『基本からわかる英語リーディング教本』(以下、『英語リーディング教本』)を中心とする薬袋善郎誌の構文系参考書(ほかに『英語リーディングの秘密』『英語ベーシック教本』がある)の優れた点に次のようなものがあります。
1.文法力が多少不足していている受験生でも大学受験レベルの英語が読めるようになる。
2.水準以上の思考力のある中学生なら、高校生レベルの英文も読めるようになる。
3.複雑な構文でも時間をかければ構造がとれるようになる。
つまり、伊藤和夫氏より短期間で、また早い段階で英語が読めるようになる点で強みがあります。
ただし、ブレイクスルー(前回ブログ参照)の直前まで引き上げてくれる伊藤氏の『ビジュアル英文解釈』などとくらべると到達点は低く、なかなか「薬袋離れ」できないというデメリットを伴います。
しかし、逆に言うと、薬袋氏の参考書で英文の構造分析を徹底的におこなっていれば、伊藤氏の参考書を読んでも、「英語を英語の順番で読む」という情報に集中できるというメリットがあり、スムーズな以降も可能です。
まず薬袋氏がそろえてくれた「道具立て」を習得し、次に伊藤氏が与える道具にすこしずつ入れ替え、また、伊藤氏が示す新しい情報については例文の暗唱とともに仕入れて、伊藤氏の「道具立て」にしてしまうという方法は決しておかしなものではありません。
前回の例でいえば、カンマ1つでそれが挿入の印であることに気づくには、挿入に関する知識とともに並列に関する知識が必要です。返り読みなら簡単にわかることでも、英語の語順で読むには文法に関しては相当の知識がなければなりません。
一見回り道にも思えます。実際、私も以前は難関校受験生やビジネスで英語が必要だという相談者には伊藤氏かその延長上にある参考書をすすめてきました。また、「薬袋氏の参考書の使い方を教えて欲しい」という質問には、基本的な否定的な見解を出してきました。
しかし、考えてみると、現在のカリキュラムで英語を学んできた方たちが読んできた英語の量は、昔と比べるとかなり少なく、たとえやさしめの英文であっても、いきなり読むのには相当の忍耐が必要です。それなりのストレスがあるはずです。
そんなひとも薬袋氏の参考書を読んでおけば、比較的スムーズに伊藤氏の参考書に移れるはずです。
もちろん全く正反対の学習法を組み合わせるのは本来的ではありませんが、「伊藤氏の参考書はどうしても読みにくい」という学習者や、逆に「高校生までに読む楽しさを味わいたい」といった前向きな中学生だったら、この方法は1つの回避方法になるだろうと考えます。
最後に、この2人の参考書の使い方を、以下に示します。あくまで一案ですので、かならずご自分で工夫してください。
A.35歳までの大学受験を経た学習者/高校のとき英語が得意だった学習者
『ビジュアル英文解釈』→原書
B.伊藤氏の参考書をすでに読んでいる学習者
『英文解釈教室』で構文の復習→原書
C.英語が苦手だが、原書が読めるようになりたい大学受験経験のある学習者
『英語リーディング教本』→『ビジュアル英文解釈』→原書
D.将来も英語を武器にしたい、きちんと積み重ねたい大学受験生
『英文法のナビゲーター』→『英語頻出問題演習Part1』→『ビジュアル英文解釈』→志望校の過去問
(場合によっては、この前に『テーマ別英文読解教室』)
E.早く英語が読めるようになりたい中学生・高校1年生
(中学文法の習得後)『英語ベーシック教本』→『英語リーディング教本』
(このあとDへ。英語が得意であれば、『ベーシック』か『教本』どちらか省略可。また、伊藤氏の参考書についていけなければ、この前に『総合英語フォレスト』などをやる)
いろいろな組み合わせが考えられますが、とりあえず一例として示しました。
また、学生は学校の授業が基本です。優秀な教師について学ぶ以上の参考書など存在しません。せっかく信頼できる教師(あるいは塾講師)がいるのであれば、教師・講師の指示に従うべきなのは言うまでもありません。
(この項終わり)
【参考文献】(アマゾンにリンクしています)
ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)
ビジュアル英文解釈 (Part2) (駿台レクチャーシリーズ)
英文解釈教室
上 英文法のナビゲーター 大学入試
下 英文法のナビゲーター 大学入試
新・英文法頻出問題演習 (Part1) (駿台受験シリーズ)
英語リーディング教本―基本からわかる
英語ベーシック教本―ゼロからわかる
総合英語Forest 6th edition