「クーデター」(2015)

 

異国の地で起きたクーデターに家族が巻き込まれるサバイバルスリラーをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督・脚本はジョン・エリック・ドゥードル。予告編はコチラ

 

東南アジア某国の首相がアメリカの水道システムを専門とするカーディフ社と契約を締結してすぐに、武装反乱軍のクーデターに暗殺されます。その17時間前、カーディフ社に転職したばかりのジャック(オーウェン・ウィルソン)が妻アニー(レイク・ベル)、ルーシーとブリーゲルの2人娘と共に当地に到着。新天地での生活に不安を口にする家族たち。空港には会社が手配しているはずの迎えの車が来ておらず、同じ便に乗っていて宿泊先も同じだと言う英国人ハモンド(ピアース・ブロスナン)が声をかけてくれたため、彼の現地の友人ケニーが運転する車でホテルに向かいます。ハモンドがこの国に来るのは15回目らしく、とても慣れている様子。チェックイン後、電気系統の具合がよろしくない状況をフロントにクレームを入れると、ホテル周辺のエリア全体が同じ症状とのこと。翌朝、ジャックはホテル近くの売店で英字新聞を買うために外出。すると、武装した民衆によるデモ隊と政府側の機動隊が路上で全面衝突する現場に遭遇

 

ホテルに戻る途中で、優勢に立ったデモ隊がアメリカ人を処刑して民衆から大喝采を浴びている様子を目撃。反乱軍兵士に気づかれたジャックは非常階段をよじ登って、窓を割ってホテルに侵入。なんとか家族のいる部屋に逃げ込みます。その間に反乱軍はホテルの正面玄関を突破して、従業員や宿泊客を無差別虐殺を開始。外のヤバイ状況を家族に伝えて、一刻も早くホテルを脱出しようとするジャック。ルーシーが1階のプールで遊んでいることを知って、またまた慌てて部屋を飛び出して、ルーシーを救出。すぐ近くの部屋の宿泊客も惨殺されてしまって、このまま部屋にいたら家族が全滅になるのは必至。ということで、一番安全だと思われる屋上まで家族を連れて行って、生き残った宿泊客と合流。ホテルの周辺には数百人の民衆が集まって、外国人は皆殺しだと叫んでいます。そして、ヘリコプターに乗った反乱軍が射撃してきます。ここまでは、もう逃げ場のない状況に陥ったジャックとその家族の懸命のサバイバル劇の序章でしかなく・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「No Escape」。文字通り、脱出不可能な状況に突然見舞われる家族のお話。冒頭ですぐ革命が起きて、現地に着いたばかりのジャックが翌朝の暴動に気づきます。反乱軍と化した国民たちの標的は外国人。それも、国のインフラである水道システムの支援をすると見せかけて利権を乗っ取ろうとする先進国の手先である企業。つまり、そこに務めるジャックが真っ先に殺すべき人物となってしまいます。家族はとんだ巻き添えです。ゾンビのように次から次へと襲って来る現地民から必死で逃げ延びようとするスリリングな描写を最後まで押し切る演出は、ホラー・サスペンス畑の監督らしい盛り上げ方。隣のビルに移動するために子供を放り投げるシーンは、シンプルながらかなりの名場面だと思いました。焦点を当てた家族以外が虫けらのようにポンポンと殺されるところは悪い意味でハリウッド的。序盤で思わせぶりに登場したピアース・ブロスナンがいよいよ絶体絶命となったところで登場して、彼らしく活躍してくれるのは嬉しい展開。本作の某国はカンボジア想定のようですが、ロケ地は撮影(2013年)の翌年に軍事クーデターが起きたタイとのこと。

 

 

「黄金の針」(1974)

 

「燃えよドラゴン」のスタッフが再結集して作った黄金像争奪戦アクションを観ました。初見。

 

 

監督はロバート・クロ-ズ。予告編はコチラ

 

宋の皇帝に献上されたという"黄金の針"という伝説の黄金像。この像が示す7つのツボに正しい順番で鍼を打てば、衰えていた精力がギンギンに復活するんだそうです。最近、その黄金像を強奪したリン・トー(ロイ・チャオ)がアメリカから買い付けに来たフェリシティ(エリザベス・アシュレイ)に対して、販売価格を10万ドルから25万ドルへと急に釣り上げて提示したため、交渉は決裂。怒ったフェリシティは名うての泥棒であるダン(ジョー・ドン・ベイカー)を雇います。報酬は3万ドルとフェリシティのカラダ夜に忍び込んであっさりと奪うことに成功したダンは、約束通りにフェリシティとベッドイン。一発ヤって気分良く寝ていたダンが夜中に目覚めると、フェリシティは報酬を払わずにトンズラ。彼女を紹介してくれた仲介業者はリンの手先に襲撃されて死亡。ダンも襲われますが、突然中国系美女が助っ人で乱入して、カンフーで敵をなぎ倒します。彼女は香港警察の刑事スーで、盗まれた黄金像奪還の協力をダンに要請。本来もらうはずだった報酬を肩代わりすると言われたダンは、仲介業者が黄金像を航空便で送っていたLAにスーと向かいます。

 

LA到着後、友人のジェフ(ジム・ケリー)に会って宿泊先のホテルに向かうと、なぜかフェリシティが風呂で全裸待機していて、突然姿を消したことには理由があると弁明。その後、彼女の案内でダンとジェフはとある豪邸に連れて行かれます。すると、大勢のボディガードを従えた老紳士ウィンターズ(バージェス・メレディス)が登場。彼はフェリシティの雇い主でした。仲介業者がウィンターズ宛に送った荷物の中には黄金像は入っておらず、本物は別の場所に送っていたとのこと。そこで、その在処を知ってるであろうダンとジェフを呼びつけて、24時間以内に黄金像を渡さないと地球上から消し去ると警告。さらに、フェリシティはウィンターズから30万ドルの購入資金を預かっていたにも関わらず、安く買い叩いて儲け分を着服しようとしていたことも発覚。その後、ダンに見放されたフェリシティがLAまで追って来たリンの手下に拉致されようとしたところをスーが救出。で、結局、ダン、ジェフ、フェリシティ、スーが協力して、どこにあるか分からない黄金像を見つけようと奔走して・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Golden Needles」。「燃えよドラゴン」(1973)の夢よふたたびということで、製作・監督・音楽(ラロ・シフリン)・一部の出演者が再結集。当初はジョージ・レーゼンビーとアンジェラ・マオのW主演でゴールデン・ハーベストが共同製作、千葉真一も共演予定だったとか。「燃えよドラゴン」はブルース・リーの存在感あってこそだったわけで、本作の布陣ではショボいアクション映画になるのは明白。ジム・ケリーはちょこっとだけ空手アクションを見せますが、ジョー・ドン・ベイカーは腕っぷしを使ってひたする殴るだけの攻撃。女刑事が蹴り技で少し健闘する程度。LAでの争奪戦の末に見つけたのはレプリカで、本物を保管している仲介業者の未亡人がいる香港にまた戻って路上で大立ち回りがあって終わります。「ロッキー」(1976)で再ブレイクする前のバージェス・メレディス奇妙な蝶ネクタイ姿の富豪を怪演してるのが見どころで、ダンが出入りしている雀荘の女主人役でアン・サザーン、それと、ロイ・チャオの手下で若々しいリチャード・ンが出演。あとは、「燃えよドラゴン」の風景フッテージも一瞬流用されたかなくらいの作品でございました。

 

 

 

「甦える大地」(1971)

 

石原裕次郎が松竹と組んだ鹿島灘開発プロジェクトの苦労話をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督は中村登。予告編はコチラ

 

江戸時代、度重なる利根川の大洪水で農民や漁民は苦しんでいて、郷士の中館広之助(渡哲也)が地元民をこき使って治水工事を断行したものの、大利根の脅威に屈して自殺したという苦い過去がある茨城県の鹿島灘。昭和に入っても、鹿島は細々とした暮らしをするしかない不毛の地のままでした。新たに知事になった岩下(岡田英次)は企業を誘致する工業用地の開発に乗り出します。彼の下で働く県庁の開発担当職員の植松(石原裕次郎)は、建設省の辣腕役員野田(三國連太郎)を動かそうと奔走。やがて、国家予算が計上されると、鹿島の開発がスタート。同時に、農業や漁業に従事する地元民への説得を第一に考える方針の下、説明会の実施と共に県職員を動員して個別の説得作戦も実行。植松も鹿島を訪れて活動しますが、郷土愛の強い住民たちはなかなか土地を売却することに同意しません。中学校教師の添島(司葉子)も反対住民の1人。正反対の立場にある植松と添島は、何度か会ううちに次第に親しくもなっていきます。

 

岩下知事は最初に誘致予定の企業トップ(滝沢修)と極秘会談。工業用地にふさわしい土地であることを証明するために試験堤を完成させるも、台風で崩壊します。さらに、賛成派だった鹿島町長(志村喬)反対派に回ったことで、雲行きは一気に怪しくなる一方。それでも、地道に開発事業住民の説得をコツコツと突き進めていく中で、ようやく建設省の野田が合流。植松を部下につけてプロジェクト実現に向けて剛腕を振るうと、住民の要求との折り合いもつけて、なんとか困難だった土地買収を成功させます。その後、大規模工事で人工港大きなコンビナートが完成。ただ、大金を手にした多くの地元民たちは引越し先の農業団地スナック等の遊興施設を作って、農業そっちのけの生活をやり始めます。従来の農業を絶やすことなく、工業の振興も図ろうとしていた岩下知事の理想とはかけ離れてしまった鹿島の現状に、植松はショックを受けて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1971年2月26日。広大な土地で冒険やチャレンジをした人々を描く石原プロ大作路線の最後の1本。寂れた土地の開発事業ということで、他の作品よりも命懸け度が低く、スケールも大幅ダウン。土地を離れたがらない地元民を説得するというのがストーリーの打開ポイントなので、内容もいかんせん地味です。ただ、日本映画がわびしくなっていった1970年前後の不遇な時期に年1ペースで大作に挑戦したことはスゴイです。一連の作品が映画館で観てもらいたいからという裕次郎の想いから映像ソフト化などを長らく封印してしまったせいで、彼のカリスマ性を知っている世代とそうじゃない世代が断絶できてしまったのは残念。私は若い頃の裕次郎映画を観るまでは、「太陽にほえろ」とかの太ったボスのイメージしかありませんでした。本作の頃はすでに"ボス感"が出始めていた頃で、2年前に人妻となった司葉子とのロマンス描写も色っぽさがありません。

 

裕次郎の熱意の源になっている動機が分からないため、主人公の魅力が薄くなってる感じもします。最後は、代替の農地を苦労して用意したのに住民たちが浮かれた生活をしている姿を見てショックを受けると同時に、マジメに農業に専心する若者(寺尾聰)の存在も知って、少しの希望を感じて歩いていく場面で映画は終わりました。自治体の協力を得て作りながら、開発事業を手放しで礼賛するのではなく、ほろ苦い要素を強めにしている点は興味深いです。司葉子の自宅から見える煙だらけの工場の美術は気合いが入ってました。裕次郎以外には住民を説得する県職員たちの努力にもフィーチャーしていて、日活組の浜田光夫や川地民夫バイク軍団の一員として登場。住民の老婆役で北林谷栄、知事の妻役で奈良岡朋子といった劇団民藝組も参戦。三國連太郎が裕次郎を慰める時の「土地開発の成果は20年、30年経たないと分からない」というセリフが印象的で、この土地に誘致した企業が20数年後に"サッカーの神様"ジーコを連れてきた歴史がエモいです。