今回はkia***さんが「slip派」を自覚するまでの最終段階のpart-3です(注1)。下記の理由から、今回はブリーフの前開き構造の詳細と着用前後の形の変化を先ず説明して頂くことになりました。

kia***さんのケースでは、「slip(欧州型ブリーフ)とブリーフ(米日型)について、前前開きの有無と着用感の違いをどう感じ、どう判断したのか」が重要なポイントになります。


しかし、国内で普通の前開きブリーフに幼少期から馴染んできた者からすると、「ブリーフは穿き上げると、前あき付近の形が大きく変わり、その変化が肝心な穿き心地や下着としての使用感に大きく影響する」と言われてもピンとこないと思います。

またkia***さんから見ると、「前あき部の構造や動きが分かっていないと、slip派を自覚するに至った理由が分かって貰えにくいのでは?」とのことでした。したがって、前開きの構造と構成部品の詳細と着用前後の形状変化について、やはり先ず説明した方が良いだろうとなりました。

ブリーフの前開きの詳細構造と着用前後の形状変化は私達にとっては思いがけない視点です。今回頂いた説明から、従来気付かなかった重要ポイントを知り、納得できるものと思います。

なお、今回の比較に際して、成人後の客観的な目で振り返った考察も加えて頂こうと思いましたが、かなりの長編化しそうとのことでした(注2)。そこで今回は、「slip派の自覚」に結びついた点に限定して記して頂きました。

(注1)kia***さん共々、4月以降も年度替わりでまたもや超多忙となり、upが遅れてしまいました。
(注2)客観観点からの比較と考察は、後日、改めて説明頂く予定です。
 

 以下、kia***さんの本文

――――――――――――――――――――――――――
下記の3-2項までを述べて来ました。今回はslipとブリーフの比較3として、「着用前(平置き状態)の前面デザインの違いが、穿き上げによってさらに拡大すること、またその原因がブリーフの前開き構造にあること」について述べます。

それは今回の内容事項が、着用時の外部印象や穿き心地と密接に関係していること、また、次回以降に述べることを実感的に捉えて頂くために不可欠と思われたからです。

またlin-baelderさんから、「国内では前開きブリーフがごく普通(slipとの併用経験を持つ方はごく少数)で、前開きのデザインや構造を意識する人は少ないはずだから、いきなり3-4項以下を説明しても良く理解して貰えないのでは?」とのアドバイスがあったためです。

これまでの項目内容 


1.Slip(欧州型ブリーフ)派自覚への経緯概要
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12701654353.html?frm=theme
2.周囲反応への対策とその限界
2-1.slip(欧州型ブリーフ)に対する周囲反応

https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12704667816.html?frm=theme
2-2.ブリーフ併用の隠れslip派(対策1)
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12705936851.html?frm=theme  
2-3.ボクサー併称の隠れslip派(対策2)
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12709371780.html?frm=theme
2-4.トランクス併用の隠れslip派(対策3)と対策1への復帰
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12712526892.html?frm=theme

3. Slipと比べたブリーフの特徴と印象(毎日の両者比較)
3-1.形と着用感の相異概要(比較1)

https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12720909528.html?frm=theme
3-2.着用前(平置き)の前面デザインと構造の違い(比較2)
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12729006992.html?frm=theme
https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12788893542.html?frm=theme
 

今回:3-3.穿き上げると拡大する前面形状の違い(比較3)
次回以降:次回は3-4.着用前面の印象:前開きブリーフ vs. 前閉じのSlip(比較4)について述べます。その後は章を改めて、「4.前開きが生むブリーフ特有の感触と穿き心地」について考え、小用時の動作とその後処理、高温多湿時期での軽快性と快適性、裾カットの及ぼす影響:ローレグカットとノーマルカットの違い、汗ばみ・熱籠もりと裾ずり上がりの有無などを比較の予定です。
 
  
(より分かり易くするために図14-15の縮小ピックアップを適宜挿入)

――――――――――

 

前回に続いて、帰国当時に実感し、考えたことを記します。ブリーフとslipとの違いは着用前の形状、着用後の形状変化と着用感、運動時や小用に伴う諸現象(大袈裟ですが:笑)、継続使用に伴う諸変化にまで及びます。そのいずれもが前開きの有無や前開きの詳細構造と深く関係しています。

 

このため今回は、前回「正面の顔つき」と表現(笑)した両者間の構造(これも大袈裟ですが)の異同を少し詳しく見ることにします。

 

8-3-3 着用時の形状変化と穿き心地

(1) 着用前の平置き状態


図14は私が当時着用したのと同系品を比較したものです。包装から出したときの感じ(本記事末の参考図2参照)では、ブリーフも両裾が切れ上がった6角形なので、slipとはそう変わらないと思いました。しかし、ブリーフにはslipと同じ所(①黒字表記)と違う所(②赤字および③青字表記)とがあることに気付きました(全体版-6参照l)。
平置き状態比較

図14ブリーフ(左)とslip(右)の詳細構造比較(平置き状態)。全体版-3の図5https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12709371780.html
の現行品。ウエスト横幅を同一サイズに調整して比較。ブリーフやslipの前面にある縁取りや補強帯を点線で、また中央部の二重(ふたえ)生地の領域を灰色に着色。黒字表記の部位は両者に共通、赤字表示部はブリーフのみに、また青字表示部はslipのみにある構造。

①両者共通の部分(黒字・黒矢印)
(A)中央部の二重生地領域と(B)
一重/二重の境界帯が該当します。ただし(A)
の二重部の幅や形には差があり、(B)の境界帯はブリーフの方が相当に幅広で太く、いかにも頑丈そうです。これは、前開きの形と機能を維持し、型崩れを抑制するためでしょう。一方、slipの境界帯は細くてスマートです。

②ブリーフだけにある構造(赤字・赤矢印)
C)前開き構造の縁取りとその両脇にある(D)一重領域が該当します。どちらもslipにはなく、ブリーフの前開きにだけにある構造で、両者の違いを際立たせています。また、①境界帯が幅広なことと併せて、前面部の形と幅そして着用感に大きな影響と“存在感“を与えます。

平置きBのみ構造
  
slipのみにある構造(青字・青矢印)
E)はslipの前面下側にあるシーム構造で、前開きのないslipの前面に立体性を与えています。ブリーフの場合は前開きの表側と内側の生地がずれることで、同じような立体納性を引き出しています。この「機構」の差やそのための形の差が、両者の着用感にかなりの違いを生み出します。
slipだけの構造


以上のように「構造面」から子細に見ると、一見した感じとは違って、ブリーフとslipの前面にはかなりの違いがあります。また、シンプルなslipと比較すると、ブリーフの前面部のデザインや構造の詳細はかなり複雑なことが分かります。

帰国後しばらくして、初めてブリーフを見た際には、四角形のボクサーやトランクスに比べれば、ブリーフはslipと同類の三角(厳密には六角形)パンツでそう違わないだろうとの感じでした。

(2) 着用すると拡大する両者の違い

しかし実際にブリーフを穿いてみると、平置き状態ではそれ程と思わなかった違いが拡大し、ある意味別物と言って良いほどになるのを感じました。


図15は着用した状態をブリーフとslipで比較したもので、以前掲示のものに図14と同じデザイン・構造上の説明を付け加えています。slipの方は着用前の形(図14)の延長線上にあり、「穿くとそんな感じだろうね」と思われるでしょう。しかしブリーフの方は着用前(図14)と後(図15)で形状が大きく変化することが分かります。また両図の比較から、どの部分が動いてどう形が変わるのかが明確化すると思います。

着用後比較
 
図15 着用状態でのブリーフ(左)とslip(右)の比較。slipでは着用前後で目立つような差がない一方、ブリーフでは前開き構造の各部が動いて形や大きさが大きく変化することに注意。


当時の私はslipメインで、欧州式の横-縦型前開き型(外見は前閉じslipとほとんど同じ)をたまに穿く程度でしたから、このような「人相の変化(笑)」は初めてなので一種の驚きでした。「ウワ~・・ブリーフって穿くとこんな風なの?」との感じでした。


こうして気付いたブリーフの着用後の形状変化をまとめると以下のようになります(slipでは形状変化がほとんどないので寸評のみ記載)。


1)Aの二重生地部(灰色着色部)では着用前は砂時計型(キネ型)です。しかし着用すると、補強帯Bに接続した上側が左右に大きく広がります。しかし、補強帯Bに縫い付けられていない下側の二重領域は、下すぼみになります。これは、「中身」収納に応じて前開きが開き気味となり、表生地と裏生地の重なりが狭くなるためでしょう。この動きによって、2本の前開き補強縁取りCが下に行くほど近づき、前開き構造内のDの一重部が大きく広がることが分かります。

 

穿いたBのみ構造

 slipでは元々CやDがないので、以上の変化は起こりません(下方の添付図を参照下さい)


2)ブリーフはローレグカットなので、裾が太股の付け根より下まで来ます。そうして、鼠径部と太股の付け根を覆う部分にはシワが寄っています。


slipはノーマルカットで裾が鼠径部に沿うので、太股側への生地の張り出しやシワ寄りは生じません。


3)ブリーフを穿き上げるとBの一重/二重の境界帯が大きく曲がります。これはBが上記したような前開き構造内の動きを支えているためで、この境界帯にはかなりの力が掛かっていることを示しています。


一方のslipでは、下の参考図1の比較から分かるようにBの境界線はこうした変化がなく、ストレートなままです。これはブリーフのような前あき構造内の動きがないことと、予め考慮された立体裁断とシームにより、着用収納時に、大きな形状変化を生じないためです。

slip穿く前後2
 
参考図1 Slipの着用前後比較。各部形状の基本が変化しない。

以上のようなブリーフだけに見られる生地とその縁取りや補強帯の動きを図14および15から取り出して実際比較すると以下の図16のようになります。


ブリーフ着用前後
 

図16 図14および15からブリーフについて着用前後を比較。


また、以上の図や記述から分かる着用前後の形状変化を模式化にすると図17のようになります。


着用後模式図
 
 

    図17 着用時のブリーフ前開き部の動きと形状変化


以上記してきたポイントをまとめると、以下のようになります。


(i平置き状態では左図のようであった前あき部の表側生地(赤)と裏側生地(青)が、着用とともにそれぞれ横に大きく伸ばされる。


(ii同時に、二重部になる生地とそれに取り付けられている補強帯と縁取りが、表側生地と裏側生地で逆の方向に引張り伸ばされる


(iii)その結果、表裏の一重部は左右に大きく(ガバッと(笑)広がり、前開きの縁取り部は互いに接近し、結果的に二重部が狭まる。 


以上の動きが、図15とその説明に見られるような各状況を生み出しているわけです。そうしてこれらが与えるブリーフ特有の印象、穿き心地、運動時や小用時の随伴現象、さらには継続使用(穿き込み)に伴う変化等と深くかかわっています。これらについては次回以降、当時の私が感じ、考えたことを記す予定です。
平置き参考図ローコン

参考図2 平置き状態のブリーフとslip(全体版-3https://ameblo.jp/lin-baelder/entry-12709371780.html の図3の現行品)。画像のウエスト横幅を同一サイズに調整。いずれも着用経験がありか着用したものの後継品。詳細構造を見やすくするためコントラストと輝度を下げて比較。カラーや模様の違いによる印象差を避けるためと、幼少期からの着用経緯から、本体が木綿白地のものを比較。図14、15ではS2とB2の両タイプで比較。