「ボディ・ダブル」(1984)

 

ヒッチコックの作風をゲスにオマージュしたサスペンスをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

製作・監督・脚本はブライアン・デ・パルマ。予告編はコチラ。

 

「吸血鬼のキス」というB級怪奇映画に主演しているジェイク(クレイグ・ワッソン)が、撮影中に持病の閉所恐怖症で固まってしまいます。気落ちしたまま帰宅すると、同棲中の恋人(バーバラ・クランプトン)が男を連れ込んでベッドでハッスルしていて大ショック。居候の立場ゆえ、住む場所も失います。そんな時、オーディション会場でサム(グレッグ・ヘンリー)と知り合って、彼の地方公演期間中限定で留守番をしてほしいと頼まれます。まさに、渡りに船。LAを一望できる展望台のようなリッチな家の望遠鏡からは、近所の豪邸に暮らす美女グロリア(デボラ・シェルトン)が毎夜ストリップまがいのダンスをする姿が拝めるという耳寄り情報も入手。ということで、艶かしく踊るグロリアをじっくり覗きます。やがて、グロリアをストーキングしている謎の男の存在に気づいたジェイクは、グロリアを尾行する謎の男を尾行し始めます。

 

いつの間にか、自分自身がグロリアのストーカー状態になっていくうちに、潜んでいた謎の男が現れて、グロリアのバッグを奪って逃走。必死で追跡するも、トンネルで閉所恐怖症を発症してまんまと逃げ切られます。それが縁でグロリアと話せたジェイクは、突然愛の言葉を囁いて熱くキスをします。帰宅したジェイクは、その夜もグロリア覗きを開始。すると、謎の男が侵入しているではありませんか。急いでグロリア宅に駆けつけるも、謎の男が電気ドリルでグロリアを惨殺した後でした。男にまたもや逃走されて、警察の捜査も難航。その後、失意のジェイクが気休めにポルノ映画のビデオを観ていると、グロリアの躍り方と全く同じ動きをしている金髪女優ホリー(メラニー・グリフィス)を見つけてビックリ。気になったジェイクが今度はホリーに近づいて仲良くなると、彼女がグロリアの替え玉(ボディ・ダブル)であったという疑惑が確信に変わって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Body Double」。物語のキーとなる"替え玉"を指しています。ヒッチコック好きのデ・パルマらしく、カメラワークだけでなく、覗きは「裏窓」(1955)、替え玉は「めまい」(1958)をもろにオマージュ。ヒッチコックが上品にフェティシズムを描いていたのに対して、本作の主人公は美女が捨てたパンティーを拾ったり、ポルノ映画に出演したりする三文役者。ネット上で鬱憤をぶちまけてそうな現代的なダメ男で、自分自身のゲスな欲望に忠実な行動が災いを招くバカさ加減がコミカル。その猥雑な感じが逆にイイです。公開当時は不評だったのが、現在はカルト的人気があるというのも頷けます。殺人犯の手の込んだアリバイ作りにしても、完全犯罪を目論むというよりは、映画を視覚的に面白くすることを目指して頑張っているように見えます。

 

IMDBトリビアによると、デ・パルマからホリー役候補に考えてるジェイミー・リー・カーティスを紹介してほしいと頼まれたのがメラニー・グリフィスで、ジェイミーが断った後に彼女自らがオーディションを志願して役をゲットした経緯があるそうです。他に、テイタム・オニール、ブルック・シールズ、キャリー・フィッシャーもホリー役を断ったとか。結果的には、「鳥」(1963)や「マーニー」(1964)に主演していたティッピ・へドレンの娘が演じたというのが面白いです。彼女自身はボディ・ダブルを使わないハッスルぶりで、たぶん、このお尻も本人のものだと思われます。あと、ゲイ・ソングとして有名なフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの代表曲『Relax』がこの映画でフィーチャーされていたことも初めて知りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うま味」(2022)

 

変なダシが出ている日仏合作映画をAmazonプライムビデオで観ました。

 

 

監督・脚本はスローニー・ソウ。予告編はコチラ。

 

一流シェフの証となる"クリスタル・スター"の3度目の受章を果たしたばかりのガブリエル(ジェラール・ドパルデュー)。パリに一流レストランを構える順調な料理人生とは裏腹に、私生活では2番目の妻ルイーズ(サンドリーヌ・ボネール)との関係は冷えきっていて、デブった体の調子は優れずに心臓発作で緊急入院。現場復帰後、昔からの親友(ピエール・リシャール)に会った時、気分転換を勧められます。40年前の料理コンテストで日本人シェフが作ったラーメンに負けた過去を思い出したガブリエルは、その時の対戦相手に会うためにいきなり単身で日本へと旅立ちます。なんとか目的地に近い小樽駅までたどり着いた時はすでに夜更け。駅員に勧められた宿に行くと、そこは小さなカプセルホテルでした。宿泊客のオヤジ(柄本明)に親切にされて、狭い部屋で一泊します。

 

翌日、札幌のホテルにチェックインしたガブリエルは、お目当ての男がいるはずの店を発見。こんなショボい店のはずはないと思ったものの、醤油ラーメンを食べてみて、あいつの作った料理だと確信。厨房に立っていたのは、かつて自分を下した森田(長塚京三)でした。しかし、対面した森田は素っ気ない態度でガブリエルをあしらいます。従業員として父を支える娘(武田絵利子)はその様子を見て、店を出たガブリエルを追うと、彼があの時敗北した"うま味"の秘密を知りたくて来店したことが判明。また来店したカブリエルを突っぱねた森田は翻意して、店を出たガブリエルを捕まえます。酔い潰れたガブリエルをホテルに送り届けた森田はそのままガブリエルと行動を共にして、"うま味"を探し求める手伝いをするのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Umami」。主演はフランス随一の名優でありながら、近年は性暴力で有罪判決を受けたことの方が有名になったジェラール・ドパルデュー。自分の人生を見つめ直したい主人公が、田舎で新たな空気に触れて、また前向きに生きようとなる話で、地方創生絡みのローカル邦画でよくあるパターンをパリ-北海道間で作った感じ。ガブリエルの跡を継ぐべき長男が父の威光なしで奮闘するエピソードや、自由人の次男が父を追って札幌にやって来て、ネットのリベンジポルノで傷ついた過去のあるラーメン屋の孫娘と交流するエピソードがサブストーリーで描かれるのはいいとしても、森田の協力でたどり着いた"うま味の真髄"とはという急所の部分がちょっとアレな印象でした。

 

札幌ロケで巨体を揺らすドパルデューの姿はとてもレア。冒頭では、カプセルホテルの共同浴場で柄本明との2ショットでヌードもサービス。長塚京三は得意のフランス語を披露。フランスに行って乾杯する場面も最後に挿入されたりします。ガブリエルに日本の心を伝授する助っ人陣がなかなかユニークで、IKKO(和服担当)、YOU(養豚担当)、マメ山田(飴細工担当)といった飛び道具的キャラが続々と登場。ほかに、ラーメン屋を手伝うおばさん役で小泉今日子も出演。実は柄本明の娘だったという奇跡的な偶然も判明します。出演者の顔ぶれはいい出汁が出ているなと思う映画でございました。

 

 

 

 

「プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた」(2025)

 

悪魔に憑かれた家族に悩まされる青年のお話をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本はイ・サングン。予告編はコチラ。

 

親が持っているマンションの一室に住んでいる無職のギルグ(アン・ボヒョン)。夜に得意のUFOキャッチャーで遊ぶ以外は引きこもりの生活を続けています。ある夜、マンションのベランダに座っている清楚な美女ソンジ(イム・ユナ)を見かけます。彼女は1階で家族経営のパン屋を開店する新しい入居者でした。別の夜、不審なおっさん(ソン・ドンイル)に絡まれている彼女をまた発見。おっさんは彼女の実父でした。翌日に会ったソンジはその時に暴れていたことを全く覚えていません。やがて、ギルグは実父から意外な事実を聞き出します。ソンジは深夜2時頃になると悪魔に憑かれて豹変すること、その呪いは曾祖母の代から祖母、母を経由して伝わっていることだと知らされるギルグ。で、これも何かの縁だということで、パン屋の手伝いをしながら、これまで父と従姉(チュ・ヒョニョン)が面倒を見てきたソンジの世話をギルグが受け持つことになります。

 

深夜に徘徊するソンジのアテンド係で、コンビニの店員に悪態を突くのをフォローしたり、お花畑での写真撮影やトランポリン遊びに付き合わされたりと、自分を上級悪魔だと言ってるわりには可愛らしいことしかしない彼女が電池切れを起こして気絶すると自宅までおんぶして帰すという日課をしばらく続けます。普段のソンジに惹かれているギルグが勇気を出して夜中の映画館デートに誘った時、ソンジが気のある素振りを見せたかと思ったら、悪魔がからかっていたことに気づいてショックを受けたりなんかしているうちに、深夜の悪魔にも愛着が湧いてくるギルグ。その後、除霊能力を持つと自称する男がソルジを拉致して、勝手に悪魔祓いの儀式を始めようとします。必死に救出してくれたギルグに、悪魔はソンジの家系に取り憑いた本当の理由を語り始めます。彼女の苦しみを理解したギルグはある行動を取って・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は 「악마가 이사왔다」。"悪魔が引っ越してきた"という意味。「EXIT」(2019)の成功で過去に執筆した脚本の映画化にGOサインが出たという経緯があるようで、たしかに10年ほど前の韓国ラブコメ映画の雰囲気がありました。「猟奇的な彼女」(2001)的な凸凹男女のラブコメ要素と、「ハロー!?ゴースト」(2010)的な成仏系感動要素を合わせたような作品。主演のアン・ボヒョンは、前述の2作品に主演したチャ・テヒョンをよりカッコ良く長身にしたような感じにも見えます。つまりは、私が好きな系統の映画ではあるものの、中盤までの生意気女とヘタレ男のラブコメパートがちょっと冗長に感じました。両極端の女性を演じるイム・ユナはキュートだし、受けの演技をするアン・ボヒョンも最後にカッコイイところを見せてくれるのて、2人のファンには十分に楽しめる内容かと思います。

 

ソンジの従姉役のチュ・ヒョニョンは最近日本でリメイクされた韓国ドラマの名作「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(2022)の友人役で脚光を浴びた人で、その時の挨拶ポーズを彷彿とさせるお遊びのシーンがありました。映画の肝の部分のネタバレをすると・・・、100年以上前に農村を襲った大飢饉を鎮めるために生贄となった女性が悪魔の正体で、100年眠っていれば成仏できるとされる遺灰が入っていた甕(かめ)を間違ってソンジの曾祖母が掘り起こしてしまったことで、代々母系に憑くようになったという事実が終盤に明かされます。ソンジの家族の温もりに触れるうちに情が移ってしまった悪魔でしたが、死後から1000回目の満月を迎えると悪魔の寿命が切れてしまうらしく、それを知ったギルグが悪魔が安らかに成仏できる甕を発掘しに行って、無事に成功。ソンジとの恋も良い方向に進むと思わせる後日譚も描かれるハッピーエンドでした。