良い本に出逢えた一年だったなあ、と思えてきます。
不思議ですね。実際に、その通りなのでしょうが。

2007年も良い作品に出会えることを祈っています。

2006”小説以外”ベスト

2006年、小説以外で良かったものを10作品、選んでみました。
媒体なども違うので、順位等はつけていません。

まずは映画から。

「時をかける少女」
(→感想
文句無しに昨年のベスト映画。小説などをあわせて総合的に見ても、2006年のトップ3に入る作品です。
青春+時間もの。爽やかで純粋な、驚きと感動があります。誰にでもお勧めしたい傑作。

「デストラップ 死の罠」
(→感想
昨年の「ミステリ映画」ベスト1。サスペンスものの中では、間違いなくトップクラス。
途切れぬ緊張感、連続するどんでん返し、意外なラスト。ミステリファンは必ず観るべき作品です。

次はゲーム。どれもADVかノベルです。

「Remember11」
(→感想
最早神。2006年、総合トップはこの作品。「夏と冬の奏鳴曲」に並びうる大傑作です。
圧倒的な難解さ、ミステリというジャンルすら超えうる”真実”。自分も未だに”inifinity roop”に閉じ込められたまま。大半の人は拒否するでしょうが、それでも。この作品の存在は奇跡、と言い切っておきましょう。

「Sense Off」
(→感想
上と同じく難解な作品。哲学的で、数学的で、論理的なSFミステリです。理解を超えたどんでん返し、不条理で、それでいて綺麗なエンディング。読み解くのは一苦労ですが、その魅力がある作品です。

「ひぐらしのなく頃に」
(→感想
今年、ようやく完結した作品。2年ほど前から読んでいましたが、正直言って、未だにこの作品が好きなのか嫌いなのかわかりません。それでも、何度も「面白い」も思ったのも事実。「祭囃し編」の良さ、daiさんの音楽の素晴らしさを含めて、お勧めとしておきます。

「探偵・癸生川凌介事件簿 仮面幻影殺人事件」
(→感想
本格ミステリ、と言って良いでしょう。正統派な推理ゲームです。
”意外な真相”を十分に楽しめる作品。一風変わった構図になっており、ミステリ好きならプレイ後考えさせられるはずです。

さて、今度は漫画。

「DEATH NOTE」
(→感想
言うまでもなく、優れたサスペンスです。今年完結しましたが、個人的には第一部で閉じて欲しかった、というのが本音。
それでも、傑作には変わらず。ここまでの作品を書き上げたことに拍手です。アニメ版のクオリティも原作を超えるほどで、目が離せません。

「スパイラル ~推理の絆~」
(→感想)
長いこと追っていましたが、ついに完結しました。大好きなミステリ漫画です。ある意味、「全く先を予想できない」漫画かもしれません。本当に楽しませてもらいました。ラストの大どんでん返しの衝撃は忘れられないです。ストーリー性重視のミステリとして、お勧め。

「ハチミツとクローバー」
(→感想
昨年度もベストに入れていましたが、完結したので改めて。全く予想外のラストを迎えたこの作品ですが・・・・・・。やはり、青春ものの傑作です。全体に漂うほろ苦さはラストまで変わることがありません。じわりとくる感動。この手の話が好きな人なら必読です。

そして、最後はアニメ(?)

「涼宮ハルヒの憂鬱」
(感想無し)
とにかくメタ的、パズル的。ただのアニメ、ではなく、現実世界まで侵食して、ひたすら意外性と楽しさを提供してくれた作品。リアルタイムで観ないとその面白みが判らないのが唯一の欠点。何にしても、ここまで見事な説得力のあるメタ構造は、某名作以来でした。

・・・・・・・というわけで、10作品です。本当は、「ヴァンパイア十字界」(→感想 )も入れたかったのですが、丁度次で完結なので、2007年に回すことにしました。

そして、気づいたらもう2007年です。去年と全く同じパターン。ほとんど変わりがないような。
・・・・・・何と言うか、実感が湧きづらいですね。
それでも、年が明けたことに変わりは無いので。

こんなスペースですが、新年のご挨拶をさせて頂きます。

明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
2007年も皆様にとって良いことがありますように。

2006年最後の・・・・・・

多分これが2006年最後の更新になります。
ベスト本など色々並行して記事を書いていたのですが、結局間に合わなかったので、
初日の出までにアップします。

・・・・・・2006年も残りわずか。
色々なことがありすぎて、
「特にこれが印象に残った」なども書けないほどですが、
それでも良い一年でした。

どちらかといえば、今までよりマジックのほうへ力を入れたためか、
読了数などは去年にくらべ30冊ほど少なくなってしまいましたが・・・・・・。
その分、去年はまた違った形での”出会い”もあって、
良い経験だったなあ、と思っています。
そちらの関連で、
2007年は”大きなこと”をしよう、とこっそり目論んでおりますので。

他にも、マジックとは全く別、どちらかといえば小説関連で、
来年は”大きなこと”を予定していますが・・・・・・。
早く明かせる段階になれば良いなあ、と願うばかりです。

・・・・・・と、気づいたら”2006年を振りかえって”ではなく、既に2007年の話になっていますが・・・・・・。
もう残り10分切っていますね。

本当に2006年も終わりですので、最後に。

今年お世話になった皆様。
一年間誠にありがとうございました。
いつもと変わらず、結局お世話になってばかりでしたが・・・・・・。
来年もまた付き合ってくだされば幸いです。どうかよろしくお願い致します。

それでは、皆様。
良いお年を!

平山夢明 「独白するユニバーサル横メルカトル」

平山 夢明
独白するユニバーサル横メルカトル
凝視せよ。ここにあるのは宝石だ。

怪談実話でベストセラーを連発する著者による、驚くべき結実。生理的嫌悪と、終わることのない暴力の果てに、名状しがたい感動が待っている、異形の物語たち。
本年度推理作家協会賞を受賞した表題作含め8編を収録した、世界最凶、天下随一の傑作短編集。
 
 ◆ ◆ ◆
 
これも随分前に読み終わっていたのですが、どう感想書いてよいのかわからず、長いこと放置していました。
このミス1位をとったことで、世間的には有名だと思いますが・・・・・・。
少なくとも、これはミステリではないです。
ただ・・・・・・このミス1位を取るだけのインパクトがあることだけは言っておきます。
こんな”凄い”本、そうそう読めるものではありません。
評価も真っ二つでしょう。
どの話も狂気的ですし、残虐の限りをつくしています。
本来であれば、このような作品は好みでないのですが・・・・・・。
本書に関して言えば、何から何まで凄すぎて、好き嫌いとか超えてしまっている感じです。
一編目は「ああ、狂ってるな」程度の感想しかなかったのですが、
二編目以降、全く目が離せなくなりました。
帯に書かれた柳下氏の推薦文「神です、神」が本当にぴったりくるというか。
思わず自分も呟きたくなってしまいます。

特に気に入った、というか印象に残ったのは、
表題作、「Ωの聖餐」「無垢の祈り」でしょうか。
どれも滅茶苦茶で、狂った話ですが、
何故か読後感は悪くありません。
「無垢の祈り」などは、最悪としか言いようの無いストーリーなのに、ラストは爽やかさすら感じてしまいます。
「Ωの聖餐」は、グロで数学的な話・・・・・・。知的な感じが漂っているのですが、それでもドロドロというか。妙に印象に残りました。
表題作は言うまでも無く。残酷描写は極めて少なく、この短編集中最も「変な話」かもしれません。奇妙な味のある短編で、普通の人ではまず書けないでしょう。
他にも、「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」は、ラストで飛び切りの眩暈を感じましたし、
「オペラントの肖像」「卵男」では、結末で驚かされましたし・・・・・・。

ほとんどが衝撃的な短編、といって良いです。少なくとも、どれ一つとして「凡作」といえるようなものがありません。
積極的にお勧めはしませんが、何か一つでも惹かれる要素があるなら、読んで損はないはずです。
ただ、こういった方向性は苦手、という人は無理して読まないほうが良いです・・・・・・。
今年読んだ本の中で、トップクラスの最悪さ。
面白いですが、気楽に読めるものではないですね。

本当に評価は迷うのですが、こんな作品なかなか出逢えない、ということで9点
これほどの小説、数年に一度あれば良いでしょう。

城平京・木村有里 「ヴァンパイア十字界 8巻」(漫画)

城平 京, 木村 有里
ヴァンパイア十字界 8 (8)

発売日当日に購入&読了の、個人的に最も注目しているミステリ漫画。
1~7巻までの感想はこちら
7巻の大どんでん返しで、話の方向性が全く読めず、一体どうなるかと思ったら・・・・・・。

また新たなどんでん返し。

・・・・・・さすが城平京。何処までもミステリに拘っています。
尤も、今回のどんでん返しは、7巻まで読んだ時点で大まかなところは読めていました。
でも裏を返せば、それだけ十分に伏線が張ってあるということで。
おそらく1巻の時点から、遅くても3巻の段階でこのどんでん返しを想定して伏線を張っていたのでしょう。
漫画的に考えると、あまりに大胆というか・・・・・・。それをやってしまうのが城平京の魅力ですが。

どんでん返し以外にも、明かされた真実は数多く。
特に、「ヴァンパイア十字界」というタイトルでありながらも、今までヴァンパイアである意味がほとんど見出せなかったこの物語に、実は「ヴァンパイア」という設定を出す必然性があったことや、
1巻で既にラストを想定した、あまりに直接的な伏線が張ってあったことなど・・・・・・。
驚きました。
一見荒唐無稽な話に見えて、本当に計算し尽くされているのだなー、と感心します。
思い返せば、「スパイラル」も1巻の時点からラストの大どんでん返しのための伏線が張られていましたし・・・・・・。
やはりこの人は天才です。

物語もいよいよ大詰め。
少しでもストーリーに触れるとネタバレになってしまうので、ぼかしたような言い方しか出来ないのですが。
ようやく最終決戦、ですね。
ミステリ的な部分とストーリーとが完全にリンクしており、真相が明かされるにつれ話がどんどん切なくなっていきます・・・・・・。
やりきれないのですが、それでも綺麗。ロマンチックという言葉が良く似合う物語です。

次回で最終巻、とのことですが、ここまで来ても全く先が読めません。
どんでん返しで明らかにされた事実を考えると、
どうしても悲劇的なラストにしか落ち着かないような気がするのですが。
真実はもう全て明かされたようなので、また何かどんでん返しが来るとは思えないですし。
・・・・・・うーん、どう決着をつけるのだろう。楽しみです。

しかし、この漫画、あまりに知名度が低いです。
恐らく、興味が湧いたとしても1、2巻だけ読んで止めてしまったり、4巻あたりで「話についていけない」と投げ出してしまったりするからなのでしょうが・・・・・・。
それは、ミステリの解決シーンを読まずに止めてしまうようなもの。
ラストまで追わないと意味がありません。
ミステリ好きは、是非とも全巻合わせて読んでみて下さい。今、最もお勧めしたいシリーズです。

クリスマス・パーティー

25・26と、サークルメンバーでクリスマス・パーティー。
・・・・・・大方、予想通りの展開でした。

ひたすらポーカーやボードゲームをし続ける傍らで、
あまりタイトルを書きたくないようなコミックを回し読みしたり。
気づいたらみんなメルブラをやっていたり。
深夜2時からいきなり隠し芸大会と称する意味不明なものを始めて、
クラリネット演奏やギターの弾き語りを聞いたり、内輪ネタの物まねで盛り上がったり・・・・・・。
さらにその後、一体どういうテンションだったのか、皆「God Knows...」や「残酷な天使のテーゼ」、みくるんるんなどを大合唱したり。
そのまま「SAW」や「涼宮ハルヒの憂鬱」を朝まで流しつづけたり・・・・・・。
二日目もまた夕方まで、気が狂ったゲームを観戦していたり、トランプに興じていたり、と・・・・・・

弾けすぎでした。
いくら防音とはいえ、あんなに騒いで良かったのか・・・・・・。
真夜中の3時に、メンバーが集まって、
「みんみんみらくる~♪」と先輩・後輩の仕切りなしに合唱しているようなサークルは、あまり無いと思います。
外部からは一体どう思われることやら。

しかし、何にしても楽しかった、というか。
むしろ、幸せだった、というか。
食事もとても美味しかったですし、全員が全員、偏り無く仲良く接していましたし・・・・・・。ここまで来ると、もう家族的と言って良いのでは、というほどほのぼのとした雰囲気で。
久々に、この時間がずっと続けば、と思ってしまいました。

本当に、こんな良い関係がいつまでも続いてくれれば・・・・・・。
難しいのかもしれない、とは判っていても、願わずにはいられません。

何気ない「日常の中の非日常」でしたが、
これだけで良い新年を迎えられそうな気がします。
サークルの全員に感謝、ですね。

さて、2006年も残すところ4日。
この流れで、良い年末になれば良いのですが。
大掃除などが残っているので、忙しい日々になりそうです。

クリスマス・イブ

特にクリスマスらしいことは何もやっていません。

ここ数日、こもって年賀状を書いていました。
PCを使えば良いものを、懲りずに今年も全部水彩&筆ペンで描いたので、
軽く10数時間かかりました・・・・・・。
その他にも、大掃除やらなにやらが重なって、結局本が一冊も読めていません・・・・・・。

しかし、です。
今日はともかく、明日から二日間、友人の家でサークルのパーティーがあります。
徹夜で延々ポーカーをやったり、SAWを見たり、よくわからないパーティーになる予定。
毎回毎回、体力的にハードなことばかりやっているので、今回こそは倒れないよう色々準備をしていかないと。
なにやら、真夜中に隠し芸とか意味不明なことをやらなければならないのですが、
”マジック禁止”という条件がついているため、大変厳しいです。
結局、即席でショートショートを作って朗読になりそうです。正直嫌です。
あるいはミンティアで芸をしろ、とのことですが、
いくらなんでも、ミンティア一つで5分は持ちません。
ダイス・スタッキングも禁止ですし・・・・・・・。本当、何すれば良いのか。
深夜だし近所迷惑だよ! という言い訳も、
全館防音だから、の一言の前には聞きません。
・・・・・・まあ、どうにかなるはずです。なってほしいです。

そんなわけで、明日から二日間、友人の家に行ってきます。
それ以降は、少なくとも今年一杯、毎日更新できる・・・・・・はずです。

それでは皆様、良いクリスマスを。

久住四季 「トリックスターズD」

久住 四季
トリックスターズD
城翠大学の一大イベント、3日連続の学園祭、その一日目。
周と凛々子は異常な閉鎖空間の中に閉じ込められていた。すっぽりと闇のようなものに覆われてしまった講義棟。その中で、脱出するすべを探し、あがく周たち。この状況がどうやら魔術によるものであり、さらに周たちの中に魔術師の息がかかった裏切り者がいるらしいことが判明する。それが、それぞれの疑心暗鬼を招くことになり…。
招かれざる客“D”が来たりしとき、逃げ場のないその空間は恐怖と緊張で満たされる。魔術師と“D”の物語、登場。
 
 ◆ ◆ ◆
 
「トリックスターズ」3作目。
――これは、凄い。
読んでいる間の面白さも、解決編の意外性も、前二作を大きく上回っています。
今回のテーマは「メタミステリ」ですが・・・・・・。
こんな使い方があったとは、いやこれは本当に驚きます。
この真相は見抜けない。
学園祭一日目。暗闇の閉鎖空間に閉じ込められた男女。
「そして誰もいなくなった」風に、消えていく登場人物・・・・・・。
これにメタ的な趣向が合わさっているのですが・・・・・・。
御見事! としかいえないですね。
久々に、こんな面白いトリックを見ました。
読了後、「凄い」と連呼したくなるような作品も久々です。
今年トップクラスの衝撃でしょうか。
いや、衝撃とは微妙に違うのですが・・・・・・。何にしても大きな意外性。
大量の伏線が、ある一つの「転換」によって次々と収束していく様は感動すら覚えます。
前二作、少なくとも「トリックスターズ」は読んでおかないと”全く”トリックが通じない(或いは意味がわからない)わけですが、
シリーズ作品でここまで思い切ったことをやってくれたのは、純粋に嬉しいですね。
読者を騙すためとはいえ、シリーズ3作目でこんな作品が出てくるなんて。
このシリーズ、甘く見ていたかもしれません。

とにかく、細かなミスリードや伏線が上手く、思い返したときに再度驚きがあるのが良いですね。
特に今回は、ミスリードが凄かったです。
あらゆる方法を使っているというか・・・・・・。シリーズ作品であることや、本書がライトノベルであることさえ、ミスリードの一つになっています。
ある種、麻耶雄嵩の某作的な趣向もあったりして。
これは、ライトノベル本来の読者層よりも、むしろある程度ミステリを読みなれているほうが驚くでしょう。

本書を読むために、前二作を読む価値がある、とは言っておきます。
9点
このシリーズ、本当に続きが楽しみです。

久住四季 「トリックスターズL」

久住 四季
トリックスターズL
その怪事件は、新緑芽吹く初夏、人里離れた魔学部付属研究所にて幕を開けた。
車椅子の“五番目”の魔術師が主催する魔術実験に招かれた周たちは、あり得ないはずの殺人現場に遭遇する。
密室と化した実験場にて繰り返される惨劇。 外からの侵入を寄せ付けないこの研究所において、考えうる犯人は内部の者しかいない。 それはまさに、“嵐の山荘” ともいうべき状況であった。
美しき女魔術師が舞台を去り、幕引きは周の手へと委ねられる。
「―― 犯人は詐術師(トリックスター)だ」 という彼女の言葉を頼りに、周が辿り着いた驚愕の事実とは!?
 
 ◆ ◆ ◆
 
シリーズ第二弾は「嵐の山荘」もの。
連続する密室殺人に限られた容疑者、そして二人の<魔術師>。
シンプルに王道、それに加えて一捻り。
前作に比べると、良くも悪くも落ち着いたミステリ、といった印象です。
その分、ある種の無茶苦茶さは無くなっていて、十分読者にも真相を推理できる話になっています。後で思い返してみると、大胆すぎるようなヒントもありますし・・・・・・。
実際、自分も途中でメインのネタは判りました。
ただ、途中までは完全にミスリードされていました。前作を読んで「魔術」というものがある程度頭の中に入っている読者ほど引っかかりやすいと思います。これは計算して書かれているのでしょうね。
シンプルながらも真相は面白く、<魔術>を絡める必然性もあって、その点だけを抜き出せば前作のトリックを上回っていると思います。
ただ、トリックがその一点だけにほぼ集中しているので、それが見抜けてしまうかどうかで評価が変わってくるでしょう。
実際、色々とトリックが詰め込んであった前作に対して、本書の核は一言で言い表せてしまうものです。
勿論、その核は十分に物語に生かされているのですが。

とりあえず、前作が面白く読めた人なら、読む価値は十分にあります。
読んで無くても、本書から入るのもアリかもしれません。
前作を読んだ無い読者のために、十分な配慮がされています。一点だけ、どうしようも無かったのだろう、という個所はあるものの、そこまで直接的なネタバレ、というわけでもないですし。むしろ、本書→前作、という流れのほうが、ある意味で良いことがあるかもしれません。
何にしても、本書単体でも、ミステリ的な面白みは十分味わえると思います。
7点
前作でも、この人ミステリのセンスが結構あるかもしれない、と感じたのですが、本書でほぼ確信が持てました。
この分なら、間違いなく次も期待して良いでしょう。
もう少し話題になっても良い作家だと思います。

久住四季 「トリックスターズ」

久住 四季
トリックスターズ
その魔術師は、にぃと笑って言った。ゲームねぇ、なかなか面白そうじゃないか―。
ゲームと称する、その予告は大胆にして唐突なものだった。
『我は、今この会場内に集まった諸君の中から生贄を選定し、処刑することをここに宣言する』と。
不可解な予告がはたして真実となったとき、舞台となる城翠大学は混乱の渦へと落下していく。加速する猜疑、恐怖、狂乱。
だが、美しき女魔術師は、巧妙なる欺計を鮮やかにそして皮肉げに解き明かす。そしてゲームは誰もが予期せぬ結末へ。
これは推理小説を模った魔術師の物語―トリックスターズ登場。
 
 ◆ ◆ ◆
 
ミステリ要素が高いラノベ、ということで、各所で紹介されていた一冊。
今更ですが、4冊目まで揃ったので読み始めてみました。
読み始める前は、ミステリよりファンタジー要素が強い作品なのかな、と思っていたのですが・・・・・・これが意外に。
しっかりしたSFミステリでした。
途中で「読者への挑戦状」のようなものが挿入され、この作品に”七つのトリック”が仕掛けてあることが明かされるのですが、一つを除いてどれも解けませんでした。
それぞれのトリックも、伏線等で若干気になる部分もあるものの、十分に意外性があります。
ラノベでこれだけのことをやってくれるとは。
正直、予想を越えていました。
ただ・・・・・・。7番目のトリックだけはどうも。
これは、ラノベという形式のため、すぐに検討がついてしまいます。他のトリックはどれも巧く作ってあるにも関わらず、ここだけ浮いてしまうような。斬新さもなく、ラストの締めくくりにこのトリック、というのは非常に残念な気がします。
それでも、これはこれで”キャラクターを立たせるため”という点からすれば良いのかな、と。
ミステリ的には、メインはそれ以前のフーダニットやハウダニットで纏まっていると思いますし。

先ほどからミステリ的な側面にしか触れていませんが、本書は単純に物語としても面白いです。
ラノベでは長いほうで、登場人物も多いのですが、混乱したりすることもなく。読んでいる間全く飽きることはありませんでした。
ミステリというよりも、総合的にエンターテイメントとして優れている、といった感じでしょうか。
何にしても、以降の作品にもとても期待が持てる一作目でした。これからどんな手で来るのか楽しみです。8点