分子栄養学入門-16、脂肪酸が材料となる代謝は効率がいい
脂質が分解されてできるのが脂肪酸で、β酸化と呼ばれています。その脂肪酸が材料となるエネルギー代謝の場合には、脂肪酸からアセチルCoAがつくられ、直接ミトコンドリアのクエン酸回路と電子伝達系の好気性代謝に入ります。
この場合、脂肪酸の炭素数が16あるもの(=パルミチン酸:ラードなどに多く含まれる)の場合は、クエン酸回路+電子伝達系で、「ATPは129個」もできます。
グルコースが原料の場合は「ATPは38個」が最大量でしたから、脂肪酸はグルコースに比べて非常に高エネルギーであることがわかるでしょう。
これを踏まえて、ATPをたくさん増やせる理想のエネルギー代謝へご自分の体を変えていくことが大切です。そのためのステップは、2つあります。
ステップ1 糖質を好気性解糖で完全燃焼させる
最も重要なことは、糖質の嫌気性解糖主導の代謝から好気性代謝に変えることです。つまり、摂取した糖質を好気性代謝で完全燃焼させることが最重要です。
糖質をたくさん摂ってしまった場合は、糖質代謝にビタミン、ミネラルが浪費されて好気性代謝の方に入れなくなります。
嫌気性解糖で得られるATPは2個ですが、乳酸を再度グルコースに変換するコリ回路という代謝でATPが6個消費され、結果的にマイナスATPとなります。糖質を好気性解糖で完全燃焼させるためには、糖質摂取の絶対量を減らすこと、そしてピルビン酸デヒドロゲナーゼの補酵素を補給することです。
この補酵素が、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB5(パントテン酸)、αリポ酸などになります。つまり、ビタミンB群の補給が欠かせません。
また、好気性代謝が行われるミトコンドリアはタンパク質そのものですから、タンパク質が不足しているとミトコンドリア機能が低下して、好気性代謝の機能が低下します。
先に述べましたが、電子伝達系には鉄が必須なので、鉄不足があると好気性代謝機能が低下します。
ステップ2 脂肪酸代謝(ケトン体代謝)に変えていく
糖質を完全燃焼できるようになった後に、脂肪酸を燃焼させるケトン体代謝に徐々に変えていくことを目指しましょう。糖質摂取を減らして、脂肪酸摂取を増やしていくのです。
そのためには、食事に肉、卵、チーズ、バター、ラード、生クリーム、MCTオイルなどを増やしていきます。とはいえ、タンパク質と鉄が不足している女性の場合は、いきなり脂肪酸燃焼代謝に変えることは困難です。
脂肪酸燃焼代謝に変えるためには、BUN15、フェリチン50程度は必要となります。理想値はBUN20以上、フェリチン100以上です。
エネルギー代謝は、以上の2つのステップで理解することが重要です。
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