8月も中盤を過ぎ、もうすぐ2学期が始まろうとしています。不登校中の子どもたちに限らず、もうすぐ学校生活が再開することで、気持ちが落ち込んでしまうことがあります。2学期に向けて対応のヒントについてお届けします。

 

この記事でわかること

▶︎2学期を前にした子どもたちの心理

▶︎対応のヒント8

▶︎2学期に向けて気にかけておくこと

この記事を書いた人:なかがわひろか
▫️発達障がい・不登校・ひきこもり専門カウンセラー
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️何年、何十年にも渡るひきこもり対応の実績を持つ

 

▶︎不登校にとっての夏休み

 
 
不登校を経験している子どもたちにとって、夏休みなどの大型の休みは「やっと休むことができる期間」になります。
 
「毎日休んでいるのだから、夏休みみたいなものではないのか?」と周りは思うかもしれません。
 
しかしそれは違います。
 
同級生が学校に行っている間、自分は学校に行くことができません。好きなことをやっていたとしても、心から楽しむことができません。頭のどこかで「でも他の子は学校に行っているんだよな」と考えてしまうからです。
 
しかし、夏休みは「みんなが休み」です。他の子たちも学校には行きません。部活動に行く子はいますが、全員ではないですし、時間も半日くらいです。街を歩いていても「なんでこんな時間に学生が歩いているの?」と思われることもありません。
 
やっと、心から「休める」のが長期の休み期間なのです。そのため、夏休みになると、元気を取り戻してくる子どもたちも多いのです。キャンプに行ったり、BBQをしたり、友達と積極的に遊ぶこともあります。場合によっては、夏休みの課題も少し取り組むこともあります。
 
夏休みは比較的充実して過ごすことができるため、本人としても「2学期からは学校に行ける」という思いも抱きます。そしてそれは家族も同様です。
 

▶︎2学期を前にした心理状態

 
しかしながら、もうすぐ夏休みが終わろうとする今頃の時期になると、様子が変わってきます。
 
口数が減り、朝起きるのが遅くなります。食欲が落ちたり、楽しく取り組んでいたことをやらなくなったり、イライラして怒りやすくなったりします。不登校が始まり出したのと同じようなことが起こるようになります。
 
夏休みの前半は「2学期からは行ける!」と思っていたのが、実際に日が近づいてくると「やっぱり行けない……」という思いが強くなってきます。
 
周りからも「夏休みは元気だったのに、また行けないの?」と思われるかもしれないということもわかっています。自分に負い目があるからこそ怒りっぽくもなります。
 
想像していたのと、実際にそのとき(学校が始まる日)が来るのは違います。現実を認識するようになるからこそ、気持ちが落ち込んでいくのです。

▶︎2学期の初日は誰もが気持ちが落ち込みやすくなる

 
夏休み明けの9月1日が、18歳以下の自殺者が増える(文部科学省)と言われて久しいです。新しい年度が始まる4月の上旬も多くなりがちなのですが、9月1日は、そこからさらに1.4倍ほど数が増えます。
 
不登校を経験している子どもたちだけでなく、多くの子どもたちにとって、夏休み明けは気持ちが落ち込みやすくなる時期です。
 
「子どもが落ち込まないようにしたい」というのは親の願いだと思います。ただこの時期は、長く気楽な休みが終わり、また学校生活が始まることで、憂鬱な気持ちになることが十分に起こりうる、という理解が必要になります。
 
落ち込みやすくなる、ということを前提に、残りの夏休みの過ごし方について、また2学期の始め方について考えてみましょう。
 

▶︎2学期に向けての対応のヒント

 
 

1. 気持ちが憂鬱になることを想定しておく

対応においてまず大切になるのが「憂鬱になるのは必ず起こる」と心づもりしておくことです。
 
夏休みを充実して過ごしているのを見ると、親としてはそれが当たり前になります。それが2学期が近づいてくると落ち込んでしまうと「あれだけ楽しそうだったのに……」と困惑すると思います。
 
その困惑がお子さんを追及してしまうことにもつながります。
 
お子さんが夏休みにどれだけ元気に過ごしていたとしても、夏休みが明けようとすると気持ちが落ち込みがちになるということは想定しておきましょう。あらかじめ心づもりしておくだけでも、困惑度合いが減ります。
 
 

2. 今抱えている不安を受け止める

どんなときでも同じなのですが、不安を感じている子どもたちは、その不安を1人で抱えることに苦しさを感じています。

 

まずその思いを外に出してもらうことが重要です。

 

どうして話すことが必要か?話すことで、自分の気持ちを整理することができるからです。皆さんもお友達などに悩みを話すとき、話しながら、課題が整理された経験があると思います。

 

その整理のためには、お子さんの思いを「受け止める」ことが必要になります。「気持ちを受けてくれる」ということがあって初めて、安心して話すことができるからです。

 

【お子さんの話の聴き方についてはこちら👇もご覧ください】

 

 

3. 生活リズムを大きく崩さない

 
気持ちが落ち込んでくると、朝起きるのが億劫になり、リズムが乱れやすくなります。ある程度時間がずれるのは許容範囲として受け止めつつ、大きくずれないように気をつけます。
 
学校に通うためにリズムを崩さないのではなく、体調を管理するためのものです。生活リズムが崩れてしまうと、心も乱れやすくなります。ただでさえ落ち込んでいる気持ちがさらに沈みやすくなります。
 
変な言い方に聞こえるかもしれませんが「安定して落ち込むこと」が必要なのです。そのために基礎的な体力の維持が大事になります。
 
あくまで「大きく」崩さなければいいので、夜22時に寝て、朝6時に起きないといけないとは思わなくて大丈夫です。
 
前後2時間程度のズレは許容範囲です。起きる時間が9〜10時頃になっても構いません。ただそれより遅くなると寝る時間が遅くなりリズムが狂い出すので、目安としては遅くとも9時か10時くらいには起きるというイメージを持っておきましょう。
 
9時に起きることができれば、夜も12時くらいには寝られると思います。大きくリズムを崩すことなく過ごせるでしょう。
 
 

4. 活動し過ぎないようにする

夏休みはできるだけ活動的に過ごしてほしいと思います。ただ終わりに近づいてきたら、気持ちが落ち込むこともあるので、やり過ぎないように調整しましょう。
 
身体までしんどくなると、余計に沈んでしまうものです。好きなことを程よくやりつつ、を意識します。
 
買い物に行ったら翌日と翌々日は休む、くらいのペースがいいでしょう。
 
 

5. 宿題は先生と協議する

 
夏休みといえば宿題です。不登校を経験している子どもたちにとっては、授業に参加していない分、宿題は難しくなります。
 
宿題が終わっていないことに悩む子どもたちもいます。やるべきことをやれていないと人は多大なストレスを受けます。
 
とはいえ残り少ない日数で全部終えるのは厳しいと思います。ここは親御さんを頼りましょう。先生と話し合ってもらって、できないものもある、ということを伝えてもらいましょう。
 
 

6. 無理に行こうとは考えない

不登校を経験している子どもたちの多くは「学校は行かないといけない」という思いを強く持っていると言えます。

 

周りも「2学期からは行けるんじゃない?」と無言のプレッシャーを与えがちですが、夏休みを元気に過ごせるのは先にお伝えしたように「みんなが休みだから」です。心から元気になったからということではありません。夏休みがイレギュラーな状態である、ということは周りの理解として必要になります。

 

ご本人が「2学期からは行けるようになりたい」という場合は別ですが、無理に、ということは本人もしない、周りもしないようにします。

 

 

7. 教室に入る練習を行う

ここからは「2学期からは学校に行きたい」とお子さんが思っている場合の方法についてお伝えします。
 
休みの間(夏休みが明ける1週間ほど前くらい)に、担任の先生と連絡を取り「教室に入る(もしくは保健室、別室、または校門)練習」を提案してみましょう。
 
まずは教室の前まで行き、気持ちが落ち着くのを待ちます。それから教室に入る、という練習です。
 
不登校を経験しているお子さんにとって、学校に行く、つまり教室に入るのは非常に勇気がいるものです。入ろうとすると不安感が急激に高まっていくでしょう。
 
しかし不安感、恐怖感というのは、時間と共に薄れていきます。10分、20分と時間が経つにつれて、だんだんと落ち着いてきます。
 
このような不安感が「下がる」体験をしてみるのです。「学校は不安だ」という状態から、「学校に行くのは不安だけど、不安はいずれ落ち着く」ということを経験するのです。
 
夏休みというまだ学校に生徒さんが来ていない状態のときに、この練習をやってみることをおすすめします。
 
【不安感は時間と共に減っていく】不安は長く続かない
 
 
8. 行けるようになったとしても「休みながら行く」

お子さんによっては、始業式に行ける方もいると思います。最初ができると「もっとできる!」と気負ってしまうことがあります。しかしそれだとまた続かなくなるでしょう。

 

1日行ったら、2日休む、金曜日の6時間目だけ行く、給食だけ行く、というように「休むことを前提に通う」ことを意識するようにしましょう。

 

社会人も同じです。メンタルダウンで休職した方は、まずはリハビリ出社から行います。最初は午前だけ、徐々に午後も、徐々にフルタイム、という形です。

 

子どもたちも同じです。極端な話「1日行ったら2日休みなさい!」と強制的に休みを取らせてもいいくらいです。その方が「もっと行きたいのに」「もっとやれるのに」という思いを持続させることができるでしょう。

 

止めても止めても「行く!」となったとき、それはお子さんが学校に本格的に復帰する時期です。この言葉が出てくるまでは、しっかりと休みを取りながら、「たまに学校に行く」くらいの気持ちを大事にしましょう。

 

▶︎親御さんが学校に向けて用意しておくこと

 
 
親御さんに2学期が始まるにあたり、準備しておくと良いと考えるものは、「夏休みの様子」簡単にまとめておくことです。
 
毎日の日記にすると先生方やスクールカウンセラーの方が読むのが大変なので、おおまかにおおよそA4用紙1〜2枚くらいに様子をまとめます。

 

【まとめておく内容】
1. 夏休み行った体験(キャンプやBBQなど)
2. 全体的な生活リズム
3. 夏休み前と終わり頃に気づいた変化
4. 2学期を前にした心境
5. 2学期からの対応について
特に5. の2学期からの対応については、もう少し行けるような流れを取りたいのか、それとも継続して休ませることを大事にしたいのか親御さんの考えも伝えるようにします。
 
口頭で伝えることもできますが、全ての内容を覚えるのは至難の業です。また先生たちの中で情報を共有する際に、聞いた話をまとめるのは先生たちも大変になります。
 
長すぎず、簡潔にまとめたものをお渡しになるといいです。
 

▶︎2学期だからと言って気負いすぎない

 
2学期から再スタートという思いは、お子さんも、親御さんも、そして先生も誰しも思うことです。
 
しかしながら、間に夏休みがあっただけで、学校生活には変わりはありません。節目だからといって気持ちが簡単に変わるわけでもありません。
 
学校とも連携を取りながら、無理はさせないことが肝要です。むしろ夏休みを楽しく過ごせたなら、それが何よりです。少しでもお子さんが元気になる時間を作ることができたのなら、夏休みは大きくその役割を果たしたことになります。
 
新学期だからといって、無理をさせられなかった、ということが、子どもたちの安心につながり、学期の途中から通い出す、ということもあります。あまり気負いすぎないことが大事です。
 

▶︎残りの夏休みの過ごし方のご相談

 
ここから2学期に向けて、お子さんの対応に悩まれる親御さんも多いと思います。お一人で悩まれているときは、一度無料カウンセリングをご利用ください。
 
課題を一緒に整理するだけでも、方向性が見えてきます。「こんなことを相談してもいいのだろうか?」と思うことでも気になさらずお声がけくださいね。
 

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■プロフィール■
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■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。

 

あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。現在大阪市スクールカウンセラーを兼任。

 

ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。

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限局性学習症 学習の助けになる17の方法限局性学習症(Specific Learning Disorder)とは知的な発達に遅れがないにも関わらず、読む・書く・話す・聞く・計算する・推論するなどの能力の中で苦手とするものがある場合を指します(学習症、学習障害とも言われます)。

 

これらの能力は学校での学習に大きな影響を与えるものとなります。算数はできるのに国語の点数が低かったり、その逆があったり、読み間違いや板書(黒板の文章を写すこと)が極端に苦手な場合もあります。

 

知的な発達の遅れがあるわけではありませんが、学習症があるために、勉強がうまくいかず、落ち込み、それが不登校につながることもあります。

 

そこでこのブログでは学習症について理解し、課題を解決するヒントについてご紹介していきます。

この記事でわかること

▶︎限局性学習症について

▶︎学習症の種類

▶︎学習の助けになる17のヒント

この記事を書いた人:なかがわひろか
▫️発達障がい・不登校・ひきこもり専門カウンセラー
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️子どもから大人までの発達障がい全般に関わる

 

▶︎限局性学習症(学習症)とは何か

限局性学習症(以下学習症)とは、「読む・書く・話す・聞く・計算する・推論する」という能力に苦手なものがあることを指します。

 

以下の症状のうち、少なくとも1つが存在し、6ヶ月間持続しているものであり、暦年齢に期待されるよりも、低い学業、職業遂行能力、日常生活活動に障害を引き起こしている状態の場合に診断されます。

 

学齢期の子どもたちの5~15%、成人においても4%が有していると推定されます。

 

【学習症の診断基準(DSM-5改)】

 

▫️読むことが不的確または速度が遅く、努力が必要である

 :単語を間違って、またはゆっくりと音読する、言葉をあてずっぽうに言うなど
▫️読んでいるものの意味を理解することの困難さ
:読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解できないなど
▫️つづり字の困難さ
:母音や子音を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりする
▫️書字表出の困難さ
:文法または句読点の間違い、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない
▫️数学の概念、数値、または計算を習得することの困難さ
:数字、その大小、関係の理解に乏しい。一桁の足し算を指を折って数えるなど
▫️数学的推論の困難さ
:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、数学的方法を適用することが非常に困難である

これらの能力は学校という現場においては、どれも非常に重要なものとなります。国語の授業では、音読で当てられることがあります。宿題では漢字の書き取りも出ますし、年齢が上がってくると文章題も増えてきます。

 

元々の能力が低いわけではないのですが、特に苦手とすることがあることで、学習に成果が伴わないことがあります。

 

知能検査(WISCやK-ABC)を受けることで得意、不得意が明らかになりますが、検査をしなければ見落とされ「怠けている」「やる気がない」とみなされることがあります。

 

学校生活において勉強が苦手というのは子どもたちの自信を失わせる大きな要因になります。自己肯定感が低くなることで、学校に行くことにしんどさを感じ、不登校になるケースもあります。

 

不登校になることで初めて学習に困難さがあることがわかる場合が多いです。宿題の国語の教科書の音読が苦手だったり、連絡ノートの記述がうまく書けていなかったりする場合は、もしかしたら学習に対して苦手とすることが隠されているかもしれません。

 

▶︎学習症の要因

学習症に限らず、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障がいに関して「親の育て方が悪い」などは理由になりません。

 

元々も脳の働きにおいて「苦手」とすることがある先天的なものとなります。理由がはっきりと解明されているわけではありませんが、脳の中枢神経に要因がある脳機能障害と言われています。

 

そのため文字を読むことに困難がある子どもたちに対して「もっと集中すれば読める」などの対応は、的が外れた対応となります。「読む」という脳の機能がうまく働いていないため、「ちゃんと読みましょう」と言われても、子どもたちはただただ混乱するだけになります。

 

「生まれつきの脳機能の課題によって苦手がある」という点をまず意識するようにしましょう。

 

▶︎学習症の3つの種類

 

 

識字障がい:ディスレクシア(dyslexia)

 

▫️文字がぼやけたり、滲んだり、歪んだりして見える

▫️単語の音と内容がリンクしないなど

 

学習症として、もっとも有名なものとなります。ディスレクシアを抱えることによって、音読や板書の困難さ、作文を書くことの困難さが生じます。

 

書字表出障がい:ディスグラフィア(dysgraphia

▫️漢字などの文字を書くことの困難さ

▫️マス目をはみ出して書いてしまう

▫️鏡文字になることがある

 

私がこれまでお会いしてきた中では漢字の書き取りに困難さを抱えている方が多いです。日本後の漢字は、さまざまな形が組み合わさって作られます。高学年になるほど複雑になり、形を認識することが難しくなることで、より書き取りにも困難さが出てきます。

 

また高学年になるほどマス目が小さくなり、さらに年齢を経ると罫線だけのノートに書きとることを求められます。書く範囲が狭くなることで、より書くことの困難さが現れることがあります。

 

算数障がい:ディスカリキュリア(dyscalculia)

▫️計算が苦手で、九九が覚えられないことがある

▫️計算式を立てることが苦手

▫️数の大小の把握が難しい

 

ディスレクシアに比べると数は少なくなりますが、数の概念に困難さを抱える子どもたちも存在します。ここに挙げたものの他に時計を読むことが苦手、数字の暗記が苦手ということも挙げられます。

 

▶︎学習症の対応

学習症を抱える子どもたちの多くは、「自分は勉強ができない」と思い込んでいることがあります。特に学校生活においては、勉強ができないことは大きなハンデと感じるようになります。

 

ただ間違ってはいけないのは勉強が「できない」のではありません。学習症は知的な発達の遅れは伴いません。つまりIQとしても、問題ないということになります。大半の子どもたちと同じ方法ではできないかもしれないけれど、やり方を工夫することで平均、もしくはそれ以上の学力を発揮することもあります。

 

読み取りが苦手だったお子さんが、先生に問題文を読み上げてもらったら、それまで30点台しか取れなかったテストで満点が取れるようになった、というケースもあります。

 

けれども配慮がなされなかったら、お子さんは自分に自信を失い、それが不登校につながることもあります。やり方を変えることで、成果を上げることは十分に可能です。お子さんに合う方法を試すようにしてみましょう。

 

ここからは学習症に見合った道具についてご紹介していきます。お子さんの学習の参考にしていただけたら嬉しいです。

 

▶︎学習症の対策:「読み」編

 

アプリを使って漢字を読む

読みにくい漢字などは、Googleレンズを活用することで、辞書を調べなくてもすぐに知ることができ、手間が省けます。無料で使用できますので、スマホやタブレットに入れておきましょう。

 

注意点としては、漢字の上にルビを打つことです。学習症は文字が見づらい状態です。そのためルビを打つと余計に読みにくくなることがあります。ただ、ルビがある方が勉強しやすい方の場合は、その限りではありません。お子さんのやりやすさを重視して使い分けましょう。

 

ダークモードで文字を白抜きにする

スマホやタブレットで簡単にできる方法です。多くの人は、文字を黒く、背景を白っぽい設定にされていると思います。スマホのライトで目が疲れてしまうことがあるので、背景をダークモードにし、文字を白抜きにしてみてみましょう。

 

こんな感じです。こちらの方が読みやすい方は、早速ダークモード設定にしてみましょう

▶︎iphoneのダークモード設定方法

▶︎Androidのダークモード設定方法

 

学習症を抱える方にとって、ITの活用は学習環境を大きく改善してくれるものです。学校とも話しながら、例えば国語の教科書をタブレットから見られるようにし、ダークモードで文字を見やすくする方法も検討してみましょう。

 

 

リーディングトラッカーを活用する

教科書の読みたい行に当てるだけで読みやすくしてくれる道具です。学習症において特に読みに苦手がある方は、文字が大量にあると、揺れたり歪んだりして見えます。そのため読んでいるところがわからなくなり、同じところを読んだり、読み飛ばしたりします。

 

リーディングトラッカーを活用することで、読みたい行だけ集中して読むことができます。お子さんの目に合った色を選ぶことができますし、持ち運びもしやすいです。

 

▶︎リーディングトラッカーの例

 

 

読み上げアプリを利用する

ハリウッドの映画俳優の中には読みを苦手とする人がいます。その方たちは、セリフは全て音声に置き換えて覚えると言います。

 

読み上げアプリを活用することで、耳からの情報を活用し、書かれている内容を理解することができます。

▶︎読み上げ「ゆっくり棒読みトーク」

▶︎読み上げアプリ(かわりに喋る)

 

読み上げアプリはたくさんの種類があります。使ってみながら、お子さんに合うものを選んでいきましょう。

 

▶︎学習症の対策:「書き」編

 

 
漢字は「パーツに分けて」書けるようにしてみる

 

日本語の漢字は、いくつかのパーツが組み合わさって成り立っています。学習症を抱えるお子さんの場合、文字が歪んで見えたりすることで、画数が抜けたり、逆に必要のない線を付け加えてしまうことがあります。

 

例えば「外」という漢字であればカタカナの「タ」と「ト」を書けるようにして、合体させるという方法です。漢字は組み合わせできているため、「パーツに分ける」ことができれば書きやすく、また覚えやすくなります。

 

また「春」であれば「三人の日」というように口に出しながら書くことで覚えやすくなります。

 

▶︎こちらもおすすめです「ミチムラ式」漢字練習

 

 

お子さんに合ったマス目・ノートを使う

小学生も高学年くらいになるとマス目の小さなノートを使うことになります。中学生になるとマス目がないノートを使うことも増えてきます。

 

マス目がないことで、文字のバランスがうまく取れず、書くことの苦労が重なることがあります。お子さんの見合ったマス目・ノート選びを行うようにしましょう。

 

マス目についても、大きすぎると書きづらいという方もいます。使ってみながら、ちょうどいいバランスのものを見つけていきましょう。

 

 

英語は「筆記体を覚えてみる」

例えば英語の小文字の「b」と「d」は書き間違えが多いものになります。また書くことに苦手さを抱えているお子さんの場合、単語と単語の間が空くことで集中量が削がれてしまうことがあります。

 

筆記体であれば一つの単語を一気に書くことになるので、一つ一つを分けて書くよりも書きやすくなるかもしれません。

 

近年は学校でも筆記体を習うことが減ってきていますが、書くことに苦手さを抱えるお子さんは一度練習してみてもいいかもしれませんね。

 

 

事前にプリントを用意してもらう

ノートに問題文を書いたりすることは、書くことに苦手を感じている子どもたちにとってはかなり疲れるものになります。

 

あらかじめ要点をまとめたプリントを用意してもらい、穴埋めで必要な項目を書いていく形であれば負担を減らすことができます。

 

またこれは学習症を抱える子どもたちだけでなく、すべての子どもたちにとっても効率的に学習を進めるために効果的です。先生の手間は増えますが、板書が長くなってしまうような場合において用意してもらうといいです。

 

ブラインドタッチを身につける

ここでもタブレットなどの活用は有効です。特にブラインドタッチを身につけることで、書くことの負担はかなり抑えることができます。

 

学校との協力体制が必要になりますが、授業においてもノートを取る際にタブレットによるブラインドタッチや、カメラで板書を写すなどができるように働きかけてみましょう。

 

書くことに苦手さを抱える子どもたちは、ノートを写すだけで、疲れてしまうことがあります。ノートテイクの負担を減らすだけでも授業への意欲が変わってきます。

 

▶︎デジタルメモ「ポメラ」

 

こちらは、パソコンやタブレットのように「余計な機能がついていないメモに特化したパソコン」です。立ち上がりも早く、メールが入ったりすることもないので、集中しやすくなります。値段にも幅がありますので、用途に合わせて活用しても良いですね。

 

▶︎学習症の対策:「聞く」編

学習症だけでなくADHDの場合において「ワーキングメモリー」と呼ばれる脳の機能に苦手さを抱える子どもたちもいます。

 

ワーキングメモリーとは、作業や動作に必要な情報を一時的に保持する機能です。情報は聴覚や視覚を通して得られます。ワーキングメモリーの機能に苦手さがある場合、先生からの指示が頭の残っていなかったり、計算途中で何をやっているかがわからなくなることがあります。

 

注意の声をかけてもらう

耳からの情報を得ることが苦手なお子さんは、不特定の人に対しての「こっちに集まって!」や「そっちは危ないからここにいてね」という指示が耳に入らないことがあります。

 

先生や周りの人から「⚪︎⚪︎さん、こっち見てくれる?」と注意を促してから、「ここに来てくれるかな」と指示を出すようにすると、理解しやすくなります。

 

慣れてきたら手を振るなどの動作で注意喚起してから話す、という方法に変えていきます。

 

順番を図にする

作業を促す場合において、耳だけの情報だと理解することが難しい場合あります。その場合において視覚的な情報で「今何をしていて、これから何をするか」を提示すると理解しやすくなります。

 

【例:発表の手順】

学習症 ワーキングメモリーの対策

口頭だけでなく、視覚的情報があると、理解しやすくなります。またこれは特定の子どもたちだけでなく、多くの子どもたちにもわかりやすいものとなります。

 

メモを取るくせをつける

もっとも基本的な対応になりますが、スタンダードな方法でもあります。付箋などに要点を書いて机やパソコンに貼っておき、順番に取り組み、終わったら捨てる、という方法などがあります。

 

ただメモをしたことを忘れてしまうことがあるので、可能であればスマホのリマインド機能を活用して、時間がきたらタイマーで知らせてもらうという方法もいいでしょう。授業で用いるのが難しい場合は、付箋に書いて机に貼っておいたり、友達に声をかけてもらうのもいいですね。

 

また、時間がきたら必ず見返すノートを作っておいて、そこにメモをしておくという方法もあります。

 

▶︎くり返しメモできるふせん

▶︎デジタルメモ

 

▶︎学習症の対策:「話す」編

話したいことをまとめるのが苦手で、どう伝えていいのか固まってしまうこともあります。頭の中で考えるのではなく、「外に出して整理する」ことを第一に考えてみましょう。

 

発表の台本を作る

お子さんが読みやすいノートに、発表で話す順番をつけた台本を用意します。

 

【台本の例:クラスでの発表の場合】
①クラスのみんなの顔を見るように前を向いて一礼
②「今から⚪︎⚪︎についての発表をします」
③「私たちは⚪︎⚪︎について調べました」
④「これがそのグラフです」(グラフを指差す)
⑤「結果はこのようになりました」
⑥「以上で発表を終わります」
⑦みんなの方を向いて一礼

 

最初は細かく決めておいて、練習をしながら、読まなくてもできることを増やしていきます。また事前に先生に目を通してもらってアドバイスをもらうとより良い発表を行いやすくなります。

 

うまくいったところをノートに書いておく

学習症に限らず、人前で話すのは緊張するものです。人前での話がうまくなるには「場数を踏む」ことに尽きます。やってみると思ったよりも緊張せずにできた、声を大きくしたら自信を持って発表できた、などうまくいったことはノートに書いておきましょう。

 

それが今後の発表の自信につながっていきます。もしうまくいかないことがあっても「チャレンジしたからうまくいかないことがわかったんだ」と考えるようにしてみましょう。

 

どんなにお話が上手い人でも、最初はみんな失敗しています。数を重ねることで、必ずうまくなります。できることを一つ一つ増やしていきましょう。

 

▶︎学習症の対策:「算数」編

学習症を抱えるお子さんが一番つまづくのは国語の授業だと思います。そのため見過ごされやすいのですが、実は算数につまづいているお子さんもいます。

 

特に現れやすいのが「九九」や「筆算」「四則計算」などの複雑な計算、そしてなんといっても文章題でしょう。それぞれの対応について見ていきましょう。

 

九九の暗記

耳からの情報が苦手な子の場合、視覚的な情報から答えを導き出す練習をしていきます。例えば単語カードに「3 ×  4」と書いて、裏面に「12」と答えを書くようにします。

 

たくさんの情報が書かれていると混乱しがちなので、1問ずつ取り組むようにします。カードでなくとも、スマホのアプリや画像を使って取り組むこともできます。

 

▶︎おすすめアプリ「九九を覚えてモンスター図鑑あつめ!」

 

耳からの情報を得るのが得意な子は、音声で録音したものを何度も聞きながら覚えるのもいいでしょう。

 

人によっては、順唱(1から順番に言う)はできるけれど逆唱(九から遡って言う)が苦手なお子さんもいます。完璧を目指さず「掛け算の答えがわかればいい」というスタンスで取り組むことが重要です。

 

複雑な計算が苦手なとき

例えば「(13+7)×4÷5+1」のような四則計算に混乱してしまう子もいます。ワーキングメモリーに苦手さを抱えているお子さんの場合、計算しているうちに、何をやっているかがわからなくなることがあります。

 

この場合、答案用紙や別紙の余白部分に

①まず( )の中の13+7(答え20)を計算する

②次に20×4(答え80を計算する)

③次に80÷5(答え16)を計算する

④最後に16+1(答え17)を計算する

と一息に計算するのではなく部分ごとの計算を行うようにします。そして答案用紙には最後の答え17を書くようにします。

 

正確な式を書くとしたら

=(13+7)×4÷5+1

=20×4÷5+1

=80÷5+1

=16+1

=17

となりますが、これだとこんがらがってしまうことが起こります。先生とも話して、式の書き方については、配慮してもらい、部分について余白で計算する方法を取れるように伝えてみましょう。

 

文章題が苦手なとき

「読み」の部分でお伝えした方法を活用しつつ、ポイントを押さえながら情報を整理していきます。

 

例えば「山田さんは、20円のガムを5個と、35円のあめを2個買いました。合計いくらはらったでしょう」という問いがあるとします。ポイントになる数字にチェックするようにします。

 

学習症の算数文章題の解き方

絵に描いてみたり、表で整理したりするとよりわかりやすくなります。まずは絵を自分でも書いたり、表に記入したりという方法から整理することを試してみましょう。

▶︎お困りの方は一緒に考えましょう

ここに挙げたものは、ごく一部の方法となります。学習症と言っても、お子さんそれぞれに何を苦手にしている方は異なります。お子さんに合った方法を試しながら見つけていきましょう。

 

なかなかヒントが見つからないという方は、一度無料カウンセリングをお試しください。その際にWISCなどの検査データがありましたら、そちらもお見せいただけるとより具体的なアドバイスをお送りできます。

 

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ADHDの子育て 7つのヒント今回はADHD(注意欠如・多動症)について取り上げます。ADHDは落ち着きがない、忘れっぽい、いつもそわそわしている……などの特徴がある発達障がいの一つです。

 

ADHDの基本について学び、お子さんの対応や、特性の活かし方について見ていきましょう。

この記事でわかること

▶︎ADHDの基本について

▶︎ADHDの対応の7つのヒント

▶︎特性の活かし方

この記事を書いた人:なかがわひろか
▫️発達障がい・不登校・ひきこもり専門カウンセラー
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️子どもから大人までの発達障がい全般に関わる

 

【不登校の対応の基本についてはこちらの記事👇もご覧ください】

 

▶︎ADHD(注意欠如・多動症)について

ADHD(注意欠如・多動症:Attention Dificit / Hyperactibity Disorder)は、発達障がいの主な3つ(ASD・ADHD・SLD)のうちの一つです。

動症)い

ADHDの説明

 

ADHDの診断基準

 

以下のDSM-5の項目で、17歳未満はそれぞれ6個以上、17歳以上の場合は、それぞれ5個以上を満たしており、これらの症状が6ヶ月以上続き、12歳以前、2つ以上の状況で存在した上で、学校や職場で問題化している場合に診断されます。(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Editionより)

 

 

A. 不注意

▫️不注意な間違い:細部の見過ごし、作業が不正確
▫️注意の持続困難:長時間の講義や会話に集中し続けることができない
▫️聞いていないように見える:心ここにあらずのように見える
▫️指示に従えず、やり遂げることができない:課題を始めても、やり遂げられない
▫️順序立てることができない:資料や持ち物の整理ができない、時間の管理が苦手、締め切りが守れない
▫️精神的努力の持続が必要な課題を避ける:宿題や、報告書の作成、書類を漏れなく記入するなどを嫌う
▫️なくしてしまう:学校の教材や、財布、書類、携帯電話などをしばしばなくす
▫️気が散ってしまう:外的な刺激によって気が散る
▫️忘れっぽい:約束、お使い、電話の折り返し、支払いなどを忘れる

 

指示を聞いても、最初に指示されたことを忘れやすかったり、一つのことを集中力を持って取り組むことが苦手な側面があります。

 

B. 多動性-衝動性

▫️手足をもじもじさせる:手足をそわそわ動かす、トントン叩いたりする

▫️席を離れる:教室や職場でとどまるべき場面で、自分の席を離れる

▫️走り回る、高いところへ登る:不適切な状況で走ったり、高いところに登る

▫️静かに遊ぶことができない:じっと遊ぶことができない

▫️じっとしていられない:教室や会議で長時間とどまることができない

▫️しゃべりすぎる

▫️質問が終わる前にしゃべり出す:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう、遮る

▫️順番を待つことが困難:列に並ぶことが苦手

▫️他人を妨害し、邪魔をする:会話、ゲームを邪魔する、他人のしていることに口を出す

 

じっと授業を聞いていることが苦手で、いつも何かを触ったり、身体が動いていたりします。また話を遮って、話すこともあり、集団の中で「浮いて」しまうことがあります。

▶︎ADHDによくあること

学校生活で起こりやすいこと

▫️授業中に立ち歩いてしまう

▫️授業中に大きな声を出してしまうことがある

▫️危険な行為(屋根の上に登ったり、危険な道具を使ったり)をする

▫️忘れ物が多い

▫️計算問題などを解いている途中に他のことを考えてしまう

▫️気が散ってしまうとそちらに意識が向き、先生の話を聞いていないことが多い

▫️授業中にそわそわと身体を動かす

▫️イライラと衝動的にクラスメイトを叩いたりしてしまう

注意力を持続させることが苦手なため、先生の指示を聞き漏らし、他の子はできているのに自分だけができていないことにイライラとしてしまうことがあります。イライラすることで衝動的な行動(クラスメイトを叩く、ものを壊す)になる場合もあります。

 

家族が感じること

▫️宿題を終えるのに時間がかかる

▫️一つのことをやっていても、すぐに気が散ってしまう

▫️一度集中すると、いつまでも取り組んでしまう(過集中)

▫️片付け、整理整頓ができない

▫️イライラしやすい。きょうだい喧嘩が多い

集中力を持続させることが苦手なため、宿題を終えられず、そのことを理由に家族で喧嘩になることがあります。またきょうだい喧嘩も日常茶飯事になります。

 

ワーキングメモリーの弱さがある

 

ADHDについて理解するときに「ワーキングメモリー」についての理解は重要な観点となります。

 

ワーキングメモリーとは"行動を起こす際に必要な情報を、一時的に記憶し、処理する力"を指します。

 

例えば「机の上にあるノートをランドセルに直して、その後机の上を拭いて、雑巾は絞ってかけておいてね」という指示があったとします。

 

これらの行動を終えるまでの間、私たちは指示されたことを頭に残しながら行動を行います。そして行動を行いしばらくすると指示の内容は忘れます。

 

一時的に情報を貯蔵する容量のことをワーキングメモリーと呼びます。この力が高い人は、例えば他者と話をしている際も、前の話を記憶しながら、情報を整理し、相手が伝えたいことを的確に把握することができます。

 

ADHDを抱えるお子さんの場合、このワーキングメモリーが弱いため、複数の指示を与えられると、最初の方に言われたことを忘れやすいです。最初を忘れると、初めの行動が取れないため、右往左往してしまうことがあり、周りから叱責されることもあります。

 

ADHDを抱えるお子さんの場合、ワーキングメモリーの苦手さがあることをまず理解しておくことが重要となります。

 

ADHDのお薬による治療

 

ADHDの場合、状態を落ち着かせるために、薬が処方されることがあります。これらの薬は厳格な基準のもとに処方されます。薬物治療を取り入れることで、日中の不注意、多動性を落ち着かせ、学業成績の向上、職場での集中力を高めることができます。ただし食欲不振、頭痛などの副作用もあるため、すべての方に効くわけではありません。ご本人の生活に大きなメリットがある場合に処方を検討されます。薬については必ず医師の指示を受けるようにしましょう。

薬品名

(商品名)

作用機序 副作用

メチルフェニデート

(コンサータ)

ドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みを抑える 睡眠障害、食欲不振、体重減少

アトモキセチン

(ストラテラ) 

ドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みを抑える 食欲不振、下痢、イライラ

グアンファシン

(インチュニブ)

交感神経の働きを抑え、過剰な活動性や攻撃性を抑える 血圧低下、眠気、ふらつき

リスデキサンフェタミンメシル

(ビバンセ)

ドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みを抑える 睡眠障害、いらつき、めまい、眠気

 

▶︎ADHDの得意なこと

ADHDと聞くと問題行動をイメージする方も多いと思いますが、ADHDの特性があることで、武器になることもあります。

 

ADHDを抱えるお子さんの得意なこと

▫️フットワークが軽い・行動力がある

▫️人懐っこい

▫️好奇心が強く、チャレンジ精神が強い

▫️発想力が強い

▫️ひとと異なる視点で物事を考えられる

▫️企画力が高い

▫️初対面の人でも臆せず話をすることができる

人それぞれ特性は異なりますが、愛嬌を感じさせる方が多いのが特徴の一つです。接客のお仕事や、企画力が求められること、営業力などが高く、社会に出てからも能力を発揮することができる可能性が高いと言えます。

 

忘れ物が多く、細かいところの気配りが苦手なところもありますが、持ち前の愛嬌の高さで補っている方もいます。

 

一方で、先のことを見通して考えることが苦手で、大人の方の場合、稼いだお金を散財してしまい、借金を背負ってしまうこともあります。

 

周りのサポートがあると、存分に自分の力を発揮することができるでしょう。

 

▶︎ADHDの対応のポイント

 

 

 

①注意の前に、特性を知る

ADHDを抱えるお子さんの場合、忘れ物や、うろうろと動いてしまったり、授業を聞けていないことがあるため、ADHDを抱えていないお子さんに比べて叱責される機会が増えやすいです。

 

叱責されることが増えると、「自分は他の子と比べて、できない人間なんだ」と自己肯定感を低めることにつながります。

 

自信を失うことで、ときに反抗的な性格形成がなされることがあります。適切な対応がなされず思春期を迎えた場合「DBDマーチ」と呼ばれる状態に進むことがあります。

 

【DBDマーチ】

DBD(Disruptive Behavior Disorder)と呼ばれるもの。

ADHDから始まり

▶︎反抗挑戦性障害(ODD:Oppositional Defiant Disorder)

▶︎行為障害(素行障害)(CD:Conduct Disorder)

▶︎反社会性人格障害(APD:Antisocial Personality Disorder)

に帰着する流れのことです。

 

ADHDという先天的なものに、さまざまな逆境体験が後天的に重なることで、反社会的な行為に進む可能性があると言われます。

この状態を防ぐために必要なことが「特性を理解すること」です。できていないことや、やってしまったことを叱責するだけでは自信を失っていきます。背景にどのような特性があり、その特性があるがゆえに行ってしまう行為があることの理解が対応のスタートになります。

 

②「分かっていてもやってしまう」思いを知る

ASD(自閉スペクトラム症)との違いとして、ADHDの場合は「分かっていてもやってしまう」ことが挙げられます。

 

ASDの場合「どうしてそれが駄目なのかわからない」ということがありますが、ADHDの場合は「それはやってはいけないことだと分かっているけれど衝動的にやってしまう」のです。

 

例えば太っている人が目の前にいたとします。ASDを抱えるお子さんが「あの人太っているね」と言うことがあります。これは「実際に太っている人に太っていると言って何が悪いのか?」という思いがあります。

 

一方でADHDの場合は「太っている人に太っていると言うのは失礼なのは分かっているけれど、つい反射的に言ってしまう」状態になります。

 

やってはいけないということは理解できていることが多いので、くどくどと一から注意されると耳が痛い思いになります。やってはいけないと分かっていないからやるのではなく、分かっていてもやってしまうので、やってはいけない理由の説明よりも、行動してしまいそうになるときに「一呼吸する」など時間を置くことを教える方が効果があります。

 

 

③指示は短く、明確に

ADHDを抱えるお子さんはワーキングメモリーが弱いことが多いことについてお伝えしました。そのため、長い指示や、何を言いたいかわからない内容を理解することに困難さを抱えています。

 

複数の指示を同時に行うのではなく、一つ一つ、もしくは1〜2つの指示を行うにとどめる方が理解しやすくなります。

 

どうしても複数の指示を行う場合は、メモを取るように伝える、もしくはメモを渡すようにします。メモを取ったことを忘れてしまうこともあるので、例えば朝学校に行く前はメモを見直す、などを習慣化すると忘れ物をしにくくなります。

 

 

④耳よりも「目」にアプローチする

ワーキングメモリーは聴覚的な情報の処理に関わる機能です。ここに苦手さを感じるのは耳からの情報処理を苦手とすることです。

 

そのため、視覚的なアプローチが有効です。口で説明するだけでなく、図やフローチャートなどを見せることで、今何をするか、これから何をするかがわかりやすくなります。

 

ただし、視覚的な情報が多過ぎると、そちらに気を取られてしまいます。伝えるべきことだけをシンプルに見せることを意識して作成するようにしましょう。

 

視覚的なアプローチが有効な分、目に入るものに気を取られることも多いので、不必要な情報は視界に入らないようにすることも有効です。黒板や机の周りには、勉強に関係のないものは置かないなどの環境づくりが効果的です。

 

私もADHDを抱える方に学習サポートを行う際は、環境設定を大事にしています。机に座ったとき、目に入るものの量を減らし、勉強に関係のないものは視界に入らないようにします。一つの勉強が終わったら、カバンや本棚にしまい、今やるべきことだけを机に出すようにすると集中しやすくなります。

 

 

⑤呼吸法を身につける

呼吸法はマインドフルネスとも言われます。仏教では「坐禅」「瞑想」という表現されることもあります。

 

やり方は簡単ですので、ADHDに限らずどなたも身につけてほしいものになります。

 

【呼吸法の手順】

①ゆったりと腰かける(電気は薄暗く、目は軽く閉じる)

②まず息を吐き出す

③鼻からゆっくりを息を吸う

④鼻もしくは口からゆっくりと息を吐き出す(吸うよりも倍くらいの長さ)

⑤3~5分ほど繰り返す

授業や宿題を始める前に行うと効果的です。私も学習サポートの際に活用しますが、これをやった場合とやらない場合では如実に違いが現れます。

 

呼吸法を取り入れてから学習に取り組むと集中力を維持しやすくなります。一方でやらないで取り組むとすぐに気持ちがあちこちに飛んでしまいます。場所を選ばずどこでもできることなので、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。

 

 

⑥集中力は「切れる前に切る」を意識する

いろんなことに気が散って、集中力を保つことが苦手な特性があります。そこで集中力については「切れる前に切る」という意識を持つようにしてみます。

 

「1時間集中しよう」というのは、ADHDを抱える子どもたちにとっては苦行になります。しかしその半分なら、なんとかなるかもしれません。そこで使えるのが「ポモドーロテクニック」です。

 

【ポモドーロテクニック】

 

ポモドーロテクニック

勉強に取り組む際に、25分をやったら、5分休憩というように、強制的に25分で切るようにします。休憩を取ったら、また25分やって、休憩、そしてまた25分やったら、休憩し、最後に25分勉強したら、長めの休憩を取るようにします。

 

1時間集中し続けるのはなかなか難しいものです。しかし25分なら、「そのくらいなら頑張ろう」と思えやすくなります。

 

最初は25分も長いかもしれませんので、10分くらいから始めてみましょう。休憩時間はこの表の通りで結構です。

 

5分より長くしてしまうと、今度は勉強に戻ってくるのが大変になります。休憩の例は以下のものが挙げられます。

 

▫️5分休憩

・トイレに行く

・軽いストレッチをする

・ちょっとした軽食を食べる

▫️30分休憩

・散歩をする

・好きな音楽を聴く

・仮眠(寝る前にカフェインを摂るようにする)

・好きな動画を観る(タイマーセット)

 

ADHDを抱えるお子さんの場合、休憩をするとそこに意識が向いてしまい、戻ってこられなくなることがあるので、タイマーをセットし、時間が来たら音が鳴るようにしておきます。

 

集中力は「切れる前に切る」を意識しながら、ワンセットを何度か繰り返すという形で取り組んでみましょう。

 

 

⑦好奇心の強さを活かす

ADHDの得意なことでも挙げましたが、新しいことに取り組んだり、発想することが得意な面があります。

 

逆にいうと同じことを繰り返すのはあまり好きではありません。繰り返しはほどほどにし、新しいことにチャレンジできる環境作りは、お子さんの得意を伸ばすために有効になります。

 

親子で、新しいことに取り組むことで、お子さんの可能性をより広げることにもつながります。本当にお子さんが得意なことというのは、やってみないとわかりません。すぐに飽きてしまうこともありますが、やってやらなくなるのと、初めからやらないのとは全く違います。

 

旅行に行ったり、いつもと違う非日常の体験をしたり、親子でもお子さんの特性を「楽しむ」発想を持ってみましょう。

 

【子育てに疲れた親御さんへのメッセージはこちらです👇】

 

▶︎迷ったら一度ご相談ください

ADHDを抱えるお子さんの7つのヒントについてお伝えしました。まずは基本情報を集めることを大事にして、「理解すること」を第一に考えていきましょう。

 

私たちは「知らないから恐れてしまう」「過剰に反応してしまう」ことがあります。「知る」ことによって対応がわかり、それが未来につながるようになります。

 

お子さんに発達に課題があるかどうかを明らかにするのは、親御さんにとっても勇気の必要な行為になります。

 

迷われている方は、一度当事業所にご相談ください。お子さん、そしてご家族にとって最適な方法を考えていきましょう。

 

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中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。

 

あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。

 

ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。

 
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自閉スペクトラム症 ASD その特性と対応について従来は「自閉症」「アスペルガー障害」「高機能自閉症」と呼ばれていたものが、「ASD(自閉スペクトラム症)」という名前に統合されました。まだ聞き馴染みがない方も多いかと思います。

 

この記事では、ASDの特徴や、スペクトラムの考え方、ASDの向き合い方についてお伝えしていきます。

 

この記事でわかること

▶︎ASDの基本について

▶︎スペクトラムについて

▶︎ASDの向き合い方

この記事を書いた人:なかがわひろか
▫️発達障がい・不登校・ひきこもり専門カウンセラー
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️子どもから大人までの発達障がい全般に関わる

 

【発達障がいの基本についてはこちら👇もご覧ください】

 

▶︎ASD(自閉スペクトラム症)とは何か

 

ASD(自閉スペクトラム症)について

「他者の気持ちを汲み取ることが苦手」「人の顔を覚えることができない」「こだわりが強く、板書などに時間がかかる」「同じことを何度も繰り返す」「ルーティンが崩れるとイライラする」という特徴を示す傾向があるお子さんは、ASD(自閉スペクトラム症)の可能性があります。

 

お子さんが幼少の頃は、あまり気にならないこともありますが、小学校中学年くらいになると「空気が読めない」などと周りから言われ、孤立することがあります。

 

社会人になってからも、人間関係で悩まれる方は多いです。

 

ASDの診断基準

 

 

以下の症状が、Aは3つとも、Bは2つが該当し、かつ幼少の頃から(大人になってから明らかになる場合もあります)あり、学校生活や、仕事場で支障をきたしている場合に診断されます。(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Editionより)

 

 
A. 社会的コミュニケーションの障がい

▫️社会的相互反応の問題

他者と社会的なやり取りをしたり、気持ちを伝え合うことが難しい。会話のやり取りがうまくいかない。「暗黙のルール」がわからない、など

 

▫️非言語コミュニケーションの問題

表情の変化で物事を伝えることや、アイコンタクト、ジェスチャーで自分の意図を伝える際の困難さを抱える

 

▫️対人関係の問題

人間関係を発展させ、維持させることの困難さ、友人を作ることの困難さ、など

 

思ったことを言ってしまったり、字義通りに言葉を受け取るため例えが伝わらなかったり、表情を読み取るのが苦手で、いわゆる「KY(空気が読めない)」状態になることが多いです。

 

B:限定された反復的な行動様式

▫️常同反復性

ものを並べたり、飛び跳ねたり、同じ言葉を何度も使ったり、相手の言ったことをおうむ返ししたり、状況と関係のない言葉を発する、など

 

▫️儀式的な行動、思考

常に同じであること、決まって手順を踏むことに強くこだわる、ゼロ100思考、思考の柔軟性の無さなど

 

▫️限定的な興味

特定のものに対しての強いこだわり(特定のものを集める)など

 

▫️感覚の過敏さ/鈍感さ

音、匂い、光などへの過敏さ、もしくは鈍感さなど

 

いわゆる「こだわり」の強さを示します。例えばこだわりが強いため、板書に時間がかかってしまうことがあります。毎日決まったルーティンができないとイライラしやすくなることもあり、臨機応変の対応が苦手です。

ASDを抱える方は、人口中で約1%いると言われています。一般的には男性の方が多いと言われますが、女性にもいらっしゃいます。以前は「自閉性障害」「アスペルガー障害」「特定不能の広汎性発達障害」「小児期崩壊性障害」などと分類されていましたが、現在はASDに統一されています。

 

▶︎スペクトラムとは何か?

「スペクトラム(spectrum)」とは「連続体」という意味で、物理学の世界で使われる言葉です。

 

従来、「自閉症」「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」などは、その様態によって、名称が決まっていました。

 

しかしながら同じアスペルガー症候群であっても、人の気持ちが少しわかる方もいれば、ほとんど理解することが難しい方もいらっしゃいます。一口にアスペルガーと言っても、その程度が人によって異なります。

 

また自閉症と、アスペルガー、高機能自閉症は、明確に線引きができるものでもありません。そこで「強弱がある」という発想を取り入れるようになったのです。

 

自閉スペクトラムのイメージ

特性の強弱を色の濃さで表しています。お子さんがどのあたりに位置するかによっても、こだわりが強くて友達関係に影響を与えているのか、問題が強いとは言えない程度なのかが異なります。

 

ASDとは、実はとても広い概念です。同じASDの診断を受けている方でも人によって大きく特性が異なると私自身も感じています。ASDを抱える方お子さんも個人によって異なります。そしてまた、ASDを抱えない人と、抱える人の間には明確な線引きは行うこともできないのです。

 

この辺りが、ASDについて理解がいまいち進みづらくなっている要因でもあると感じます。「⚪︎⚪︎だったら、ASD!」とはっきり決まるものでもありません。お子さんの抱える特性とともに、外部環境との関わり方も重要な要素になっていきます。

 

▶︎環境との兼ね合いが重要

特性というのは、誰しもが持つものです。しかしながら、人によって、困難にぶつかることが少ない方と、多い方がいます。ASDに限らず発達障がいを抱える方の多くは困難にぶつかることが多いです。

 

しかしこれは逆にいうと、周りとの関係性がうまく築くことができたら、問題にはならないということになります。

 

以下の図は、人がメンタルダウンを引き起こす際の状況を示しています。

 

 

個人の性格傾向や特性があり、そこに外部環境が関わります。もしここで「特性があるけどそれはみんなあるから、チームで支え合っていこう」という環境であれば、失敗経験につながりにくく、メンタルダウンも引き起こしにくくなるのです。

 

逆に「どうして言われたことができないんだ」と叱責が飛び交うような環境であれば、心はやがてすり減り、自己肯定感が下がり、心の健康を損なうことにつながります。

 

▶︎ASDによくあること

 
学生時代に起こりやすいこと
▫️クラスメイトの話の細部が気になり、文脈に関係ない点について言及してしまう
▫️マス目にきちんと丁寧に字を書こうと思うあまり、板書が遅くなる
▫️思ったままのことを口にしてしまう(太ったよね、眼鏡似合わないねなど)
▫️細かい言い間違いや、言葉遣いに反応してしまい、指摘することが多い
▫️規則違反に対して非常に腹立たしい思いになる
▫️興味があることには専門家並みに知識を持つが、興味がないことには一切取り組まない
▫️感覚が過敏で、食べるもの、着る服、匂い、音、光にストレスを感じやすい

しばしばこういったことがあることで、友達関係にトラブルが起こることがあります。しかしながら、一方で、このような強みもあります

 

ASDの強み

▫️細かいミスなどに気づきやすい
▫️納得したことについては、丁寧に行うことができる
▫️他人の目に臆することなく発表することができる
▫️独特な視点から物事を考えることができる
▫️細かく綿密な作業が得意

もちろん個人差はありますが、物事を性格に覚え、緻密に取り組む力は非常に高い方が多いです。ご自身の特性を活かした学校選びや、職業選びをされた方は、メンタルダウンも起こしにくくなります。

 

 

ご家族が感じること

▫️言葉でいくら説明しても理解を得られないことがある

▫️共感を求めても、「意味がわからない」と言われることがある

▫️食やルーティンのこだわりが強いため、一連の行動ができないと出かけることができない

▫️突発的な予定の変更があると、不機嫌になる(子どもの場合癇癪を起こす)

▫️言葉で言い負かされることがある

 

これらはごく一部ですが、特にこだわりについては、家族も振り回されてしまうと感じられる方は多いです。偏食がある場合は、外食もなかなか行けないこともあります。また着る服について同じメーカーの同じ製造所で作られたものでないと着られない、ということもあります。
 
他の家庭の話を聞いて初めて「うちだけ特別だったんだ」と気づかれ、それをきっかけに知能検査を受け、診断を受ける、ということもあります。
 

▶︎ASDの向き合い方

それではASDを抱えるお子さんの向き合い方について考えてみましょう。
 

①受容すること

ASDに限ったことではありませんが、私たちはどんな人の言うことなら耳を傾けるでしょうか。おそらくそれは「自分を受け入れてくれる人」ではないでしょうか。

 

自分の考えを否定せずに受け入れてくれること。これがもっとも心の安心感を育てます。愚痴を家庭で言ってすっきりすることで、外での問題行動が減ることも十分に起こり得ることです。逆にいえば家庭の中で受け入れられていないと感じたら、そのストレスが外でも行動化するようになります。

 

【傾聴の基本については👇をご覧ください】

 

 

「受容」と「言いなり」は違う

受容することは「言いなりになること」ではありません。お子さんの思いを「なるほどそういうふうに考えるんだね」と受けた上で、「そんなときはこういう方法もあるんだよ」「相手はきっとこう考えているんだよ」などと意見を伝えます。
 
意見はむしろ伝えた方がいいのです。大事なことは順番です。「まず受けて」から「伝える」という順番が重要になります。
 
この順番が逆になってしまっていることがあります。お子さんの発言を遮って、受ける前に「それは違うよ!」と言ってしまう。反論されると人は攻撃的になります。「いつも子どもと喧嘩になる」というご家庭の場合は、一度発言の順番を変えてみましょう。これはかなり効果的なものです。
 
 

②イメージしやすい方法で伝えること

ASDを抱えるお子さんの場合「相手の立場に立ったらどう思う?」という質問を苦手にすることも多いです。

 

これは特性が理由となります。ASDを抱える方は共感性が低いと言われますが、それは共感する脳の働きが弱いことが原因となります。

 

つまり生まれ持った脳の器質の問題になるため、いくら「相手の立場で考えなさい!」と言っても、うまくイメージすることができないのです。

 

例えばクラスの子がちょっとからかっただけで、グーで頬をパンチしたとします。周りから見たら「からかっただけで、殴られるのはおかしい」と感じます。

 

しかし当人からすると「嫌なことをされた、嫌なことを返さないと不公平だ」と考えます。グーでパンチする、足を引っ掛けて倒す、馬乗りになって殴るなど些細なことに対して大きすぎる罰を返してしまうことがあります。

 

このときに、行動の大きさをお子さんがわかりやすい指標に置き換えて伝えるようにしてみます。

 

例えば先の例で言えば「からかい」はお金で言えば100円くらいの罰金のもの。でもグーでパンチするのは10,000円くらいの罰金になるんだよ。というようにです。ゲームが好きな子には、そのゲームのポイント制を使ってもいいです。お子さんが関心のあるもので例えるとそれまで理解されなかったことが、急にわかるようになることがあります。

 

「からかい」をされたら、100円分の罰を送ることになるから、100円分の仕返しは「そんなことを言うのは嫌だ」と言い返すことだよ、というように例を示していきます。

 

「こういえばわかるだろう」という考えは、ASDを抱えない人の常識になりますが、ASDを抱える方にとってはそれは常識ではありません。

 

お子さんがイメージしやすい方法での伝達を意識するようにしてみましょう。

 

 

③数字を用いて答える

「庭の花に水やりをお願いね」「どのくらいやればいいの?」「大体でいいよ」。

 

こういったやりとりはASDを抱えるお子さんはとても苦手です。大体の匙加減がわからないためです。

 

「上手にやってね」「丁寧にやってね」「早くやってね」という人によって感覚が異なる表現は、混乱を招く要因となります。

 

先の例ならば「一つの鉢に100mlの水を土の部分全体にかけてね」というように「数字」を出して伝えるようにします。「ジョウロに水いっぱいを2回やってね」という表現でも構いません。

 

数字は主観的なものではなく、客観性の高いものです。小さじ一杯分と伝えると「少なめ」と伝えるよりも、同じ量を選ぶことができます。

 

何を具体的にどうすればいいのかを、数字を盛り込みながら伝えるように意識してみましょう。

 

 

④行動面に着目してトレーニングする

例えば人を傷つける発言をしてしまうお子さんに「相手の気持ちを考えよう」と伝えても、難しい場合があります。

 

相手の立場に立って物事を考えることが苦手だからです。「自分はその人じゃないから、立場に立つことなんて無理だ」と考える方もいます。

 

情緒的な面に訴えるよりは「こういう場合には、こういうことはしない」というように「行動面」着目したアプローチの方が有効です。

 

例えば「太っている人を見て『太っている』とは言わない」と短い言葉で、その時々の行動を明確化します。

 

さらに広げて「容姿については何も言わないようにする」というように行動の幅を広げ、応用範囲を広げていくようにします。

 

「相手が傷つくから言わないようにしよう」というのは情緒的なアプローチですが、先に言ったように、相手の感情を汲み取ることに苦手さを抱えています。「わからない」状態になるので、応用することが難しくなります。

 

情緒的よりも、行動面を変容するイメージを持って接するようにしてみましょう。

 

 

⑤理由を伝える

なぜやらないといけないのか、何のためなのか、が曖昧だと気になってしまう特性も持ちます。「これはこういう理由でやるんだよ」と行動を促す際に一言理由を付け加えるようにしてみましょう。

 

理由を伝えるのは「安心」につながります。ASDを抱えるお子さんの多くは未知のことをやることに不安を抱えます。しかし理由があり、目標が明確だと行動につなげやすくなります。

 

 

⑥お子さんが得意な方法を活用する

ASDと言ってもお子さんによってその状態や強み弱みは異なります。耳からの情報が苦手な方もいれば、言葉で説明してもらった方が楽な方もいます。一方で視覚的な情報の方が処理しやすい方もいます。

 

お子さんの得意不得意を明らかにしていくために知能検査が存在します。よく使われるものとしてはWISCとK-ABCがあります。

 

知能検査というと、IQを測るものと考えられがちですが(その要素はもちろんあるのですが)、もっとも重要な活用方法は「何が得意で何が苦手か」を明らかにすることです。

 

得意を見つけ、そこをより伸ばし、苦手なことをカバーすることで、将来に向かっての課題克服につなげるのが本来の役割になります。

 

知能検査は、クリニックや病院、発達障害者支援センター等で受けられます。お子さんをより深く理解するために、一度検討してみましょう。

 

▶︎「治す」のではなく「活用する」

これは私の考え方になりますが、発達障がいに限らず、お子さんの特性(得意、不得意)というのは「治す」発想ではなく「活用する」ことが重要になります。

 

人を傷つける言動などは、改善が必要となります。しかしながら、こだわりの強さは、例えばアートの世界においては、作品作りに貢献することがあります。

 

とはいえお子さんが小さなうちは特にですが、問題行動の方に目が行きやすいと思います。なかなか「活用」のイメージを持つのは難しいものです。お子さんと関わることが密になるため、できないところに目が行きやすくもなります。

 

だからこそ、必ず、相談できる人を親御さんも持つようにしましょう。違う視点から見ることで、お子さんのことで「発見」が生まれることがあります。

 

客観的に観ることで、お子さんの能力に気づくことがあります。お一人で悩まれず、相談する相手を持つようにしましょう。

 

【お子さんの対応に疲れた親御さんへ】

 

 
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中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。

 

あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。

 

ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。

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成人の発達障がい オンラインセミナー

 

※残り3名様となりました!

 

2024年76日(土)20:00〜22:00にzoomによるオンラインセミナーを開催します。今回のテーマは「成人の発達障がいについて考える〜進路・就職・メンタルケア〜」についてです。

 

学校に属している間は決まったカリキュラムに取り組めばよく、また周りのサポートも整っているため、比較的過ごしやすい環境が用意されていることがあります。

 

しかしながら、一度学校を卒業し、社会に出て働くようになると、これまでのようなサポートを受けられないことがあります。青年期と呼ばれる10代後半以降の方々の発達障がい、並びにグレーゾーンを抱える方が、これからの人生を生きていく上でのポイントについてセミナーを行います。

 

発達障がい(ASD・ADHD・SLDなど)の診断の有無は問いません。「もしかしたら特性があるかもしれない」と思われる方や、診断は受けていないけれど、特性があると考えられるグレーゾーンの方もご参加いただけます。

 

また現在まだ小中高に在学しているけれど、将来のことを心配されている方もぜひご参加ください。お子さんとご家族の「これから」に向けての内容をお届けします。

 

セミナー講師
▫️不登校・ひきこもり専門公認心理師なかがわひろか
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️小中高、大学生、社会人などあらゆる年代の発達障がいのサポートを行う

 

【ひきこもりと発達障がいについてはこちら👇をご覧ください】

 

▶︎セミナーの内容

 

セミナー内容(セミナーの内容は若干変更になる場合もございます)

▫️成人の発達障がいの特徴について

▫️メンタルケアの方法

▫️進学や就職について

▫️質疑応答

タイムスケジュール(目安)

20:00〜21:15 セミナー(途中小休止も挟みます。多少延長する場合があります)

21:15〜21:20 休憩

21:20〜21:55 質疑応答

21:55〜22:00 アンケート・終了

 

顔出し・声出しは必要ありません

当セミナーは顔出し・声出しの必要はございません。ご質問はzoomのチャット機能からお受けします。自己紹介などの必要もございませんので、人前でお話しすることが苦手な方や初めての方もご安心して参加いただけます。

 

※セミナーのご予約の際にはお名前は必要ですが、オンラインセミナーにおいてはzoomのアカウントの名称を変更いただければ個人のお名前が出ることもございません。ただ、セミナー冒頭に参加の確認を取らせていただきますので、私宛に直接チャットでお申し込み時のお名前をお伝えください(他の方には送らないようにご注意ください)。

 

※ご質問は全体と共有させていただきながらお応えいたしますので、個人名など個人が特定される表記はご遠慮ください。またここで出てきたご質問は外部には漏らさないご協力をお願いいたします。

 

▶︎セミナー特典

 

セミナーにご参加いただいた方には以下の特典をお渡ししております。

 

セミナー資料(PDF資料)

 

無料カウンセリングの優先的なご案内

 (初回の方のみ。すでにご予約の入っている時間帯を除く)

今後のセミナーへの優先的なご招待

 

冊子はセミナーの内容をまとめたものと、統計データ等を記したものとなります。今後のお子さんへの対応にもご活用ください。

 

▶︎セミナーの対象となる方

 

▫️発達障がいを抱えるご当人やご家族

▫️グレーゾーンで悩まれている方

▫️仕事が長く続かない、自分に合う仕事を見つけたいと考えている方など

※ご本人並びにご家族の方にご参加いただけます。(大変申し訳ありませんが、今回は支援者の方は対象としておりませんことをご了承ください)対象となるか迷われた場合はご遠慮なくお尋ねください。

【お問い合わせ】

お電話090-1958-4902(10:00〜20:00)

E-mail:nakagawahiroka0530@gmail.com

【お願い🙇】

皆様にお願いしたいことは、セミナー後のアンケートのご協力です。セミナーの良かったところ、改善した方がいいところなど忌憚のないご意見をお寄せください。

 

▶︎セミナー詳細

日程 :2024年76日(土)

時間 :20:00〜22:00

使用ツール:ZOOM(10分前から招待いたします):事前にインストールをお願いします

料金 1,000円(税込)

※開催一週間前までのキャンセルは手数料を引いた金額を返金いたします。

定員 :先着10名様 残り3名様

ご予約締め切り:当日午後12:00まで受け付けます。ただし募集人数に達した場合その時点で締切となります。
お申し込みご参加をご希望の方は、下記のお問い合わせよりご連絡ください。

 

\オンラインセミナーのお申し込みはこちらからですなかがわひろか オンラインセミナー申し込み

 

※お問合せいただいた方には24時間以内にお返事をお送りしております。もし届いていない方お手数ですが再度お電話090-1958-4902(10:00〜20:00)もしくはnakagawahiroka0530@gmail.com宛にご連絡いただきますようお願い申し上げます。

連絡先:090-1958-4902

講師:なかがわひろか(公認心理師)カウンセリングオフィスOFFICE NAKAGAWA代表 

HPはこちらです

 

▶︎セミナーお申し込み流れ

 

1. 下記のセミナーの申し込みフォームよりご連絡くださいセミナーの申し込み・お問い合わせフォーム

2. 必要事項を記入の上送信


3. 24時間以内にお返事をお送りします。その際にお振込先等をお伝えいたします。(この時点では仮予約となります)

4. お振込が確認され次第本登録となります。

5. 当日10分ほど前にzoomにご招待いたします。

 

6. セミナー終了後アンケートにご協力いただき、冊子をお送りいたします。

 

▶︎ご参加者様の声(一部)

 

参加して、とても元気がでました。難しいことではあるけれど、今日のセミナーの内容を もとに自分の言葉で言いたいことを言えるようになれそうだと思いました。

やはり、しっかりとしたエビデンスと、図解でロジカルにお話しいただけて、分かりやすかったです。

親である自分の考え方や行動を考える事は大事だな、と改めて思いました。 他のセミナーでは「一般的にはこれには〇〇するといいですね」というようなものが多く細かい事はすっ飛ばされる感がありますが、カウンセラーである先生は視点が全然違い、聞きたい所を教えてくださるな、と思いました。

先生の優しいお人柄が、他とは違います。お話をさせていただいても、とにかくあたたかくて、悲しい思いをすることがありませんでした。私も、心が折れて、諦めてしまいそうなのですが、中川先生は、唯一、子どもの解決につなげていける方だと、未来に向かえる気持ちになります。
大変、勉強になりました。 自分の考え方の転換や、何かが起こった時のためにリフレーミングトレーニングを実践していこうと思いました。
様々な視点から多くの情報や知識を分かりやすくまとめてくださっていたと思いました。スライドや説明の要点がシンプルで良かったです。日常で使える知識や方法もあり学びになりました。

 

■-講師プロフィール-■
プロフィール写真

■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。

 

■資格:公認心理師・産業カウンセラー・ひょうご発達障害サポーター・大阪市スクールカウンセラー

 

あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。

 

ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。

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初めまして、不登校・ひきこもりカウンセラー(公認心理師)なかがわひろかです。

 

今このブログをお読みいただいている方は、お子さんの不登校のことで日々悩んでいらっしゃると思います。

 

私はあるひきこもりの青年と出会ったことをきっかけに「心の問題で悩む人たちの助けになりたい」と思い心理相談室OFFICE NAKAGAWAを2011年に立ち上げました。これまで12年以上にわたって親子のサポートや8050問題にも取り組んでいます。

 

学校に行けなくなったとき、お子さんも親御さんもどうしていいかわからなくなると思います。

 

私が得意としている分野は次の3つです。

1. 不登校やひきこもり、発達障がいを抱える方、またそのご家族のケア

2. 心理療法を応用した学習・キャリアサポート

3. 親子の関わり方

今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。

 

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