浜崎あゆみは女の敵か味方か――浜崎あゆみから大森靖子と「ビバラポップ!」へ | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

今年、さいたまスーパーアリーナで、「VIVA LA ROCK」の兄弟フェスとして「ビバラポップ!」が開催されることになった。

プレゼンターは、大森靖子とピエール中野(凛として時雨)。

開催にあたっての大森靖子のメッセージがこちらに書かれている。

大森靖子 公式ブログ - 「ビバラポップ!」というフェス開催します
https://lineblog.me/oomoriseiko/archives/13176202.html

もちろん、「ビバラポップ!」の公式ページにも大森靖子とピエール中野のメッセージが掲載されている。

VIVA LA ROCK EXTRA 「ビバラポップ!」
http://vivalapop.jp/

その前の話――

最近、ある男性ラッパーと女性ラッパーとのラップバトルで炎上があったと聞いた。男性ラッパーの発言(バトル中のラップ)が女性蔑視ではないか?ということなのだが、それに対して、それなら女性ラッパーの発言(バトル中のラップ)も男性蔑視ではないか?という指摘もあり、どうなんだということになったらしい。

その中でとても印象に残る言葉があった。大体の内容は、

バトル中の発言に、社会で求められるルールやモラルは求められない。その中で女性蔑視を持ち出し、「女性に容姿の批判や性的な批判はしない」とするなら、「女性は保護しなければならない=女性はか弱い」ことを認める裏返しになる。
バトル中の発言に女性に対する気遣いを求めること自体に、女性への根本的な差別が内在している。女性も平等に、同じスタートラインに立って戦いたいと願うものからすれば、バトルにおける女性蔑視の訴えこそが女性蔑視を生むことにつながる行為である。
男性と同じフィールドで戦う女性が現れてきた今だからこそ、男性と女性が性に依存せず、本当の意味で平等なバトルができる日が来ることを望む。

というものだった。また、男性ラッパーが「(バトルに)女がいない理由は?」と投げかけたのに対して、女性ラッパーが「かわいい・セクシー担当が既にいるから」というような返しをしたらしく、それでは、女がいる理由は「かわいい」と「セクシー」になってしまうという指摘もあった。

これを聞いた私は、またいつものあれになってしまうけど、でもやっぱり日に日にその思いを強くする。

浜崎あゆみって凄かったんだなあ。

ラップの世界と浜崎あゆみがいる世界とでは違うところもあるだろうけど、いや、でも、ラップの世界だけじゃなく、最近差別とかいろいろな話題を見る度に、そういう差別は昔からあるけど、それ、浜崎あゆみがとっくに体現してきてるんだけど!と言いたくなったりして…。しかもそれは、過去形ではなく、今もだ。

しかし、私が言いたいのは、浜崎あゆみは「女性ラッパー側」でも「かわいい・セクシー担当」でもないということなのだ。

このバトルの件で、男性ラッパーに腹を立て女性ラッパーに共感した人が浜崎あゆみの「my name's WOMEN」(2004年)を挙げていた。つまり、「女性ラッパー側」の視点として浜崎あゆみの曲を受け止めているようだった。(あくまで私が受けた印象なので違ったらすみません)

しかし、「my name's WOMEN」には、<涙が武器だなんてねぇいつの話>とあるように、女性を批判する視点も出てくるのだ。



つまり、<着飾っただけの人形なんかじゃない>とか<都合よく存在してる訳じゃない>といった言葉は、男性だけではなく女性にも向けられたものなのだ。

逆に、浜崎あゆみは「かわいい・セクシー担当」じゃないかという人もいるかも知れない。かつて椎名林檎が言ったように、「自分の手を汚してない可愛い子ちゃん」だと。(注:椎名林檎は浜崎あゆみのことを言ったわけではありません)

しかし、それならば、「my name's WOMEN」は、「かわいい・セクシー担当」への批判にもなっているじゃないか。

私は、浜崎あゆみを「女性の味方」とか「女性賛歌」とか思ったことはあまりなくて、そう言われても今一つピンと来ない。
「my name's WOMEN」にしても、「Lady Dynamite」にしても、「(男性に対して)よくぞ言ってくれた!」というよりも、「共にがんばろうぜ!」と言っているように感じる。

では、浜崎あゆみが「女性蔑視」や「女性差別」といったものが見えていないのかと言ったら、そうではなく、誰よりも見えていると思うし。

しかし、浜崎あゆみは何かを自分が「女性」であることのせいにしたり、「男性」のせいにしたりしない。

もちろん、浜崎あゆみを「女性の味方」と思う視点があって良いと思うし、私だって思ったことないとか言いつつ、女性として勇気づけられたり力づけられたりする。だって、浜崎あゆみは「女性」だしね。

そして、「ビバラポップ!」開催における大森靖子のメッセージだ。もう一度貼るので、読んでみて欲しい。

大森靖子 公式ブログ - 「ビバラポップ!」というフェス開催します
https://lineblog.me/oomoriseiko/archives/13176202.html

「どうして女の子がロックをしてはいけないの?」

私はこれを聴いたとき、浜崎あゆみを思い出していた。

「どうして女の子がロックをしてはいけないの?」

“私にとって、女の人がロックをする険しさを誰よりも体現しているのが浜崎あゆみだった”

他にも、大森靖子のメッセージを読みながら、これは私がブログで何度も何度も書いてきたことではないか?と思ってしまった。

音楽は魔法か?の件で、意図せずとも、でもそれは楽曲の力に呼ばれて、「音楽」とは何かをそれぞれに考えさせた大森靖子が、今度は、「ロック」とは何かを問うている。

これは、「男性の力に頼るな!」とか「女が!女が!」といった、ミソジニーとかミサンドリーといったよくわからない動機からくるものではない。(ミソジニーというのは女嫌い、ミサンドリーというのは男嫌いのことを指すようです。また一つ勉強になりました)
現に大森靖子は、90年代のその闘いの担い手として、小室哲哉とつんく♂を挙げている。小室哲哉もつんく♂も「男性」だ。だからこれは、男が~とか女が~とかいう話ではないのだろう。そこらへんが大森靖子が誤解されやすいところだと思うけど、でもそこを通らなくては伝わらないのだから、たとえ通っても伝わらなくても、通るしかない。

大森靖子が、その闘いの流れを意に汲まない昨今の 90年代リバイバルには反対と言ってくれたのは嬉しかった。

きっと私にとってその闘いとは、「浜崎あゆみ vs ロック」時代のことで、それをなかったことにされるのは「?」だったから。

vs ロック 【前編】
vs ロック 【後編】

“他の人はどうか知らないけれど、私の中には確かにあったんだよ、「浜崎あゆみ vs ロック」時代”

闘いって、何をそんなに鼻息荒くしているんだと、今はそんな時代じゃないと言われるかも知れない。かつてロックは時代に拮抗していたけれど、今は時代に祝福され、最近ではもっと違うものになっているのかも知れない。 第4回 「あゆはロックだ」がロックじゃなくなってきた でもそんなことを書いた。しかし、そうではない。

いつからロックがそんなにエラくなったんだ?

男とか女でもない。

あのビートルズだって、今も可愛げあるじゃん。

ポール・マッカートニーなんて、可愛げの極致じゃん。

エレカシなんて、可愛げの権化じゃん。

終わりと始まりが重なるとき

大森靖子が、「ビバラポップ!」で今一度「90年代を殺さなければならない」と言っているのは、今私の中で勝手に言葉にするとしたら、可愛げを奪おうとするもの、可愛げを奪われていることに気づきもしないものとの闘いなんだと思う。

“私が、大森靖子が掘り起こしてくれると期待しているもの。
ロックが好きだったのに、ロックから捨てられ、ロックを捨てるしかなかった私の引き裂かれてしまった心を、つなげるアーティスト。
終わりと始まりが今、重なろうとしているのかも知れない”


そして、その闘いをずっと続けてるものといったら、浜崎あゆみがいるんだよ。

もちろん、浜崎あゆみに “あの容姿” があったから出来たことがあるのはわかっている。でも、浜崎あゆみはそこから逃げなかったし誤魔化さなかったわけでしょ。“容姿” のことはとっくに乗り越えている、と私は思っている。

昔、スマパンとバックストリートボーイズの話で、「ただそこに向かおうとしてるプロセスを、自分が楽しみたい」と浜崎あゆみは言った。
大森靖子を見つけたとき、そのプロセスを受信している人がいた!と思った。

そして、浜崎あゆみのその発言を引き出したのは、「VIVA LA ROCK」及び「ビバラポップ!」の主催者である鹿野淳だ。
これはもう、運命感じるっきゃないじゃないか!

境界線の住人 ~大森靖子と浜崎あゆみと…~

“「大森靖子は器用、浜崎あゆみは不器用」なんじゃないか”

大森靖子も不器用だったね!

「浜崎さんって本当のところを見せずに未だにやり切ってるから一番ストイックでかっこいいと思います」と大森靖子は言っていたなあ。

しかし、大森靖子に対して、自分が傷つけられることには敏感なのに他人を傷つけることには鈍感って批判は、ずいぶんと見当違いだと思うなぁ。

しっかし、3月はエレファントカシマシ、4月は浜崎あゆみ、5月は「ビバラポップ!」って、

さいたまスーパーアリーナやばくないですか!?

その昔『GO!FES』で頓挫してしまった何かが、「ビバラポップ!」で姿を現わすのかも知れない。

フェスに行こう?!