参考書の段階を終えて、辞書があれば原書が読める状態を「ブレイクスルー」と名付けることにします。
ブレイクスルーの段階は、伊藤和夫氏の参考書では『ビジュアル英文解釈』や『英文解釈教室』を読み終えたあとに訪れます(その予備訓練として『テーマ別英文読解教室』や『英語長文読解教室』もありますが、これは有益であっても必須ではありません)。
ただし、その前に水準以上の文法力を身につけ、それを使いこなせることが必要です(これを支えるのが『英文法のナビゲーター』と『英文法頻出問題演習 Part1』です)。
だから、伊藤先生の参考書を読むには高校文法をすべて終了していることが必須です。
それに対して、薬袋善郎氏の『英語リーディング教本』はそこまでは要求されません。品詞と準動詞、それと、文を増やす機能をする接続詞・疑問詞・関係詞を理解し、あとは「薬袋方式」に従っていけば基本的な英文については理解できるようになります。
ただし、伊藤氏の参考書が、読了後に「伊藤離れ」してブレイクスルーできるのに対して、薬袋氏の参考書では基本的な英文以外の特殊構文などについて、かなり複雑な手続きを経て理解しなければなりません。その段階が終わり、多読を経て、やっとブレイクスルーが訪れます。
このあたりのことがわからず、「最小限の文法を覚えて多読すればいい」と言う人を意外と目にします。
しかし、「最小限の文法」知識しかないと、複雑な構造の英文では、薬袋氏のようにかなりの分析が必要で、ブレイクスルーまでむしろ距離は長くなります。
たとえば、伊藤氏はよく「andが大事だ」と言います。
andは同じ資格の語や文を並べるはたらきをします。A , B and Cというのが基本形ですが、A, B, and Cというカンマが1つ多い形も可能です。
では、A, B and, …とandのあとにカンマが来たらどう考えたらいいでしょうか?
説明は省きますが、A, B and(, X,) Cという挿入の形だと考えます。
このように、1つの基本形を全体像として身につけ、そこに例外が混じっても返り読みすることなく、処理することできる方法を学ぶ・・・これが「伊藤メソッド」と私が呼んでいるものの核を成しています。
一度英文を読んでみて、その結果として挿入を見抜くのは、ある程度訓練すればできるようになります。しかし、ネイティブスピーカーが処理するように処理するためには、学校で学んだ文法を駆使して、このように文法現象の1つ1つを理屈で処理しなければなりません。
伊藤和夫氏はそのほぼすべてを体系化しました。軽々しく天才などいう言葉を使うべきではないのかもしれませんが、伊藤氏は天才英語教師だったと私は思います。
しかし、現在の学校の学習量では、伊藤氏の参考書は負担が大きすぎるのは事実です。
そこでクローズアップされるのが、薬袋氏を経て、伊藤氏に学び、ブレイクスルーに至るという方法です。
次回でまとめます。
【参考文献】(アマゾンにリンクしています)
ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)
ビジュアル英文解釈 (Part2) (駿台レクチャーシリーズ)
英文解釈教室
英語リーディング教本―基本からわかる