未来 | Hit or Miss

Hit or Miss

いきあたりばったり

わずか2週間の間隔で再びケルンに旅たった。

Deutsch BahnのAngebotで、わずか59€で最高ミュンヘンからハンブルクを往復できちゃうチケットが毎週土曜日の午前10時から売り出される。

それを利用して、今回はICEで乗り換えなし!という最高の条件だった。


なぜかロバートに対する自分の気持ちが分からなくなってきた。

ノリコの話を聞いた影響もあるし、突然の元彼からの連絡に動揺したのもある。

最終的なところで分かり合うことはできないんじゃないかってあきらめがどこかに出てきたし、将来の見えない恋愛にはまり込む危険も感じてた。

前回経験した到着前の、あの会いたくてたまらないというそわそわ感もなく、彼に会ってむしろ自分の気持ちを確認したいと思った。


大学の授業が終わってからだったから、ケルンについたのは22時過ぎ。

ICEから降りたとたん、夏か!というむわっとした熱気に包まれた。

もう駅に迎えに来てくれていたロバートは、もう薄いシャツ一枚。

一人コートを着ていて突っ込まれた。


ロバートの住むHuerthまでのSバーンが発車したばかりで、次の電車まで30分待つことになった。

一度駅から出て、ドーム前の広場で待つことに。

何度見てもケルンのドームは大きくて大迫力。

でも夜のドームは美しくライトアップされて、なぜかわくわくさせられるような、独特の雰囲気をかもし出していた。


たった二週間なのに、やっぱり再会は感動的。

言葉ではうれしさをうまく伝えることができなくて、目を合わせるのもなぜか照れくさくて、ハグとキスを繰り返してた。

会えば疑問も吹き飛んでしまうや。

やっぱり単純!


2週間ぶりのロバートの部屋はさらにパワーアップしていた。

前回は引越し直後で調度品も最低限だったけど、カーテン、じゅうたん、ライトなどなどが加わり、完成していた。

この部屋に何も知らないで初めて入ったら、絶対ロバートのことをディープな日本オタクと思うかも(まあそうだけど)。


浮世絵の版画、のれん、日本地図、常用漢字一覧表・・・などなど。

さらにパソコンの壁紙が「痴漢注意」のポスターのグラフィックだった・・・。

ガイジン向けの日本語のグラフィックをどこからか見つけ出したみたいで、いっぱい持ってた。

しかも全部変!

「萌え」

「絶倫パワー」

「全裸」などなど下ネタ系・・・。

意味を聞かれたから教えざるを得なく、またさらにロバートの変な日本語語彙が増えてしまった。。


今回は4泊5日の滞在。

なんと言っても今度の目玉はデュッセルドルフ!

ロバートの日本熱もなぜかさらに高まり、意気揚々と出発。


途中で日本人の女の子と偶然遭遇。

見慣れないあたしにちょっと戸惑いながら、Halloとドイツ語で挨拶されたけど、

「あ、日本人です。こんにちは」

と返した。

そしたらなぜか彼女、かなりびびってた。


言葉少なにそのまま別れ、あとからロバートに彼女の動揺のわけを聞いた。

日本人の彼女がいること、誰にも言ってなかったらしい。

秘密にしてたわけじゃないけど、聞かれてないから言ってないって。

でも言えよ!

「これで彼女から逆ナンされなくなったなあ」

って冗談なのか!?


デュッセルドルフとケルンは昔からものすごく仲が悪いらしい。

出発前にロバートの同居人にデュッセルドルフ行きのことを話したら、

「お前ら裏切る気か!」

って言われてびっくり。

デュッセルドルフに着いても、「ミュンヘンから来ました」「東京から来ました」となぜかうそをついていた。

 

ロバートの見解では

「デュッセルドルフはおしゃれで気取ってて、ミュンヘンみたい。日本人以外興味ない。」

だから結局、日本人通りで名高いImmerman Strasseしかいかなかった!

ほんとロバートって極端・・・。


Immerman Strはほんとに日本食レストラン、日本食スーパー、本屋、旅行代理店・・・と全部日本語。

ここは日本か?ほんとにドイツか?と錯覚を起こしそうになった。

普通に日本人サラリーマンが背広で歩いてるし。

デュッセルドルフに留学したら、ここが落とし穴になる気がした。

日本でいう韓国人留学生にとっての大久保か?


道で出会う日本人の女の子はやっぱりおしゃれだし、きれいにメイクしててかわいい。

日本人発見するたびにロバートが

「萌え~」

連発。

使い方あってるし!


デュッセルドルフに行った以外はやっぱりいつもどおり、ご飯作って(デュッセルドルフで買いだめした材料で和食)、食べて、いちゃいちゃして、寝て、映画見て・・・を繰り返してた。

でもこれが一番落ち着くし、楽しい。

二人だけで一日中部屋の中にいても、あきないし、けんかもしない。


それはお互いに気が強いほうではないし、のんびりしてるからだと思う。

「やっぱり性格一緒で合うなー、おれたち。前の彼女とぜんぜん違う!」

とロバートがいつも比較する元カノについて、今回深く話しをした。


17歳から一年半付き合っていた彼女とは、表向き遠恋が理由で6年前に彼女のほうから別れたらしい。

それがもう6年前。

でも別れたあともコンタクトはとっていて、3年後に彼女がロバートのうちに泊まっていったことも聞いた。


「そのときもけんかした。いつも文句ばっかり言ってて疲れた。だからそれ以来彼女とは会ってない。連絡もしてない」

6年間連絡取り合っていたのってやっぱり特別だから、軽くショックだった。


「付き合ってたのは彼女のほうから逆ナンされたから。おれは自分から女をポイすることできないし、やれたらいい、と思ってたから我慢して付き合ってた」

なんだそれ!

ロバートの女の子に対する誠意を疑い出したら、

「でもお前は違う。性格が合う。こんなに好きになったのは初めて。お前に会う前に彼女に会った。それだけ」

って必死で説得された。


まあ過去のこと気にしてもしょうがない。

信用するしかないし、信用できる気がする。


「でもお前日本に帰るんだよな。」

ってさびしそうに言うから

「今それ考え中なの」

って答えたのに、

「そんなこと言っても帰るんでしょ」

って切ないあきらめ顔。

ロバートはドイツに残りたい、って言って結局一年で帰っていく交換留学生との別れを何度も経験してるから。


でもあたしの場合、個人的事情もあり、切実にドイツに残りたいと思ってる。

だからDaF受けてるし。

「親にもそれ相談したんだけど、もう一年いていいよって言われた。一年じゃドイツ語ものにならないの分かってるから。」

って言ったら、思わぬ展開にかなりびっくりしてた。

「じゃあ残って!ケルンに来て!手続きでも何でも手伝うから!」

ってはしゃぐロバートがうれしかった。


さらにロバートに深い感銘を与えたのは、柔軟なうちの両親。

彼らはいい意味で適当で、あたしのしたいことをしてくれることが一番幸せ、といって育ててくれた。

そのおかげ?そのせい?かいつまでたってもあたしは自分の道を見つけられずにふらふらしているけど。

そうやってあたしを信用して育ててくれた両親に感謝している。

だからこそ期待やプレッシャーはまったくないにもかかわらず、彼らを悲しませたくない、喜ばせたいと自然に思えて、それがあたしの将来に対するモチベーションになっている。


ロバートの両親はまったく正反対。

ロバートの将来を全部決めている。

法学を勉強して、いい地位について、いっぱいお金稼いで、ブルガリア人の女(!)と結婚させる。

そしてそれにロバートは反抗できないでいる。


小さいころから転校を繰り返したのもあり、彼には両親しかいなかった。

さらに父親は有名な大学教授。

期待とプレッシャーをずっとうけながら、「失敗したら親の恥」という意識がかなり深いところまでしみこんでいる。

親を気にしすぎなのはロバートも分かっていて、それゆえに苦しんでいるのに、どうしようもできない。

逃げても頭の中で親の存在を拭いきれない。


法学は自分のやりたいことではない。

それでも今までごまかしとおしてきたけど、将来を考えると不安らしい。

モチベーションがまったくないのに、「他人との協力」という、彼の一番苦手とすることが必要になる弁護士として働くことに未来が見えない。


「じゃあ何がしたいの?」

っていう根本的な質問に

「日本で先生になる」

って即答。

これまでも日本でNOVAの先生になるとか言ってたけど、冗談だと思ってた。

ロバートの真剣さにびっくりした。


「自分からしたいと思うことだからモチベーションもある。親にももう話した。でも反対された。」

「日本で先生の地位って高い?」

って心細げに話す様子から、何より親に認められることが彼にとって重要なのが伝わってきた。


「どうすればいい?」

って見たこともない、弱くて悲しくて、さびしい目をしてロバートが聞いた。

彼にもどうしようもできないし、もちろんあたしも何もできないことわかってる、そんなあきらめの目。


「期待にこたえなくちゃっていうプレッシャーで自分を偽っていい子するのは疲れるでしょ。いつか絶対ばれるし!だったらむしろばれちゃえばいい。直接話すとか、何か失敗するとか。無理なものは失敗したって仕方ないんだし。」

って言ったらちょっと驚いてた。

ありえない考えだったみたい。

「たとえば卒業試験に失敗するとか?・・・やっぱり無理、できない」

失敗が許されない家庭環境ってなんて残酷!


「もし失敗しても、彼らはまたその先に道を作る。『俺のため』に。逃げられない」

そしてロバートも結局彼らから逃げ出すことを望まないんじゃないかって思えた。


だから結局、お母さんの望むとおり、好き嫌いは別にしてブルガリア人の女と結婚するんじゃないかな。

ロバートはそれを否定するけど、彼の本性が痛いほど分かって、だからこそ何か現実的でショックだった。

お母さんは

「ドイツ人は強い。日本人はずるい。やっぱりブルガリア人よ」

と言っているらしい。


「じゃあもしかして親にあたしのこと秘密にしてる?」

って聞いたらやっぱりそうだった。

怒られるわけではないけど、首を突っ込んでくるのが間違いない。

あたしを家に招待して、根掘り葉掘り聞き出すのが分かるから、隠してるらしい。

それを聞いてぞっとした。


まだまだ若いし、何もすぐ結婚まで考える必要はない。

でもどこかで結婚がゴールだと思っているから、先の見えないロバートとの恋が不安になる。

もともと家格の違いとか意識してたけど、今回絶対結婚はありえないってことが分かってしまって苦しい。

じゃあこの恋愛はどこに向かってるんだろう?

はやまった考えだっていうのは分かってる。

でもこんなに好きになれる変な人に、人生であとどれだけめぐり合えるんだろう?