生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) [ 福岡 伸一 ]
968円
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こんにちは、リブラです。
今回は、今、巷をお騒がせしているウイルスについての第2弾です。
前回で、ウイルスは生物として当然持っていなければならないDNAとRNAを、どちらか片方しか持っていない変な奴なんだというお話をしました。
じつは、そのDNAかRNAのどちらかしか持っていない性質のおかげで、わたしたちの遺伝子の謎を解く突破口となったのです。
パスツールが感染症の原因に細菌が絡んでいること突き止め、その後、細菌培養や顕微鏡による形態の観察ができる時代になると、1晩で可視化できるほどのコロニーを作る細菌は、安価で迅速に遺伝を観察できる絶好の実験材料となりました。
細菌(大腸菌とかブドウ球菌とか)、真菌(カビ・酵母など)は、DNAとRNAの両方をわたしたち人類と同様に持っているので、DNAが持つ情報をRNAに転写して遺伝子を伝えて種の保存がされるのを観察できたのです。
当時は、菌の外形がスムース型(なめらかでつるんとした形)か、ラフ型(ギザギザした形)が、同種の菌であっても違いがあったので、それを遺伝と捉えて顕微鏡で観察していたようです。
この実験のとき、細菌が死滅しているにもかかわらず、その死骸から遺伝子情報だけが伝わる不思議な現象が発見されました。
スムース型の菌の死骸をろ過してラフ型の菌と共に培養するとラフ型の菌が現れたり、その逆をやっても同様の結果が現れたのです。
当時はまだ電子顕微鏡がなかったので、死骸についていた透明な何かを「バクテリオファージ」と呼んでいました。
じつは、これがウイルスだったのです。
細菌培養液を素焼きの器具を通してろ過すると、菌は落ちて来ないのに「バクテリオファージ」(ウイルス)は通過できました。
見えない細菌に感染する見えないウイルスの存在を、姿は見えないけれど遺伝を伝える何かであることが発見されたのです。
この「バクテリオファージ」の研究が進み、後のワトソンとクリックのDNAの二重らせん構造の発見につながっていくのです。
青カビ菌のペニシリンが、細菌を叩く抗生物質の発見につながったように、ウイルスも密かにDNAの発見に貢献していたのです。
素焼きの器具も通過してしまい、細菌より小さく、光学顕微鏡で見ることさえできないのがウイルスだと知ったら、マスクの繊維ぐらいでは感染を防ぎきれないのは、おわかりいただけたと思います。
マスクをすることは、口と鼻を保湿し浮遊するウイルスを水分の重みで落下させ、吸い込む量を減らすのには役立ちます。
ですから、使い捨てマスクが手に入らないからと言って慌てることはありません。
薬局に並ぶ時間があったら、布でマスクを1個作る方が効率的です。
あるいは、使い捨てマスクを使い捨てず、100度の熱湯に浸すか、ハイターやミルトンなどの塩素系の除菌剤を規定の濃度に薄めて浸した後水洗すれば、再利用も可能です。
要は、ウイルスが死滅し、口や鼻の保湿ができれば、マスクの機能は十分に果たされるのです。
余談ですが、わたしたちが安全に口にしている「低温殺菌」表示の飲食物は、パスツリーゼイション(63度30分で低温殺菌することでほとんどの菌を殺すことができる。ワインや牛乳の殺菌に使われている)を利用しています。
100度で煮てしまうとタンパク質は凝固します。牛乳は水と固形物に分離してしまいますし、タンパク質を構成するアミノ酸も変質するので、発酵物質の風味を変えてしまいます。
それでも、品質を保って殺菌できたらと考えられたのが低温殺菌です。
ただし、耐熱性の芽胞を持つ菌がいない環境で製造されていることが、前提になります。
ウイルスは、タンパク質でできています。
ですから、この低温殺菌(63度30分)でも死滅しますし、100度の熱湯だったら、5分もあれば失活します。
ウイルスは細菌よりも熱に弱いのです。
使い捨てマスクを熱湯消毒する方が、薬局に並ぶより簡単なので、わたしはそうして再利用しています。
使い捨てマスクがなくなったら、手作りの布マスクを使おうかなと思っています。
要は殺菌されたマスクで、口と鼻の保湿に役に立てば良いのですから。
次回はティール・スワン著「自分を愛せなくなってしまった人へ」の解説を、次々回は「パスワーク」の解説を、その後「ウイルスってどんな奴か?」の続きを予定しています。
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