ネルソンスといえばウィーン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集、ゲヴァントハウス管とのブルックナー交響曲全集とワーグナー管弦楽曲、ボストン響とのショスタコーヴィチ交響曲全集が記憶に新しい。そんなネルソンスが今回ボストン響とゲヴァントハウス管とリヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集を録音しているというのだからこれは聴かないわけにはいかない。輸入盤と国内盤が存在しているが、今回はUHQCD仕様となっている国内盤を購入して一枚ずつたっぷり堪能していきたいと思う。
リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲、2017年11月〜12月録音
・・・直近でいえばマリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団による演奏でこの「アルプス交響曲」を聴いているが、ネルソンスとボストン響の演奏はそれ以上に濃厚かつ壮大なスケールを体感することができるような印象と言えるだろう。私はこれまでカラヤン盤にはじまり、ケンペ(2種類)、ベームらの名盤を聴いてきたが、ネルソンスの演奏は大オーケストラの特性が生かされた幅広さの極まった演奏で、弦楽器群や木管楽器群、金管楽器群のまとまりだけでなく個々の楽器の美しい自然の音色と豊かな響きを余すことなく堪能することができるようになっている。それもUHQCD盤の高音質フォーマットを使用しているということにつながる。 UHQCDによるダイナミック・レンジの幅広さによって生み出される細部まで細かく聴き込むことができるようになっているのと、各楽器の音が鮮明で美しさに満ちている。頂点へ達する際のダイナミクス変化も非常にうまい持っていき方で、頂点に達するとその先には感動が広がっている。気になる点とすれば濃厚すぎてアタックの強さがほぼない点くらいだろうか。しかし、この演奏を聴き終えた時には「この曲の壮大さにおいては力強さなど正直いらない」という結論に辿り着くので私個人としては非常に満足して聴くことができた。
歌劇「影のない女」による交響的幻想曲、2021年10月録音
・・・リヒャルト・シュトラウスの歌劇である「影のない女」の旋律に基づく曲。冒頭の強烈な金管楽器からはじまり、その後弦楽器を中心にスケールのある美しい音色をきかせながら演奏が進行していく。その中でも木管楽器のキャッチーなサウンドやダイナミック・レンジの幅広さを生かした壮大で奥深い響きを味方につけながら最初から最後まで聴き入ってしまう素晴らしい演奏が展開されている。弦楽器の柔軟性によって幾度となくその音色が変化していくのが非常に面白い部分で、金管楽器も強すぎることなく濃厚で豊かなサウンドを奏でている。またオペラ本編を見たくなった演奏だった。
ネルソンスとボストン響、ゲヴァントハウス管による「リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集」。この発売を知った時は非常に待ち遠しかった。ベートーヴェンやブルックナー、ショスタコーヴィチなどを「ドイツ・グラモフォン」にて録音をしており、それらを一通り聴いているが、まさに新時代を担う指揮者の貴重な録音であると聴くたびに感じる。そしてその中に今回の「リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集」も仲間入りする。今後他にどのような録音がされていくかまだわからないが、楽しみにしつつ残り6枚ある「リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集」を聴いていきたい。
https://tower.jp/item/5366325/リヒャルト・シュトラウス管弦楽作品集-%5bUHQCD-X-MQA-CD%5d