BEAT GOES ONビートは継続されなければならない――たぶん、こんな書き出しだったと思う。30数年前、ある雑誌でUP-BEATとBE MODERN、そしてTHE SHAKESという3バンドをスタジオに集め、彼らの集合写真を撮影したグラビア・ページに掲載するインタビューをしたことがある。内容そのものは、いまとなっては覚えていないが、書き出しを担当していた編集者から褒められたことだけは覚えている。時代といえば時代だが、原稿を編集部に持ち込み、編集者が目の前で読んでいた(まだ、インターネットは普及していないが、ファックス自体は普及していたはず。おそらく、締め切りの関係のため、編集部で原稿を書いていたのかもしれない)。書き出しのところで、“格好いい”と、その編集者が思わず口にする。東京生まれ、東京育ちで、ええかっこしい(と、何故か、大阪弁)ゆえ、それは最高の褒め言葉だ。あとは何を言われたか、それ以前に何を書いたかも忘れている(涙!)。
不思議な縁を感じる。この9月にUP-BEATのナンバーを演奏する広石武彦率いるRespect up-beatを見て、10月にTHE SHAKESを見る。残念ながらBE MODERNは解散し、SPARKS GO GOになってからは暫く見る機会はないが、この1か月で3バンドのうち、2バンドを見ることができた。単なる偶然かもしれないが、彼らのビートが継続されてきたことの証明ではないだろうか。
10月5日(土)、その日の東京・吉祥寺「Rock Joint GB」には黒水伸一(Vo、G)、黒水厚二(G、Vo)、三輪雅也(B)、伴慶充(Dr)という、1986年のデビュー・アルバム『THE SHAKES』リリース時のメンバーが揃う。オリジナル・メンバーでの“再活動”といっていいだろう。
同ライブに先駆け、7月27日(土)、東京・下北沢「風知空知」に黒水兄弟(黒水伸一&黒水厚二)のBlack Watersが出演。アンコールには三輪と伴がゲスト出演している。そして、9月14日(土)、神奈川・新横浜「Lit」にBlack Watersが出演。彼らのステージに三輪と伴が加わり、THE SHAKESと名乗っている。
10月5日(土)は満を持して、THE SHAKESの本格的なステージになる。彼らの復活を待ちわびた観客で、会場の吉祥寺「Rock Joint GB」は一杯になる。立錐の余地もない。やはり、KIDS達は大人になっても彼らのことを忘れていなかった。THE SHAKESは彼らにとって、青春のエンブレムであり、その名前は金看板なのだろう。気のせいか、黒水伸一TRIOの時よりも女性の観客が多いように感じる。(黒水厚二人気か!?)。いつも以上に黄色い声援が飛ぶ。
いざ、彼らのステージが始まると、青春時代を懐古し、回顧するモードが一瞬にして吹っ飛んでいく。「R.O.C.K.TRAIN」や「STANDING IN THE RAIN〜降り注ぐ雨の中に〜」、「Saturday Club」など、シングルカットもされたお馴染みのナンバーはオールディーズではなく、エヴァ―グリーンの輝きを放つ。この日、披露された「祈りより深く、願いより強く」や「逆襲」、「1000の言葉より」、 「LIVE MY LIFE,LIVE YOUR LIFE 」、「柔らかな抱擁」などの新曲とも自然に共鳴しあう。いい意味で落差や時差がない。ブルースやロックンロールをルーツにパンクやニューウェイブ、パワーポップなどに着想を得て、2019年のビートロックを奏でる。その歌には路上の叡智が滲み、反抗の狼煙を上げ、この街を騒然とさせる。彼らのレベル・ソングは色褪せちゃいない。いまも私たちを心と身体のど真ん中を射抜いていく。
また、黒水兄弟がフロントに揃う、その艶やかなシルエットはロック・バンドの華やかさがある。歌や演奏だけでなく、その佇まいがロックンロールそのもの。勿論、彼らをクールでシュアに支える三輪と伴の存在も抜きにしては成立しないだろう。
THE SHAKESの新旧のヒットパレードに2度のアンコール。観客は熱狂し、会場は熱気を帯び、まるで“ストリート・カーニバル”である。約2時間、全22曲――長年、彼らの復活を待ちわびた観客にとって、夢のような時間ではないだろうか。そんな祝祭を彼らはストリートからロードへと誘う、お馴染みの「Route66」で、締めて見せる。
黒水伸一は“再結成”ではないという。“再始動”であり、“再活動”である。止まっていた時計が動き出した。ただ、次はいつになるかわからない。彼らのHPにも予定は書かれていないという。また、それぞれの活動に戻るかもしれない。しかし、今回の動きは、黒水伸一と伴慶充が黒水伸一trio(黒水伸一、信夫正彦、伴慶充)やThe Subterraneans(黒水伸一、篠原太郎、CROSS、久保田敏明)、スースー&バンチョーズ (鈴木亜紀、和久井光司、菊池琢己、伴慶充)、サニー久保田とオールド・ラッキー・ボーイズ(久保田慎吾、宮崎裕二、村松邦男、谷嶋ちから、小滝みつる、佐藤綾音、サーシャ、伴慶充)など、常に一線で、身体を張って活動してきたことを抜きにしては語れない。彼らの活動がなければ、“再始動”は、ただの“昔の名前で出ています”になってしまう。
この日、ロックロール聖者の行進を見た。この街で聖者になるのは大変かもしれないが、彼らには歩みを止めないで欲しいのだ。THE SHAKESの行進曲なら聞きたいが、軍靴の響きなんて、聞きたくもない。
最後にこじつけるが、現在、Respect up-beatのギタリスト、吉田遊介は元The Pepper Boysのメンバーであり、黒水兄弟は彼らに「I WANNA BE YOUR NO.1」など、楽曲を提供している。
THESHAKES ARE BACK IN TOWN 10月5日(土)吉祥寺「Rock Joint GB」 セットリスト
01. 見果てぬ夢
03. 再会の時
04. STANDING IN THE RAIN〜降り注ぐ雨の中に〜
05. ひとりぼっちのパレード
06. ソファーに座って
07. 祈りより深く、願いより強く
08. 逆襲
09. Juke Box Man (Vo黒水厚二)
10. I Just Wanna Make Love To You(Muddy Waters) (Vo三輪雅也)
11. Rumble (Link Wray) a.k.a.THE YOUNG SHAKES
12. 見る夢はひとつだけ
13. 1000の言葉より
14. LIVE MY LIFE,LIVE YOUR LIFE
15. TVママ
16. サマーナイト
17. Saturday Club
Encore1
18. COMES THE TIME〜今がその時〜
19. ワイルドキャットとドライブ
20. SHAKES NIGHT PARADICE
Encore2
21. 柔らかな抱擁
22. Route66