この記事では、傾聴を学ぶ方にとって意識しておきたい「3つの力」についてお伝えしています。
傾聴について、基本編である「9つのコツ」をご覧いただいてから読んでいただけるとより理解が深まります。
【傾聴の基本9つのコツについて👇】
お子さんのより深い思いを聴くための方法を学んでいきましょう。
この記事でわかること
▶︎傾聴に絶対に必要な3つの力
▶︎3つの力の詳細について
▶︎それぞれのポイントについて
▶︎傾聴に必要な「3つの力」について
傾聴には絶対に不可欠な3つの力が必要とされます。それが「受容力」「共感力」そして「率直力」です。
この3つの力がうまく発揮されることで、お子さんとの向き合い方に変化が訪れるようになります。
逆に今お子さんとの話し合いがうまく進まない方は、このうちのどれか、もしくはすべてが欠けている状態の可能性があります。
それぞれの力について詳しく見ていき、今のご自身の傾聴力をチェックしてみましょう。
第1の力:受容力
受容力とは「まず相手の考えをすべて受けとめること」です。「まず」という点がポイントです。
実はお子さんとの対話において最も重要なことがこの受容力だと考えています。以下の項目をチェックしてみましょう。
【受容力チェック項目】
1. お子さんの話を「まず」丸ごと受けとめているか
2. つい「いやそれは違うよ」と反論していないか
3. 親としての意見を伝えてはいけない、と思っていないか
細かく見ていきましょう。
1. お子さんの話をまず丸ごと受けとめているか
受容のポイントは「丸ごと受けとめているか」です。「学校が嫌だ。行きたくない。」とお子さんが言ったときに「そうか、嫌で行きたくないんだね」というのが受容です。
まず大事なことはお子さんの思いを「受ける」ことです。対話はキャッチボールに例えられますが、対話がうまくいっていない親子関係には間違いなくこの受容が無いことが挙げられます。
お子さんが投げてくれたボールを無視して、自分が投げたいボールを投げつけている状態です。
そうではなく「まず」「受ける」のです。どんな思いを発言したとしても「そうか、そう思っているんだね」と受けとめることが、受容の鉄則になります。
2. つい「いやそれは違うよ」と反論していないか
ここでやってしまいがちなことが、「行きたくないって、そんなことを言っていたら高校に行けなくなるよ?」とつい反論していないでしょうか。
お子さんの「行きたくない」という思いを受けとめる前に、ご自身の意見をぶつけ反論している状態です。
「まず」「受ける」ができていない状態です。お子さんが「行きたくない」という不安を、勇気を出して思いを伝えてくれたのに「そう思うのは間違いだ」と反論されたら、みなさんだったらどう感じるでしょうか。
反論をしてはいけないということではありません。自分の意見を伝えることは大事です。ただその前にやるのは「まず」「受ける」です。この「まず」の部分を何よりも意識するようにしましょう。
3. 親としての意見を伝えてはいけない、と思っていないか
先ほど「反論してはいけないわけではない」とお伝えしました。受容=自分の意見は伝えないと感じてしまう人が多いのもまた事実です。
しかし親の意見は伝えてはいけないものでしょうか?私はそう思いません。むしろ親としての意見も伝える必要があると思っています。
「まず」「受ける」ができてさえいれば、むしろ親の意見は伝えてほしいと思います。この率直力については3つ目の力でご説明します。
よくある受容の誤解
受容のお話をすると、必ずこのような意見が出てきます。「子どもの言うことを全部受けとめていたら、言いなりになってしまう」。
実はこのご意見は、受容の本質を誤解していることから生じています。
言いなりとは「子どもから言われたことにただ従うこと」です。「学校に行きたくない」と言われたら「じゃあ行かなくていいよ」と言うのが「言いなり」の状態です。
受容は違います。
「学校に行きたくない」と言われた「行きたくない」という気持ちを「そうか、行きたくないんだね」とありのままに受けとめることです。
受けとめたあとに「お母さんはこのように思うよ」と親の率直な意見を伝えます。これだと言いなりになることはありません。親の意見も伝えられているからです。そして子どもさんも自分の気持ちを受け止めてもらえた、と感じられます。
繰り返します。受容することと言いなりになることは、全く別物です。受容した上で、お子さんの要望に対して意見を伝えることは両立できるものです。この誤解をしないように気をつけましょう。
第2の力:共感力
受容した上で、さらにお子さんの思いに耳を澄ませることができると、お子さんの安心感はさらに大きくなります。その際に必要なことが「共感力」です。
共感とは「あたかも自分も感じているように感じること」を指します。まったく同じように感じることではなく「あたかも」という点がポイントです。
お子さんの「悲しい」「辛い」「苦しい」という思いを「しんどいよね」「悲しいよね」と受けとめることが共感です。
共感がどうして必要かというと、「自分のことをわかってくれる」という安心感・信頼感につながるからです。
親子のベースはこの「安心感」にあります。安心を感じられることで、心に余裕を生み出すことができます。余裕があれば、チャレンジしようという行動力も生まれてきます。
ではその共感力を高めていくために必要なことを考えてみましょう。ここで共感力のチェック項目について挙げてみましょう。みなさんはいくつ当てはまるでしょうか。
【共感力チェック項目】
1. 自身が共感された経験を持っている
2. お子さんの「感情の言葉」を伝え返している
3. 共感できるところについてきちんと共感し、そうでないところを無理やり共感しない
共感力を高めるためには、ここにあげたチェックポイントを一つでも多く体験できていることが重要になります。
もし一つも当てはまらなかったという方がいらしたら、今日から一つ一つ押さえていくようにしましょう。
1. 自身が共感された経験を持っている
共感力を高めるために、一度振り返っていただきたいことがあります。それが「過去に共感された経験」です。
どんなときに「共感してもらえている」と感じられたでしょうか。友達、恋人、パートナー、親、先生……過去に相談した相手に対して信頼感を持てたのはどんな人だったでしょうか。
共感するために必要なことは「共感されたことがある」という経験です。どうしてこれが必要かというと、共感してもらえた経験がない限り、何が共感されている状態かがわからないからです。
雪国の寒さを知らない東南アジアの人に「そんな格好じゃ生きていけないよ!」と言ってもピンとこないでしょう。冬の寒さは体感した人でないとイメージできません。
もし共感の経験がない方は、一度カウンセラーに相談してみるのもいいでしょう。カウンセラーは共感のプロなので「なるほどこれが共感か」と感じることができるでしょう。
2. お子さんの「感情の言葉」を伝え返している
共感で気をつけないといけないのが「自分が共感している」ことと「相手が共感してもらっている」と感じるのは別だということです。
いくらこちらが共感していると思っていても、相手はそう感じていないこともあります。ではどうやったら「共感してもらえている」と相手が感じてくれるでしょうか。
ヒントは「感情の言葉」にあります。感情の言葉とは「悲しい」「辛い」「苦しい」という一語で表現できるものです。もちろん「楽しい」「嬉しい」という言葉も入ります。
この言葉が話の中で出てきたときに「苦しいんだね」「悲しいんだね」「それは嬉しかったね!」と伝え返してみましょう。
私たちはどうして人に話を聞いてもらいたいかというと、感情に動きがあったからです。嫌なことや嬉しいことがあるときに誰かに話を聞いてもらいたくなります。
だからこそ感情を汲み取ってもらえると「共感してもらえた」と感じやすくなるのです。
3. 共感できるところについてきちんと共感し、そうでないところを無理やり共感しない
ここまで共感の重要性についてお伝えしてきましたが、何でもかんでも共感すればいいということにはなりません。共感で一番やってはいけないことがあります。それは「嘘をつくこと」です。
例えばお子さんが「学校は嫌だ。行きたくない。」と言ったとき、親として学校には行ってほしいと思っているのに「そうだね。嫌だね。行きたくないね」というのは「嘘」になります。
表面上だけ合わせていても、こういった嘘はふとしたきっかけで見破られます。嘘はつかないことが共感の鉄則になります。
共感できない部分については受容力を発揮するようにします。「そうかそう考えているんだね」と受けとめるにとどめるようにします。
第3の力:率直力
率直力とは「自分の思いをありのままに話す力」です。お子さんが不登校状態になると、どうしても親子の対話に緊張感が生まれます。
率直力について以下の項目をチェックしてみましょう。
【率直力のチェック項目】
1. 学校や勉強のことを遠慮していないか
2. 本当に伝えたい思いを掘り下げられているか
3. 自分を主語にした言葉で伝えられているか
1. 学校や勉強のことを遠慮していないか
「学校のことを話してはいけないのではないか」「勉強や進路のことを話すと辛くなってしまうのではないか」親御さんはこのように思います。
そしてこれはお子さんも同じです。「親は本当は学校のことを話したいけれど、遠慮しているんじゃないか」「本当は勉強をしてほしいけれど、無理しているんじゃ無いか」と感じます。
お互いが表面上は仲良くできていたとしても、「腹の底では何を思っているんだろう?」と勘ぐり合う状態が生まれてしまいます。
この状態があると「今は休もうね」と親に言われても「でも本当は行ってほしいと思っているんじゃないか?」と疑心暗鬼の思いが出てきてしまいます。
この状態を避けるために、親子の対話において「率直さ」は重要なものになります。私はむしろ学校や勉強のことを話せるようになることが大事だと考えています。ただし率直な思いを伝える前にぜひやっていただきたいことがあります。
2. 本当に伝えたい思いを掘り下げられているか
例えば本音として「学校に行ってほしい」と思っていた場合、「どうしてそう思うのか?」と自分に問いかけてみましょう。
「勉強してほしいから?」「友達と楽しく過ごしてほしいから?」「学校にはみんなが行っているから?」「将来のことを考えて行く方がいいと思うから?」このように何度もご自身に問いかけてほしいのです。
最低でも5回は問いかけてみましょう。どうしてそう思うのか、何がそう思わせているのか、問いかけます。何度も問いかけた先にあるのが、親としての本音の思いになります。
しっかりと掘り下げることができたら「ただ学校に行ってほしい」が「自分の人生の選択肢を広げるために、多くの人と出会って刺激を受けてほしい。そのために学校という場にも行ってほしい」とより具体的に整理されます。
伝える前に、どうしてそう思うのかについて、しっかりと掘り下げることが重要なのです。
3. 自分を主語にした言葉で伝えられているか
自分を主語とにした言葉とは「私はこう思う」と「私は」を主語にすることです。世間の一般論ではなく「私はこう思う」と伝えることです。英語で「アイメッセージ」と言います。
アイメッセージの「アイ」は英語の「I」です。
どうして自分を主語にした言葉が大事でしょうか。お子さんも、学校に行った方がいい、勉強した方がいいというのはよくわかっているのです。世間の常識としてもそれらが存在することを知っています。
だからこそ親には、世界で唯一の自分だけの親としての意見を伝えてほしいのです。世間の一般論を言われても正論にしか聞こえず、響くことはないのです。
世間の声を聞きたいのではなく、親の意見を聞きたいのです。だからこそアイメッセージが必要になります。
より良いアイメッセージの方法としては「私はこのように思うよ」と自分を主語について伝えるようにします。そしてその後に「あなたはどう思う?」と意見を尋ねるようにします。
こうすることで親としての意見を伝えてくれた上で自分の意見も聴こうとしてくれているとお子さんは感じられるようになります。
▶︎3つの力を常に意識しましょう
「受容力」「共感力」そして「率直力」の3つについて詳しくお伝えしてきました。この3つの力については、常に意識しておいてほしいなと思います。
「今日はうまく話が進まないな」と感じるときは、この3つの力のどれか(またはすべて)が欠けているときです。そんなときこそ、このブログを読み返してみてほしいと思います。
対話力、傾聴力を高めるのは日々の意識が何より重要です。意識して話そうとするのとそうでないのとでは、数ヶ月後、一年後の関わり方がまったく異なってきます。
まず「受ける」こと。そして感情の言葉に着目すること。そしてご自身の考えを深掘りしておくこと。今からできることがあります。早速実践してみましょうね。
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OFFICE NAKAGAWAは兵庫県にある不登校・ひきこもり専門のカウンセリング+家庭教師のオフィスです
■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
初めまして、不登校・ひきこもりカウンセラー(公認心理師)なかがわひろかです。
今このブログをお読みいただいている方は、お子さんの不登校のことで日々悩んでいらっしゃると思います。
私はあるひきこもりの青年と出会ったことをきっかけに「心の問題で悩む人たちの助けになりたい」と思い心理相談室OFFICE NAKAGAWAを2011年に立ち上げました。これまで12年以上にわたって親子のサポートや8050問題にも取り組んでいます。
学校に行けなくなったとき、お子さんも親御さんもどうしていいかわからなくなると思います。
1. 不登校やひきこもり、またそのご家族のケア
2. 心理療法を応用した学習サポート
3. 親子の関わり方今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。












