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わずか2週間の間隔で再びケルンに旅たった。

Deutsch BahnのAngebotで、わずか59€で最高ミュンヘンからハンブルクを往復できちゃうチケットが毎週土曜日の午前10時から売り出される。

それを利用して、今回はICEで乗り換えなし!という最高の条件だった。


なぜかロバートに対する自分の気持ちが分からなくなってきた。

ノリコの話を聞いた影響もあるし、突然の元彼からの連絡に動揺したのもある。

最終的なところで分かり合うことはできないんじゃないかってあきらめがどこかに出てきたし、将来の見えない恋愛にはまり込む危険も感じてた。

前回経験した到着前の、あの会いたくてたまらないというそわそわ感もなく、彼に会ってむしろ自分の気持ちを確認したいと思った。


大学の授業が終わってからだったから、ケルンについたのは22時過ぎ。

ICEから降りたとたん、夏か!というむわっとした熱気に包まれた。

もう駅に迎えに来てくれていたロバートは、もう薄いシャツ一枚。

一人コートを着ていて突っ込まれた。


ロバートの住むHuerthまでのSバーンが発車したばかりで、次の電車まで30分待つことになった。

一度駅から出て、ドーム前の広場で待つことに。

何度見てもケルンのドームは大きくて大迫力。

でも夜のドームは美しくライトアップされて、なぜかわくわくさせられるような、独特の雰囲気をかもし出していた。


たった二週間なのに、やっぱり再会は感動的。

言葉ではうれしさをうまく伝えることができなくて、目を合わせるのもなぜか照れくさくて、ハグとキスを繰り返してた。

会えば疑問も吹き飛んでしまうや。

やっぱり単純!


2週間ぶりのロバートの部屋はさらにパワーアップしていた。

前回は引越し直後で調度品も最低限だったけど、カーテン、じゅうたん、ライトなどなどが加わり、完成していた。

この部屋に何も知らないで初めて入ったら、絶対ロバートのことをディープな日本オタクと思うかも(まあそうだけど)。


浮世絵の版画、のれん、日本地図、常用漢字一覧表・・・などなど。

さらにパソコンの壁紙が「痴漢注意」のポスターのグラフィックだった・・・。

ガイジン向けの日本語のグラフィックをどこからか見つけ出したみたいで、いっぱい持ってた。

しかも全部変!

「萌え」

「絶倫パワー」

「全裸」などなど下ネタ系・・・。

意味を聞かれたから教えざるを得なく、またさらにロバートの変な日本語語彙が増えてしまった。。


今回は4泊5日の滞在。

なんと言っても今度の目玉はデュッセルドルフ!

ロバートの日本熱もなぜかさらに高まり、意気揚々と出発。


途中で日本人の女の子と偶然遭遇。

見慣れないあたしにちょっと戸惑いながら、Halloとドイツ語で挨拶されたけど、

「あ、日本人です。こんにちは」

と返した。

そしたらなぜか彼女、かなりびびってた。


言葉少なにそのまま別れ、あとからロバートに彼女の動揺のわけを聞いた。

日本人の彼女がいること、誰にも言ってなかったらしい。

秘密にしてたわけじゃないけど、聞かれてないから言ってないって。

でも言えよ!

「これで彼女から逆ナンされなくなったなあ」

って冗談なのか!?


デュッセルドルフとケルンは昔からものすごく仲が悪いらしい。

出発前にロバートの同居人にデュッセルドルフ行きのことを話したら、

「お前ら裏切る気か!」

って言われてびっくり。

デュッセルドルフに着いても、「ミュンヘンから来ました」「東京から来ました」となぜかうそをついていた。

 

ロバートの見解では

「デュッセルドルフはおしゃれで気取ってて、ミュンヘンみたい。日本人以外興味ない。」

だから結局、日本人通りで名高いImmerman Strasseしかいかなかった!

ほんとロバートって極端・・・。


Immerman Strはほんとに日本食レストラン、日本食スーパー、本屋、旅行代理店・・・と全部日本語。

ここは日本か?ほんとにドイツか?と錯覚を起こしそうになった。

普通に日本人サラリーマンが背広で歩いてるし。

デュッセルドルフに留学したら、ここが落とし穴になる気がした。

日本でいう韓国人留学生にとっての大久保か?


道で出会う日本人の女の子はやっぱりおしゃれだし、きれいにメイクしててかわいい。

日本人発見するたびにロバートが

「萌え~」

連発。

使い方あってるし!


デュッセルドルフに行った以外はやっぱりいつもどおり、ご飯作って(デュッセルドルフで買いだめした材料で和食)、食べて、いちゃいちゃして、寝て、映画見て・・・を繰り返してた。

でもこれが一番落ち着くし、楽しい。

二人だけで一日中部屋の中にいても、あきないし、けんかもしない。


それはお互いに気が強いほうではないし、のんびりしてるからだと思う。

「やっぱり性格一緒で合うなー、おれたち。前の彼女とぜんぜん違う!」

とロバートがいつも比較する元カノについて、今回深く話しをした。


17歳から一年半付き合っていた彼女とは、表向き遠恋が理由で6年前に彼女のほうから別れたらしい。

それがもう6年前。

でも別れたあともコンタクトはとっていて、3年後に彼女がロバートのうちに泊まっていったことも聞いた。


「そのときもけんかした。いつも文句ばっかり言ってて疲れた。だからそれ以来彼女とは会ってない。連絡もしてない」

6年間連絡取り合っていたのってやっぱり特別だから、軽くショックだった。


「付き合ってたのは彼女のほうから逆ナンされたから。おれは自分から女をポイすることできないし、やれたらいい、と思ってたから我慢して付き合ってた」

なんだそれ!

ロバートの女の子に対する誠意を疑い出したら、

「でもお前は違う。性格が合う。こんなに好きになったのは初めて。お前に会う前に彼女に会った。それだけ」

って必死で説得された。


まあ過去のこと気にしてもしょうがない。

信用するしかないし、信用できる気がする。


「でもお前日本に帰るんだよな。」

ってさびしそうに言うから

「今それ考え中なの」

って答えたのに、

「そんなこと言っても帰るんでしょ」

って切ないあきらめ顔。

ロバートはドイツに残りたい、って言って結局一年で帰っていく交換留学生との別れを何度も経験してるから。


でもあたしの場合、個人的事情もあり、切実にドイツに残りたいと思ってる。

だからDaF受けてるし。

「親にもそれ相談したんだけど、もう一年いていいよって言われた。一年じゃドイツ語ものにならないの分かってるから。」

って言ったら、思わぬ展開にかなりびっくりしてた。

「じゃあ残って!ケルンに来て!手続きでも何でも手伝うから!」

ってはしゃぐロバートがうれしかった。


さらにロバートに深い感銘を与えたのは、柔軟なうちの両親。

彼らはいい意味で適当で、あたしのしたいことをしてくれることが一番幸せ、といって育ててくれた。

そのおかげ?そのせい?かいつまでたってもあたしは自分の道を見つけられずにふらふらしているけど。

そうやってあたしを信用して育ててくれた両親に感謝している。

だからこそ期待やプレッシャーはまったくないにもかかわらず、彼らを悲しませたくない、喜ばせたいと自然に思えて、それがあたしの将来に対するモチベーションになっている。


ロバートの両親はまったく正反対。

ロバートの将来を全部決めている。

法学を勉強して、いい地位について、いっぱいお金稼いで、ブルガリア人の女(!)と結婚させる。

そしてそれにロバートは反抗できないでいる。


小さいころから転校を繰り返したのもあり、彼には両親しかいなかった。

さらに父親は有名な大学教授。

期待とプレッシャーをずっとうけながら、「失敗したら親の恥」という意識がかなり深いところまでしみこんでいる。

親を気にしすぎなのはロバートも分かっていて、それゆえに苦しんでいるのに、どうしようもできない。

逃げても頭の中で親の存在を拭いきれない。


法学は自分のやりたいことではない。

それでも今までごまかしとおしてきたけど、将来を考えると不安らしい。

モチベーションがまったくないのに、「他人との協力」という、彼の一番苦手とすることが必要になる弁護士として働くことに未来が見えない。


「じゃあ何がしたいの?」

っていう根本的な質問に

「日本で先生になる」

って即答。

これまでも日本でNOVAの先生になるとか言ってたけど、冗談だと思ってた。

ロバートの真剣さにびっくりした。


「自分からしたいと思うことだからモチベーションもある。親にももう話した。でも反対された。」

「日本で先生の地位って高い?」

って心細げに話す様子から、何より親に認められることが彼にとって重要なのが伝わってきた。


「どうすればいい?」

って見たこともない、弱くて悲しくて、さびしい目をしてロバートが聞いた。

彼にもどうしようもできないし、もちろんあたしも何もできないことわかってる、そんなあきらめの目。


「期待にこたえなくちゃっていうプレッシャーで自分を偽っていい子するのは疲れるでしょ。いつか絶対ばれるし!だったらむしろばれちゃえばいい。直接話すとか、何か失敗するとか。無理なものは失敗したって仕方ないんだし。」

って言ったらちょっと驚いてた。

ありえない考えだったみたい。

「たとえば卒業試験に失敗するとか?・・・やっぱり無理、できない」

失敗が許されない家庭環境ってなんて残酷!


「もし失敗しても、彼らはまたその先に道を作る。『俺のため』に。逃げられない」

そしてロバートも結局彼らから逃げ出すことを望まないんじゃないかって思えた。


だから結局、お母さんの望むとおり、好き嫌いは別にしてブルガリア人の女と結婚するんじゃないかな。

ロバートはそれを否定するけど、彼の本性が痛いほど分かって、だからこそ何か現実的でショックだった。

お母さんは

「ドイツ人は強い。日本人はずるい。やっぱりブルガリア人よ」

と言っているらしい。


「じゃあもしかして親にあたしのこと秘密にしてる?」

って聞いたらやっぱりそうだった。

怒られるわけではないけど、首を突っ込んでくるのが間違いない。

あたしを家に招待して、根掘り葉掘り聞き出すのが分かるから、隠してるらしい。

それを聞いてぞっとした。


まだまだ若いし、何もすぐ結婚まで考える必要はない。

でもどこかで結婚がゴールだと思っているから、先の見えないロバートとの恋が不安になる。

もともと家格の違いとか意識してたけど、今回絶対結婚はありえないってことが分かってしまって苦しい。

じゃあこの恋愛はどこに向かってるんだろう?

はやまった考えだっていうのは分かってる。

でもこんなに好きになれる変な人に、人生であとどれだけめぐり合えるんだろう?


中国人のノリコ(自分で勝手に付けた日本名)の家に遊びに行った。

ノリコは春に帰国した日本人交換留学生、モクの彼女。

顔見知り程度で個人的なことを深く話したのは初めてだった。


ノリコは中国の超過酷な受験戦争に勝ち抜き、17歳で名門北京外国語大学に入学した超エリート。

卒業後ドイツに留学し、すでに卒業間近だけどまだ24歳。

ノリコの話から推測するに、一族はいわゆる中国の万元戸みたい。

服装はド派手で、竹下通りにいそうな中高生というかんじ。

外見からして、明らかにほかの中国人とは違うと思ってたけど、話してみてさらに強くそれを感じた。


中国の反日教育、情報統制については日本のメディアで頻繁に騒がれていること。

マスコミは時に大げさに事実をあおるから、どこまで信用できるか疑わしく思っていた。

このインターネットの普及した現代社会を完璧に統制することなんて不可能だと思ったし、あれだけの国土と国民をもって一つの”典型的中国人”を表現することさえ無理があると思っていた。


でもノリコの話を聞いて、徹底した情報・言論規制が現実であること、教育によって疑いもなく多くの中国人が当然のように反日感情を抱いていることを知った。

一党独裁の不自然さと、中国社会の抱える矛盾には多くの中国人が気づいている。

「でもだから何ができるの?革命?戦争?でも誰が?どうやって?そんなの誰もわからないわ。」

嫌悪感をあわらにして、はき捨てるようにこうノリコが言った。


ノリコはそんな中国社会で生まれて育った。

それなのにどうして社会に毒されてこなかったんだろう?

どうして外側から客観的に自国を眺め、批判することができるんだろう?


同じことがロバートにも言える。

社会に対する二人の立ち位置は驚くほどよく似てる。

彼ら自身もお互いにそれを感じているみたい。

でもノリコの場合、それが許されなかっただけに余計に不思議だし、彼女の強さと賢さを感じた。


ドイツで一番多い留学生は実は中国人。

そのほとんどが排他的で、中国人としか付き合っていないらしい。

ノリコはそんな狭量の狭い中国人たちを嫌悪し、むしろ親日感情を抱いている。

日本の若者文化に興味を持って、独学で日本語の勉強を始め、そこで出会ったのがモクだった。


けっこうノリコは奔放なほうで、ドイツに来てからいろいろな男と関係を持っていたみたい。

「その中でも彼は違った。他の男といるときとはぜんぜん違う、初めての感情だわ。ベットの中でもね。」

勝気なノリコの素直な言葉がかわいかった。


モクと空港で別れた後、すぐに泣いてしまって、帰り道もずっと涙が止まらなかったらしい。

しばらくは食事もろくに取れなかったし、帰国から一ヶ月たつけどいまだに彼の夢を見ていると聞いて、こっちも切なくなった。


「もちろん会いたいわ。でもどうしようもない。結婚?ありえないわ。私たちにとって両親の承諾は何より重要だし、彼らは中国人と結婚することを望んでる。」

「もし私が日本に行って、彼のところに行って、それでどうするの?日本語もできないし仕事も見つからないわ。彼に養ってもらう人生なんて絶対いやよ!」


冷静で勝気なノリコだけど、モクとの将来を真剣に、いっぱいいっぱい悩んで考えていたことが伝わってきた。

そんな中ロバートから電話があった。

ロバートと話すあたしがいかにも幸せそうだったらしくて、電話のあとノリコがちくり。

「ちょうど一年前の私みたい。でも本当に別れはつらいわよ。」


「人間は結局一人なのよ。恋愛は美しいけど、しょせんは借り物。いつか返さなくてはいけないの。そしてその代償は大きいわ。ただのものなんてこの世にはないのよ。」

「あなたの場合はまだいいわ。ロバートがあなたを借りている。あなたは日本に帰り、そこには元の生活が待っている。ロバートがいないのが当たり前の世界に。そしてそこで、また前のように彼なしで生活を続けることは簡単よ。それが自然なんだもの。苦しむのはロバートよ。私のように。」


ノリコの言葉が痛烈に響いた。

「恋愛は借り物」という表現が、今のあたしの状況にぴったりはまってる。

別れの痛みを乗り越えてきたノリコはとても強かったけど、さびしくて痛々しかった。


望まなければ何も怖くないのかな?

現実的にならなければならないのは分かってる。

そして今の恋が現実的ではないことも。


うまくいくものはどうあってもうまくいくと思うし、だめだったらそういうものだったんだって割り切ることはできる。

でも今それを考えたくない。

考えるのが怖い。


そんな複雑な心境のときだったからよけいに

「お前と付き合ってほんとに幸せ。こんなの初めて経験した。」

っていうチャット中のロバートの言葉がうれしかった。

長かった春休みもついにあと週末を残すのみ。

なんとも濃密な2ヶ月だった。


ベルリンから帰ってすぐ、ミュンヘンに”プチ引越し”。

4週間の語学コースの間、幸運にも学生寮の一部屋を借りることができた。


トイレとシャワーは各部屋についてるけど、キッチンは共同。

擬似WG生活を体験できて楽しかった!

同じキッチンを使う人たちがみんなありえないくらい親切だった。

外国人が多くて、その国の料理を作って食べさせてくれたり、語学の勉強のアドバイスをくれたり。

いつも誰かと話せるからさびしくないし、ここで大学生活過ごせたら素敵だろうな~、ってうらやましくなっちゃった。


2週間は毎日、学校が終わってからロバートと待ち合わせて遊んでた。

アンディーのところでフローやマルクス、それに初めて会ったアナとパーティーをしたり、みんながあたしの寮に来て遊んだり。

毎日会ってる分、迫ってきてる別れが実感できなかった。


それでも別れの日はやってくる。

最後の夜は、アンディーやフローとロバートの実家でいつもどおりまったりして過ごした。

ちょうどフローが二日後にケルンに車で行くとかで、一緒に行くかどうかを迷っていたのもあり、

「またすぐ会えるよね」

という雰囲気でお別れ。


しかし例によって妖精フロー、計画は実現しなかった。

別れてからたった2日で、考えられないくらいさびしくて、会いたくてたまらなくなった。

遠恋自体は初めてではないけど、こんな気持ちになるなんて考えてなかった。

電話するたびに気持ちが満たされるから、普段だったら3週間は持つはずのGuthabenが2日でなくなるくらい電話した。


TestDaFが終わってからケルンに行く計画だったけど、語学学校が終わった次の日、ミュンヘンから直接ケルンへ出発した。

時間より安さを優先したため、乗り換えも含めて片道6時間!

ICEとはいえ日本の新幹線ほど快適ではないし、Ostern休暇ということもあり、半分くらい立たなくてはいけなくて余計に疲れた。


遠恋の醍醐味は再会の瞬間!

初めて強くそれを実感した。

あたしを迎えにホームに上がってきたロバートと偶然鉢合わせたときの瞬間が忘れられない。


最初はなんだか少し照れくさくて、ぎこちなかったけど、何よりうれしくて幸せだった。

ロバートの新居はケルン郊外の”学生村”にある4人WGの一室。

ちょうどOsternで同居人はいなかった。


たった2週間離れていただけなのに、信じられないほど再会がうれしくて、愛しくてたまらなかった。

お互いの必要性を確認できたし、これくらいの距離の遠恋ってけっこう恋愛にプラスに作用するのかも。


あいかわらず映画、ゲーム、ミニマル、いちゃいちゃ、和食、寝る!

というふうにケルン滞在の日々が過ぎていった。

何も特別じゃないけど、二人にとってケルンはまだまだ慣れないから、なんとなく毎日が新鮮だった。


ケルンの人も街もやっぱりミュンヘンと違う。

どちらかというとベルリンに近いけど、もっと変。

ベルリンみたいにおしゃれな個性ではなくて、みんなわが道を行くかんじ。

若い人とやっぱりゲイらしき人が多くて、独特の活気があった。

ミュンヘンは人も街もこぎれいで気取ってる印象だけど、もっとあっけらかんとした空気があった。


まったく勉強しないまま、主に日本語会話であっという間に5日が過ぎ、帰る日になった。

テストがなかったらもっといれたのに、と思うと心が揺れたけど、けじめが大事だと思った。

でも今度は「しばしのお別れ」という感じだったから、笑顔でICEに乗ることができた。

本当は学校も始まるし、次にいつ会えるか分からないんだけれど。


お互いにもっと大好きになったことが分かったから、この距離とこの恋に不安はない。

でももっと離れたら?

あたしが日本に帰ったら二人の接点って何もなくなる。

今度はもっと大きい別れが視界に入ってきて、ときどき不安になる。


寝る前にじゃれながらロバートが言った、

「今度結婚しようね」

って言葉がうれしかったし、冗談じゃなかったらいいのになって思う。

Ottobrrunから帰った翌朝、ベルリンに旅立った。

ちょうど春休みの間、同じ大学に通う日本人、ヨシコがベルリンに部屋を借りて語学学校に通っている。

ベルリンに興味があったのはもちろんだけど、とりあえず一度ロバートのそばを離れて、誰かと語りたかった。


ロバートの本当の姿をはじめてみた次の日、ずっとそのことばかり考えてほかのことに集中できなかった。

夜もなかなか寝付けず、結局3時間しか寝ないで5時発のICEでベルリンへ。

ほとんど寝てないにもかかわらず、ICEの中でも眠れなかった。

思えばロバートから受けた衝撃のあまりの大きさに、かなり興奮していた。


ヨシコの住むWGはOstbahnhofのすぐ近くで便利なところだった。

ヨシコが語学学校に通ってる間、ふらふらとベルリンの街を散歩。


バイエルンの街とぜんぜん違うし、同じ都会でも東京ともやっぱり違う。

あちこち工事中で、落書きだらけで、成長中なのか退廃中なのか分からない。

でもバイエルンの街にはない自由さと柔軟さがあった。

東京にはない、アートの雰囲気と広さがあった。


ついた日の夜、ワインを飲みながらヨシコと語り合った。

というより、ロバートからうけた衝撃について全部吐き出した。

ずっと変人や天才と過ごしてきて、久しぶりに同じ目線で話せる人に会えてかなり楽になった。


ロバートのことはもちろん大好きだけど、ずっと一緒にいるとすべてを吸い込まれてしまいそうになる。

今まで好きだったこと、自分の個性、見解と思って揺るがなかったことがすべて崩れていく。

そして彼の前で空っぽになる。

影響力が強すぎる。

だからたまにこうして離れることは、自分を取り戻すために、見つめなおすために必要なのかもしれない。


次の日、ヨシコに教えてもらったカフェに入り、ノイエ・ナショナルギャラリーへ行った。

アインシュタインという老舗のカフェで、コーヒーが信じられないくらいおいしかった。

香りとコクが普通のお店とぜんぜん違う。

お店も古くて、独特の雰囲気が素敵だった。


ナショナルギャラリーで何を今展示しているのか事前に全然知らないで行った。

Melanchoryがタイトルで、時代やテーマごとにメランコリーに関するものを展示していた。


美術館を訪れるのは趣味だし、いつも特別な時間を堪能していた。

でも今回は違った。

ものすごい衝撃を受けて、立っていることが精一杯になるときがあった。

それは展示されているものが、どこかロバートがと最後の夜に語ったことにつながっていたから。


悔しいのは、その衝撃を言葉でも、体でも、音楽でも、絵でも表現することができないこと。

それは自分の中に何もないからだと思う。

跳ね返す力がない。

すべがない。

そこがあたしに足りてないところ。

だって後になったらそのとき感じたことが何も残らない。


思いがけず強い衝撃を受けて、美術館という美術館を回ることにした。

しかもコンテンポラリーアート。

今まであまり興味がなかったけど、今はそういうアートから力を、そして何かヒントを得たかった。

何より、宗教画や風俗画のように絵から何かを読み取る、ということをする力がなかった。

ミニマルなものから、単純に何かを感じるだけでよかった。


いくつか美術館を回った中で一番よかったのがBerlinische Gallery。

ベルリンに関係する現代のアーティストの作品を集めている。

ミニマルで幾何学的な造形物や、衝動的、突発的な作品が多くて、気分にぴたりとはまった。


ただ何本もの緑の細い線からなる絵の前で、何も考えずにただじっと立っていた。

するとカメラを持った女の人から英語で話しかけられた。

なんでも写真を専攻しているらしく、このギャラリーで作品を撮っているらしい。


「この絵と、それを見ている人、という絵をとりたいの。協力してくれるかしら?」

面白そうだったからすぐにオーケーした。


絵の前で、彼女の指示通りに歩いたり、立ったり、座ったり。

あとから作品のコンセプトや、構図を説明してもらった。

自分で表現できる人というのはやっぱりエネルギーが違う。

彼女からもロバートと同じような力を感じた。


彼女と別れたあと、一人で作品を見続けた。

雲と海と、たくさんの細かい字からなるメッセージの描かれた絵の前で係員のおじさんに声をかけられた。

その絵の興味深い点や、見るところを教えてくれた。


素直に聞いていると、ほかの絵についてもいろいろ話してくれた。

それから日本について、ベルリンについて、アートについて、短い時間だったけど一緒に話した。

彼自身も音楽と写真と、それをコンピューターで加工するということをやっているらしく、芸術家だった。

なんだか仲良くなり、作品を送ってもらうということでアドレスも交換した。


一日で2人も芸術家と知り合えて、なんだか刺激を受けて新鮮な気持ちになった。

あとで学校帰りのヨシコと合流してそのことを話したら、

「ていうか、そういう出会い多いよね!ロバートにしてもその人たちにしても、なかなか会うことないよ。それって一つの才能だと思う」

って言われた。


たしかにこれまで偶然で特別な出会いがやけに多い。

でもすごい個性や才能を持った人たちに知り合えても、その出会いを自分に還元することができない。


最後の夜はヨシコと二人でクラブに行った。

バーで知り合ったDJや、ヨシコの語学学校の先生から情報を集めた結果、Mariaという一見ダサそうなクラブが一番有名だし、家からも近いからいいかも、ということになった。


音楽はエレクトロで、まあまあだったけど、いまひとつ盛り上がってない。

なんだかつくりはちゃっちいけど、大きいハコで、入場料はちょっと高め。

だからなのか、年齢層は高めで、金曜の夜だというのに人が少なかった。

ベルリンのクラブって有名だったから期待してたけどちょっとがっかり。

もっと情報集めてまた来よう!と二人で誓って2時間くらいで引き上げた。


4日間のベルリン滞在でたくさん刺激を受けたけど、そろそろロバートが足りない。

もっと彼を知って、彼から吸収したい。

そしてあたし自身をもっと知って、もっと表現したい。



結局2週間、ロバートの実家に”飼われて”いた。

ロバートの親友、フォルカがチューリンゲンから帰ってきていて、毎晩のように二人で打ち込みに没頭。

10時を過ぎてから友達が集まってきて、地下室で朝7時くらいまで過ごす日々が毎晩続いた。


あたしは打ち込みに興味ないし、みんなの話すドイツ語にもついていけない。

マリファナを吸うわけでもないから、一人黙ってただ存在しているだけ。

ときどきロバートからいい子いい子ってされて、ほんとにペットだった。

いたたまれなくて、眠くないときでも2時には一人ベットへ退散。

朝方ロバートが寝に来るのと入れ違いに起きる、というすれ違い生活だった。


ミュンヘンについた日、記録的な大雪が降った。

ミュンヘン行きの列車に乗っているときから本格的に降り始め、一晩たってもまだ降り続いた。


いつものようにあたしが先に寝て、朝の5時にロバートから「雪を見ないか」って起こされた。

二人で完全装備をして朝のOttobrrunを散歩した。

下手すると2メートルは積もっているかも、というくらい、見たこともないくらいの大雪だった。

屋根にも車にも、細い鉄柵の先端にまでこんもりと雪が積もっている光景はほんとうにkrass!(ありえない)

早朝で人ひとりいない。

誰からもまだ踏まれていない、まったくの新鮮な雪に足跡を付けて進むのはなにか感動的だった。


一面雪に覆われた真っ白な世界は、普段の人の生活を完全に覆って、まるでファンタジーの世界にいるみたいだった。

まさに雪に”おぼれそう”になりながら一時間くらい散歩した。

立ちしょんしたり、雪合戦したり、まったくロマンチックではなかったけど、日常から切り離された特別な時間が楽しかった。

今思うと現実の出来事だったのか分からなくなるくらい、幻想的で美しい体験だった。


この雪の散歩のほかに、スーパーに二回とミュンヘン市内に一回”デート”したくらいで、あとは一歩も家の外を出なかった。

ロバートが起きてくるまで、軟禁状態。

たまらなくなって何度か庭から脱走した。


一度ロバートが寝ている間に置手紙をして、忘れ物をとりに家に帰った。

毎日毎日、ご飯を作ってエッチするだけしかできない自分の存在の軽さに耐え切れなくなって、一人になりたかった。

超個性的な人々と毎日を過ごして、自分のいる意味が分からなくなっていた。


再びOttobrrunのロバート家について、ドアを開けてくれたときのロバートの顔が忘れられない。

驚きと安堵でちょっと混乱した表情。

「なにやってんの、おまえ!」

って抱きしめられた。

思っていたよりかなり心配してくれていたみたいで驚いた。

「何度も電話したのに出ないから、拉致されたかと思った!」

だって。

ちょうど携帯をどこかに放置して、連絡も取れなったからよけいに心配したみたい。

いろんな友達にあたしのことを相談したみたいで、かなり取り乱していたのを知った。


「なんかお前を好きになった。ケルンに行ったらどうしよう。お金は関係ないから、いっぱい会おう。」

って言ってくれたことにびっくりして信じられなかったけど、すごくうれしかった。

ロバート自身分かっていないと思うけど、何であたしなんだろう?

前と何が違うんだろう?


アンディーが親戚のいるギリシャへ旅立ち、フォルカがテストのためにチューリンゲンに戻った。

みんながミュンヘンを去って、デカダントな生活が終わりを告げた日、初めてロバートと二人きりで語り合った。

そして初めて本当のロバートを知った。


ロバートが自分のことをextrem,extremと言っていた意味がようやく理解できた。

それは彼が、常に人の何倍もの量のことを、何倍ものスピードで考えているから。

医学的に~症候群と位置づけられている子供として生まれ、生まれつきものすごいエネルギーと才能を持っている。

ロバートの手がいつも熱いのも、エネルギーがあふれている現われだという。


ロバートの場合、「考える」ことによってそのエネルギーを発散させなくてはならないらしい。

何を考えているかというと、哲学的、社会学的な思想。

常に批判的精神で社会批評を展開しているという。


ロバートは普通一般の人々を「さわやか」、自分を「変」と定義して区別している。

彼の話を聞いて、その考えも無理がないと思った。

普通の人と能力がぜんぜん違う。


「さわやか」な人たちが、みんなと同じように、言われたように、何の疑問も持たずに毎日同じことを繰り返している一方で、彼は常に独自の感性から、常に違うこと、新しいことに没頭している。

だから法学部にもかかわらず、全然勉強しない。

しかしテストには合格する。

それは集中力と能率が信じられないほど優れているから。

普通の人が8週間かけて準備して、ちょっといい点をとるところを、ロバートの場合、1,2週間の準備で、いい点をとらないにしてもとにかく合格する。


普通の人が考えてからものを言うのに対して、彼は人の話しているうちからすでに自分の論理を発展させていくことができる。

だからいつ意見を求められても、即座に完璧に答えることができる。


彼の理論の一部を垣間見ただけでも、そのアイディアの独自性、緻密な理論構成に圧倒させられた。

決して独りよがりに陥らず、視野が広くてバランスが取れているからまったく隙がない。

それは他人や物事を批判的に見るのと同時に、常に自分自身も疑っているから。


たとえばextremに考えることによって必ず偏見が入ること、思考がバッファオーバーフローしてたまに人の話を聞き漏らすことがある、という欠点もちゃんとわきまえている。


彼の見解では、人間の50%は生まれつきの性質、もう50%は環境から成り立つという。

特に彼と同じ症候群に属する子供にとって、環境がその才能を伸ばし成功するか、抑圧されたままおかしくなるかを決定するので、大きな意味を持つらしい。


不幸にしてロバートは自然化科学が発展し、重視されるミュンヘンに生まれた。

とくにOttobrrunは自然科学を専攻したアカデミカーが多く住む、保守的で固い地域。

ロバートの持つGeistwissenschaftlich(精神学的)才能は理解されにくかった。

子供のころからロバートは理解とサポートを得られず、一人考えることによってしか、そのエネルギーを発散するすべがなかった。


ロバートが、北へ、ケルンへ行く意味がようやく分かった。

理解者に出会い、自分の才能を解き放つため。

これ以上バイエルンにいたら、やがて壊れてしまう。

内側からあふれ出るエネルギーを、どういう形でかたちにすべきか彼自身にも分かっていない。

それを知るためにも、Kunstler(芸術家)に出会うことが必要だと考えている。

おそらく哲学書をあらわすとか作家になるのがいいのかもしれない。


新のロバートを知って、衝撃を受けた。

こんな人間が本当にいるんだ。

これがいわゆる天才。


矢印の方向が違う。

あたしは今まで、すでに完成されている学問を、芸術を、何の疑問も持たずに受け取っていた。

でも彼は、何もないところから生み出すことができる人。


思い当たることがあった。

ロバートはへんな日本語をいっぱい知っていて、どう考えても日常会話で出てくるものじゃない。

ロバートは日本語の本を読まないし、どこでそんな言葉を知ったのかと聞いたら

「自分で調べた」

って言う。

でもドイツ語にもないような表現だったりするので不思議に思ったけど、特に追求しなかった。

でも今意味が分かった。

あたしが外国語に出会って、その意味を調べるのと逆のことをしている。

まず概念があって、そこに言葉を当てはめる。

だからこそたまに変な日本語になっているけど、それは新しく言葉を生み出すのと同じこと。


普通の人が一次元で考えていることを、ロバートは二次元、三次元で考えている。

「どう思う?」

って聞かれて何も答えることができなかった。

あたしは普通の人間だから、理解して、考える時間が必要だから。


でもたとえ時間がたってもやっぱり答えることができない。

それは彼の理論に反論する隙も、付け加える余地もないから。

圧倒されるだけ。


だからこそなんであたしでいいんだろう?

「お互いを成長させる恋愛」が理想的だというけど、レベルが違いすぎてまったく彼の思想の役に立たない。

今まで以上に自信を失った。


「お前はさわやかでもないけど変でもない」

って言われてじゃあ中立的なのかな、って言ったら

「違う、お前は単純なだけ」

だって。

たしかに単純以外の何者でもない。


でもどうして自分がこんなに単純なのか分からない。

物事を批判的に見ることがどうしてもできない。

肯定的に受け止めることのほうが大事ってずっと思ってきたけど、それもどうしてか分からない。

批判的に見れば、現状に甘んじることなく、常に改善、前進ができるのかもしれない。

でもそれってしんどい生き方。

あたしのように単純で能天気な生き方は、社会に何にも貢献しないかもしれないけど少なくとも自分は幸せでいられる。

どっちがいいのか分からない。



南部ではカーニバルをFaschingと呼ぶ。

といってもバイエルンではケルンやマインツのような北の都市ほどの盛り上がりを見せない。

それでもパレードがあるとかで、現地在住の日本人に誘われてミュンヘンに行った。


たまたまFaschingdienstagといって一番盛り上がる日だった。

いろいろな仮装をした人たちが街にあふれかえっていて愉快だったけど、パレードとかそういったものはなかった。

これは日本の祭りと一緒で、見るよりやるのが楽しいんだろうなー。


友達の家に向かおうとしたところで、前からカメラを首からぶら下げた、典型的観光日本人の姿が目に入った。

あれ、なんか見たことある。

と思ったら東京の大学のドイツ語の先生だ!!


別に特に仲がよかったわけではないけど、せっかく会ったというので一緒にお食事をすることに。

おごりというのでこっちものった。

友達にお勧めのバイエルン料理のお店を教えてもらい、遅めのランチ。

しかし、先生かっこ悪すぎ!

生徒の前だというのに値段にびびり過ぎ・・・。

「あ、高いなー、これ。好きなもの選んでいいけど、このページからにしてね!」

「半分こしよう。そっちも一口くれる?」

とかおっさんに言われるとなんだかこっちが切なくなってしまった。


特に実りある会話ができたわけではないけど、お腹は満足して偶然の再会にお別れ。

ドイツで起こった一番奇妙な出来事だった。


ミュンヘンといえば、今ロバートが実家にいる。

もしかしたら会えるかも、というのがミュンヘンに来たほんとの目的。

電話したら

「今ミュンヘンなの?会おうやー」

ということに。


友人宅の訪問もそこそこに、9時にロバートととの待ち合わせ場所、Marienplatzへ。

日本語で話せるとはいえ、やっぱり気の合わない友達と過ごすより、ドイツ人ロバートといるほうが楽しいや。


何度も来たことのあるMarienplatzだけど、なんだか今日は違う。

粉々にちったガラス瓶や紙ふぶきから昼間のばか騒ぎがうかがえたけど、今はもうひっそり静まり返ってる。

でも一番新鮮だったのは、ここでロバートと待ち合わせて、ハグしてキスしたこと。


友達と車で来ているとかで、ロバートの実家まで乗せていってもらうことに。

「日本人の彼女に興味心身だから」

って言われてちょっと緊張。

ちょっとラテン系のアンディーと、色素が薄くてそばかすがかわいいフローを紹介された。

二人ともゆるめのB系で、一目でさわやかドイツ人タイプじゃない、と分かった。


ロバートのうちはミュンヘン郊外のOttoburnnにある。

高速を走ってしばらくして閑静な住宅街へ。

一見普通の玄関から一歩踏み入れて唖然としてしまった。

父親が大学教授だっているのは知っていたけど、これは想像以上・・・!

もはや城だった。


床も壁も大理石で、10人がけの食卓、応接セットが2組、さらにグランドピアノまである。

調度品もこれでもかと言うほど超豪華。

日本マニアを感じさせる、高級そうな日本美術があちこちに飾ってある。

さらに地下にも日本美術コレクションルームや、お母さんの出身国ブルガリアをテーマにしたバーまであった!

ウェーバーさん宅のようなさりげない上品さはなくて、こてこてというほど金がかかった家だった。


アンディーとフローはちょっとしてから帰ってしまった。

フローと二人で話す機会があったけど、穏やかで優しい人だった。


二人が帰ったあとでロバートから何話してたの?って聞かれた。

「アンディーとロバート何してるのって聞いたらマリファナ探してるって言ってたから、日独マリファナ事情について話してたよ。」

って言ったらロバートちょっとあせる。

「あいつ余計なことを!」

ってあたしに知られたくなかったみたいだったけど、別にこっちは驚かなかった。

まあそうだろうなあ、というかんじ。


地下の貯蔵庫に恐ろしくたくさんの日本食品が保存されてたので、夜食にカレーを作ることに。

カレーなんてルー溶かすだけだから誰でもできるのに、ロバート感動。

和食大好きだからほんとうにうれしいらしい。

「料理がうまいから、前より好きになっていってる」

って言ってドイツのことわざを教えてくれた。

Liebe geht durch den Magen

というんだって。

単純!


料理中に、アンディーとフローについて話してくれた。

ロバートの親友だからどうせ変なんだろうなあ、と思っていたけど想像以上!


アンディーはHypochonder(心気症)で、いつもどっか病気だと思って大げさに騒いでるらしい。

一時間もお風呂に入るのが日課で、バスルームはクリームやらなんやらケア用品が女の子みたいにずらーっと並んでいるらしい。

そしていつも待ち合わせに遅刻するか、来ない。


フローはといえば、いつもvertraeumt(ぼーっとしてる)なコンピューターと数学オタクで、ロバートとアンディー以外、こちらの世界とほとんどコンタクトがないらしい。

3人の中で唯一の朝型人間、というか朝しか起きてなくて午後からずっと寝てる。

さらにいつも財布を持ってなくて、人にたかってるSchnorrer(たかり)らしい。

料理が趣味でいつも何か作ってるけど、材料は全部アンディーの。

しかもしゃべり方もbuerokratisch(政治家っぽくて偉そう)。

彼の夢はヒッチハイクとタクシーを一つにしたビジネスを展開することらしく、いつもそのことについて語っているんだって。


さらに二人とも一度もまともに女の子と付き合ったことがない!

アンディーは一度だけ逆ナンされたことがあるけど、一晩でポイされてそれ以来女の子が怖くなってしまったとか。

大学の1ゼメスター目の最初の授業で、女の子と目が合ったらしくそれ以来怖くて一年間大学を休んだらしい!

フローはそんな話もなく、ほんとに経験してないみたい。


二人ともあまりに変だから、3人の中ではロバートが一番普通なんじゃ?と思ったら本人曰く

「俺が一番変」!

ミニマルオタクで一日中パソコンに向かってミニマルをダウンロードしていて、いつもスケベな話と親父ギャグばっかり。

80年代とダサいものをこよなく愛しているところもやっぱり変。


いつも3人で一日中アンディーの部屋にいて、ロバートはダウンロード、フローは寝てるか料理、アンディーは薬飲んだり体をケアしたりして過ごすらしい。

変なドイツ人と知り合えるのを期待してたけど、これはもう期待以上!!

3人そろうともはやマンガだ。


次の日朝早くロバートはプラクティクム。

Karlsplatzのすぐ近くのものすごく古くてでかい建物が実は裁判所だった。

そこで裁判官のお手伝いをするらしい。

あほに見えてやることはやってるから尊敬してしまう。


家に帰ろうと思っていたけど、

「買い物でもして終わるのまってて!」

って頼まれたから1時までミュンヘンをふらふらしてた。

やっぱりミュンヘンは都会。

ちょっと東京っぽくて楽しい。


プラクティクムが終わってから二人でごはん食べて、アンディーのうちへ遊びに行った。

評判どおりというか期待通り、アンディーは風邪風邪騒いでた。

薬飲んだり、お茶飲んだり、ドロップなめたり、いろいろしてた。

その一方でマリファナ吸ってるからなー。


そしてロバートはほんとにずっとひとりで楽しそうにミニマルをダウンロードしてる。

聞いた話どおりで面白かったけど、あたしは何していいのか分からず座ってた。


アンディーに気を使っておいとますると、ロバートからもっとドイツ語しゃべれって怒られた。

ロバートの前だとなんか恥ずかしくなっちゃうけど、たしかにこれじゃいつまでたってもうまくなんないや。

せっかくドイツ人の彼氏いるのに。


結局ロバートの家に二泊した。

広いからロバートも寂しいのかな?

また週末に来てって言われた。


前よりずっと仲良くなったし、ロバートもあたしのことを好きになってくれてる。

でもやっぱり自分に自信が持てないよ。

あたしのこと何にも知らないから、もっと話してって言われても話すことない。

みんな変だから、あたしも変なのを期待されるけど、ほんとに平凡なんだもん。

今まで好きって思っていたことも、ロバートの前ではすごくくだらないことに思えてきてしまうし。

今までこんなに自分の世界もった人たちと付き合ったことがなかったから、自分の表現の仕方に困る。

さらに今まで恋愛において考えたこともない、家格の違いについて真剣に悩んでしまった。

住む世界が違う!








4月から一年間、交換留学生として大阪に行く、ゲオルクと知り合った。

大阪といえばやっぱり突込みが大事。

なんでやねん(Was geh's denn ab?)

何ゆうとんねん(Was erzaehlst du denn?/Was larbernst du?)

ありえへん(Krass/Ich glaub's kaum)

などなど。


ゲオルクは23とは思えない童顔のかわいいドイツ人。

あたしが突っ込みを教えたらあぜんとして

Ich ziehe vor dir meinen Hut.

(敬意を表します・脱帽しました)

と言われた。

全然ニュアンス分かってなかったけど、かなり

bosehaft(いじわる)でSpitze Zunge(毒舌)なんだって!


夜にロバートに会ってそのことを言ったら、

「そりゃそうだ!さわやかな人に言っちゃだめって言ったじゃん!」

だって。

おいー!


なんかロバートといるとそんなんばっかり。

今日新たに覚えたのは


’s larbernst du,fuer'n scheiss euda!

くだらねえこと言ってんじゃねえ!


Lass die faule Witze!

寒いこと言うな!


Halt die Klappe!

だまれ!


Alter

おまえ


das Ferkel

すけべ


der Wichser

やなやつ


der Zocker

ゲーマー


産婦人科の話をした。

もうピル飲んでるのかと思ってたけど、生理の日から始めなくちゃいけないことを言ったらちょっとがっかりしてた。

あと2週間はあるから。


検査受けて妊娠してなかったことを言ったら当然喜んでたけど、

「よかった。まだ若いから自由でいたい。だから責任取れないし、取りたくない」

ってさらっと言われて唖然とした。

普通そんなこと言うか?


これにはさすがに切れた。

ロバートに悪気はないから、あたしの態度の変化にうろたえてる。

そんなこと言われたら許せないのが分からないのは、ドイツ人だからか?男だからか?


「ゴム付けてって言ってるのに、今までさんざん生でやっといて責任取れないってなんだよ!?まじありえない!だったらエッチするな!」

って言ったら

「そうなったら責任は取るよ。義務だから」

「生むか下ろすかはそっちに任せる。でもどっちにしても・・・分かるでしょ?」

だって!!

そんなこと平気でいえることが信じられない。


ロバートの気持ちは分かる。

と言うかそれは感じてた。

妊娠という事態を受け止められるほど器の大きい男ではないし、間違っても結婚というかたちの責任のとり方はしない。

たぶん大部分の男が同じように考えてる。

わかっててても、実際に言われるのとは別だ!


「最低。最悪。頼りなさすぎ!」

って責めても

「これはもって生まれた性質だから。仕方ない」

だって!

本気でありえない、こいつ。


「でもZusammenでしょ?」

って必死であたしをなだめようとするけど、ほんとに分かってない。

ただ気分を変えてそのことを忘れればいいと思ってる。

根本的な解決をしようという発想がない。

今までほんとに女の子とまじめに向き合ったことがないんじゃないかなって思った。

そんなところにまたあきれて、腹が立った。


ほかにどんないいところがあって、どんなにそこに惹かれても、こんな大事な部分が欠けていたら無理なんじゃないかな。

「こんなだめ男と付き合ってても、この先いいことない気がする」

って言ったら、いいことをいいところと思ったみたいで、

「いいところはある。Leidenschaft(情熱)」

だって。

こないだけんかしたとき機嫌が直ったからって

「好きだよ。」

を連発。

ほんとに分かってない!!

機嫌取るのに疲れたら逆切れしそうな気さえした。


「気持ちは分かるけどそれを言うな。まじしらける!」

って言ったら

「分かった。正直すぎたからこれからは正直に言わないようにする」

とか言ってるし。

そういうことじゃなくて、気を使えってこと。

もっと大事にしろってこと。

気を使うって意味が伝わらなかったから

「ようはムカつかせるなってこと」

って言ったら、あまりに自明なことにはっとなってた。

これから気をつけるって言うけど、ほんとに分かったのか分かんないから、ドイツ語で言ってもらった。

Umsichtig seinというんだって。


この男に今何を話してもわかんないというあきらめで、今日はこれ以上このことを話す気がなくなった。

「ほんとがっかりしたわ。今までこれくらい好きだったのが今はもうこんくらい」

って手で棒グラフを作って半減した気持ちを見せた。

そしたら

「俺は逆!前より好きになった」

って言った口調が、機嫌取りとりという感じではなくいつもの正直さからだったからびっくり。

そうなんだ!


それ以来ロバートがちょっと変わった。

今まで無神経に何でも言ってたけど気をつけるようになったし、やさしくなった。

そしていっぱいほめてくれるようになった。

言葉で愛情を伝えるってことを日本人の男はしないから、それは素直にうれしい。

前より好きじゃなくなったって言うあたしの言葉を気にして、何とか挽回しようとがんばってる。


また週末を家とスーパーだけで過ごす。

音楽とゲームとごはんと寝るだけ。

ほんと不健康でdekadent(退廃的)な生活。

「ドイツ人の女だったらいつもすぐ文句を言うけど、お前は違う」

ってうれしそうに言われたけどそれってほめてる?


相変わらずロバートのことは好きだけど、あの点はいまだに許せない。

そのせいで気持ちが減ってしまったし、期待もしなくなった。

元彼を思い出して比べてしまったり。


でもロバートの気持ちは着実にあたしに向き始めてくれてるのかな。

前は今を楽しく、先のことはKeine Ahnung!としか言わなかったのに、

「今度二人で~に行こう」

とか

「夏になったら~しよう」

と言ってくれるし、まだ半年以上先のあたしの誕生日をスケジュールに登録してくれた。

そういうのは素直にうれしい。

そしてあたしの名前をタイトルにしたミニマルを作っていたことにちょっと感動。

向き合うことで、ロバートの人間不信からくる壁を壊せたらいいな。



土曜日はニュルンベルクにワールドカップボランティアの面接に行った。

事前の連絡もWillkommen!って感じでみんな合格なのかな?とは思ったけどやっぱり緊張。


前の人が長引いて予定よりちょっと遅めにスタート。

面接官はおじさん一人。

とっても朗らかでユーモアたっぷり。

すぐに大好きになっちゃって、リラックスできた。

ゆっくり分かるように話してくれて、外国人であることにとても気を使ってくれた。


進められた仕事はインフォメーション係。

ワールドカップの開催期間にやってくる観光客の質問に答える仕事らしい。

応募用紙に言語能力として日本語、英語、韓国語と書いていたから一番適していると思われたみたい。

しかし、英語も韓国語も実際は最低限レベル。

とても観光客案内とか無理!

英語ができないのはすぐに見抜かれたけど、

「心配しないで大丈夫。必ず英語のできる人とペアになってもらいますから」

っていわれて安心。


しかし

「日本人はもう何人か採用したけど、韓国語のできる人は初めてです。日本人と韓国人がいっぱい来るのは確実だから大変助かります」

と言われ、青ざめてしまった。

韓国人いないのかよ!

春休み予定外に韓国語勉強しないといけないな・・・。


結局1時間近くかかった。

朗らかに握手して面接終了。

「これからよろしくね」

「こちらこそ!」

という感じだったので受かったみたい。

ドイツ語のひどさを考えると、ほかの場合ではありえないな。。

でもすごく楽しかったし、とにかくうれしい!


へとへとだったけど、帰ったらロバートの家へ。

昨日ミュンヘンの実家から電話があった。

「今日の夜に帰ろうかと思ってる。ただし、そっちに特に予定がない場合。用事があるならこっちに残る」

って言われて、あたしに会いに帰ってくるんだー、とうれしくなっちゃった。

でも次の日にニュルンベルク行かなくてはならなくて、あんまり時間もないし、会うのはやめることにした。


ロバートが実家から大量の漬物を持って帰ってきていてびっくり!

福神漬けとかしそにんにくとか、ツボ付け、さらにソフトさきいかまで・・・。

お母さんが買ってきたのをとってきたらしいけど、お母さん、渋い!

ロバート自身も好きだけど、あたしが喜ぶと思っていっぱい持ってきてくれたんだって分かった。


友達からもらったという新しいミニマル聞いて、ブラックミラーして、お酒飲んでいつもどおり楽しく過ごす。

金曜日にフミと産婦人科に行って、予約してきたことは言えなかった。

重くないからこそ、今こうしてちょっとづつあたしのこと考えてくれるようになってきたんだと思うから。

フミは

「お金は全額出してもらって、産婦人科にも一緒についてきてもらうのが当然!」

と言ってたけど、絶対そんなこと言えないよー。


いつもどおり、日曜日も一日中家から出ないで、テレビ見て、ゲームして、テクノ聞いてた。

月曜日は大学って行ってたのに、朝になってもロバート起きない。

さぼるらしい。

家に帰るタイミングを逃し、この日も一日中ロバートと一緒にいた。


なぜか最近ペーターから飲もう、とか映画に行こう、とか誘われる。

すでに3回も断ってて、またっていうのは気まずいなー、とメールの返事に困っていたらロバートから突っ込まれた。

相手が男だって分かって、

「断ってね!」

とか、ペーターのことをNebenbuhler(ライバル)と呼んだりして、反応がちょっとうれしかった。

ロバートのことがなくても普通にペーター断るんだけど・・・。

ごめん、ペーター。


ペーターはちょっと特殊だけど、カティーやシュテフィー、シュテファンなどなど、あたしの周りのドイツ人ってみんなさわやかですごくいい子。

人間的に尊敬するし、やさしくていつも気を使ってくれて、大好き。

それなのにやっぱり心から仲良くなれてない。

どっかで自分を偽ってて、緊張してる。

素の自分はみんなみたいにさわやかではないから、あわせて笑っているとしんどくなってくる。


それでも一緒にいれてうれしかったし、誘ってくれたらいつでも会ってた。

でもロバートと付き合いだしてから、無理してる自分に気づいた。

それをロバートに話したら、ロバートも同じことを感じていてびっくり。

バーバリアン(ミュンヘンとその周辺)の大学生はみんなさわやからしい。

ロバートとも当然合わず、ドイツ人と付き合うときは彼も無理をしてきたらしい。

だからミュンヘンから逃げ出して、大学生でも変な人が多いという、ケルンに移るんだって。


さわやかな人と合わないところとか、観光に興味ないところとか、変だけど大事な部分が不思議と共通してる。

外国人で、育った環境も文化もまったく違うのに、すごく共感できて不思議。

そして会ったばっかりのときからその波長はなんとなく感じてた。

でもロバートに

「ほかの日本人はみんなさわやかなのに、一人だけ違うと思った。オーラで分かる」

って言われてびっくり。

やっぱり類は友を呼ぶのか?


ようやく産婦人科の話をしたけど、

「彼氏がついていくとか変に思われるから絶対やだ!」

って言われた。

この話になると、なんかわたわたして頼りない。

自分が言い出したくせに。

ただ自分が気持ちよくエッチしたいだけ、っていうならお金は出してくれないから、これは相手の本気度を測る試金石だと思った。

うろたえ気味ではあったけど、半額出すとは言ってくれた。

でももっとしっかり、落ち着いて構えてほしかった。

 

さらに親父ギャグ連発で、真剣に取り合ってくれなくなって、だんだんへこんできた。

それは態度に出て、すぐロバートに伝わった。

「何が悪かった?言って?お願い」

と言われたけど、言いたくても言えない。

具体的に何が気に障った、とかじゃないから。

ただあたしばっかり本気で、ロバートの気持ちが軽いのがいや。

ロバートに悪気はないのは分かってるけど、何気なく口にする言葉にそういうものを感じて不満を覚える。


「もういい。理由わかんないから」

って言っても無理してると思われてる。

「日本人ははっきり言わないで、怒りや悲しみを隠す」

っていう偏見どおりに受け取られたくなかったけど、ほんとに理由がはっきりしてなくて伝えることができなかった。

あたしが泣きそうになったから、ロバートも困っていっぱいキスをしてくれたり、抱きしめたりしてくれた。

けどやりきれない気持ちはどうしようもない。


"Vertragen wir uns wieder?"(じゃあ仲直りね)

って言って無理して笑ったけど、やっぱりきもちはもやもや。


お皿を洗いに台所に立って、ようやく自分の気持ちが分かった。

心配そうに後ろから抱きしめてくれたロバートに

「あたしのこと好きじゃなさそうだから悲しい」

って、素直な自分の気持ちを伝えた。

ロバートは一瞬なんだかわかんなくてびっくりしてたけど、なんかあわてた様子で

「好きだよ、素直に出さないだけで。毎日会いたいくらい好きだよ。」

って言ってくれた。

なんかその態度がほんとに素直で不器用で自然で、信じることができた。


あたしって単純。

それだけ聞いたら心からまたハッピーになっちゃった。

ロバートもそれを見てちょっと苦笑してたけど、うれしそう。

今度こそほんとに仲直りして、仲直りエッチ。

と思いきや時間がない!

最後まで行く前に、産婦人科に走った。


時間ぎりぎりに到着。

大体ドイツで病院に行くのも初めてな上に、ピルもらいに行くなんて・・・。

緊張したけどしてる余裕もなく、あっという間だった。


よりによって医者は中年のおっさん。

めちゃめちゃ手際よく診察を進める。

あんまりあっさり

「じゃ、下の服脱いで、診察台に乗って。両足これに乗せて開いて。」

って言うから恥ずかしがってる暇もなく、あぜん、としてる間にすべて終わった。


とりあえず今まで散々生でやっておいて、妊娠もしてなく、子宮・卵巣ともにベストな状態らしい。

特に詳しい説明もないまま処方箋をもらえた。


ほんとにドイツに来て、考えもしなかった新たな経験をしてるなあ。



2月14日はバレンタイン。

なんだかんだいって毎年チョコ作ってたなあ。

でも今年は次の日がテストということもあり、その予定まったくなし。

ドイツだし、チョコなしでもありだよね~と開き直る。

大体ロベルトがそういうイベントに興味あるとも思えなかったし。


ところが意外にも、ロベルトのほうからバレンタインのことを言い出した。

「バレンタインデーだから二人で過ごそう」

って、バレンタインは日本のクリスマスみたいな感じなんだ。


ドイツのバレンタインって何するのかとかティーにも聞いてみたら、とりあえず二人で過ごせばいいらしい。

カップルによっては小さい贈り物を交換したり。

カティーとシュテファンは一緒に料理をするって言ってた。


ロベルトにバレンタインって何するのか聞いてみたら、

「愛する」

だって。なんだそりゃ。

「ロマンチックに過ごそう」

って、ロベルトが言うからおかしくてばかうけ。

とりあえず外でごはん食べて、そのあとロベルトの家に行こうということになった。

意外にロベルトがのりのりでうれしい!


二人で外に出かけるのって考えてみたら付き合ってからは初めて!

なんか緊張してどきどきした。

今度こそデートだ~!


二人で初めて行った中華料理店で食べようとしたら、あいにく満席。

結局アルトシュタットのイタリアンでピザを食べることに。


なんとあのロベルトがプレゼントを用意してた!

Lindlのチョコレート。

チョコを上げるのが日本流だけにお株を奪われた。

しまった、なんかやっぱり用意すればよかった。

「指輪じゃないけどね」

って言われたけど、あたしのために何かを選んで買ってきてくれたってだけでうれしい。


あたしはなれない状況に緊張しっぱなし。

今まで道で手をつないだこともない、日本流あっさりカップルだったけど、この日は少しドイツっぽくお店でキスしたりした。


しかもバレンタインということでロベルトのおごり。

ほんといい日だなー。

しかしやってしまった。

プレゼントをテーブルにおいたまま出ようとして、ロベルトから

「忘れ物ない?ちゃんと見て!」

って注意された。

すっかりそのこと忘れてて、

「えーないよー」

といってから気づいた。

しまったー!

ちょっとロベルト不機嫌になって、そのあとは冗談でだけど家に帰るまでおこってていびられた。


ほんとは二人でミュンヘンに行きたかった。

ロベルトが明日からプラクティクムでミュンヘンに帰るらしく、そのうえちょうど両親がいなくて家が空らしい。

「うちで過ごそう」

と誘ってくれたけど、あいにくよりによって次の日の朝テスト。

それでもやっぱり行きたかったなー。

実家に呼んでくれるってそれだけで特別な感じでうれしいし、ロベルトがどんな家で育ったのか興味ある。

大学教授の家ってところも気になるー。

次に別の機会があればいいなあ。


ロベルトの家では相変わらずテクノとゲーム。

ロベルトが前回ミュンヘンから買って帰った変なアドベンチャーゲーム「ブラック・ミラー」(名前がもうダサい)に最近二人してはまってる。

そういえば今日のテーマはロマンチックなのに、いつもと全然変わらなかった。

でもなんからしくて楽しいバレンタインだった。


寝る前にロベルトと話をしてちょっとむかついてしまった。

「ドイツでいろいろ経験してね。日本に帰ったら変なドイツ人のせいで他の人と違っちゃってるかもね」

という何気ないロベルトの言葉がひっかかった。

ドイツにいるときだけの付き合い、といのが前提になってる。

ロベルトはそのつもりだってうのは分かってたけど、やっぱりいやだった。


自分が相手を思う思いと不釣合いで、むかついて、悲しくて、不機嫌になってしまった。

ロベルトは

「何が悪かった?言ってほしい」

って聞いてきたけど、何が悪いってわけじゃなく、ただあたしが不満なだけ。

だから理由説明できずに

「なんかむかつく!」

とだけ言ってた。

そしたら

「それなら決めて。それでも変な俺と付き合うか」

って言われてますますへこんだ。

どうでもいいんだ、あたしのこと。


たまたまほかに該当者がいないところにがんばってきたから、あたしと付き合ってるだけなんだっていうのは分かってる。

だからこそケルンに行って新しく好みの女の子に出会ってしまったら、あたしにもうチャンスはない。

不安。

どうしたら好きになってくれるんだろう。


次の朝早くロベルトはミュンヘンに。

ちょうど同じ時間に出かけることになった。

ぎりぎりまで一緒にいたから会場に着いたのは直前であせった。


最初にLesen、次にHoeren。

昼休みをはさんでSchreiben、最後にMuendlich。


意外にも思ったよりはできた気がする。

Probeや練習問題が難しすぎだったのかもしれないけど、大体内容理解できたような。

ただMuendlichだけはあいかわらず全然だめ。

時間を気にしないで練習してたから、目測誤りすぎた。

全部のパートでレベル3以上とらないと合格できないから、微妙なところ。


でも何度か繰り返せばそのうちできるようになるのかなー、という希望がわいてきた。

次回は4月。

二ヵ月後。

この間に集中的に会話を練習しよう。

てかドイツ人の彼氏と日本語会話っていうのが間違ってる。

でもいまさらドイツ語をロベルトの前で話すのって照れくさくなってしまった。





週末は膨大な宿題に追われた。

本来は一時間で書き上げなくてはいけない独作にまる一日かかっちゃった。

普段から環境問題、政治問題、社会問題を特に意識して考えないから、「自分の意見を!」って要求されるとお手上げ!ってなってしまう。

なんだか高校のときの小論文模試みたいだ。


意外にも土曜の夜、ロベルトから電話が。

ミュンヘンから帰ってくるって!

クラブでミニマルパーティーがあるから一緒に行こうっていうことになった。


宿題を持ってロベルトのうちへ。

ほとんど一週間ぶり!

ドイツ語スランプ中ということもあり、最初はまたまたぎこちなかった。

実家に親戚が集まっているらしく、窮屈で逃げてきたらしい。

「それにwegen dir!」

って言ってくれたけどうそっぽかったから聞き流した。


実家からくすねてきたというシャンパンで乾杯。

auf dich! auf uns!

ってくさいなあ。

ほろ酔いになってあっという間に流れはエッチに。

ミニマルパーティー流れる。


なんとロベルト、ミュンヘンの友達からコンドームもらってきてた!

初着用。

けどなんかぎこちない。

聞くと4年振りらしい!

前の彼女はピルを飲んでたし、その前は長らく彼女がいなかったんだって。

結局なんかうまくフィットしなくて失敗に終わってしまった。


次の日はあいかわらず昼まで寝続けるロベルトをよそに、もくもくと宿題。

教材はもう普通の新聞記事とかで、単語も内容もまったく理解できない。

結局ロベルト起こして、手伝ってもらった。

というかほとんどやってもらった。

要約とかは日本語でも難しいから、ささっと知的な文章を仕上げるロベルトってやっぱり頭いいんだなあ、と思った。

途中から調子乗ってきて、やりすぎできすぎになって、あたしが書いたんじゃないのがばればれになってしまったけど。


きのうのコンドームといい、いい加減いい加減とはいえ、さすがにロベルトも避妊を意識し始めてくれた。

ゴムは失敗したし、やっぱりピル飲んでって言われた。

ピルを飲むこと自体は特に抵抗はない。

ただ、ロベルトがケルンに行ってしまったら意味ないじゃん!

ロベルトは今だけの関係って思ってるのが分かったから、調子よさに腹が立った。


ケルンのことを蒸し返して、不安と悲しい気持ちで、黙り込んだ。

そしたら

「へこまないで!だってこれはもう前から長いこと考えて決めたことなんだし、しょうがない。」

これからのことについてはKeine Ahnungを連発。

期待はしないでほしいって言われた。

その言葉にちょっと傷ついたけど、同時にむかついてきた。

軽く見てんじゃねえ!


「がんばればいいんでしょ!きっとうまくいくよ!」

と開き直ったら、ロベルトもなんかやさしくなった。

今までは流れに任せる、俺は何もしない、というスタンスだったけど、

「二人でがんばろう。いつでもケルンに来て。俺も会いに行くから」

って言ってくれた。


「でもどうせ半年で日本に帰るんだし、遠恋っていっても同じことじゃん。」

って言われて

「一回帰るけどまた来るよ!」(そのために今勉強してるんだし!)

って答えたら、

「じゃあ今度はケルンに来ればいい」

だって。

どこまで本気か分からないけどそう言ってくれてうれしかった。

ロベルトに対する遠慮とかであきらめたくはないと思った。

あたしの気のすむまで、がんばろう!


結局月曜日の夕方までロベルトの家にいすわった。

不思議なことに、今までの態度をちょっと変えただけでなんだかラブラブになってきた。


まずは相手をほめる。

テクノ興味なかったから「変」としか感想言わなかったけど、もっと肯定的に見るようにした。

そしたらミニマルとかアンビエントとか実際悪くない。

テクノをほめて、ロベルトの変なオリジナルダンスを一緒に踊ったら、変ってけなすときよりずっと楽しかった。


それから長らく染み付いていた、受身をやめた。

日本ではやっぱり女の子は受身のほうが受けがいいから今まで許されていたし、やっぱり恥ずかしいのと楽ちんなのとでずっと相手任せだった。

恥ずかしがるのって結局ぶりっ子。

相手にかわいく見られたいっていうのがどっかにあるけど、ロベルトの場合はただ退屈に感じるだけ。

恥ずかしがってても意味ないし、逆に損だ。


それからいいのか悪いのか分からないけど、無理にドイツ語使わないで日本語で話してる。

当然そっちのほうがリアクションできるから。

そしたらだいぶストレスが減って、リラックスできるようになった。


今まで超あっさりだったロベルトがちょっと変わった。

授業があるからいい加減帰ろうとしたら、引き止めてくれるし、ほんとに残念そうだった。

「さぼってよ。それかその後また来て」

って。

いつもなら別れ際も、じゃ、またねって感じなのにキスできるまでになったし!


勉強教えてもらうのが口実になるから、かえって宿題大歓迎!

やっぱりロベルト大好き。

今の感じでうまくいったら、ケルンに行ってしまった後でももう少し希望が持てるかも。