
この記事では、大人のひきこもりと、発達障がいの関連性についてお伝えし、課題を乗り越えていくヒントについてお伝えしています。
「子どもとどう接していいかわからない」「もしかしたら発達障がいがあるかもしれない」と思われている方に関わりのヒントをお届けします。
この記事でわかること
▶︎大人のひきこもりと発達障がいについて
▶︎解決へのアプローチ
▶︎まとめとメッセージ
この記事を書いた人
▫️不登校・ひきこもり専門公認心理師なかがわひろか
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️自身も一人娘の父

2023年度に発表された内閣府の調査によると、15歳〜39歳の若年層のひきこもりは約64万人、一方40歳〜64歳の高年齢層、つまり「大人のひきこもり」は約82万人と、若年層を超えています。
2016年の調査によると、15歳〜39歳のひきこもりが約54万人、2018年の調査によると、40歳〜64歳のひきこもりは約61万人となっています。それぞれ約10万人、20万人が増えています。「大人のひきこもり」の数の方が増え幅が大きくなっています。
【参考データ】

ひきこもりの定義(厚生労働省)は以下の通りです。
様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)(厚生労働省)
「6ヶ月」に渡り、外部の人と関わらない状態を指します。
ひきこもりには種々の要因があると考えられます。
大人のひきこもりの場合考えられるのは、以下のものです。
①心理面:精神疾患などで長期の職場からの離脱によるもの
②社会面:いじめなどの理由によるもの
③個人面:個人の性格傾向などで、職場でうまく適応できない場合
これらの中で、近年「発達障がい」が背景に存在することで、職場の関係性が悪くなり、離職からひきこもりにつながるケースも増えてきました。
この記事では、大人のひきこもりと発達障がいの関連性について述べ、現在の課題を乗り越えるためのヒントについてお伝えしていきます。
代表的な発達障がいの種類としては、次の3つが挙げられます。「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如・多動症)」そして「SLD(限局性学習症)」です。

ASD(Autism SPectrum Disorder)自閉スペクトラム症
ASDの主な特徴は「社会的コミュニケーションの障がい」「限定された反復的な行動様式」の2つです。
A:社会的コミュニケーションの障がい
思ったことを相手の気持ちを考えずに言ってしまったり、言葉通りに受け止めて、起こり出したり、表情の読み取りが苦手で、相手の考えを推測することが苦手である側面を持ちます。
対人関係に困難さを感じるため、孤立することがあります。
B:限定された反復的な行動様式
いわゆる「こだわりの強さ」を示します。時間や、場所、特定の食べ物や着衣などにこだわりが強く、急な変更への対応が難しい側面があります。
【ASDの詳しい説明についてはこちらの記事もご覧ください👇】
ADHD(Attention Disficit/Hyperactivity Disorder)注意欠如・多動症
ADHDは「不注意」と「多動性ー衝動性」の2つが存在します。
A:不注意
掃除や片付けができない、指示を達成することができない、予定を忘れてしまう、遅刻を繰り返すなどがあります。
B:多動性ー衝動性
いつも体がそわそわと動いていたり、じっと席に座るなどが難しい場合を指します。
【ADHDについての詳しい説明は👇をご覧ください】
SLD(Specific Learning Disorder)限局性学習症
これまで「学習障害」と言われてきたものです。読み書きに苦手さを抱えたり、計算や、書くことが苦手な場合もあります。知的な問題はありません。
【SLDについての詳しい説明は👇をご覧ください】
一番は「人間関係」が理由として挙げられます。特にASDを抱えている方は、対人関係に適応することが難しい場合が多いです。
職場では、仕事の話以外にも、何気ない雑談の時間もあります。ASDを抱える方はこの雑談を苦手にしている方が多いです。
しかし本音の部分では、「みんなと仲良くしたい」という思いも持っていることもあります。仲良くしたいけれど、それが叶わないことで、人間関係に疲弊することがあり、これがうつなどの精神疾患につながることもあります。
またADHDを抱える方の場合は、忘れ物が多かったり、重要な打ち合わせを忘れてしまうことも多いです。職場での信頼を失い、そのことで自己批判が強くなり「自分は何をやってもダメだ」という思い込みが強くなることがあります。
SLDを抱える方の場合も、知的な問題はないものの、資料の読み込みが苦手だったりする琴があります。これもまた、自分は「できない」と考えるきっかけとなりやすくなります。
こういった発達障がいの特性があることから、人間関係や、仕事がスムーズにいかなくなり、精神疾患を引き起こしたり、人と関わることが強い負担となり、次第に家にひきこもるようになります。

ひきこもりは、一度始まると、期間が長くなることで、社会とのつながりが減少し、「こんなに長くひきこもっていたら、もう何もできない」と感じ、より長くなりやすくなります。
これを「ひきこもりスパイラル」と呼んでいます。スパイラルとは「らせん」、の意味で、延々と悪循環が続くことになることを指しています。

(個人の特定を防ぐために、いくつかの事例を織り交ぜておりますことをご了承ください)
A子さんは、学生時代まで特に問題なく過ごすことができていました。ASDの診断は受けていましたが、学校は授業のカリキュラムも決まっており、決まったことを行うことが得意なA子さんにとっては、授業を受けていればいいだけの学校は過ごしやすい場所でもありました。
対人関係においては、心から深く付き合う友達はいないものの、「ちょっと変わった子」という立ち位置で、いじめられることもなく、付かず離れずの関係を保っていました。
就職活動も学業の優秀さがあることで、それほど苦労することはなかったのですが、働き出してから、トラブルが増えるようになりました。
上司に対して、辛辣なことを言ったり、イレギュラーな変更等があったときに、不機嫌になり、ときに大きな声で怒鳴ってしまうこともありました。職場からも何度か注意を受けましたが、改善されることはありませんでした。
やがて職場に居づらくなり、A子さんは眠ることができなくなります。医療機関を受診すると「うつ病」と診断され、休職することになりました。このことをきっかけに会社を辞め、それ以来自宅の一室に閉じこもるようになりました。
昼夜逆転の生活をし、ときおり部屋から怒鳴り声も聞こえてきます。壁を蹴っている音も聞こえます。
当初はご両親も、そろそろ働いたらなどと言うこともありましたが、やがて親への暴力も始まり、どう対応していいか分からず、5年の日々が過ぎていきました。
発達障がいの有無に限らず、ひきこもりの対応はご家族にとって非常に負担が大きいものです。特に暴力行為や暴言があると、冷静に話し合うことも難しくなります。
発達障がいが見過ごされたまま大人になっているケースもあり、「どうしてこうなってしまったのか」が分からないまま、何年も経過してしまうケースが多くなります。
病院への受診を勧めても、本人が拒否するケースもあり、地域の支援につなげることも難しくなります。
「早く仕事をした方がいい」「大学に向けて勉強を始めた方がいい」と言われたとしても、すぐに動けるわけではありません。
まず「小さな一歩」を踏み出すことが必要です。
そのためにできることが「100%できることから始める」ことです。
例えば「一日一回シャワーを浴びる」「必ず一度起きて顔を洗う」などです。「必ずできること」が「100%」ということです。
できたことに「⚪︎」をつけて、毎日チェックしていくと、⚪︎が増えることがモチベーションにもつながります。
注意点としては、最初に目標を高くしてしまうことです。例えば「朝7時に起きる」などです。昼夜逆転している方が、7時に起きるのは大変なことです。ハードルを上げずまずは「100%」から考えるようにします。
1ヶ月継続できたら、翌月は90%できること、さらに翌月は80%できること、というように負荷を上げていきます。最初は簡単にできることから始まりますが、だんだんとレベルは上がり、一年も経たないうちに、かなりハードルの高い目標にも取り組めるようになります。
発達障がいやひきこもりについては、名称は広まってきましたが、その中身まで詳しく知る人はほとんどいないと言っていい状況です。
人は「知らない」と勝手なイメージを膨らませてしまいます。まず「知る」ことから始めましょう。
ひきこもりとはどのような状態か、発達障がいにおいてASD、ADHD、SLDとはどのようなものか。その特性にはどのようなものがあるのか、そして対処法のヒントとなるものは何か、そのことを周囲が知ることが効果的なサポートとなります。
発達障害者支援センター
発達障害者(児)への支援を総合的に行うことを目的とした専門機関になります。各都道府県知事が指定した社会福祉法人・特定非営利法人(NPO)が運営しています。
▶︎全国の発達障害者支援センターの一覧
地域のひきこもり支援団体
お住まいの地域のNPOなどが行なっている支援団体です。子どもたちだけでなく大人の発達障がいについてもサポートしている機関もあります。
カウンセリングや心理療法
カウンセリングは、その方の持つ悩みを整理し、課題を乗り越えるために何を改善すればいいかを一緒に考え取り組んでいくものです。私の事業もここに含まれます。
こういった専門機関は、まずは親御さんだけでもご相談してみることをお勧めします。話を聴いてもらうだけでも、安心感を持つことができます。
ひきこもりの場合、社会の関係が持てない状態が長く続きます。お子さんにとって一番関わり合うことができるのはご家族です。
長らくひきこもっているお子さんを見ると「早く働いてほしい」「同級生はもう自立している」など言いたくもなります。
しかしながら、顔を合わせるたびにこのようなことを言われると、お子さんは家族とさえも関係を断つようになります。そうなると、お子さんと関われる人がいなくなります。
批判ではなく、お子さんの思いを聴くことがスタートとなります。
そのために必要なことが次の「3つの力」になります。

▫️受容力
お子さんの考えている思いを「丸ごと受け止めること」を指します。「そんな風に考えているんだね」と一旦キャッチすることです。
よく「受容するということは、子どもの言いなりになるということか?」と捉える方もいらっしゃいますが、そうではありません。
言いなりは「言われたことをやること」、受容は「まず言いたいことを受け止めること」です。受容した上で、親の率直な意見を伝えることは両立します。決して言いなりになることではありません。
▫️共感力
「それは辛かったな」「しんどかったね」とお子さんの気持ちを受け止めることです。特に「感情の気持ち」に着目するようにします。自分の気持ちを理解してもらえたと感じられると「親は味方なんだ」ということを実感できるようになります。
▫️率直力
受容力のところでもお話ししましたが、お子さんの思いを受け止めた上で「私はこのように思う」とはっきりと伝えるのが率直力です。しっかりと受け止め、共感した後であれば、親の思いにも耳を傾けてくれるようになります。
【より詳しい傾聴術についてこちらをご覧ください👇】
▫️偏見や差別の解消
「ひきこもり」や「発達障がい」という言葉は、世間にも知られています。しかし言葉が一人歩きしている実態もあります。
「ひきこもりや発達障がいは人とうまく付き合えないんでしょ?」
「犯罪とかするんでしょ?」という偏見もあります。
寝ているときにキッチンで物音がしたら「泥棒か?」と不安になります。しかし電気をつけて確認すると、立てかけていたまな板が倒れていただけだということがわかります。何が起きたかがわかると安心できます。
「知らない」ことが疑心暗鬼を生みます。そしてそれが偏見につながります。まず「知ること」。そのために、私のような立場の人間がどんどん発信していくことも必要なことと考えています。
発達障がいを抱えていらっしゃる方の中には「職場には黙って就労したい」と思われる方が少なくありません。それは世の中に偏見があることをわかっているからです。「差別されない」「過度な特別扱いをされない」ことがわかると、就労へのハードルが下がり、ひきこもりから脱するきっかけになります。
▫️働きやすい環境の整備
これはひきこもりや発達障がいに限ったことではなく、働く方全てにとって大切なことです。あるひきこもり経験者を積極採用している会社の社員さんがインタビューを受けられていました。このような会社としての取り組みをどう思うか?という質問でした。
「もし自分が鬱になってしんどくなったとしても、この会社は助けてくれると思える。それが安心につながって仕事ができている」
もし自分がしんどくなって休職をしても、安心して戻ってこられる場所がある。そのことが結局は全ての働く人の心のケアにもつながっていきます。ひきこもりや発達障がいについて理解し、環境を整えることは、誰にとっても良い影響を与えるものになるのです。
「ひきこもり」「発達障がい」は「ひとくくり」にされてしまいやすい言葉です。「ひきこもりはこんな人だ」「発達障がいは、他者と関われない」。こういったものは一面的なもので、ときに思い込みと言ってもいいものです。
私たち一人一人が違うように、ひきこもりも発達障がいも、みなさんそれぞれに違います。お子さんはどういう人なのか。何が得意で何が苦手なのか。そのことを知ることがスタートになります。
ある日突然にひきこもりが終わった、というものではありません。ドラマやドキュメントではそのように演出されることもありますが、実際はもっと地道なものの積み重ねです。
対話を見直し、100%できることから取り組み、それを続ける。そうすると必ず小さな変化が訪れます。この積み重ねが、ひきこもりから脱する基盤となっていきます。
支援を受けることは恥ずかしいことではなく、より良い未来へのステップとなる
誰かの助けを求めることを恥じる方もいらっしゃると思います。ひきこもりや発達障がいのことを誰にも相談したことがない方もいるでしょう。
ただご相談したことがある方はきっとこう思います。「もっと早くに相談すればよかった」。
今まで相談してもどうにもならなかったこともあったかもしれません。諦めのような気持ちを持つこともあると思います。
そんな方たちこそ、私はお会いし、話をし、一緒に取り組んでいきたいと考えています。
悩まれているときこそ、一度ご連絡ください。
【無料カウンセリングのご案内は👇からです。一緒に考えましょう。】

ひきこもり経験を通して家族の力がぐっと深まることはよく起こることです。まずはご家族が一歩を踏み出すことから始めてみましょう。
■プロフィール■
■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。現在大阪市スクールカウンセラーを兼任。
丹波市看護専門学校非常勤講師を務める。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
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