ゲノム編集で双子誕生 中国当局が「事実」と初確認 | Just One of Those Things

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科学オタクの主婦が危機感から一人でこねまくっております、危機管理シリーズ。・・・になりました。
 
昨年からのものですが・・・。
 

ゲノム編集の双子誕生か、中国~“ゲノム編集ベビー”問題批判続発」、「「ゲノム編集で誕生認めず」国の部会 指針案を了承~研究者「批判かまわない」」、「ゲノム編集使って生産された農水産物 食品の規制方針まとまる~「安全性審査すべき」」、「ゲノム編集で国際基準作成 WHOが専門委を新設へ~研究者は裏付け資料を提出せず」、「遺伝子操作したゲノム編集の食品 “事前の届け出を確実に”」より、続きます。
 

今年に入り、「”ゲノム編集”食品流通ルール 「一部は審査不要」専門家会議」より。

 

この続きがあるのですが、両者の問題が同時に出てきたので、先に「ゲノム編集ベビー問題」を取り上げます。

 

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ゲノム編集で双子誕生 中国当局が「事実」と初確認
2019年1月21日 20時08分 NHK
 
去年11月に中国の研究者が「ゲノム編集」と呼ばれる技術で遺伝情報を書き換えた受精卵から双子が産まれたと主張した問題で、国営の新華社通信は、実際に行われていたことを当局が確認したと伝えました。これまで各国の研究者からは、事実とすれば安全性や生命倫理の点で問題があるという批判が相次いでいましたが、実際に行われていたと確認されたのはこれが初めてです。
 
新華社通信は21日、調査をしている当局の話として、南方科技大学の賀建奎准教授が8組の夫婦を募ったうえで、「ゲノム編集」と呼ばれる技術で受精卵の遺伝情報を書き換え、妊娠した2人のうち1人から双子が産まれたと伝えました。
 
もう1人は妊娠中だということで、中国当局は関係部局と、ともに双子と妊娠中の女性の経過を観察していくとしています。
 
去年11月に賀准教授が公にして以降、各国の研究者からは、事実とすれば安全性や生命倫理の点で問題があるという批判が相次いでいましたが、実際に行われていたと当局が確認したのはこれが初めてです。
 
賀准教授は2016年6月以降にチームを作り、倫理的に問題がないか審査するための書類は偽造していたということで、新華社通信は「みずからの名誉や利益のために国の規制を逃れて生殖目的でヒトの受精卵のゲノム編集を行った」としたうえで「当局は法に基づいて厳しく処分する」と伝えています。
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この情報は、夕方にはわかったようで、他社の報道機関では報道が出ていました。

 

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「ゲノム編集の双子」中国当局が事実と認める 世界で初
2019年1月21日(月) 18:32配信 朝日新聞デジタル

 中国広東省の南方科技大の賀建奎副教授が「ゲノム編集により遺伝子を改変した受精卵で双子を誕生させた」と発表した問題で、同省の調査チームは賀氏の主張は事実だと認定した。動機については自分の名声や利益を追い求めるため、としている。国営新華社通信が21日に伝えた。ゲノム編集された子どもが生まれたのは世界で初めて。
 
 賀氏は昨年11月、香港大で開かれた国際会議で、ゲノム編集を経た双子の誕生を発表した。しかし、根拠となる具体的な情報を明らかにしなかったため、「真偽不明」として国内外で疑問視されていた。当局が事実だと認めたことで、今後、倫理面や安全性に問題があるとする批判が、さらに高まりそうだ。(広州=益満雄一郎)
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どんなことが問題の端緒?・・・と言いますと、「中国広東省の南方科技大の賀建奎副教授がゲノム編集技術を使い、双子を誕生させたと主張していた。」というところからに始まります。

 

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中国、ゲノム編集で双子誕生と確認
2019年1月21日(月)18:32配信 共同通信

 【広州共同】中国広東省の南方科技大の賀建奎副教授がゲノム編集技術を使い、双子を誕生させたと主張していた問題で、同省調査チームは、副教授が実際に双子の女児を誕生させていたと確認した。国営通信の新華社が21日伝えた。
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なぜ問題になっていた?・・・については、人類史上初めて、受精卵の段階で遺伝情報を人為的に書き換えた赤ちゃんが誕生したことになります。
 
詳細や流れは、これまでの過去記事を見ていただければ、と思います。
 
この問題について、学術ではなく、一般の方でも、わかりやすくまとめられたものがありますので、示します。
 
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中国人研究者が発表 「ゲノム編集ベビー」が絶対に許されない理由
2018/12/14(金) 17:00配信 文春オンライン

 思っていたよりも早く、しかも最悪のパターンで起きてしまった――。最初に一報を聞いたとき、そんなショックを受けた。
 
 中国の研究者が主張している「ゲノム編集ベビー」の誕生。もし事実だとすれば、人類史上初めて、受精卵の段階で遺伝情報を人為的に書き換えた赤ちゃんが誕生したことになる。今年7月にインタビューしたゲノム編集技術の開発者の1人、ジェニファー・ダウドナ・米カリフォルニア大学バークリー校教授は「最も心配なのは、社会の反発を引き起こすような応用です」と述べ、その具体例の1つに「未熟な臨床研究」を挙げた。彼女の懸念がまさに現実になったと言える。
 
■「ゲノム編集ベビー」の存在が明らかになった経緯
 
 最初にこの問題を報じたのは、11月25日付のMITテクノロジーレビューの記事だ。ゲノム編集した受精卵から赤ちゃんを誕生させる臨床研究が深センにある南方科技大学の賀建奎・副教授らによって実施されているようだ、という内容だった。
 
 翌日にはAP通信に賀氏への独占インタビューによる詳細なスクープ記事が出た。「双子の女児が数週間前に誕生しました」と賀氏本人が晴れやかな表情で語る動画もインターネット上で公開され、世界中で驚きと非難の声が巻き起こったが、賀氏は同28日、香港で開かれたヒトのゲノム編集に関する2回目の国際サミットに堂々と登壇し、スライドでデータを示しながら「研究成果」を発表した。
 
 賀氏によれば、遺伝子改変の目的はエイズウイルス(HIV)への感染予防で、不妊治療中の7組のカップルの受精卵計31個にゲノム編集を施し、7割で改変に成功、1組から双子が誕生したという。カップルは男性がHIV陽性、女性が陰性という条件で、エイズ患者の支援団体を介して集めた。父親がHIV陽性でも赤ちゃんへの感染を回避する方法はすでにあるため、あくまで誕生後の親子間の感染の予防が目的ということになるが、多くの専門家が「医学的な正当性はない」と指摘している。
 
■倫理審査や、カップルへの事前の説明は十分だったのか
 
 会場の研究者やメディアとの質疑応答では、倫理審査や、カップルへの事前の説明と同意を得る手続き、生まれた子の福祉などに関する多くの質問が投げかけられたが、賀氏の回答に説得力はなかった。報道されている他の情報と併せても、手続きが極めてずさんで、カップルへの説明も不十分だった可能性が高い。
 
 独仏英などは遺伝子操作した子供を出産させることを法律で禁じており、中国でも禁止する指針がある。賀氏は、双子の父親がHIV感染者であることを理由に双子の身元や所在を明かしておらず、臨床研究の真偽ははっきりしていない。賀氏は所属する大学を今年2月から休職していたといい、大学側は「事前に報告を受けておらず、衝撃を受けた」として、独立した調査委員会を設置することを明らかにした。中国政府も事態を深刻にみて、事実関係を調査する方針を示している。この原稿を書いている12月11日現在、まだそれらの結果は明らかになっていないが、行ったとされる研究の背景や、問題のポイントを整理してみたい。
 
■そもそもゲノム編集って?
 
 そもそもゲノムとは「生物の全遺伝情報」のことで、その実体であるDNAは、A、T、G、Cの4種類の塩基という物質が二つずつ対になり、二重らせん状に連なってできている。ヒトならば約30億塩基対もあるこのゲノムの中に、多種多様なタンパク質を作り出すための指令である遺伝子が織り込まれている。
 
 ゲノム編集は、遺伝子を構成する塩基の並びを、まるでワードソフトで文章を編集するかのように、自在に書き換える技術だ。遺伝子を切断するはさみ役の酵素と、その酵素を目的の部位まで連れて行くガイド役のRNAがセットになっていて、はさみでDNAの2本の鎖を切断して特定の遺伝子を壊したり、切断したところに新たな遺伝子を組み込んだりして編集する。その精度や効率の高さは、遺伝子組み換えなどの従来の遺伝子改変技術をはるかにしのぐ。
 
■賀氏らが用いた技術「クリスパー・キャス9」
 
 今回、賀氏らが用いた「クリスパー・キャス9」は2012年に登場した技術で、ゲノム編集の第3世代にあたる。安価で簡便なため爆発的に普及し、農畜産物の改良研究や生命科学の基礎研究など幅広い分野で利用されている。医療分野でも、がんや、染色体や遺伝子の変異が原因で起こる遺伝性疾患を対象に、患者の体から採取した細胞をゲノム編集してから体に戻す、あるいは患者の体内での編集によって治療する研究が、各国の大学や研究機関、ベンチャー企業によって進められている。すでに臨床研究が始まったものもある。
 
 ただし、計画または実施中の臨床研究はいずれも、患者の体でその役割を全うする「体細胞」が対象だ。卵子や精子、受精卵といった「生殖細胞」を対象とするとなると話は違う。「生殖細胞」は次世代に遺伝情報を引き継ぐための細胞であり、その操作の影響は子や孫、さらに先の世代にまで及ぶからだ。とりわけヒト受精卵は、子宮に戻して着床すれば人の誕生につながる「生命の萌芽」でもあり、研究目的であっても安易に扱っていい細胞ではない。
 
■ヒト受精卵のゲノム編集が問題化したのは2015年
 
 ヒト受精卵のゲノムを編集する最初の基礎研究が2015年4月、中国の研究チームによって報告された際、世界中でセンセーショナルに報じられ、物議を醸したのも当然だった。同年12月、米英中の学術団体はワシントンDCでヒトのゲノム編集をテーマに科学者や生命倫理学者、社会学者らが話し合う初の国際サミットを開催。生殖細胞のゲノム編集について「基礎研究は推進すべきだが、改変した細胞は妊娠に用いてはならない」とする声明が採択された。その後も中国のほか、米国や英国でヒト受精卵のゲノム編集が行われているが、あくまで実験室レベルの試みだった。
 
 賀氏が非難を浴びた理由の一つは、こうした国際的な合意を無視し、実際に人を誕生させる重大な研究を秘密裡に進めたからだ。サミットの議長を務めたデイヴィッド・バルティモア・米カリフォルニア工科大学教授も壇上で「透明性が欠如していたため、科学コミュニティによる自主規制が失敗した」と残念がった。
 
■「ゲノム編集ベビー」が許されないこれだけの理由
 
 もちろんそれ以前に、ゲノム編集した受精卵からの出産が許されない理由は幾つもある。第1に、技術の精度が100%ではなく、安全性が担保できていないことだ。想定されるリスクの一つに、目的外の遺伝子を誤って改変してしまう「オフターゲット変異」がある。オフターゲット変異の部位によっては重大な副作用が起こりかねないが、ゲノム編集で生じたすべての変異を確実に把握し、そのリスクを検討するのは難しい。
 
 一人の体のなかで改変された細胞とされていない細胞が混在する「モザイク」と呼ばれる状態になる可能性もある。その場合、発生が少し進んだ受精卵から細胞を採取して調べ、目的通りの改変ができていたとしても、実際には一部の細胞しか改変できておらず、生まれた子には期待した効果がみられない、ということも起こりうる。
 
 第2に、ヒトゲノムの改変が倫理的に許されるのか、という根本的な問題がある。生まれた子の全身の細胞に及び、さらに世代を超えて伝わるような改変を、生まれてくる本人の同意なく行っていいのだろうか。親が望んだ容姿や能力を持つ「デザイナーベビー」や、特定の能力を強化する「エンハンスメント」につながる恐れもある。その先に待つのは、優生思想や、遺伝情報の「優劣」に基づく新たな差別のはびこる社会かもしれない。
 
 米国や英国の研究者の中には、重い遺伝性疾患などを対象に生殖細胞のゲノム編集の臨床応用を進めるべきだという意見を持つ人もおり、一部の患者団体からも研究の推進を望む声が上がっている。しかし、許される「治療」や「予防」の範囲をどこまでとするのか、その境界を誰がどのように決めるのかという問いに、私たちはまだ答えを持っていない。
 
 香港で開かれた国際サミットの運営委員会は閉幕日の11月29日、生殖細胞にゲノム編集を施す臨床応用について「現時点では無責任だと考えている」とする声明を発表した。人の尊厳や社会のあり方、さらには人類の未来に関わる問題だけに、個々の国や国際社会での十分な議論が必要だ。
 
■「CCR5について、我々は十分に知っているだろうか」
 
 ゲノムや遺伝子に関する人類の知識はまだ不十分であることも忘れてはならない。今回の編集の標的は、HIVが細胞内に侵入する際に足がかりとするタンパク質「CCR5」を作る遺伝子だ。この遺伝子に変異を起こし、CCR5ができないようにすることで、HIVへの感染を防ぐのが狙いだった。白人にはまれに、生まれつきCCR5遺伝子に変異を持つ人がおり、賀氏はそのことを研究の妥当性の一つの根拠にしている。
 
 自然に起こりうる変異だから問題ないという考え方だが、CCR5遺伝子が欠けていると、逆に西ナイル熱という感染症にかかりやすくなったり、インフルエンザによる死亡率が上がったりするという報告がある。ある遺伝子を操作したとき、目的外の影響がでる可能性は常にあるのだ。サミットでの質疑応答でも、ロビン・ロベル=バッジ・英フランシス・クリック研究所教授が、この遺伝子が認知機能にも関わっているとする報告があることに触れ、「CCR5について、我々は十分に知っているだろうか」と賀氏に問いかける場面があった。
 
■自身をノーベル賞受賞者に重ねていた?
 
 印象深かったのは、動画やサミットでの発表で、賀氏は「ルルとナナ」という双子の名を、まるで人々の記憶に刻みつけるかのように何度も口にしたことだ。動画の中では「メディアは最初の体外受精児であるルイーズ・ブラウンの誕生についてパニックをあおった。だが、40年間にわたり、規制と倫理は体外受精と共に発展してきた」とも述べている。1978年の誕生当時、ブラウンさんの名前はやはり世界中で報じられた。多くの批判を受けながらも彼女の誕生に携わったロバート・エドワーズ博士(2013年死去)は、2010年にノーベル医学生理学賞を受賞している。私には賀氏が、エドワーズ博士とブラウンさんに自身と双子を重ね合わせているようにも感じられた。
 
 しかし、賀氏が将来、栄誉を受ける可能性は低い。体外受精や出産に関わったとされる深センの病院は関与を否定している。各国の学術団体はもちろん、中国の研究者団体さえも、相次いで今回の研究を批判する声明を出した。
 
 サミットで「(今回の臨床研究を)誇りに思う」と述べた賀氏も、さすがに今は四面楚歌の心境だろう。賀氏をはじめとする関係者への調査が尽くされ、その結果が速やかに公開されることを期待したい。また、もし「ゲノム編集ベビー」が実在するならば、生まれた双子とその両親、妊娠の可能性があるというもう1組のカップルへの、長期にわたる医学的・精神的なケアやサポートも必要だ。
 
 2015年のヒト受精卵改変に続いて世界を驚かせた今回の一件は、時に拙速に進むゲノム編集研究の危うさを浮き彫りにした。どんな技術にも光と影がある。ゲノム編集の恩恵を正しく受けるためにも、私たち一人ひとりが、自分たちの問題としてこの技術について知り、考えるべき時なのかもしれない。
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どんな懸念が出ていた?・・・については、様々な問題点がありますが、科学的な詳細は既にとりあげていますので、過去記事をご覧くださいませ。
 
人文系の総論でいえば、「人類全体の未来に関わる極めて重い倫理的問題がある」として、技術の利用がどこまで許されるか、社会の合意を図るべきだとの共同声明が出されていました。
 
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人文系3学会、ゲノム編集で声明
2018/12/25(火) 18:43配信 共同通信

 中国の研究者が遺伝子を改変するゲノム編集の技術を使って双子を誕生させたと主張する問題で、日本哲学会と日本宗教学会、日本倫理学会の3学会は25日、「人類全体の未来に関わる極めて重い倫理的問題がある」として、技術の利用がどこまで許されるか、社会の合意を図るべきだとの共同声明を発表した。
 
 人文系の学会が科学技術の問題で声明を出すのは異例という。
 
 声明では、受精卵へのゲノム編集は「世代を超えて子孫に伝わり、人類という種を変える始まりになりかねない」と指摘、「人類の育種、優生学的な改変につながる」と強い懸念を示した。
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人文系が科学技術の問題で声明を出すのは、本当に異例ですね。
 
まぁ、この問題は多岐にわたるでしょう。
 
次回は、農水産物についてのものを取り上げます。
 
 
※多忙窮まって、ブログ活動が遅れております。申し訳ありません。次に、究極に溜まりに溜まったネイチャーを取り上げます。
 

 

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