今回はADHD(注意欠如・多動症)について取り上げます。ADHDは落ち着きがない、忘れっぽい、いつもそわそわしている……などの特徴がある発達障がいの一つです。
ADHDの基本について学び、お子さんの対応や、特性の活かし方について見ていきましょう。
この記事でわかること
▶︎ADHDの基本について
▶︎ADHDの対応の7つのヒント
▶︎特性の活かし方
【不登校の対応の基本についてはこちらの記事👇もご覧ください】
▶︎ADHD(注意欠如・多動症)について
動症)い
ADHDの診断基準
以下のDSM-5の項目で、17歳未満はそれぞれ6個以上、17歳以上の場合は、それぞれ5個以上を満たしており、これらの症状が6ヶ月以上続き、12歳以前、2つ以上の状況で存在した上で、学校や職場で問題化している場合に診断されます。(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Editionより)
A. 不注意
指示を聞いても、最初に指示されたことを忘れやすかったり、一つのことを集中力を持って取り組むことが苦手な側面があります。
B. 多動性-衝動性
▶︎ADHDの得意なこと
ADHDと聞くと問題行動をイメージする方も多いと思いますが、ADHDの特性があることで、武器になることもあります。
ADHDを抱えるお子さんの得意なこと
▫️フットワークが軽い・行動力がある
▫️人懐っこい
▫️好奇心が強く、チャレンジ精神が強い
▫️発想力が強い
▫️ひとと異なる視点で物事を考えられる
▫️企画力が高い
▫️初対面の人でも臆せず話をすることができる
人それぞれ特性は異なりますが、愛嬌を感じさせる方が多いのが特徴の一つです。接客のお仕事や、企画力が求められること、営業力などが高く、社会に出てからも能力を発揮することができる可能性が高いと言えます。
忘れ物が多く、細かいところの気配りが苦手なところもありますが、持ち前の愛嬌の高さで補っている方もいます。
一方で、先のことを見通して考えることが苦手で、大人の方の場合、稼いだお金を散財してしまい、借金を背負ってしまうこともあります。
周りのサポートがあると、存分に自分の力を発揮することができるでしょう。
▶︎ADHDの対応のポイント
①注意の前に、特性を知る
ADHDを抱えるお子さんの場合、忘れ物や、うろうろと動いてしまったり、授業を聞けていないことがあるため、ADHDを抱えていないお子さんに比べて叱責される機会が増えやすいです。
叱責されることが増えると、「自分は他の子と比べて、できない人間なんだ」と自己肯定感を低めることにつながります。
自信を失うことで、ときに反抗的な性格形成がなされることがあります。適切な対応がなされず思春期を迎えた場合「DBDマーチ」と呼ばれる状態に進むことがあります。
【DBDマーチ】
DBD(Disruptive Behavior Disorder)と呼ばれるもの。
ADHDから始まり
▶︎反抗挑戦性障害(ODD:Oppositional Defiant Disorder)
▶︎行為障害(素行障害)(CD:Conduct Disorder)
▶︎反社会性人格障害(APD:Antisocial Personality Disorder)
に帰着する流れのことです。
ADHDという先天的なものに、さまざまな逆境体験が後天的に重なることで、反社会的な行為に進む可能性があると言われます。
この状態を防ぐために必要なことが「特性を理解すること」です。できていないことや、やってしまったことを叱責するだけでは自信を失っていきます。背景にどのような特性があり、その特性があるがゆえに行ってしまう行為があることの理解が対応のスタートになります。
②「分かっていてもやってしまう」思いを知る
ASD(自閉スペクトラム症)との違いとして、ADHDの場合は「分かっていてもやってしまう」ことが挙げられます。
ASDの場合「どうしてそれが駄目なのかわからない」ということがありますが、ADHDの場合は「それはやってはいけないことだと分かっているけれど衝動的にやってしまう」のです。
例えば太っている人が目の前にいたとします。ASDを抱えるお子さんが「あの人太っているね」と言うことがあります。これは「実際に太っている人に太っていると言って何が悪いのか?」という思いがあります。
一方でADHDの場合は「太っている人に太っていると言うのは失礼なのは分かっているけれど、つい反射的に言ってしまう」状態になります。
やってはいけないということは理解できていることが多いので、くどくどと一から注意されると耳が痛い思いになります。やってはいけないと分かっていないからやるのではなく、分かっていてもやってしまうので、やってはいけない理由の説明よりも、行動してしまいそうになるときに「一呼吸する」など時間を置くことを教える方が効果があります。
③指示は短く、明確に
ADHDを抱えるお子さんはワーキングメモリーが弱いことが多いことについてお伝えしました。そのため、長い指示や、何を言いたいかわからない内容を理解することに困難さを抱えています。
複数の指示を同時に行うのではなく、一つ一つ、もしくは1〜2つの指示を行うにとどめる方が理解しやすくなります。
どうしても複数の指示を行う場合は、メモを取るように伝える、もしくはメモを渡すようにします。メモを取ったことを忘れてしまうこともあるので、例えば朝学校に行く前はメモを見直す、などを習慣化すると忘れ物をしにくくなります。
④耳よりも「目」にアプローチする
ワーキングメモリーは聴覚的な情報の処理に関わる機能です。ここに苦手さを感じるのは耳からの情報処理を苦手とすることです。
そのため、視覚的なアプローチが有効です。口で説明するだけでなく、図やフローチャートなどを見せることで、今何をするか、これから何をするかがわかりやすくなります。
ただし、視覚的な情報が多過ぎると、そちらに気を取られてしまいます。伝えるべきことだけをシンプルに見せることを意識して作成するようにしましょう。
視覚的なアプローチが有効な分、目に入るものに気を取られることも多いので、不必要な情報は視界に入らないようにすることも有効です。黒板や机の周りには、勉強に関係のないものは置かないなどの環境づくりが効果的です。
私もADHDを抱える方に学習サポートを行う際は、環境設定を大事にしています。机に座ったとき、目に入るものの量を減らし、勉強に関係のないものは視界に入らないようにします。一つの勉強が終わったら、カバンや本棚にしまい、今やるべきことだけを机に出すようにすると集中しやすくなります。
⑤呼吸法を身につける
呼吸法はマインドフルネスとも言われます。仏教では「坐禅」「瞑想」という表現されることもあります。
やり方は簡単ですので、ADHDに限らずどなたも身につけてほしいものになります。
【呼吸法の手順】
①ゆったりと腰かける(電気は薄暗く、目は軽く閉じる)
②まず息を吐き出す
③鼻からゆっくりを息を吸う
④鼻もしくは口からゆっくりと息を吐き出す(吸うよりも倍くらいの長さ)
⑤3~5分ほど繰り返す
授業や宿題を始める前に行うと効果的です。私も学習サポートの際に活用しますが、これをやった場合とやらない場合では如実に違いが現れます。
呼吸法を取り入れてから学習に取り組むと集中力を維持しやすくなります。一方でやらないで取り組むとすぐに気持ちがあちこちに飛んでしまいます。場所を選ばずどこでもできることなので、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。
⑥集中力は「切れる前に切る」を意識する
いろんなことに気が散って、集中力を保つことが苦手な特性があります。そこで集中力については「切れる前に切る」という意識を持つようにしてみます。
「1時間集中しよう」というのは、ADHDを抱える子どもたちにとっては苦行になります。しかしその半分なら、なんとかなるかもしれません。そこで使えるのが「ポモドーロテクニック」です。
【ポモドーロテクニック】
勉強に取り組む際に、25分をやったら、5分休憩というように、強制的に25分で切るようにします。休憩を取ったら、また25分やって、休憩、そしてまた25分やったら、休憩し、最後に25分勉強したら、長めの休憩を取るようにします。
1時間集中し続けるのはなかなか難しいものです。しかし25分なら、「そのくらいなら頑張ろう」と思えやすくなります。
最初は25分も長いかもしれませんので、10分くらいから始めてみましょう。休憩時間はこの表の通りで結構です。
5分より長くしてしまうと、今度は勉強に戻ってくるのが大変になります。休憩の例は以下のものが挙げられます。
▫️5分休憩
・トイレに行く
・軽いストレッチをする
・ちょっとした軽食を食べる
▫️30分休憩
・散歩をする
・好きな音楽を聴く
・仮眠(寝る前にカフェインを摂るようにする)
・好きな動画を観る(タイマーセット)
ADHDを抱えるお子さんの場合、休憩をするとそこに意識が向いてしまい、戻ってこられなくなることがあるので、タイマーをセットし、時間が来たら音が鳴るようにしておきます。
集中力は「切れる前に切る」を意識しながら、ワンセットを何度か繰り返すという形で取り組んでみましょう。
⑦好奇心の強さを活かす
ADHDの得意なことでも挙げましたが、新しいことに取り組んだり、発想することが得意な面があります。
逆にいうと同じことを繰り返すのはあまり好きではありません。繰り返しはほどほどにし、新しいことにチャレンジできる環境作りは、お子さんの得意を伸ばすために有効になります。
親子で、新しいことに取り組むことで、お子さんの可能性をより広げることにもつながります。本当にお子さんが得意なことというのは、やってみないとわかりません。すぐに飽きてしまうこともありますが、やってやらなくなるのと、初めからやらないのとは全く違います。
旅行に行ったり、いつもと違う非日常の体験をしたり、親子でもお子さんの特性を「楽しむ」発想を持ってみましょう。
【子育てに疲れた親御さんへのメッセージはこちらです👇】
▶︎迷ったら一度ご相談ください
ADHDを抱えるお子さんの7つのヒントについてお伝えしました。まずは基本情報を集めることを大事にして、「理解すること」を第一に考えていきましょう。
私たちは「知らないから恐れてしまう」「過剰に反応してしまう」ことがあります。「知る」ことによって対応がわかり、それが未来につながるようになります。
お子さんに発達に課題があるかどうかを明らかにするのは、親御さんにとっても勇気の必要な行為になります。
迷われている方は、一度当事業所にご相談ください。お子さん、そしてご家族にとって最適な方法を考えていきましょう。
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■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
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