
お子さんがひきこもり状態にあるご家庭では、お子さんへの関わり方に悩みがあるのではないでしょうか。
「学校や仕事のことは言ってはいけない」「友達のことは話題にしてはいけない」と思い込まれているご家庭も多いです。従来の考え方とは異なるひきこもり対応について学んでいきましょう。
この記事でわかること
▶︎ひきこもりについて
▶︎従来の対応の問題点
▶︎ひきこもり対応6つのヒント
この記事を書いた人:なかがわひろか
▫️発達障がい・不登校・ひきこもり専門カウンセラー
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️何年、何十年にも渡るひきこもり対応の実績を持つ
厚生労働省によるひきこもりの定義としては以下のように言われます。
"様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念(厚生労働省)"
「他者と交わらない形での外出をしていてもよい」とされているのは、例えばコンビニなどには行く、ということを指します。ただし、友達と遊びに行く、という場合は他者との関わりになり、家庭外での交遊となりますので、当てはまりません。
つまり「ニート」と呼ばれる方とは厳密には異なると考えられます。ニートとひきこもりの大きな違いは「他者との関わりがあるかないか」になります。ニートは仕事はしないけれども、友達とは出かけたりします。ひきこもりは他者との関わりがほとんどない状態になります。
ただ「うちはひきこもりじゃなくてニートだから大丈夫」と思われるご家庭はないと思います。私の事業においてはひきこもりはニートも含みます。また家事手伝いなどのように、家庭の中で家事はやるけれど就労はできていない方で、かつ親御さんとして心配されているケースも含みます。
ひきこもりは「hikikomori」と海外でも訳されます。つまり日本発祥のものです。世界的にみても日本はひきこもりの最先進国と言っても過言ではありません。しかしそもそもですが、どうしてひきこもりは「問題視」されるのでしょうか?
一番の問題は、「親が亡き後の生活」です。ひきこもり生活を続けるということは、生活の糧を得る仕事をしない、ということにつながります。
親が生きている間は生活はできるかもしれません。しかし親世代の方が早く亡くなります。親がなくなってからの約数十年間をどうやって生活していくのか。生活保護を受給することも考えられますが、生活保護の受給要件は厳しくなってきている傾向があります。簡単に受給できるものでもありません。
今のままの生活を続けると、いずれ行き場を失ってしまうかもしれません。親が亡き後、誰も面倒を観てくれない状態になったとしても自立して生活していく基盤を整えられていないことが「問題」とされています。
「8050問題」と言われる、40代〜50代のお子さんを、70代〜80代の親御さんが貯金や年金で生活の面倒を観る状態があります。こちらでも一番に問題にされるのが「親が亡き後のお子さんの生活」なのです。
しかしながら、私はもっと大きな課題が存在していると考えています。それが「他者との関わり」です。
金銭面の課題ももちろん重大なものなのですが、例えば親に十分な財産がありそれを相続できるのなら、それでいいのか、と言われるとやはり違うと考えています。
いくらお金があったとしても、人との関わりが無いと、孤立感を持つことになります。1人で過ごすことが好きな方もいますが、1人を選ぶことと、1人になってしまうのは別の意味を持ちます。
「孤独」は選ぶことができます。しかし「孤立」は、そうならざるを得ない状態にまで追い込まれて起こるものになります。
他者との関わりを持つことができないこと。これがひきこもりにおける最大の課題なのです。
「本人が動き出すのを待ちましょう」「お子さんを信じて待つことが何より大切」という言葉がこれまでのひきこもり対応で言われてきました。
しかしながら、「待つ」ということが、お子さんのひきこもりの長期化につながる要因の一つにもなっています。
以下の図をご覧ください。私が「ひきこもりスパイラル」と名付けているものです。
退職をしたこと、退学したことなどをきっかけにひきこもりが始まります。やがて時間が過ぎ、年単位のひきこもりが続きます。時間が経つことで、より一層就学・就労の壁が高くなります。躊躇している間にまた時間が経ち、さらに長期化していきます。
「待つ」対応をしていても、お子さんの外の世界に出るハードルは高くなる一方です。ひきこもり対応において「待つ」ことは、適切な対応とは言えないのです。
「仕事や学校の話はしてはいけない」「同級生の話をしてはいけない」というように「言ってはならない、話題にしてはならない禁句(タブー)を口にしてはならない」と言われることもあります。
そのため心の内では「仕事はどう考えているんだろう」「これからのことはどうするつもりなのだろう」「早く働いてほしい」と思っているのに、表に出る言葉はそのことを一切口にしないようになります。つまり心の内と表に出ることが異なってくるのです。
お子さんは、親の心の内を常に推測しています。「ゆっくりしたらいいよ」と言われても「本当は早く働けと思っているのだろう」と疑います。些細なことをきっかけに起こる喧嘩の中で思わず「いつまでこうしているんだ!」と言われたら「ほら、やっぱり心の中では働けと思っていたのだ」と感じます。
タブーを設定してしまうことは、お子さんとの対話をぎこちなくさせ、疑心暗鬼を生む要因となるのです。
専門家の中にも「働く以外の生き方もある」と悟す人がいます。確かに人の生き方は多様です。その生き方に良いも悪いもありません。
しかしながら、現実問題として、生活していくための糧を得ることは必要なことです。糧を得られないのに「働かなくていい」というのは無責任な言葉です。借金をせずとも自己の生活が成り立つようにしていくこと。やはり生きていく上で必要な考え方です。
またご本人も、周りの人たちと同じように働きたいと思っている方が多いです。社会の役に立ちたいという思いも持っています。私はひきこもり対応の目標の中に「就労」を入れることはとても大切なことだと考えています(働かない生き方を選ぶ方を否定しているわけではない、という点はご留意ください)。
ここからは、ひきこもり対応における5つのポイントについてお伝えします。
1. 関わりを持つようにする
ひきこもり状態が長期化した場合「子どもと話をすることすらできない」状態になられているご家庭もあります。
食事は部屋、もしくは家族と時間をずらして食べる、昼夜逆転をしているなどですれ違いの生活になります。
ただお子さんと話をするチャンスは、お子さんからやってくるわけではありません。親御さんから行かない限り、その機会は生まれなくなります。

こちらが親の関わりの重要性の概念図です。ひきこもり状態になると、それまでの生活と比べて、関わる人の度合いにおいて、親の比重が高まります。ほぼ100%と言っても過言ではありません。
つまり親の関わりがないと、生身の人間との関わりが全くなくなってしまうことになります。人は孤立していくと、考え方が極端な思考に偏るようになります。ネットやテレビの情報に簡単に左右されるようになり、自分の考えを持つことが難しくなるのです。
「ひきこもりは親のせいだ」という意見もありますが、私はそれには賛同しません。ひきこもりのきっかけやその背景は簡単に一つの理由に絞れるものではないためです。
ただ「ひきこもりの長期化」においては親御さんの働きはとても重要な影響を与えています。まずは日々の挨拶からでも良いので、関わろうとする姿勢を見せることがスタートになります。
関わりを持つことができたとしても、高圧的に関わったり、また王様に対応するかのように腫れ物に触れるように関わるのはどちらも間違いです。
傾聴する気持ちを持ちつつ、次の3つの力を重視するようにしてみましょう。
対話の基本中の基本となるものです。対話に行き違いが起こるとき、その原因は「受容ができていない」ことにあります。それぞれがお互いの主張を言い合うようになり、そこに行き違いが起こります。
こちらの意見を伝えるのは後回しにして、まずお子さんの思いを「受容する」ことです。「なるほどそういうふうに考えているんだね」というように、どんな意見を言ったとしてもまず受けるのです。
人は「話を聴いてくれる人の意見を聴く」生き物です。その代わり、聴いてくれない、受け入れてくれないと感じると攻撃的になってしまうのです。
まず「受ける」ことがあった上で、共感を示すことも重要です。お子さんの感情を表す言葉「悲しい、辛い、苦しい」という言葉を伝え返すようにします。
気持ちをわかってもらえたと感じられたときに、安心感を得ることができます。安心があって初めて冷静に自分のことを考えられるようになります。
ただ、どうしても共感できない部分も出てきます。そのときに「私はこう思う」と意見を伝えていいものか悩まれるのではないでしょうか。そこで必要になるのが「率直力」です。
自分が感じている思いを率直に伝える力です。「私はこう思うよ」と親として、1人の人間として思っていること、考えていることを伝えます。世間の一般論であったり、誰かの受け売りではない、ご自身の思いを伝えることが重要です。
この率直力のところが誤解されやすいところです。「傾聴するためには、自分の意見を言ってはならない」と思い込まれている方が多いです。もちろんそんなことはありません。
きつい言い方など言い方は配慮する必要がありますが、ちゃんと聴いた上であれば、むしろ率直に親が思っている意見は伝えるようにしましょう。ただ一方的ではなく「私はこう思うけれど、あなたはどう?」とまたボールを投げ返すようなイメージで確認も取るようにしましょう。
ひきこもりの対応において、将来の話をタブーにされているご家庭も多いと思います。しかしそれではいつまで経っても将来について考えるきっかけを得ることができなくなります。
また口では「ゆっくりしたらいいよ」と言っても、お子さんは「本当は働けと思っているのだろう」と疑います。親子がお互いに腹の内を探りながらになると、それは本音を話せる間柄になれていないということになります。
腹の探り合いが必要なのではありません。お互いに思っていることを率直に言い合い、聞き合うことが重要なのです。
2.であげた対話のポイントを押さえた上で、親御さんとして心配されているのであれば、仕事や将来の話もしましょう。
ただお子さんが明らかに嫌そうな態度を取ったり、苦しそうな顔つきをした際は「まだこの話は嫌かな?」とお子さんの思いを確認しましょう。そして「何が苦しめているのか、一緒に考えてみようか」と「一緒に」を強調してみましょう。将来のことについての不安や苦しみを話してくれるかもしれません。そんな気持ちを話せることは、お子さんにとっても安心感につながります。
仕事や将来の話をきっかけはお子さんが抱えている葛藤を知る機会にもなります。お子さんの思いを「聴く」という前提に立ちながら、親の意見も伝えるようにしましょう。
ひきこもり状態が続くと、昼夜逆転が起こることが多くなります。親がいる時間を避けようと、家族が起きてくる朝方に寝て、家族が寝静まる夜中を生活のメインの時間帯にするようになります。
こうなるとよく起こるのが「お子さんの生活に親が合わせてしまう問題」です。朝は子どもが寝ているから、静かに朝の準備をして、物音を立てずに仕事に出かけます。休みの日もお子さんが寝ているからと、掃除機もかけられず、息を潜めて生活されます。
これはひきこもりの生活に家族が合わせてしまっている状態です。これの何が良くないかというと、「お子さんが家族の最上位に来ている状態」だからです。つまり家族の中で王様のような扱いを受けている状態です。
この状態になると、お子さんの振る舞いはエスカレートしていきます。やがて暴言、暴力を振るうようになり、家族を意のままにしようとします。
しかし一歩外の世界に出ると、誰も自分の思うように動いてはくれません。家の中と外に明確な違いが出来上がることになります。この状態になるとお子さんはより一層外の世界に出ることが怖くなります。
お子さんが昼夜逆転の生活をしていても、家族はその生活に合わせないようにします。掃除をしても、テレビを観ても構いません。それをお子さんがうるさい、と言うのであれば、お子さんの方が家族の生活に合わせるようにするように伝えます。
お子さんに嫌がらせをしろ、ということではありません。あくまでご家族は、家族の生活を大事にするようにしましょう。
ひきこもり中のお子さんの中には、家族に対して暴力を振るったり、壁を蹴って穴を開けたりという行為をする場合があります。
暴力には徹底して厳しく対応する必要があります。4.の生活に合わせないことにも関連するのですが、暴力を受け入れてしまうと、お子さんの振る舞いはよりエスカレートしてしまうのです。そのことにより、家の中と外との大きな壁が生じるようになります。外の世界では誰も自分の言うことを聞いてはくれないからです。
暴力を振るわれたら(それがどれだけ些細なものであっても)、「絶対に許さない」という姿勢が必要です。ひどい場合には警察を呼ぶことや、親御さんが家を出て生活することも必要になります。
「暴力を振るったら、ここまで大変なことになる」ことをお子さんが理解することが必要となります。
ただし、暴力にはお子さんの思いがあるのもまた事実です。言いようの不安や怒りが家族の一番弱い人(多くは母親)に向かいます。その思いを受け止めることは必要です。
暴力は受け止めず、キッパリと対応し、お子さんの抱える思いは受け容れるようにしていきます。
ひきこもりの場合に見落とされがちな点が「発達障がい」です。発達障がいにはASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)・SLD(限局性学習症)が存在し、併発している場合もあります。
人間関係がうまくいかないことを理由に引きこもりが始まることもありますが、その背景には実は発達障がいが隠れていたということもあります。
お子さんの特性を知ることで、得意、不得意が見えてくるようになります。得意を活かし、できるだけ不得意を避けていくこと(もしくは改善できるようにしていくこと)が、お子さんがより生きやすくしていくために必要ことです。
発達障がいについてはこちらにもまとめているので、ぜひご参考ください。
ここまでひきこもりの対応についてポイントを述べてきました。キーワードは「やってはいけないと思い込まないこと」です。むしろお子さんとの関わりを大事にしていきます。
「もしお子さんがひきこもりでなかったらやることは、やっていいことです」と日々のカウンセリングの中でお伝えすることがあります。
「将来の話をしてもいいだろうか?」「ドライブや買い物に誘っていいだろうか?」「好きなテレビ番組を一緒に観てもいいだろうか?」「ご飯を一緒に食べようと誘ってもいいだろうか?」どれも、お子さんがひきこもりでなかったら、当たり前にやることではないでしょうか。
理想の家族は、傾聴や対話法など意識せずとも、言いたいことを言い合えることです。ある暴力がひどいご家庭がありましたが、暴力がやみ、親子の関係が修復されてきた頃にこんな対話がありました。
子:「なんであの書類を出してくれなかっの!!」
母:「そんなの知らない。自分で管理しないのが悪いでしょ!!」
子:「もう最悪!!本当にムカつく!!!」
母:「こっちこそ腹たつよ!ところでご飯できたら早くおいで」
子:黙って食卓につく
言い合いをしても「ご飯できたら食べなさい」と言ったら黙って食卓につく。傾聴や対話法など無視したやり取りですが、ここには親子だからこそできる関係性があります。
目指す関係はこのような関係だと思うのです。しかし今の時点では、この関係は難しいと思います。ここに至るまでのプロセスの中に対話法を学んだり、お子さんとの関係性を見直すということが存在します。
いつか小難しいことを気にしなくても、言いたいことを言い合って、喧嘩しながらもやり取りができるようにしていくことが、本当の意味での親子のゴールなのです。
ひきこもりの対応は迷うことばかりです。考えすぎて、当たり前の対話ができなくなるご家庭は多いです。
従来の「お子さんが動き出すまで待つ」ことは弊害が多いです。待つことが必要な時期もありますが、関わりを持った上で待つことが重要なのです。
お子さんとの対応に迷っている方、また今のやり方に客観的なアドバイスを求めていらっしゃる方はぜひ一度当事業所にご相談ください。お子さん、そしてご家族にとって最適な方法を考えていきましょう。

■プロフィール■
■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
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