久住四季 「トリックスターズL」 | The Key of Midnight

久住四季 「トリックスターズL」

久住 四季
トリックスターズL
その怪事件は、新緑芽吹く初夏、人里離れた魔学部付属研究所にて幕を開けた。
車椅子の“五番目”の魔術師が主催する魔術実験に招かれた周たちは、あり得ないはずの殺人現場に遭遇する。
密室と化した実験場にて繰り返される惨劇。 外からの侵入を寄せ付けないこの研究所において、考えうる犯人は内部の者しかいない。 それはまさに、“嵐の山荘” ともいうべき状況であった。
美しき女魔術師が舞台を去り、幕引きは周の手へと委ねられる。
「―― 犯人は詐術師(トリックスター)だ」 という彼女の言葉を頼りに、周が辿り着いた驚愕の事実とは!?
 
 ◆ ◆ ◆
 
シリーズ第二弾は「嵐の山荘」もの。
連続する密室殺人に限られた容疑者、そして二人の<魔術師>。
シンプルに王道、それに加えて一捻り。
前作に比べると、良くも悪くも落ち着いたミステリ、といった印象です。
その分、ある種の無茶苦茶さは無くなっていて、十分読者にも真相を推理できる話になっています。後で思い返してみると、大胆すぎるようなヒントもありますし・・・・・・。
実際、自分も途中でメインのネタは判りました。
ただ、途中までは完全にミスリードされていました。前作を読んで「魔術」というものがある程度頭の中に入っている読者ほど引っかかりやすいと思います。これは計算して書かれているのでしょうね。
シンプルながらも真相は面白く、<魔術>を絡める必然性もあって、その点だけを抜き出せば前作のトリックを上回っていると思います。
ただ、トリックがその一点だけにほぼ集中しているので、それが見抜けてしまうかどうかで評価が変わってくるでしょう。
実際、色々とトリックが詰め込んであった前作に対して、本書の核は一言で言い表せてしまうものです。
勿論、その核は十分に物語に生かされているのですが。

とりあえず、前作が面白く読めた人なら、読む価値は十分にあります。
読んで無くても、本書から入るのもアリかもしれません。
前作を読んだ無い読者のために、十分な配慮がされています。一点だけ、どうしようも無かったのだろう、という個所はあるものの、そこまで直接的なネタバレ、というわけでもないですし。むしろ、本書→前作、という流れのほうが、ある意味で良いことがあるかもしれません。
何にしても、本書単体でも、ミステリ的な面白みは十分味わえると思います。
7点
前作でも、この人ミステリのセンスが結構あるかもしれない、と感じたのですが、本書でほぼ確信が持てました。
この分なら、間違いなく次も期待して良いでしょう。
もう少し話題になっても良い作家だと思います。