これまでもiDeCo(イデコ)について。いくつかの記事を書いては来たのですが、令和7年には年金について大改正があり、iDeCoについても大きな改正が行われることになりました。
では改正後のiDeCoの制度を前提に、どう使うのが良いのか、今の段階での自分の考えを書いていきたいと思います。
ご意見ご指摘大歓迎!!
iDeCoの概要
iDeCoの概要を書くのはなかなか大変です。iDeCoは愛称で、正式には「個人型確定拠出年金」といいます。
個人型とわざわざ書くのはほかに「企業型」があります。
iDeCoは字面の通り、まずは年金の制度です。そして「確定拠出」つまり、掛金は決められていて、受取額は確定していないものです(運用次第)。さらに個人で加入するかどうかも決めて、個人でどう運用するかを決める制度設計になっています。
拠出額は毎月一定で、下限額と上限額、加入(掛金を拠出できる)期間に制限があります。ただし年に1回拠出額を変更することや、拠出を取りやめることも可能です。(一時的に取りやめて、再開することも可能です)
口座を維持したり、掛金を拠出する際には手数料が必要で、個人負担になります。
iDeCo最大のメリットは税金が安くなること。だと思います。少なくとも加入されている方は、期待していると思われます。私もその一人です。果たしてそうでしょうか。これから検証していきたいと思います。
iDeCoによる節税?
iDeCoには節税メリットがあると一般的に雑誌や書籍、ネット記事には書かれています。令和7年の今回の改正で拠出限度額が引き上げられたことにより、節税にならないケースもあるように思われます。どういうことか見ていきましょう。
iDeCoによる節税とは何でしょうか?
一般(ちまた)では、①拠出時に所得控除、②運用益非課税、③受取時控除(公的年金等控除、退職所得控除)あり。と説明されています。なお、説明している方の多くはFPだったり、保険会社や証券会社だったり、iDeCoに加入することで直接間接のメリットを享受する利害関係者だったりするので、差し引いて考えることが大事かもしれません。
少し話を戻して、このメリットとされる説明は、①②の段階では税金をかけないけれども、③の受取時に合わせて元本も含めて税金をかけますよ。と言うことです。一般には免税ではなく「繰り延べ課税」と言われます。
では繰り延べ課税になると得かということですが、大概の場合はお得になります。その理由は2つあります。
少し話がそれますが、この話を理解するには前提として、所得税は累進課税だということです。
国税庁のHPにあるように、所得税率は以下の通りになっています。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
ご存じの方は多いと思いますが、月給をもらうサラリーマンの方は、ここでいう所得金額は給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引いた金額です。
ざっくりと、給料少なめな方 5%
フルタイムの若手や補助職の方 10%
中堅以上(年収700万以上ぐらい) 20%
管理職でそこそこ給料もらっている方(年収1100万ぐらい以上) 23%
といった具合。金額はざっくりで、家族構成や社会保険の加入状況で異なってきます。
これに住民税が10%つきますから、(厳密には控除額の計算など細部は違いますが)
上記の表の5%の方は15%の税金を、10%の方は20%の税金を払う形になります。
iDeCoは給付を受取る年齢が決まっています。老齢給付金として受け取れるのは60歳から74歳(年金の場合は受取開始年齢)となっています。一般に老後と言われる時期です。
この老後になると再就職や再雇用で給与が減ったり、あるいは定年などで退職して給与がなくなったり、あるいは年金も受給することになりますが、年金は現役時代の給与より少額だったりで、現役時つまりiDeCoに加入して掛金を拠出する現役時代より収入が減るので、所得税の税率が低くなることが多いのです。
まず基本形であるiDeCoの年金受取を選択したとします。iDeCoには年金で受け取る方法と一時金で受け取る方法、その2つを併用する方法があります。年金受取は毎月決まった額を決まった期間受け取る方法だと理解してもらうとわかりやすいと思います。実際は5年から20年の範囲で受け取れて、年単位で受取額を変えることも可能ですし、受取も年1回から年6回の中から選択する形になります。
年金受取だとして、例えば現役時代、つまり掛金を拠出していた加入者の時代は、掛金が全額所得控除の対象になります。毎年60万円拠出していたとすると、収入が800万円ぐらいであったならば、所得税率は20%ですから、毎年掛金の30%にあたる18万円ぐらい税金が安くなることになります。一方受給するときは、年金しか収入がなければ、通常は15%(多い人で20%)の税金ですから、その差し引きの15%(あるいは10%)税金が安くなる訳です。これがiDeCoが得だと言われる所以です。ただし、ここまで解説してくれている記事はそう多くはありません。
iDeCoのメリットとして年金としての受取時には公的年金等控除が使えるとの記事も多く目にします。
公的年金等控除は、所得が年金のみ または 年金以外の所得が年間 1,000万円以下の場合で、65歳以上の場合は年金額330万円以下は一定で110万円です。年金の受給開始の繰り下げで増額などしなければ、国民年金と厚生年金と足しても300万円を超える方はまれ(全体の1.5%ぐらい)ですので、iDeCoを受給したからといって実質は公的年金等控除が増えないのです。つまりiDeCoで受給する金額全体に課税されます。その意味において、ちまたのうたい文句である「公的年金等控除が使えてお得。」は、ほとんどの場合当てはまりません。
一時金でもらう場合は後述します。
じつはさらにiDeCoの受取時に考慮しないといけないものとして健康保険料の徴収があります。
実際にiDeCoの受取時は所得税や住民税のほかに、介護保険料と健康保険料がかかってきます。介護保険料は段階制になっていて、かっちり○%といえないのですが、率に直すと収入に対して2%弱といったところ。
一方健康保険料はいくつかの制度があり、すぐに説明するのが難しいのです。老後の後半、75歳以上は全員後期高齢者医療制度に加入します。後期高齢者医療制度は都道府県ごとに料率が若干違いますが、すべての収入に対して所得割として12%程度が徴収されてしまいます。介護保険料が2%とするとあわせて14%。大きいです。
そうすると、所得税5%のかたは、住民税(10%)と、介護保険料(2%)と健康保険料を合わせて29%。所得税10%の方は34%です。
iDeCoのメリットは節税効果であったはず。つまり、拠出時の減税より、受取時の増税が少ないこと。が必須の条件です。ところが、拠出時に30%の減税であった方でも受給時には税金と社会保険で29%取られてしまうのです。現役時代所得税が10%であった方では、拠出時に20%減税、受給時に29%の税金(保険料を含む)を支払うこととなり、年金で受け取ると節税どころか増税の可能性が高くなります。所得税10%はおおよそ年収650万円を下回る場合です。(家族構成などで変わるので目安です)
所得税は安くなりますが、健康保険等を考えると、年金受給の場合、実はどっこいどっこいになります。
ちょっと知識のある方は疑問に思うかもしれません。給料としてもらったときに社会保険料は取られたのでは?
その通りで、なんとiDeCoでは給料としてもらった際に社会保険料が抜かれています。さらに年金として受給する際にも、国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していると元本を含めた全額に対して2度目の社会保険料が取られてしまうのです。
健康保険等を安くはできないのか?
では健康保険を安くはできないのでしょうか?
健康保険は75歳を境に制度が変わります。
75歳以上は後期高齢者医療制度に加入します。職業等によらず一択になります。
65歳平均余命は男性で20年弱、女性で25年弱ですから、年金形式でiDeCoを受給すると、iDeCo受給時の過半は後期高齢者医療制度に加入中になります。
後期高齢者医療制度では、所得割として所得に一定の料率(12%弱)をかけるので、安くする方法は基本的にありません。
(低所得者向けに減免制度はあるので、厚生年金をもらっていない年齢の若い時期にiDeCoを受け取り、さらにその金額が比較的小さいなどの場合は安くなる可能性がありますが、後期高齢者医療制度に加入する年齢では、厚生年金の繰り下げが74歳までとなっていることから、全員厚生年金受給者になると思いますので、減免制度を適用できる例はほぼないと思います)
75歳未満で、被用者保険(健康保険)に入れる職場で働けるのであれば、給与を基に保険料が決まるので、iDeCoから健康保険はとられません。ただし後期高齢者医療制度の保険料は前年(1月から12月)の所得が次年度(4月から3月)の保険料の算定基礎となるので、12月31日現在74歳となる年から実質的に保険料が取られることになるので、注意が必要です。
このことから年金受給の場合は、73歳になる年までの、かつ被用者保険(協会けんぽなど)に入っている間にiDeCoを受け取ることが大切になってきます。
一時金で受け取ると
iDeCoの受け取り方には、年金のほか、一時金(あるいは併用)で受け取ることができます。
一時金受取のメリットは退職所得として計算されることにつきます。
退職所得ではほかの所得と分離課税されるので、一般に税率が低くなります。税率は上に書いた所得税と同じです。つまり累進課税になっています。
また、退職所得控除が使えて、課税所得が小さくなります。
さらに課税計算に当たっては所得を2分の1で計算してくれるので実効税率は半分(累進課税を加味すると半分以下)になります。
加えて退職所得となることで、国民健康保険や後期高齢者医療制度の算定には反映されないのです。つまり、健康保険料はとられないのです。
なお、介護保険は算定方法が違うので、計算の対象となります。
一時金で受け取ると?
一時金で受け取る場合、退職所得控除が使えます。
退職金が少ない場合、iDeCoにも退職所得控除が使えます。ここでいう少ないとは退職所得控除の金額が実際の退職金を下回る場合で、退職金が全く課税されない方です。具体的には退職所得控除は20年以下で1年あたり40万円、21年以上で1年あたり70万円です。例えば勤務30年の方は1500万円、38年の方は2060万円と言った具合です。なお、1年未満の期間は切り上げて計算してくれます。
ここで使い切れなかった枠はiDeCoの受取時に使えます。
大企業や、公務員のそこそこ頑張った方は退職金がそれなりの金額になり、退職所得控除額を上回るので、課税対象になると思います。
退職金が課税対象になる場合はiDeCoの老齢給付金を、退職金の受取年と異なる年に受け取ることが肝要です。
退職所得も累進課税なので、同じ年に受け取ると税率も上がります。仮に退職所得控除の枠がなかった場合でも、異なる都市に受給すれば最低保障の80万円は控除してもらえますし、計算上退職所得は2分の1で所得を計算してもらえます。
相続を考慮する手も
有り余る資産がある場合、ご本人が亡くなると相続が発生します。
その時点でiDeCoの口座に残っている資産は死亡給付金として、遺族に支給されます。(ただし支給順位が決まっています)
iDeCoの死亡給付金は、「みなし相続財産」として相続税の対象になります。所得税は課税されずに、iDeCoの口座内から引き出すことができます。相続税と二重課税はされません。さらに死亡退職金の扱いとなって、相続税の計算上、ほかに退職金があれば合算されますが、1000万円までは無税になります。
同族会社に勤務でもなければ75歳を超えて退職金が支払われる会社に勤めていることはまれだと思いますので、死亡退職金の1000万円の免税枠の有効活用にもつながります。
75歳から年金形式で受給すると、最高で20年の年金形式で老齢給付金の支給が選択できるので、94歳までの支給が選択できます。
貯めた本人が使うことにならないので、iDeCoの趣旨とは合わないかもしれませんが、方法としてはありうるなと思い記してみました。