「女体桟橋」(1958)

 

石井輝男監督の潜入捜査モノを動画サイトで観ました。

 

 

無国籍感のあるセクシー系ノワール物。予告編は見つからず。

 

東京の治外法権エリアである租界が舞台。国際的なネットワークを持つコールガール組織が暗躍しています。国内での闇売春ビジネスを展開しつつ、高級クラブ「アリゾナ」を拠点として、香港やシンガポールなど海外へもコールガールを輸出している模様。警察がコールガール組織殲滅のために送り込んだ潜入捜査官の吉岡(宇津井健)は裏のビジネスを手掛ける男を装い、商談目的で「アリゾナ」の支配人・黒川(植村謙二郎)に接近します。そこに組織のボスであるトムソン(コン・ウェイ)が情婦であるダンサーのルミ(三原葉子)とともに来日。ルミは、吉岡のかつての恋人でした。久々の再会も、敵の情婦になっていたことに戸惑う吉岡。

 

時を同じくして、新聞記者の晴子(筑紫あけみ)もダンサーを装って組織に潜入、コールガール組織の全貌を暴くスクープを狙っていました。この晴子とも吉岡は旧知の仲。モテモテの吉岡。一緒に来日してルミを姉のように慕うピアニストの照夫(旗照夫)は、吉岡と晴子が怪しい会話をしている姿を見て、組織に潜入したスパイではないかと疑います。報告を受けたルミは照夫に晴子を監禁させますが、かつて愛した吉岡を疑うことはできず、吉岡をボスに引き合わせて商談を進める手筈を整えます。そして、黒川支配人をそそのかして、ボスを押しのけて吉岡と一緒に組織を乗っ取ろうと提案。コールガールを輸出するために横浜港を出発するグレイト・スカイ号の船上でボスと交渉することになった吉岡は、このタイミングで警官隊を包囲して組織の一斉摘発を狙います。しかし、支配人黒川は吉岡を警官だと見破っていて、ボス側に寝返ったため、吉岡とルミは一転して命を狙われるピンチとなって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

観客のエロ需要を満たすために、下着姿やきわどい衣装のセクシーダンス、ヌードモデル撮影などのシーンを多くした、当時の規制ギリギリのお色気要素とモダンな犯罪アクションを組み合わせてテンポ良く描いています。売春防止法の制定(1956年)の影響もあって、粗製乱造されたプログラムピクチャーの1本といったところ。タイトルの「女体桟橋」は、コールガール(女体)を日本から海外へと繋ぐ桟橋的役割のクラブ「アリゾナ」のことを指しています。主役は宇津井健英語も堪能な優秀な刑事として、チープなガンアクションも披露。それにしても、危険すぎる潜入捜査の仕事は公務員の給料では割りに合わないとつくづく思います。この頃からグラマー女優として頭角を現してきた三原葉子はセクシーダンスを披露、ボスの情婦でありながら宇津井健を助ける立場になってしまい、最後は銃弾に倒れます

 

地道な売春組織捜査をしている若手刑事とバイト女子大生の恋物語もあるのですが、オトリ捜査で売春婦を呼んだ刑事の前に現れたのが、学費を稼ぐために売春婦をしていた女子大生だったという切ない展開が待っていました。あと、ルミの弟分で出演していた旗照夫は歌手として有名な人のようで、紅白歌合戦にも7回出場しているジャズ・シンガー。姉(女優)の息子がハリウッドで活躍しているケイリー=ヒロユキ・タガワなんだそうです。