「渡世人」(1967)

 

ごくフツーの東映任侠映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は佐伯清。予告編はありません。

 

昭和初期。日中の戦争を回避するために、満州馬賊の頭目である北天竜(石山健二郎)が日本軍上層部との交渉目的で来日。これには戦争利権で儲けるつもりだった上毛組が黙っておらず、三上(鶴田浩二)と成瀬(若山富三郎)を殺し屋に雇って、北天竜と仲介人の正宗一家の塚本組長を射殺。その手引きをしたのは正宗一家の代貸児玉(名和宏)で、ライバルの若手代貸新次郎(梅宮辰夫)にも刺客を送って、返り討ちにした新次郎は5年の実刑を食らいます。新次郎の子を身篭っていたお登喜(市川和子)は出所を待ちますが、正宗一家の跡目を継いだ児玉が自分の妾にする気マンマンで接近。すると、正宗一家の卑劣なやり口を見かねた三上が、新次郎が戻ってくるまでお登喜の家族を故郷に連れていくことにします。

 

一方、新次郎は獄中で親分を殺した相手が上州の人間であることを耳にします。そして、仮釈放後に上州入りして、立花一家にワラジを脱ぎいで復讐の相手捜しを開始。この土地には立花一家と敵対する上毛組がいて、お登喜を匿う三上も身を寄せていました。その後、三上は上毛組の賭場で作ったお登喜の父を肩代わりをするため、殺しの依頼を引き受けます。その相手が縄張り内でいろいろ嗅ぎ回っている新次郎と知って、襲撃時に拳銃の腕が鈍る三上。その場を逃げ延びた新次郎も、ずっとお登喜や息子の面倒を見てくれた人が親分を襲撃した男だと知って愕然とします。やがて、上毛組が立花一家親分を暗殺。新次郎が意を決して単身で殴り込みに行こうとすると、三上が助太刀に現れて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1967年7月30日。同時上映は中島貞夫監督の「大奥(秘)物語」。戦争勃発を止めようとする中国の要人を戦争特需狙いのヤクザが暗殺する冒頭の設定はちょっとユニーク。ただし、それ以降は親分の仇とか、女の取り合いとかでモメる地味な任侠ストーリー。主演は梅宮辰夫ですが、梅宮の盾になる鶴田にカッコ良さを譲っていて、実質的にはW主演という趣き。最後は上毛組組長の金子信雄を鶴田が、正宗一家組長の名和宏を梅宮がバッサリ成敗して、梅宮が鶴田の死を看取ってジ・エンド。市川和子城野ゆきという女優陣はかなり地味でした。前年に『骨まで愛して』のヒットで紅白にも出場した城卓矢が梅宮のムショ仲間として出演してるのが公開時の売りだったようです。あと、特に必要性のない役どころで藤山寛美もちょっと出てました。

 

 

 

 

 

 

「崖」(1955)

 

フェリーニ初期の人情悲喜劇をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督はフェデリコ・フェリーニ。予告編はコチラ

 

遠くの大きな教会からやって来ましたと、田舎の農家を訪問。あなたの所有地内に殺した男の死体を埋めたという犯人の話をして、一緒に埋めた財宝は土地の所有者に渡しますと犯人が生前に告白したため、死体と財宝が埋まっている場所を掘らせてほしいと住民にお願いをします。財宝がもらえるとなれば、ましてや、お願いしているのが司祭の一行ならばということで、住民は穴掘り作業を許可。すると、前もって埋めておいた場所からガイコツ財宝(ニセモノ)が掘り出されます。司祭は死んだ犯人の遺言を読み上げて、罪滅ぼしとして50万リラ(約30万円)の現金は教会に寄付してほしいという条件を提示。財宝は600万リラ相当と聞いてる住民は喜んで現金を差し出します。こうして、信心深くて欲深くもある農民から金をむしり取る詐欺をイタリア各地で働いてるのが、アウグスト(ブロデリック・クロウフォード)ピカソ(リチャード・ベースハート)ロベルト(フランコ・ファブリッツィ)ペテン師三人組。他の手口でも、貧しい人たちのなけなしの金を騙し取っています。

 

大晦日にリーダー格のアウグストが昔の仲間と再会。彼が主催する新年パーティーに参加した時から、彼らの雲行きがおかしくなっていきます。(ケチな詐欺を続けるアウグストと違って)成金となった旧友が招待した貴婦人の金品をつい盗んでしまったロベルト。その悪事が発覚する騒ぎを見ていたピカソの妻イリス(ジュリエッタ・マシーナ)が夫の職業に疑問を持ち始めます。これがキッカケで、ピカソはようやく真面目な生き方を考えるようになります。アウグスト別々に暮らしている娘に会って、娘の純真さと対照的に汚れ切った自分に幻滅。さらに、昔騙した男に見つかって警察に逮捕される現場娘に見られます。半年のムショ暮らしを終えたアウグストは、ピカソもロベルトも足を洗ったことを知ります。それでも、他の仲間を集めて財宝詐欺を企んで、ターゲットとなる農家を訪ねると、自分の娘と同じ年頃の小児マヒの少女がいました。アウグストを本当の司祭と信じて疑わない少女を見たアウグストは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Il bidone」。"詐欺"という意味。邦題は前作の「道」(1954)に近しいタイトルをストーリーから無理やり連想したと思われます。「カビリアの夜」(1957)も合わせて三部作と称されている真ん中の1本。前半はいい年した小悪党のショボい生態をコミカル寄りに描いていて、新年を迎えてからの後半は善良な人を欺く稼業に後ろめたさを感じて、それでも悪事を続行する者だけが自業自得の道を突き進んでいく展開。人間なんてこんなもんでしょというネオリアリズモ的な冷めた視線が貫かれていました。いつもなら最もビュアなキャラのジュリエッタ・マシーナ以上に汚れなき存在として、アウグストの娘小児マヒの少女が登場。特に、後者のインパクトが本作のハイライト。セレブの乱痴気騒ぎ描写があるものの、フェリーニの世界的名声がピークに向かうにつれて豪華絢爛になっていくので、この頃は少しおとなしめ。アウグストの役は当初ハンフリー・ボガートを想定していたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハード・ターゲット」(1993)

 

ジョン・ウーのハリウッド進出第一弾をU-NEXTで観ました。

 

 

監督はジョン・ウー。予告編はコチラ

 

ある夜、ニューオリンズの殺風景な土地で1人のおっさんが殺されます。数日後、ナターシャ(ヤンシー・バトラー)が音信不通の父ダグラスが暮らすニューオリンズを来訪。母と離婚してからずっと疎遠だった父は、行方不明のホームレスとなっていました。ミッチェル刑事(ケイシー・レモンズ)からホームレスの捜索はできないと断られて意気消沈のナターシャは路上でチンピラに襲われます。そこに現れて、チンピラを一網打尽にしたのがチャンス・ブロドー(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)という男。土地勘のないナターシャはチャンスに父親捜しの協力を依頼すると、金欠のチャンスは2日だけバイトすることに。やがて、捜索中に父の焼死体発見の一報が届きます。遺留品に不審な点を覚えたチャンスは、他殺の可能性がある物的証拠を発見してミッチェル刑事に提示。ミッチェルはナターシャの父の死因を再捜査します。

 

しかし、これらの動きを好ましく思っていない悪い連中がいました。謎のフランス人エミール(ランス・ヘンリクセン)率いる傭兵集団が家族のいないホームレスを選別して、人間狩りの駒にして遊ぶ富裕層向けのゲームを治安の悪いニューオリンズで主催していたのです。家族なしと偽っていたダグラスはその人間狩りの標的になって、冒頭のシーンで殺されたというわけです。傭兵軍団に脅されても、元軍人のチャンスは動じません。やがて、東欧にトンズラする前の最後の人間狩りを実行して、その餌食となったチャンスの友人ホームレスが死亡。そして、検視報告を捏造させるために買収していた監察医人材を供給していたオヤジを口封じのために殺害。さらに、抵抗するチャンスとナターシャも人間狩りの手法で始末しようとするのだが・・・というのが大まかなあらすじ。


原題は「Hard Target」。"困難な標的"の意味。極悪な大富豪が人生で一度はやってみたいことといえば、人間狩りです。その主催者がランス・ヘンリクセンで、火だるまシーンもノリノリで演じています。側近のアーノルド・ヴォスルーもいい面構え。そんな悪党たちに街で唯一対抗できるヴァン・ダムの躍動感が若々しいです。終盤に傭兵軍団に追われてからの銃撃戦が見どころ。女性にハンドルを持たせたバイクから銃撃座席の上に立って車に突っ込んでジャンプヘリで追う敵には乗馬で対抗。弾丸は絶対に当たりません。得意の回し蹴りを中心とした俊敏な動きを見せるヴァン・ダムとスローモーション付きのド派手なドンパチが売りのジョン・ウーのマリアージュを、ジョン・ウー印のハトも祝福していました。ヴァン・ダムが舞えば、ハトも舞います。最終決戦の地は古びた美術倉庫で、風変りなヴァン・ダムのおじさんも参戦ナターシャを人質にしたヘンリクセンを結局ボコボコにして爆死させる景気のいい映画でした。