東京・銀座にある日産本社で、GT-RスペックVを見て、シートに座ってきました。
日産本社に2台のスペックVと、銀座の中心地にある日産ギャラリーには、特別塗装色のミットナイトパープルに塗られたスペックVが展示され、自由にドアを開けてシートに座って見ることができます。
正面から 左後方から
一見すると、標準のGT-Rと大して違わないように見えますが、価格は標準モデル(861万円)のそれから、一気に倍近い1575万円(!)に跳ね上がり、これまで、レクサスLS600hLセパレートシート仕様(1510万円)が持っていた「国産市販車で一番高い車」の称号が、このGT-RスペックVに移ることになりました。
<高価なのには理由がある>
通常仕様のGT-Rも高性能な車で、一般の人がおいそれと買えないプライスタグを付けている訳で、そこから一気にもう一台GT-Rを買うぐらいのエクストラを払うスペックVは「何が違うのか?」と言う純粋な疑問が湧き出てくると思います。
確かにここまでの価格をたたき出すのには理由があってのことで、ひとえに言えば「パフォーマンスの向上」以外の理由はこの車には持ち合わせていない。
後席を取り払い、カーボンで補強されている こんなところにも艶消しカーボン
シートはカーボンの外殻に本革を纏う高級なもので、2脚で100万を超えるといわれる
スペックV専用のレイズ製鍛造ホイール ウィングも本格的な艶消しカーボン
タイヤは、サーキット用セミスリックに近い カーボンパーツだけでも1台分の値段は相当
エキゾーストシステムはチタン合金製 なんといってもカーボンローターを持つ
熱に強く、軽いが、価格が張るシロモノ 初めての市販車
特に「軽量化」には並々ならぬこだわりが見え、後席が取り払われて2人乗り(標準仕様は申し訳程度の後席があるが、ぶっちゃけ後ろに座ることは不可能)となり、ドイツ・レカロ社のカーボン製本革バケットシート(このシートだけでも100万円近いパーツ価格になる)に取り替えられ、前後の空力パーツがつや消しのカーボンパーツに取り替えられる(これだけでも相当な価格になる)ほか、スペックV専用チューニングのサスペンションに、チタニウム合金製のエグゾーストシステム、さらにはカーボンセラミック製のブレーキシステムと、ここまで挙げたものを投入しただけでも充分その価格に見合ううものと言われているが、正直乗り比べてどうなのか?判らないだけに日産側の見解を信じるしかないところが歯がゆいところです。
<しかし、ツメが甘い点も・・・>
これだけの車だけに、惜しいなと思う点もある。
まずはエンジンルーム・・・これだけの高価な車なのだから、目に見える高級感の演出があってもよかったように思う。たとえば、エンジンの吸気パイプやカムカバーに赤の結晶塗装を施し、視覚的に「ただものではない」感が見られたら、よかったように思う。
それと、ボンネットを開けたときにボンネットをつっかえ棒で止めなければならない点は、1575万円も払うスーパーカーとして、とても貧乏くさく感じてしまう。ぜひボンネットにはダンパーを使った開閉機構に変えるべきだと思う。
一時的に性能の上がるボタンが用意されている
やはり視覚的に標準モデルと同じというのは惜しい
後はインテリア・・・目に見えるダッシュボードなどの視覚に入るものが800万円の標準仕様となんら変わりないのはいささか寂しい。ポルシェやアストンマーチンなどの高級スポーツカーなどは、皮やカーボンを纏ったダッシュボードで、文字通り「着る」インテリアにまだなりきれていない点は、これからのGT-Rの課題になると思います。
ドアノブは、ここを押して出たレバーを引く 標準仕様と変わらない内装デザイン
ちょっとカッコいいが、空力的な理由から 価格相応な質感がないのは残念。
この形状になったのだそうで
と、ここまで書いて言えるのは、とてもではないが簡単に買える代物ではないということ。
標準の800万円仕様にしても高いのにほぼ二倍のスペックVがそんなに売れるわけがない。日産もその辺は心得ており、月産数は30台、それ以上の量産は品質的に無理と公言するほどのこだわりで、ほぼ1日1台の割合で生産される車のオーナーになるいったいどんな人なのか?ちょっと興味がある。