「御金蔵破り」(1964)

 

千恵蔵と橋蔵コンビによる時代劇犯罪映画をU-NEXTで観た。

 

 

監督は、本作が時代劇初挑戦となる石井輝男。

 

「地下室のメロディー」(1963)を翻案した時代劇。老いた犯罪者が若いチンピラと組んで最後のヤマを実行する、チンピラが侵入ルートの確保のために女をたぶらかす、仕事は成功するが最後に思わず落とし穴が待ち受けている、という設定をいただいてるものの、それ以外にいろんな設定を盛り込んでいるため、ほとんど別物に仕上がっています。旗本くずれのチンピラ、緋牡丹半次(大川橋蔵)が、獄中で知り合った"煙の富蔵"と異名をとる大盗人(片岡千恵蔵)から、釈放後、江戸城の御金蔵破りの大仕事に誘われます。その作戦とは、将軍付き御中﨟(将軍の愛人)と親しくなって、大奥に運び込む長持の中に入り込んで江戸城に侵入、御金蔵から大金を強奪しようというもの。決行日は、警備が手薄になる江戸開府を祝う花火大会が行われる5月1日。果たして、彼らのミッションは成功するのか・・・というのが大まかなあらすじ。

 

武士だった頃の半次の同僚で、現在は有力な侍の娘婿になって出世街道を走る武士(杉浦直樹)が江戸城の警備担当をしているため、最後に敵味方で相まみえる設定や、二人の犯行を監視して捕まえようとする岡っ引き(丹波哲郎)がいる設定、富蔵や半次と同じ牢内にいたヤクザ(青木義朗)が二人の犯罪話を聞きつけて、盗み出した千両箱弥太五郎親分(安部徹)率いる一家で全部横取りしようと企む設定が加わって、犯行をめぐる人間模様が複雑になっているのに、上映時間は「地下室のメロディー」より20分以上短いです。

 

石井輝男らしい突飛な設定もあります。まずは、オデコに犬と書かれた刺青のある青木義朗。オデコが気になってセリフが耳に入ってきません。極めつけはオープニングでのムショの牢名主による新入りイジメのシーン。ウ●コを顔に浴びせるイジメは悪趣味にもホドがあります。ただし、後者は千両箱を肥溜めの桶に入れて舟で運搬するという重要な作戦とクソで繋がっています。打ち上げ花火の光に照らされる城内での犯行場面はカラフルでちょっとだけオシャレだったし、海底に沈んだ小判に魚やタコ、エビが共にいるショットもユニーク。なお、肥溜めを回収する業者メンバーの一人で蓑和田良太が登場。弥太五郎一家のズッコケ子分三人衆(潮健司、待田京介、今井健二)もそこそこ楽しませてくれます。

 

劇場公開は1964年8月13日。同時上映が「日本侠客伝」。徐々に衰退していきつつあった時代劇と、これから躍進していく任侠映画が重なった貴重なカップリング。人気に翳りが見えてきた橋蔵と恋仲だと噂されていた朝丘雪路を相手役にあえて抜擢して、何としてもヒットさせようという意志を感じます。二人のキスシーンは若干長め。その甲斐あってか、興行面では1億5000万円を超える中ヒットを記録したとのこと。

 

 

 

 

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