ゴルフ直線打法 -3ページ目

目的意識は根拠とその実用性の確認が必要

明確な目的意識がスイング改良の出発点であることは誰にも分かります。この場合には目的意識を具体化する動きの根拠の内容と、これを利用した場合に予期した成果が得られることの確認が必要です。目的意識だけでは、経験的な動きを超える実用的な動きは固め難いのです。

アメリカのツアーに参戦を試みた石川遼選手も、一度は予選落ち、もう一度の場合は、予選は通過したものの改造したスイングが思うように働かず、日々スコアが低下して最後には末尾に近いスコアで終わりました。

この場合、スイングの改造の指針がどのように与えられたのかは分かりませんが、新しいスイングの構造の確認とその有効性の確認がなされないと、単にもう一つの経験的に固められたスイングを採用するだけに止まります。新しいスイングの目的意識を明確化し、その根拠と実用性の確認が必要なわけです。

目的意識が動きを作る

これまでスイングを「直線型」と「回転型」の二種類に分類して来ました。面白いことに、手許の資料でも、様々な見方からスイングに二種類の型があることが指摘されています。

これらの資料は、村上豊著「ゴルフ切り返し打法」(ベースボール・マガジン社1984)、岡田実著「ゴルフスイングの原点」(ミリオン書房1985)、Jim Hardy「The Plane Truth for Golfers」(MacGraw-Hill 2005)です。このことから、スイングに二種類の型があるという見方がかなり一般的なものであることが分かります。

しかしこれらの書物ではとにかく二つの見方があることは示されていますが、何がこのような見方を生むのかについての構造的に明確な根拠が示されてはいません。そこで今回は動きを作る目的意識から二つの見方が生まれることを示してみます。

右腕の動きを中心にしてスイングの動きを作れば「直線型」、左腕の動きを中心にしてスイングの動きを作れば「回転型」になるのです。

このことを確認するには、それぞれ右腕一本あるいは左腕一本でインパクトの動きを作り、これに最も適した体の動きを固めてみればよいのです。それぞれの場合にインパクトの体勢をクラブのフェースが正確に左に向いてボールを押すように体勢を固めてみればよいのです。

このためには机の脚などにヘッドを押し当てて動きを作ってみます。これでグリップの固め方やアドレス時のボールの位置をどこにすればよいかなども決まります。

この事はこれまでにいろいろな機会に確認してあるものですが、始めに上げた書物の場合は、形式的な記述だけで体の動きを作る意図すなわち目的意識が明瞭ではないために、実用化に困難が残る事を指摘して、「目的意識が動きを作る」という事実を強調したかったわけです。

「スイング面」とは何か?:決定版

「スイング面」とは何か?:決定版(09-01-22)念のため
最初の「「スイング面」とは何か?」(06-03-26)の議論に続き、「和魂洋才とシャフト・プレーンの罠」(06-04-10)に至るまで、様々な「スイング面」関係の話が進められました。これらの議論は内容の記述は詳しいのですが、要点の把握には使いやすくありません。そこで今回は「スイング面」という言葉の内容を簡明に捉えてみます。

先ず考えられるのは、この面を破るような動きを排除するスイングの基準面です。ホ-ガンのバックスイング面とダウンスイング面は、このようなものです。

次は、より具体的にスイングの動きそのものを指導する役割を果たす面で、これに沿ってクラブを振ることを要求します。アドレスのシャフトと目標線を含む、いわゆる「シャフト・プレーン」はしばしばこのような使われ方をしているように見えます。

更に一般的なのは、実際のスイングでのシャフトの動きが描き出す面を意味するもので、これはごく一般的に使われているものです。

ここで問題になるのは、これをシャフトの動きが描き出す「曲面」と捉えることの危険です。「曲面」というと、自然になめらかな動きの描き出す面のイメージに導かれます。ところが、スイングでは様々な曲面が次々につながって実際のシャフトの動きが出来上がるのが普通です。その典型が「核心打法」のクラブの動きで、比較的平面的な動きが急角度に向きを変えながら繋がります。

「スイング面」と言われてなめらかな面をイメージするのは危険です。その面を作り出す体の動きの仕組みを捉えなくては、ボールを打つという機械的な仕事の役には立ちません。構造の議論を欠いた「スイング面」の話は、実際のスイングには役に立たないのです。

「核心打法」は何故飛ぶか

「核心打法」の方向性の良いことはヘッドがインパクトで直線的に走ることから明らかです。それだけでなくボールも安定に良く飛びます。

インパクトでヘッドが回転する打法では、タイミングによってフェースが下向きに閉じながらボールに当たったり、上向きに開きながら当たったりします。前者の場合はボールが上がらず低く飛び、後者の場合はボールが噴き上がるように飛びます。どちらも思うような飛びにはなりません。

これに対して「マジック・グリップ」で振る「核心打法」では、フェースの角度が一定のままインパクトを振り抜きます。

このことはどんな特性のクラブを使うかというクラブの選択にも影響します。

方向性も良くボールの飛びも良い「核心打法」に適したクラブで振れば、不安定な飛びに迷うことも無く良い飛びを味わうことができます。

インパクトの動きの練習法

地面に縦の直線を引き、後ろに下がりながらこの直線を消すようにクラブを振ってインパクトのヘッドの動きを確認する練習法が知られています。

この練習法でヘッドの動きの方向性を確認するのですが、このためにはヘッドが地面を削る動きが一点ではなく、直線的な動きを示さなくてはなりません。このような地面が使えない場合には、練習場のマットの上でヘッドを走らせて練習することになります。

手許に週刊朝日の2002年5月の増刊号「ゴルフ」があります。この中に高校ゴルフ部を指導して全国制覇に導くことで知られた齋藤元謙先生の話が載っています。そこでは、練習場のマットの上でこの練習をする場合は、フライパンの底を走らせるイメージで練習すればよい、との説明があります。

一般的に動きを作るにはイメージが大切です。この「フライパンの底を走らせる」というイメージは、インパクトの動きを作り出す上で極めて分かりやすいものだと思われます。

インパクトのヘッドの動きをこのイメージ通りにパワフルに実現させる腕や体の動きを検討すれば、「核心打法」のインパクトの両腕の動きになる筈です。更にこれを強力に支える体の動きを追求すれば結局「核心打法」に行き着く筈です。「核心打法」の直線的なインパクトではヘッドがこのような動きをしているのです。

検討してみて下さい。

脚腰背骨の動きと言うけれど

これまで度々「脚腰背骨の動きで腕を振り、クラブを振る」という表現を使って来ましたが、よくよく考えてみると、この表現はかなり曖昧であることに気がつきます。

先ず両手の指を次々に組み合わせてこれをグリップと考え、脚腰を固定し頭を安定に保ってこのグリップを背骨だけの動きで腕を振ってみます。この場合は肩を左右に振る形のごく小さな動きしか出来ません。グリップを更に大きく振るには脚腰の動きが必要であることが分かります。

そこでこの動きの実験をすると、思わず脚で腰を右に左にと振る動きで背骨を左右に振り、これでグリップを振る気になります。これがいわゆる「体重移動」の動きを生み、腕の振りは「回転型」のスイングになります。

これに対し、「胸を正面向きに保つ」という意識でグリップを振ると「直線型」のスイングになります。

自分の体の動きで試してみて下さい。

体の重心の移動の利用

さて、体の重心の移動の利用と言っても、体の重心のイメージがはっきりしなくては実際の体の動きと結びつけて使うことは出来ません。

体の重心は、立って体を前に曲げれば体の前に来ますから、頭を安定に保ちながらこの点(のイメージ)を動かすことでスイングの肩や腕の動きが能率良く出来る点と考えれば良いわけです。

そこで、実際に両手をグリップの形に握り合わせてこの点を探すことになります。すぐ見つかるのは、左右に動かすことでグリップが楽に左右に振れる点です。

これに対して、この点の左右の動きを押さえてグリップを振ろうとすると、脚腰背骨の踏ん張りでグリップの上下の動きが現れます。この時は体の重心が上下する動きになります。

初めの動きが「回転型」、後の動きが「直線型」で、これらの動きを実用化することで「回転型」や「直線型」のスイングが出来上がります。

こんな面倒な話が何の役に立つのか、と疑問に思われるかも知れません。しかし、重心があてどもなく動くようでは、スイングは安定しません。体の重心の動きのイメージを捉えることでスイングの動きに対する迷いが消え、スイングの実行が簡単になります。試して見て下さい。

体重移動と体の重心移動

体重移動という言葉はゴルフの話に良く登場しますが、考えてみると体重移動と言うだけではこの動きの作り方は分かりません。

何よりも問題なのは、体は動きと共に変形するということです。体を小さな部分に分割して考えれば、体重とは此らの部分に分散しているものであることが分かります。一般に動きと共に此らの部分の配置が変わります。そこで、此らの各部分の重さを体重要素と名付ければ、体の動きで体重要素の配置が変わることが分かります。

このような場合には、散らばった体重要素全体を引っ張る地球の重力は、その瞬間の体重要素全体の重心を引っ張る力と、その回りの体重要素の動きを生み出します。

体重移動と単純に表現されている動きが、実は体の重心の移動とその回りの体の動きとから出来上がっているものであることが分かります。何とも面倒な仕組みです。

実際のスイングでは体の各部はバラバラに動くわけではなく、体の仕組みで繋がっています。したがって、体の重心の移動とこれに伴う体の変形でスイングの動きが作り出されると考えることができます。

この仕組みで考えると、体の重心の移動を適切に実行すれば、それに対応する脚腰背骨の動きが生まれてスイングが実現することが期待できます。

面倒な話になりましたが、このような見方でスイングの動きを見ると「回転型」と「直線型」の構造も簡明に捉えることができます。その話は次回に。

グリーン回りの動き

これまでの話はフル・ショットの動きについてでした。話の最後にグリーン回りで必要になる動きの構造を簡単に捉えてみます。

腕を振る体の動きは直線打法のままにし、通常の直線的な腕の構えから両前腕を少し右に回して振るとフェースが外向きに回った形でボールを打ち、両前腕を少し左に回して振るとフェースが内向きに回った形でボールを打ちます。

此らの場合にボールを打つ力は、フェースに直角の方向とフェースに沿う方向の成分に分けられます。フェースに沿った方向の成分はボールに回転の動きを与え、これで球の動きが曲がります。これらのことを考えて適当に利用すれば、様々な状況に適したショットが得られます。

バンカー・ショットのようにヘッドが地面に触れるショットでは、ヘッドのソールの受ける砂あるいは芝からの押し返しを利用してボールを目的方向に打てるように打ち込みます。

何れにしても、これらの力の有効利用を考えてクラブを振れば、バンカー・ショットも難しくなくなります。クラブのヘッドを下げてパターのように使う転がしも難しくなくなります。

われわれ普通のゴルファーには、漠然と慣れに期待するよりもこのように構造的に考える方が安定して上達できると思います。

インパクトの脚腰の動きの型を決める究極の方法

右の親指を一番上に置いて両手の指を交互に組み合わせ、これをグリップと考えて腕を振ることにします。

まず、肩を右に回してこのグリップを右に振ります。そこからグリップを一気に左に回して振り切ります。これで腰の左への回転が生まれます。以上の動きでは、右に振る動きで頭が右に回り、左へ振り抜く動きで左に回ります。

これが「回転型」の動きの原型です。

次に、グリップを右の一番遠くへ引きます。この動きでは左脚に荷重がかかります。ここから一気にグリップを直線的に左へ引き抜きます。この動きでは右、左の順に脚に荷重がかかって両脚共に踏ん張り、頭は正面向きに保たれます。

これが「直線型」の原型です。

実際に此らの動きの型でクラブを振ってボールを打てば、それぞれ「回転打法」、「直線打法」が実現するわけです。その後は練習次第で結果が決まることになります。方向性と、脚の踏ん張りで地球を押す動きの生むパワーを重視すれば、「直線打法」がお勧めということになります。