「網走番外地」(1965)

 

高倉健主演のヒットシリーズ第一弾をU-NEXTで観た。

 

 

監督は石井輝男。予告編はコチラ

 

網走駅を下車してトラックに乗せられて網走刑務所へ護送された受刑者たち。橘真一(高倉健)もその一人。入所後、雑居房に入れられた橘は、“八人殺しの鬼寅”の義兄弟とうそぶく牢名主の依田(安部徹)とルームメイトに。仲良くお友達というわけにはいかず、新入りの権田(南原宏冶)等の牢名主派閥と頻繁に衝突、何度も懲罰房に入れられます。橘の不幸な幼少時代の思い出やヤクザになって捕まった経緯を織り交ぜながらの数年間の獄中生活が過ぎたある日、囚人たちの間で脱獄計画が浮上。橘も仲間に勧誘されます。

 

保護司の妻木(丹波哲郎)が尽力している仮釈放申請がなかなか通らず、最愛の母が危篤状態だという便りをもらった橘が脱獄の参加を迷ってるうちに、雑居房全員が脱獄計画を決行。しようと思ったら、雑居房にいた老人(嵐寛寿郎)に阻止されます。いつもおとなしかった爺さんが伝説の“鬼寅”であることが判明してビビる依田たち。しかし、翌日、脱獄に失敗した依田一派は屋外作業に向かうトラックを飛び降りて脱走を敢行。権田と手錠でつながれた橘も一緒に脱走せざるを得ない状況となってしまい、北海道の大雪原を舞台にした逃避行が始まるのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1965年4月18日。同時上映は鶴田浩二主演「関東流れ者」。添え物扱いだった本作がスマッシュヒット、後に10作以上続くドル箱シリーズへと成長。三國連太郎の発案が始まりだったことはWikipedia等を読んで初めて知りました。同名原作小説からはタイトルだけを拝借、「手錠のまゝの脱獄」(1958)を換骨奪胎したストーリーが展開。モノクロ撮影が網走の厳しい自然をより強調しています。前半は監獄生活あるあるで独特のしきたりや囚人同士の対立等を描く群像劇、後半は脱獄してからの反目し合う同士での逃避行がメイン。列車を使って線路に寝転んだ二人手錠を断ち切る場面、トロッコでのチェイス場面はかなりの緊迫感。エンタメを分かっている石井輝男だけに見せ場はちゃんと心得ています。

 

一本気で元気ハツラツな健さんが清々しく、スターダムに駆け上がっていく男のオーラがあります。田中邦衛の顔マネをするお茶目なところもあり。健さんが唄う主題歌がちょくちょく挿入されるのはご愛敬。唯一遠くまで逃げ果せた橘たちをトロッコで執拗に追いかけるのは、新東宝時代からの石井輝男の盟友である丹波哲郎。最後の対決を経てからの結末はハッピーエンドといっていいでしょう。囚人たちのキャラも立っていて、重鎮らしく大見得を切るアラカン以下、安部徹、待田京介田中邦衛、潮健児といった個性的な面々が揃っています。片意地張らずに楽しめるプログラムピクチャーのお手本のような作品だと改めて思いました。