先週、6月3日(火)は土砂降りの雨と風。国民から愛されたスーパースターの逝去の報への涙雨か。その日は朝から懐かしい映像が流れていた。
コロナ禍もあって、11年ぶりになるという竹内まりや の全国アリーナツアー「souvenir 2025 mariya takeuchi live」。 2025年4月から6月にかけて8都市14公演が行われる。6月3日(火)、4日(水)と、2日連続で開催された同ツアーの横浜アリーナ公演の“初日”、3日(火)の公演を見る。“夫婦割引でもれなく山下達郎がついてくる”という同公演、日本で最高のプロデューサーが集めた最高のバンドが最高の歌手を支える。
改めてメンバーを書き記しておく。竹内まりや(Vo)をバックアップするのはバンドマスター、プロデューサーの山下達郎(G、Cho 、Vo)を始め、小笠原拓海(Dr)、伊藤広規(B)、鳥山雄司(G)、難波弘之(P、Kb)、柴田俊文(Kb)、宮里陽太(Sax)、ハルナ(Cho)、ENA(Cho)、三谷泰弘(Cho)というラインナップ。いうまでもなく、山下達郎のツアーに帯同する頼もしい仲間達。その腕前は説明不要だろう。腕に覚えありの匠たち。“もれなく山下達郎バンドもがついてくる”のだ。
それが悪いわけはない。デビュー時のRCA時代のアルバムから最新アルバム『Precious Days』まで、名曲を選りすぐり。ほとんどの曲を知っていた。知らぬ間に彼女の歌は私達に届いている。確かに大量出稿のCMソングや高視聴率のドラマの主題歌というタイアップもあるかもしれないが、しかし、届くということは量的なことだけではない。映像や物語など、様々な“NOISE”を通り越して、心や身体の奥深いところに入って来る。サブリミナル効果などではないが、侵入してくるといっていいだろう。
今回、歳を重ねるということや音楽家としての生き方、居住まいなどを考えさせられた。彼女自身が本2025年3月20日に70歳、古希を迎えたこともあるのか、年齢について度々、言及していた。この日の観客の年齢比率は60代が中心で、その次に多かったのが50代だという。驚異の年齢構成だ。歳を重ねるなどと言われなくても演者や観客の年齢は上がるもの。それでも離脱することなく、付いていく。竹内まりやは1955年3月20日生まれ。70歳、デビューは1978年である。山下達郎は1953年2月4日生まれ、72歳。1975年にシュガーベイブ『SONGS』でデビューして50年になる。この4月には50周年記念盤もリリースされている。これは驚くべきことだろう。山下自身、30代から40代にこれからはミュージシャンではなく、スタッフとして裏方にまわると考えていたから、いまの現状はまさかだろう。竹内自身も山下は彼女のことを「シンガーソング専業主婦」と名付けていたが(竹内は「シンガーソング“兼業主婦”」と語る)、ソングライターとして活動してもライブに復帰するとまでは思ってなかったはず。
人生は何が起こるか、わからない。そのおかけで、私達は歳と年を重ねることで説得力と表現力が増し、コクのある熟成した楽曲に、この歳でも出会えることができるのだ。「静かな伝説(レジェンド)」や「人生の扉」、「いのちの歌」などは、やはり“成熟した大人”ではないと、あの説得力は生まれないだろう。その世代でないと歌えない境地かもしれない。改めて、それらの歌に励まされ、勇気付けられることを感じる。その歌が私達の生活や生き方に寄り添う。勿論、シティポップの名曲や初々しい初期のヒット曲も披露される。そんな中、杉真理や安部恭弘、加藤和彦、アン・ルイスなどの名前が度々出るのも昔から彼女を応援していたファンの方は嬉しいだろう。
また、歌手として、デビュー当時、伊東ゆかりに似ていると、多くの方が言っていたが、大衆的な親しみやすさと高貴な気品を併せ持つ。ポップスを歌うために生まれた歌声である。歳を経ての経年劣化などなく、より味わい深くなっている。同時に服部良一や中村八大、前田憲男……など、日本の歌謡曲やジャズなどの系譜に連なる歌い手、作家であることを再確認する。よく引用するが、大滝詠一は1994年にシュガーベイブの『SONGS』がリイシューされた際、ライナーノートに“本人はこういわれるのを嫌がるでしょうが、山下達郎は『クリスマス・イブ』の作者として日本歌謡史に残る人です。山田耕筰・滝廉太郎・中山晋平・古賀政男・服部良一・中村八大・筒美京平、という流れの後に続きます。”と書いていた。そんなことが重なる。
私達のスーパースターは今日も至高の音楽と歌声を届けてくれる。それにしても竹内まりやの生「おつかれ生です」はキュートでチャーミング。“元気を出して”と言われなくても元気になる。また、デュエットや2コーラス目などを歌うものの、変に前に出ることなく、控えめに竹内まりやを盛り上げる山下達郎の“内助の功”も微笑ましくなるのだ。
ここ数年、山下や竹内は誤解や曲解、放言などで“雑音”かまびすしい時期もあった。しかし、漸く音楽に集中できるようになったのではないだろうか。彼らの音楽を必要としている人達がたくさんいることを会場いっぱいの観客を前にして再確認したはず。
このライブ、6月14日(土)の北海道「北海道立総合体育センター 北海きたえーる」、6月24日(火)・25日(水)の神奈川「Kアリーナ横浜」と、残りは3公演のみだが、SNSを見るとキャンセル待ちや制作席解放などで、ぎりぎり間に合い、駆け込みしている方もいるみたいだ。いずれにしろ50万人がチケットを求めたという競争だが、最後の最後にチャンスにかけてみるべきだろう。詳しいことはHPなどを参考にしていただきたい。既に締め切りだったら申し訳ない。
実は、今期のドラマで欠かさず見たのはNHK総合ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』(出演:桜井ユキ・加賀まりこ・宮沢氷魚・土居志央梨)とTBS火曜ドラマ『対岸の家事』(出演:多部未華子・江口のりこ、ディーン・フジオカ)だった。詳述はしないが、生きづらさや無理解を克服し、かけがえのない日々を大事に丁寧に過ごしていく――そんな主人公の言葉や行いに勇気づけられる。特に重篤な病を抱えているわけでも家事に問題があるわけではないが、何故か、身近なものに感じ、見ていて心と身体が温かくなった。
改めて“かけがえのない日々”を意味する『Precious Days』というタイトルがついた竹内まりやの新作に掲載されている彼女が書いたライナーノートを読む。そこには“二度と取り戻すことのできない小さな一日一日をしっかりと味わいながら生きていきたい”と書かれていた。そんなことを考え、新作やライブを体験すると、また、違った景色が見えてくる。







