アンドリス・ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ボストン交響楽団による「リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集」、発売が予告されてからずっと楽しみにしていた代物だったが、聴き始めて想像していた以上に聴きごたえのある曲集だったことは間違いない。今回取り上げるDisc7で最後となるが、最後まで余すことなく楽しみたいと思う。
リヒャルト・シュトラウス:祝典前奏曲 2019年10月,11月録音
・・・ウィーンのコンツェルトハウス落成式のために委嘱及び初演された局である。パイプオルガンに加えて5管編成のオーケストラ、バンダなど長大な管弦楽作品となっている。演奏時間はそれほど長くないにしても重厚的かつ壮大なスケールで演奏されるパイプオルガンとボストン響、ゲヴァントハウス管のメリハリあるサウンドが重なり合ってより豪快かつ大迫力の音響となった名演と言えるだろう。ライヴでぜひ一度は聴いてみたいと思えるインパクトのある演奏だった。集結部のバンダが加わった瞬間やパイプオルガンの響き、ティンパニの存在感はまさに圧巻となっている。
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 2019年5月録音
・・・リヒャルト・シュトラウス作品の中でも頻繁に演奏される回数の多い人気曲の一つである「ティル」。ボストン響によるテンポの緩急や明確なダイナミクス変化など功を奏している点が非常に多い。また、UHQCD盤であることによる高音質盤ということもあってオーケストラ全体を細部まで聴き込むことができるのはもちろんのこと、各楽器の明瞭なサウンドを楽しむことができるのは非常に嬉しい。この明るく、キャッチーで軽快さに満ち溢れた曲の特徴一つ一つをうまくおさえられているのでより聴きやすさが増した演奏と言えるだろう。
歌劇「灯の消えた街」より愛の場面 2021年10月録音
・・・リヒャルト・シュトラウスが作曲したオペラ作品の一つで、「火の危機」や「火の消えた町」とも呼ばれる。その美しいスケールと旋律はまさに映画音楽を聴いているかのようなもので、ボストン響全体には一貫性があり、活気のある金管楽器や柔軟かつ統一感のある弦楽器などそれぞれの楽器の個性がうまく演奏に反映されている。今日においてはそれほど演奏されることが少ない曲としてもこの聴きごたえは中々のものと言えるだろう。
「ばらの騎士」オーケストラのための演奏会用組曲 2021年5月録音
・・・Disc 7にしてようやくこの曲がくるのかと感じた「ばらの騎士」組曲。組曲といっても何種類も存在しているのだが、今回演奏されているのは全曲から抜粋して編成された組曲である。私も過去に「ばらの騎士」組曲は一度演奏したことがあるが、今回の版だった。全曲版でいうとそれなりに長いオペラを抜粋する形となっているので、人によっては好みが分かれるところではあるが、演奏しているゲヴァントハウス管の幅広く、濃厚で豊かな音色はこの曲にベストなサウンドとなっている印象を強く受ける。この組曲自体久しぶりに聴いたが、冒頭から最後の瞬間まで隅々を楽しむことができたのは間違いない。
バレエ「泡立ちクリーム」より泡立ちクリームのワルツ 2021年6月録音
・・・ポピュラーでユーモアに満ちた名曲であるこの曲。短いながらにキャッチーで全体の輪郭がわかりやすく、木管楽器と弦楽器による一体感を演奏から味わうことができるようになっている。今回の管弦楽作品集一番最後に収録されていることもあってある意味アンコール的な立ち位置で聴くことができる印象が強い。他の交響詩などからするとそれほど演奏される機会も少ない曲なのだが、それとしても聴きやすい演奏であることは間違いないだろう。
さて、今回のDisc 7を取り上げたことによって定期的に取り上げ続けたアンドリス・ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ボストン交響楽団との「リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集」を完走したこととなる。ネルソンスはこれまでベートーヴェンやショスタコーヴィチ、ブルックナー、ワーグナーなどを「ドイツ・グラモフォン」に残しているが、今後どんな録音が続いていくのだろうか?個人的にはマーラーの交響曲録音をぜひとも聴いてみたいところである。それとしても今回の管弦楽作品集は今後も繰り返し聴き続けていくべき新時代を代表とする名盤であることは間違いないだろう。
https://tower.jp/item/5366325/リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集-%5bUHQCD-X-MQA-CD%5d