はじめに

 みなさんこんにちは。本野鳥子です。7回に渡って、サトクリフの著作を読んできましたが、それも今回で一段落。「落日の剣」についてです。どうぞ、お楽しみください。最後に、今まで書いてきたサトクリフの作品についての記事の一覧がございます。

 

「落日の剣 真実のアーサー王の物語 上・若き戦士の物語 新装版」ローズマリ・サトクリフ(原書房)

 〈大熊〉と称される青年、アルトスは、サクソン人の手からブリテン島を救おうと、叔父であり、ブリテンの王位を獲得したアンブロシウスに、騎兵団の結成を願い出る。良い馬を集めるところからはじまり、次々と押し寄せるサクソン軍に戦いを挑むアルトス。彼の偉業は、果たして完成されるときが来るのか。

 

 今まで私の、サトクリフに関する記事を読んできてくださってきた方なら、ひょっとすると、気づかれるかもしれない。実はこの作品、「ともしびをかかげて」と同時代なのである。私は、最初の数ページをめくり、見覚えのある名前に眉をひそめた。アンブロシウス……? アクイラ……? そう、実はこのアルトス、「ともしびをかかげて」ではまだ少年として跳ね回っていた〈仔熊〉アルトスなのである。時が経ち、アクイラは老人として物語の片隅に登場する。

 

 「ともしびをかかげて」を読んだ方なら、アクイラの息子であるフラビアンの著しい成長にも目を見張ることだろう。彼も、立派にアルトスの部下として働き、妻さえ娶り、子どももいる、というのだ。彼の父であるアクイラが、ローマ軍団から脱走したことに始まっているのだ、と思えば、その時の流れの早さに、目眩すら感じてしまう。

 

 とはいえ、あくまでもこの物語の主人公はアルトスだ。独自の騎兵団の結成を叔父に願い出たアルトスは、やがて自らが私生児である、という事実に向き合うことを強いられる。その苦悩する姿には、私まで胸に固いしこりを感じてしまった。

 

 それでも、厳しい自然に覆われた、広々としたブリテン島を、馬に乗って自在に駆けるアルトスとその〈騎士団〉の姿には、胸が熱くなる。サクソン人との戦いの場面は、ただの紙と文字から立ち上ってきているとは信じられないような、迫力がある。

 

 まだ下巻をこの手にしていないのだが、アルトスたちが歩む道が楽しみでしかたがない。早く続きを読みたいところである。もちろん、フラビアンのその後も、忘れるわけにはいかないだろう。

 

おわりに

 というわけで、なんだか下巻をまだ読んでいない、という中途半端なところではありますが、サトクリフに関しての記事は終わりになります。以下、今まで書いたサトクリフの作品の一覧です。もし、サトクリフに関して興味がある方がいらっしゃいましたら、こちらもご覧いただけると幸いです。

 

ローマ・ブリテン四部作(岩波少年文庫)

「第九軍団のワシ」

「銀の枝」

「ともしびをかかげて」

「辺境のオオカミ」

 

「ケルトの白馬/ケルトとローマの息子」(ちくま文庫)

「太陽の戦士」(岩波少年文庫)

「運命の騎士」(岩波少年文庫)

「落日の剣 真実のアーサー王の物語 上・若き戦士の物語 新装版」(原書房)(この記事です)

 

 それでは、長々とサトクリフに関する記事にお付き合いただき、本当にありがとうございました。次回は、キリスト教方面の文学に手を伸ばしてみようと思っています。最後までご覧いただき、ありがとうございました。またお会いできることを、楽しみにしています!