今年、第一号の試乗記は、日本に投入されたクリーンディーゼルエンジンを搭載した、日産エクストレイルの20GTを試乗してみました。


今回の試乗は、東京・銀座にある日産本社ギャラリーのテストドライブを利用しました。日産本社ギャラリーの皆さんにこの場を借りて感謝いたします。テストドライブは土日に予約することで30分の間、同乗者なしで好きなだけ乗りたい放題で走らせることができます。


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一見、普通のエクストレイルなのだが、クリーンディーゼルエンジンの搭載で魅力を増している



<半歩先を行く次世代ディーゼル>
今回試乗したのは、エクストレイルの20GTに6段のマニュアルギアボックスを搭載したモデルで、珍しいことにオートマチックではない。これは、新世代ディーゼルエンジンにあったオートマチックが間に合わなかったと言うのが日産側の見解であるが、正直言うとマニュアルのほうが好きな筆者からすれば、好都合でもある。


新世代のディーゼルは、コモンレールシステムとピエゾ式インジェクタを装備して1600気圧というとてつもない高圧で軽油を噴射させてディーゼルの清浄化を目的にしている。とはいえ、現在、欧州の最新式ディーゼルエンジンは、2000気圧まで上げたコモンレールシステムを搭載し、世界一厳しいとされているアメリカのTier2Bin5をクリアしている。



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新世代コモンレールシステムを搭載したクリーン

ディーゼルエンジン「M9R」低速で粘り強く高速も

気持ちよく伸びる


エクストレイルのエンジンは、欧州のユーロ4規格と日本の平成17年排出ガス規制にクリアしているが、世界一厳しいアメリカのTier2Bin5を窒素酸化物(NOx)の排出でクリアできていない(ただし、粒子状物質の排出ではクリアしている)のでNOx排出量を削減することで、アメリカ市場にもディーゼルを投入することを日産ではもくろんでいる模様である。



<マニュアルのエクストレイル、それ以外は区別なし>
早速乗り込んで自分のドライビングポジションを取ってみる。元々がエクストレイルということもあり、狭いと感じることはまったくない。エクストレイル自体は、少々無骨な佇まいではあるが都会を走るアーバンエクスプレスでもあるので、その辺での苦労は一切ない。ガソリン仕様との唯一の違いは、先程も言ったようにフロアに生えているマニュアルのシフトレバーとドライバーの左にあるクラッチペダルぐらいしか、差はない。


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通常のエクストレイルと唯一違うのはこのMT

6速を搭載しており、操作感もなかなか良い、

これでクラッチさえ良ければ・・・



エンジンをかけてみると、最近のエンジンでいとも簡単に目覚める。この時点ではエンジンが回っているのだが、ディーゼル特有の震動やカラカラと言うディーゼルのエンジン音が見事に抑えられ、まるでネコが喉でも鳴らしているかのようなささやかなエンジン音が聞こえるだけ、そういう意味ではきわめて優秀な部類に入る。


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コクピットも節度があり、操作に不安なし


<慣れるのに10分必要なクラッチ>
さて、早速乗り出してみる。颯爽と走り出したいのだが、問題に直面してしまった。このエクストレイル、ギアボックスこそは節度のあるものであるが、ギアボックスをつなげるクラッチがかなりの曲者。クラッチのつながるポイント(スイートスポット)が極端に狭く、一昔のスポーツカー並みにクラッチをつなげるのが難しい。


ちなみに、恥をしのんでこの場で告白するが、走り出して5度エンストをするハメになってしまった。しかし、5分もするとコツが判り出し、発進にギクシャクすることは少なくなった・・・とは言うもののここまで手強いクラッチというのも珍しい。日産には要改良をお願いしたい。



<ガソリンよりもいいかも・・・>
そして乗りなれてみると、このディーゼルがかなりのパワフルなエンジンであることがわかる。


下から力強いトルクが湧き出るように出て、あれよあれよという間に最大馬力の173馬力を発生する3750回転を超え、いともあっさりとレッドラインの5000回転付近まで回ってしまう。重いボディをグイグイひっぱりながらも、レッドラインまで気持ちよい加速もできる良いエンジンである。加速感、低速での扱いやすさ、震動の少なさとこの乗りやすさは、かなり評価していい。


さらに想定外だったのは、現行のエクストレイルとこのエンジンの組み合わせが絶妙で、予想以上に足回りが滑らかで、それでありながらそこそこの速度でのカーブもあっさりとこなす、乗用車的な扱いができるところもこの車のいいところである。


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エクストレイルのいいところは、無闇に7人乗りに

しなかったところ。5人乗りで空間を確保し、荷室

も広く取られている点は好感が持てる


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荷室の下にある引き出し、荷室がフラットになる

ためのアイデアだがこれがなかなか使える



<このエンジン搭載車を増やすべき>
結論から言えば、このエンジンは「あたり」で、ガソリン車一辺倒の日本の閉鎖的な市場に風穴を開けるための尖兵として充分過ぎるパフォーマンスを持っていることは言うまでもない。


ディーゼルは、ガソリンよりも燃料の代替がやりやすく、てんぷら油のリサイクルで精製できる「VDF」を使って走ることも軽微な改造(車によっては改造なしで走ることもできる)で可能である。このVDFなら、軽油のような黒鉛を出すこともなく窒素酸化物も事実上出さない。しかも、植物由来でリサイクル燃料であることから、カーボン・オフセットという意味でも非常に有効である。


あとは、オートマチックかCVT、もしくはツインクラッチを持った2ペダルMTを搭載したイージー仕様で、一般のモデルであるティーダやティアナあたりにこのエンジンを搭載したモデルがあってもいいのではないだろうか?