川越style「小江戸川越 酉の市」12月3日熊野神社境内 大鷲神社例大祭 | 「小江戸川越STYLE」

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12月3日は、連雀町にある熊野神社境内にある末社、大鷲神社(おおとりじんじゃ)の例大祭、「小江戸川越 酉の市(とりのいち)」の日。
毎年、曜日に関係なく12月3日と決まっており、今年も多くの人が熊手を求めに詰めかけていました。

「小江戸川越 酉の市」
場所:熊野神社境内
問い合わせ:川越市観光協会 / 熊野神社
電話 049-227-8233 / 049-225-4975
酉の市は、毎年11月の酉の日に各地の鷲(おおとり)神社で行われる祭礼で、酉のまち、お酉様ともいいます。はじめての酉の日を「初酉」または「一の酉」、次を「二の酉」、三度あれば「三の酉」といいます。

有名な浅草の大鷲神社は11月ですが、川越は12月3日で、今では川越の冬の風物詩になっています。今年でなんと95回目の開催。
大鷲神社は、商売繁昌、家内安全、開運の神様。酉の市で売られている熊手には、「福を掃き込む、掻き込む」という意味から、商売繁昌、家内安全のご利益を授かることができるとされる。
落ち葉を「かき集める」道具の熊手が、いつしか、「運をかき込む」「金銀をかき集める」道具として
次第に縁起物とみなされるようになりました。
それに伴って、実用性のある熊手から宝船に乗った七福神、大判小判、松竹梅など様々な飾りが施され、縁起物の熊手と変化し、現在に至っています。

酉の市は、熊野神社でも特に賑わう行事であり、周辺の立門前通りや連雀町繁栄会通りを交通規制して行われます。歩行者天国になるのは、2017年11月の「食と音と灯りの融合Kawagoe REMIX(カワゴエリミックス)2017」以来。通りや境内には露天がひしめき、さながら川越まつりのような賑やかさです。

 

境内、各地から集結した熊手の店々がずらりと並ぶ。

普段の落ち着いた雰囲気の境内から一転、煌びやか熊手に彩られた境内は幻想的で、夢の国のよう。確かに、縁起物が詰め込まれた熊手が、これでもかと所狭しと境内を埋めている様は夢の国以外の形容はないかも。

毎年恒例の行事なので、出店している熊手商も毎年出店しているお馴染みの店ばかりであり、さらに言えば、境内の出店位置もほぼ毎年同じというのが酉の市。

(熊手商が毎年同じ位置に出店するというのは実は意外にも大事なこと。。。後述。)
熊手は商売繁昌の縁起物だけあって、酉の市にはお店や会社を経営している、商売に携わる人たちが、川越市内はもちろんのこと遠方からも求めにやって来ている。

酉の市にはお店・会社の営業が終了してから来るパターンが多いので、夕方以降から境内は人でごった返していくのが通例ですが、日中から済ませるというパターンも多く、そこかしこで盛大な手締めの掛け声が響いてくる。

熊手購入が決まると、熊手商たちが集まり、手締めをするのが酉の市の恒例。

「繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

「繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

「繁昌!繁昌!益益繁昌!!」、この活気が酉の市ならでは。

縁起物である熊手は、同時に職人によって丁寧に作られる手仕事作品とも言える。

酉の市の熊手は、1000円程度の小さいものから、上は数十万する豪華絢爛な熊手まで様々。

熊手には縁起物がこれでもかと盛られ、これなら福が来ないわけがないというてんこ盛りです。
大判・小判・大入札・打ち出の小槌・袋・千両箱・丁銀・分銅(金運)、鯛(目出度い)、七福神、、招き猫、箕(掻き集めた福や運を掬い取る)、賽子(サイコロ、転んでも必ず「目」が出る所から、必ず「芽」が出るという縁起)、俵(豊作)、瓢箪(千成瓢箪はお金が殖える。六つの瓢箪は、無病息災の意味。災難除け延命)、蛙()お金が出て行っても返る、旅行しても無事かえる。人に施せば還る。若返る)、梟(フクロウ、不苦労)、末広(扇子から末に広がる目出度さ)、などなど。

 

反対に、熊手を買い求める人はどんな気持ちがあるのか。

何より商売繫盛を願う熊手を買い求めるのは、会社やお店など商売をしている人たち。ここを掘り下げると・・・

熊手選びは、一年間、お店・会社に大事に飾るだけに簡単には選べないのが人情で、これにしようか、こっちにしょうか、無数にある中で悩みに悩んでこれ!と選び出し決めている様子があちこちに見られる境内。この過程にそれぞれのお店・会社の願いがあり、人間ドラマがあります。

(ちなみに、川越市内のお店で熊手が飾られていたら、多くが熊野神社のこの酉の市で購入したものだと考えられます。川越で酉の市が行われているということと、酉の市には商売をしている人が集結するということ)

お店の人は、酉の市で熊手を買うことを毎年恒例にしている人も多く、しかも、毎年この熊手商で買うと決めている人が多い。というか、毎年買い続けている人にとっては、同じところで買い続けるということが商売人としての自然な心理であるとも言える。

縁起物である熊手は、買う側が験を担ぐ傾向が強く、「初めにここで熊手を買ってお店を軌道に乗せることができた、大きくできた」など体験すると、次の年は験を担いで同じ熊手商で買うパターンが多くなる。次の年は昨年より少し大きめの熊手を、そして次の年はまた少し大きめの熊手を、と買い続けていき、気づけば肩で担ぐほどの熊手を購入することになっていたりする、川越お店ストーリー。10年、20年と同じところでこつこつと買い続けている人もざらにいます。

という話しから、熊手商が境内同じ位置に出店する秘密が解ったでしょう。

同じ熊手商で熊手を買いたいという人にとっては、買った店が毎年のように場所が変わってしまうと見つけるのはかなり困難になってしまう。ただでさえ、店がひしめいて同じ熊手を販売している中、場所の判別が分からなくなりがちで、しかも一年に一度の買い物です。屋号を憶えておいても忘れてしまうことから(ショップカードなども特にないですし)、全ては「この場所で買った」という場所の記憶が辿り着く一番の決め手になる。

売る側にとっては来てもらいやすく、買う側にとっては辿り着きやすく、両者にとってなんとも合理的に運営がされているのです。

もちろん、毎年買い続けている人にとっては、どこに出店していようが関係ない。屋号を憶えているし、職人たちと顔なじみになっているのですぐに分かる。

「一年ぶりに買いに来ました」、「一年ぶりに会えましたね」、「また来年買いに来ます」、「次はもっと大きいのを買います。買えるようになります」、「来年までお元気で」、そんな会話が聞こえてくるのも酉の市の醍醐味です。

 

日が暮れて、いよいよ酉の市活況の時を迎えました。ライトアップされて闇夜に輝く熊手。

それを見上げ、今年はこれにしようか、あっちにしようか思案する人たちの姿。

各地から熊手を求めにやって来る酉の市ですが、「川越」にフォーカスしても、市内中から集まっている。川越には会社はもちろんのこと個人店が多いこともあって、市内のお店の人たちが続々と集結することでも知られる酉の市。営業終了後に熊野神社に駆けつけ、個人店大集結の様相を呈していきました。
境内把握できただけでも・・・
トシノコーヒーさん、
ベトナム小粋雑貨サニーサイドテラスさん、
Mimi DINERさん、
Hamano-yaさん、
レレレノレコードさん、
KIYOU KAWASHIMAさん、
ソコノワさん、
LaFoireラフォアーさん、
六軒町バル MISMOさん、
大黒屋食堂さん、
カフェ&キッチン ラフテルさんが来ていました。
他にも川越市内のお店の方がいたようで、見逃してすいません。。。!
それぞれのお店にこの日の熊手が飾られ、商売繫盛の神様に見守られます。

「トシノコーヒーさん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

「Mimi DINERさん、ベトナム小粋雑貨サニーサイドテラスさん、Hamano-yaさん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

「レレレノレコードさん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

「株式会社竹悠(炉端 いっしょけんめいなど)さん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

一号店を開いてから欠かさず酉の市で熊手を買い続けてきた竹悠の竹村さん、お店が増え、会社が大きくなり、熊手がこんなにも大きくなりました。

 

ここにも、酉の市における川越お店ストーリーが始まろうとしていた。

川越でお店を構えて、初めて熊手を買いに来ていたのが、昭和の街の「La Foire(ラフォアー)」さんや一番街の「KIYOU KAWASHIMA」さん。

ラフォアーの諸井さんは、今年は1000円の熊手から始め、これから年々大きな熊手にしていこうと野望を抱いていた。

「ラフォアーさん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

(「La Foire(ラフォアー)」川越昭和の街に出現したシトロエンのホットサンド専門店

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12292480828.html

 

「KIYOU KAWASHIMAさん、繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

(「KIYOU KAWASHIMA」観葉植物専門店 植物と物が織り成す新たな形 一番街

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12191161041.html

お店の心理としては最初から大きな熊手を買い求めるのではなく、まず小さめの熊手から始める人が多い。そこからお店の成長と共に熊手を大きくしていこうというストーリーを描いている。

巨大な熊手を見上げながら、いつかあの熊手を買えるくらいまで、と思い描いているかもしれません。

店内に飾られている熊手に、実はそんなお話しが潜まれていたのです。

来年以降、各お店に飾られる熊手はどんなものになっていくでしょう。

 

そして、川越の酉の市と言えば、境内で行われる奉納芸能も毎年の見どころ。

大鷲神社・熊野神社がある連雀町内の囃子連「雀會」が中心となって神楽などを奏しました。

■酉の市 奉納芸能

・午前10時15分~音出し(雀會)

・午後1時30分~創作神楽「狐と狸」(雀會)

・午後4時~創作神楽「狐と天狐」

・午後5時30分~里神楽「紅葉狩り」(江戸里神楽いろは中」

・午後7時50分~創作神楽「」「月がきれい 月に吠える」(雀會)

・午後8時50分~創作神楽「月がきれい 惜しみなく愛は奪う」(雀會)

・午後9時35分~福餅まき

・午後9時50分~市舞囃子(雀會)

上記の神楽殿のスケジュールの合間は、山車にて居囃子が行われます。

2017年10月の川越まつり以来、山車蔵から連雀町の太田道灌の山車が曳き出され、雀會が囃子を演奏し続けました。

山車はそれ自体だけでなく、やはり囃子と一緒になって煌めくもの。多くの人が熊手選びの目を時折止め、雀會が演奏する山車を見上げていました。

境内では、神楽殿で神楽、山車蔵では太田道灌の山車で囃子、という二ヵ所で交互に断続的に演奏が続き、次は神楽殿、次は山車へ、と二元中継的で参拝者を惹き込んでいきました。
 

連雀町と言えば川越まつり、川越まつりと言えば連雀町、連雀町における川越まつりを中心にした町の一年を以前俯瞰して伝えました。

(2017年10月14日、15日「川越まつり」川越まつりの街川越 川越まつりを中心にした川越の一年

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12318850648.html

特に連雀町の太田道灌の山車は、今年は例年以上に注目を集めた年となりました。

1457年の太田道真・道灌父子による河越城築城から今年がちょうど560年にあたるという節目のメモリアルイヤーで祝福に沸いた2017年でした。

酉の市の雀會の奉納芸能の知る人ぞ知る魅力と言えば、創作神楽でしょう。

今はこれを目当てにした人も多くなっている。

創作神楽はその名の通り、オリジナルで制作した神楽を奉納することで、実は雀會は毎年のように創作神楽を創っては酉の市の神楽殿で披露しています。神楽を創るというのも生易しいものではなく、どんなストーリーにするか、ストーリーに合わせた舞は、というまさにゼロから創り上げるもの。

雀會が今年のテーマに選んだ一つが・・・いや、今年は雀會の面々は意外にも悩まなかったのでは??と思うほど、これしかないというテーマに落ち着いていました。

2017年の連雀町、熊野神社と言えば、これしかないでしょう。

TVアニメ「月がきれい」です。

原作がないオリジナルTVアニメの「月がきれい」は、物語の舞台は川越のとある中学校。中学3年の始業式から始まるストーリーは、安曇小太郎や水野茜といったキャラクターたちの瑞々しい等身大の中学生の物語を描いていた。

TOKYO MXで4月から6月まで毎週木曜24:00~に放映され、人気を博しました。

「月がきれい」オフィシャルサイト

ご存知のように、「月がきれい」では重要な舞台として熊野神社が取り上げられ、オープニングテーマでは連雀町の川越まつりが使われていました。

連雀町太田道灌の山車、雀會の天狐、連々会の面々の狂喜乱舞が描かれているOPテーマがこちらでご覧になれますので、ぜひどうぞ。第1話は公式に公開されています。
物語の導入部から1分45秒ほどでOPテーマ。一番盛り上がるサビの部分で連雀町の川越まつりです。
視聴回数なんと49万回。
TVアニメ『月がきれい』第1話「春と修羅」
https://www.youtube.com/watch?v=ygfsl0rQta0&t=179s

月がきれいの岸誠二監督は、雀會を中心に何度も取材を重ねて連雀町の川越まつりをリアルに表現しようとしてきました。

アニメ終了後も岸監督と連雀町の繋がりは途切れるどころか強まるばかりで、2017年7月の川越百万灯夏まつりでの「川越浴衣まつり」では、主人公・水野茜役声優、小原好美さんと共に特別審査員として登壇 岸監督は仕立てた連雀町の祭り衣装に身を包んで登場したことは伝えました。

(第4回「川越浴衣まつり」2017年7月30日川越百万灯夏まつり本川越駅ステージ ×「月がきれい」

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12297752383.html

さらに繋がりはこれに留まらない。アニメで川越まつりをフィーチャーしたからには実際の川越まつりに足を運ぶのが自然だろう、となんと、2017年10月の川越まつりにも岸監督は連雀町の現場にいて、町内の人たちと一緒に祭り衣装を着て太田道灌の山車を曳いていたのです。

(「川越まつり」2017年10月14日、15日の午前~午後の部 雨の中を山車がゆく

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12319980756.html

ここまで連雀町、雀會に対して愛を捧げるとは。。。

今までの経緯があり、アニメに使ってくれた雀會からの感謝として、アンサーソングとして、今度は雀會から「月がきれい」をテーマにした創作神楽を創って上演したのでした。

それが、「月がきれい 月に吠える」、「月がきれい 惜しみなく愛は奪う」だった。

膨大な時間をやり取りしてきた岸監督と雀會の結果が、2017年の最後にこんな形に結びつくなんて、なんとも感動的で、川越的。

そして、この上演もまた、岸監督は現場に駆けつけて神楽殿をじっと見つめていたのでした。

 

そして境内では、夜が深まると共に熊手を求める人でさらにごった返し、午後10時過ぎまで手締めの掛け声が響いていたのでした。
「繁昌!繁昌!益益繁昌!!」

 

毎年12月3日大鷲神社例大祭

「小江戸川越 酉の市」
場所:熊野神社境内