この記事では、不登校状態にあるお子さんの「高校受験」についての情報をお伝えしています。
調査書(内申書)の点数を上げる方法、どんな高校を選べばいいか、高校進学後の不安解消のヒントについてお届けします。
この記事でわかること
▶︎内申点の考え方
▶︎高校選びのポイント
▶︎進学後に押さえておくこと
▶︎不登校だからと言って進学を諦めないでください!
不登校状態が長く続いているからと言って、高校に進学できないとは思わなくて大丈夫です。これまで私がお会いしてきた方も、中学時代一日も学校に行けなかった方であっても全日制の高校に進学されています(その後も卒業されています)。
中学校の出席日数が少ないことで、最初から諦めてしまうケースがありますが、出席日数だけに縛られないようにしましょう。不登校は個人によってその状態が異なります。この点を考慮しながら高校受験を考えていきましょう。
▶︎公立高校の受験:ポイントは調査書(内申書)
「調査書(内申書)」とはどのようなものかご存知でしょうか?これは「中学生生活の中での成績や、特別活動や部活の記録、出欠について記されたもの」のことです。内申書と言われることもあります。
公立の高校を受験する場合調査書と学力検査の割合が概ね少ないところで3:7、大きいところで5:5です。つまり高校入試の合否の30%〜50%は調査書で決まるということです。
受験というと試験会場に行き、試験を受けて合否が決まると考えがちです。大学受験は概ねその通りなのですが、公立高校の受験については調査書の役割は非常に大きなものになります。
公立高校の場合「調査書」の中で「内申点」が重視されます。授業への出席や、テストの点数、課題の提出状況などを踏まえ、点数化されます。5科目だけでなく、実技系の4科目も重視されます。
例えば兵庫県の場合は以下のような計算となります。(兵庫の場合は調査書と学力検査の比率は5:5)
【国・数・英・理・社の5科目】
評定点(主に通知表の点数)✖️係点4✖️5科目=100点満点
例)オール3の場合
3×4×5=60点となります。
【実技系科目(4科目)】
評定点✖️係点7.5✖️4科目=150点満点
例)オール3の場合
3×7.5×4=90点となります。
兵庫県の場合、実技科目の方が係点が高くなります。この場合5科目と4科目の合計点数は150点(250点満点)となります。
これに本番の学力検査(例年3月に行われるいわゆる一般受験)を0.5掛した点数(合計250点満点)の合計(500点満点)で合否が決まります。
兵庫県の場合、第一希望の学校には加算点(20点〜30点)が上乗せになります。
シミュレーション
例えば志望している高校の合格ラインが500点満点中300点だったとします。内申点がオール3の場合は150点あることになります。第一志望で加算点が25点の場合、持ち点は175点となります。
本番の学力検査は合格ライン300点までの残りの125点を目指すことになります。この125点は0.5掛けされたものなので、実際は5科目でこの倍の250点を目指すことになります。
つまり一科目平均50点を取れば合格できるという計算になります。この場合、本番の学力検査で各科目平均50点を目指した勉強メニューを作ることになります。
あくまで経験値となりますが、学力検査の点数は普段の定期テストで取っている点数から-10点〜-20点くらいになると予想されます。
つまり普段70点を取っている人は50点〜60点になるだろうということになります。もちろん対策次第でこの点数は上げられますし、得意な科目で高得点を取り、苦手科目の不足分を補うという戦略も成り立ちます。
調査書の考え方は、各都道府県によって異なります。中学3年間の成績を平均する場合もあれば、中3の成績を大きく反映させる場合もあります。詳しくは各都道府県教育委員会のサイトからご確認ください。
▶︎公立高校入試を考えるポイント
不登校の場合、この調査書の点数が低くなることが考えられます。その理由は以下のとおりです。
▶︎授業の出席日数が少ない
▶︎定期テストを受けていない、もしくは受けていても点数が低い
▶︎提出課題が出せていない
これを見ると「うちの子は公立高校は無理だな……」と感じられた方もいらっしゃると思います。
しかし調査書の点数が低くなるポイントを裏返せば、点数をあげることは可能だということもわかります。
学校にまったく行けず定期テストを受けていない状態であれば、オール1がつく計算になります。内申点としては50点というところになります。
合格ラインが300点の高校であれば、加算点を考慮しても学力検査で460点以上(平均92点以上)を取る必要が出てくるので、現実的ではありません。
ただ、内申点をできるだけ稼ぐ方法はあります。(ここでは学校にはまったく行けない状態を想定します)。
【内申点をあげるポイント】
1. 定期テストを別室などで受ける
2. 提出課題を出すようにする
3. 適応教室や出席扱いになるフリースクールに通う
4. 別室や保健室登校、可能であれば教室へチャレンジする
1. 定期テストを別室などで受ける
内申点に最も大きく影響するのは定期テストです。定期テストを受けない場合は、見込み点がつけられますが、高得点は期待できません。
そのため、可能であればなのですが、定期テストはどのような形であれ受けるようにすることを考えてみましょう。
別室や保健室、場合によっては家庭で認められることがあります。ただし、他の生徒さんとは違う方法で受けるため7掛け(100点をとっても70点換算)などになる場合はあります。
学校によっても異なりますので、担任の先生に確認をし、できるだけ受けられる方向で考えてみましょう。
2. 提出課題を出すようにする
定期テストを受けるのが難しくとも、学校から提示される課題をやり提出することで点数が引き上げられます。
多くは問題集が宿題として出され、その課題の提出度合いによって点数化されます。実技系は課題提出が難しい科目が多いのですが、5科目の場合は可能です。さらに可能であれば自主勉強を出すのも効果的です。
3. 適応教室や出席扱いになるフリースクールに通う
適応教室とは、お住まいの自治体の教育委員会が設置しているもので、学校とは別に学校に行きづらい子どもたちのために用意されているものです。
学校と家庭を繋ぐ間に存在するようなイメージの学校です。こちらに出席することで出席扱いになり出席日数を得ることが可能となります。
フリースクールの場合は適応されているところとそうでないところがあります。フリースクールに通うことで出席扱いされるケースもあります。
学校に行くのはしんどいけれど、それ以外の場所で、自分のペースで通える場合は一度検討してみましょう。
またオンラインで学校の授業に参加することで出席扱いになることもあります。どのような方法があるか学校とも話し合ってみましょう(参考:不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて)
4. 別室や保健室登校、可能であれば教室へチャレンジする
最も効果が高い方法になります。毎日通うのは難しくとも、行けるときに1時間でも行き、そこで課題に取り組むなどの方法です。
そしてもしお子さんが可能であれば教室の授業にも参加するようにします。
一方で最もハードルが高いものになるのもまた事実です。学校に通えるのであればとっくに取り組んでいるわけです。できないからこそ悩んでいらっしゃいます。
ただ、これは私の経験値によるものですが、3年生になると受験への意識が向き、「ちょっとだけでも行ってみようかな」となるお子さんは多いです。
毎日は難しくとも週に2~3回のペースで通う方もいらっしゃいます。中には中3になった4月から皆勤賞になった方もいます。
もちろん中3で不登校になるケースもあります。ただこの場合は実は内申点はこれまでの点数が評価されるので、ある程度取れる可能性もあります。
「うちの子は絶対に学校は無理」と思われているご家庭も多いと思いますが、お子さんの気持ちに変化が現れやすくなるのも受験期です。一度お子さんと話し合ってみましょう。
▶︎審議の対象について
出席日数が少ない場合、「審議の対象」となることがあります。審議の対象なので、イコール不合格になるということではありません。
「特記事項」として中学の先生が「フォロー」をしてくれることもあります。調査書というと「悪いことを書かれる」と構えてしまう方もいるかもしれませんが、そうではありません。
学校の先生もできるだけ「受かってほしい」と思っています。悪いことを書かれるのではなく客観的な事実を書きつつ、「最大限フォローしてくれる」ということを知っておきましょう。
その上で審議の対象になる場合に、どのような方法でサポートを受けられるか先生とも話し合うようにしておきましょう。
▶︎調査書に縛られすぎない
公立高校受験の場合内申点は重要度が高いものですが、仮に調査書の点数が低くとも定員割れ(もしくは定員ピッタリ)の場合に合格できることもあります。
人気のある高校であれば早々に倍率が1を超えますが、地方の場合は、定員割れをする高校が多いのもまた事実です。
ある方は調査書の点数が60点ほどしかなかったですが(兵庫県の場合)、「定員割れする気がする」と強気で願書を出すと定員ピッタリで見事合格された方もいます。その後通い切り、大学に進学されました。
都市圏であっても定員割れしている高校は存在します。公立高校の受験者は試験の一週間ほど前まで変動します。
運の要素もあるにはあるのですが、可能性がまったく無いとも言い切れません。高校受験は、実はやってみないとわからないところも多いものです。
最初から諦めるという道を選ぶのはやめておきましょう。
▶︎定時制高校の場合
公立には全日制と定時制があります。定時制は概ね16時頃から21頃までが授業時間となります。
起立性調節障害があり朝起きるのが難しい方や働きながら高校に通いたい方などの場合定時制を選ぶケースもあります。全日制と同じく3年制が基本ではあるものの、4年制を選択することもできます。
倍率も割り込んでいるところも多いです。そのため調査書は必要ですが、全日制と比べて調査書の点数があまり影響しないメリットもあります。お子さんの体調などを鑑みた上で選択肢に入れてみましょう。
▶︎私立高校の場合
私立の高校の場合は、「オープン型入試」と言われる当日の学力検査のみの試験で合否を決める場合は、影響しません。
多くの高校では国語・数学・英語の3科目で受験がなされます。本番の学力検査一発で合否が決まるため、仮にまったく中学校に行けなかったとしても、合格ラインを超えれば合格することができます。
その意味では公立高校よりもハードルはかなり低くなります。また高校によっては不登校経験者を積極的に受け入れている高校もあります。
もちろん倍率の高い進学校などは難関になります。それでも試験で合格点を超えれば合格可能です。
私立の場合高校によって試験問題にも大きな違いがあります。志望する高校の過去問を取り寄せて、対策を行うようにしましょう。
▶︎通信制高校の場合
近年は中学卒業の第一選択で通信制を選ぶケースも増えています。通信制高校を第一希望にされる方も多いと思います。
通信制の場合、特に受験対策が必要なわけではありません。面接を受けることで合否が決まります。調査書も影響しません。
クラスメイトに馴染むのが苦手であったり、自分のペースで勉強したい方に取っては通信制は合っています。ただし、登校の回数が少ないため先生との関係性が薄くなることはあります。受験対策や、就職対策には弱い一面があることも理解しておきましょう。
どこの通信制でも決められた日数のスクーリングは受けなければなりません。年に数回スクーリングに行くところもあれば、合宿形式で行われることもあります。
各通信制によって、内容は異なりますので、説明会などを聞いた上で検討するようにしましょう。あまり遠方になるとスクーリングのたびにホテルを取らなければならないこともありますので、その辺りも考慮するようにします。
また通信制は、全日制(もしくは定時制)高校に行っていたけれど転校という形で選ばれるケースも多いです。
お子さんが全日制高校に通われたとしても、いざというときのために情報としては集めておいて良いものになります。
▶︎高卒認定試験
これは第一選択では考えることは少ないと思いますが、仮に選んだ高校に通えなくなる、もしくは単位が不足するという事態になったときを考えて、知っておくと良いものとしてお伝えします。
高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)は、8〜10科目ほどの教科の試験を受け、合格することで「高校卒業と同程度の学力がある」とみなされる試験のことです。
高校を中退された方や、中卒の方、またかなり年配の方も受けられます。合格ラインの目安は各科目40点ほどで、内容は高校1年生レベルのものです。年に2回試験があり、合格した科目は生涯持ち越すことができます。
そのため一度の試験で全科目合格を目指すのではなく、数科目ずつ受けて数年で合格するという方法を取ることもできます。
高卒認定試験の合格を持って大学や専門学校を受けることもできます。ただしあくまで高卒と「同程度」の学力があることを証明するものなので、学歴としては中卒扱いになります。
高卒認定試験の詳細については文部科学省のサイトをご覧ください。
▶︎高校選びのポイント
中学校時代に不登校を経験しているお子さんは「高校ではやり直したい」という思いを強く持たれています。
その思いが強いからこそ、仮に通えなくなったときに「やっぱり自分はダメだ」と自己否定感を抱きやすくもなります。
大事な考え方は「通いやすいところ」です。自分に合っているからと言っても片道数時間かかるところに通うのはかなり厳しいものです。
また進学校の場合授業のペースが早く、一日休むと追いつくのが難しくなることも考えられます。
勉強も大切ですが、お子さんが高校生活を通して「自分もできる」と思える環境を選ぶことが一番大切なことであることを忘れないようにしましょう。
そして仮に通えなくなったとしても、通信制や高卒認定試験などの「他の方法がある」こともまずは親御さんから認識しておきましょう。「もう終わりだ」と思うのと「他にも方法がある」と思うのでは気持ちの持ちようが変わってきます。
通いやすいことを目標に、そのためにお子さんに合っている環境を選ぶようにしましょう。
▶︎高校進学後の考え方
中学時代に不登校を経験した方は、高校では休みたくない、同じことを繰り返したくないと思います。
けれど皆勤賞で通うのはなかなか大変なものです。気負いすぎることで途中で息切れもしやすくなります。
特にゴールデンウィーク明けに気持ちが沈み、そこから休みがちになることがあります。
高校では皆勤賞は目指さないこと、そして高校は「休んでも大丈夫」ということを知っておくことです。
多くの高校では各科目の1年間の出席日数のうち5分の1を休むと補習、3分の1以上休むと留年が決定します。
これは逆言えば週に1回くらいの休みであれば補習を受ければ進学ができるということです。週に1回だけの授業もあるので、同じ曜日ばかり休むと留年してしまいますが、曜日を振り分ければ出席日数を満たすことができます。
また比較的授業時間が短くなる7月、12月、そして受験などがある3月は休みも多いので、ここで日数を稼ぐと、時期によって週に2回休んでも問題なくなります。
3分の1までに抑えることを考えれば、もう少し休んでも出席日数はクリアすることができます。
高校はこのように休みながら通うことができるのです。このことを念頭に置き、毎日行かなくてもいいんだという気持ちを持つようにしておきましょう。
▶︎高校進学に不安がある方はご相談ください
不登校だからと行って内申点を始めから諦める必要はありませんし、いろんな選択肢を消す必要もありません。
大事なことは合格のための戦略を構築することになります。とはいえ受験戦略は学校の先生も教えてくれないことがあります。
もしどこにも相談できず不安を感じられる方は、無料相談をご利用いただけたら嬉しいです。きっと「なんとかできる方法がある」ことを実感いただけると思います。
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不登校だからと行って諦めることはありません。まず今日からすることは「諦めることをやめる」ことからです。
その上で情報を集め、具体的にどう取り組んでいけばいいかについて考えるようにしましょう。
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■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
初めまして、不登校・ひきこもりカウンセラー(公認心理師)なかがわひろかです。
今このブログをお読みいただいている方は、お子さんの不登校のことで日々悩んでいらっしゃると思います。
私はあるひきこもりの青年と出会ったことをきっかけに「心の問題で悩む人たちの助けになりたい」と思い心理相談室OFFICE NAKAGAWAを2011年に立ち上げました。これまで12年以上にわたって親子のサポートや8050問題にも取り組んでいます。
学校に行けなくなったとき、お子さんも親御さんもどうしていいかわからなくなると思います。
1. 不登校やひきこもり、またそのご家族のケア
2. 心理療法を応用した学習サポート
3. 親子の関わり方今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。