第1248回「スヴェトラーノフ&ロシア国立響によるラフマニノフ交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのはつい先日9月6日が誕生日だったエフゲニー・スヴェトラーノフとロシア国立交響楽団によって1995年に録音されたラフマニノフ交響曲全集です。「Exton」から発売された当盤は、今でもスヴェトラーノフのファンだけでなく多くのクラシックファンに愛されている素晴らしいラフマニノフ録音の一つです。4枚のCDにわたるスヴェトラーノフのラフマニノフをみていきましょう。


〜ラフマニノフ交響曲、管弦楽曲全集〜


「エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮/ロシア国立交響楽団」

ラフマニノフ作曲:
交響曲第1番 ニ短調作品13

交響曲第2番 ホ短調作品27

交響曲第3番 イ短調作品44

交響的舞曲 作品45

カプリッチョ・ボヘミアン 作品12

スケルツォ ニ短調

幻想曲「岩」作品7

交響詩「死の島」作品29

交響詩「ロスティラフ公爵」

ヴォカリーズ 作品34-14



 1995年10月2〜7日録音。スヴェトラーノフの録音はこれまでチャイコフスキーを中心にショスタコーヴィチやストラヴィンスキー、マーラーを聴いてきたが、今回ラフマニノフを聴く。「Exton」からは2種類のチャイコフスキー交響曲全集が発売されており、どちらも素晴らしく衝撃な演奏と記憶している。今回のラフマニノフ交響曲、管弦楽曲集も有名な作品だけでなく最初期の貴重な管弦楽曲を多数収録しているので聴きごたえがある代物となっている。


 ラフマニノフ:交響曲第1番

・・・私個人的にラフマニノフの交響曲の中でも一番好きな交響曲である。第1番の録音自体久しぶりに聴いた気がしたが、この圧倒的な金管楽器群による鋭い音色と音圧はいつ聴いても鳥肌が立つくらいに素晴らしい。また、ダイナミクス変化も細かく徹底されており、基本テンポはやや重めで重厚的なのだが、盛り上がりのタイミングや音楽の頂点を逃すことなく演奏されているため壮大なスケールとともに豪快な演奏を聴くことができる。特に第4楽章のトランペットの安定感やスタミナは衰えることもなく演奏されており、細かいダイナミクス変化を聴くことができた瞬間は思わず感動してしまうほどである。まさにこの全集一番最初に聴くにふさわしい一曲目といえるだろう。


 交響曲第2番

・・・ラフマニノフの管弦楽作品の中でも代表格たる作品である交響曲第2番。ダイナミック・レンジの幅広さが生かされた壮大なスケールのもと演奏がされており、やや重たいテンポから繰り出される重厚的な演奏はこれまで聴いた同曲録音の中でも特に強い印象を植え付けるにふさわしい演奏と言えるだろう。ロシア国立響のサウンドもまとまりがあって強すぎることなく聴くことができ、弦楽器を中心に美しさが全面的に押し出された素晴らしい演奏となっている。特に有名な第3楽章の完成度は非常に高いものとなっており、やや重めのテンポが重なることで非常に美しい世界観が展開されているのでこの演奏を聴かない理由などない。


 交響曲第3番

・・・今日においてはあまり演奏されることが少ない交響曲である第3番。第1番と同じく久しぶりに録音を聴いた気がしている。まるで映画音楽かのような世界観でこれでとはまた違う形での美しさに満ち溢れたこの作品は、3楽章からなる交響曲となっている。分厚くまとまりのある弦楽器から聴くことができるサウンドに加えて木管楽器と金管楽器によるキャッチーな音色によって奏でられるフレーズは聴くもの全てを虜にするだろう。また、ここまで金管楽器の特徴なサウンドも攻撃的やキレ味のあるイメージも薄れているので、キツさもなく聴きやすい演奏となっている。


 交響的舞曲

・・・交響曲と並んで演奏される確率の高い「交響的舞曲」。ラフマニノフ最後の作品となった。第1楽章では交響曲第1番の第1楽章の主題が演奏されたり、美しいアルト・サクソフォンの音色が非常に素晴らしい優雅な作品である。テンポの緩急による変化がわかりやすく描かれており、キレ味のある金管楽器や弦楽器を聴くことができる場面もあれば弦楽器と木管楽器によって柔軟性のある美しい音色を聴くことができる面も備わっているため、まさに多種多様といった素晴らしい演奏を楽しむことができる。躍動的かつエネルギッシュな演奏を存分に味わうことができるのでぜひ一度は聴いていただきたいと思う。


 カプリッチョ・ボヘミアン

・・・後のラフマニノフ作品と比べてもまた違うタイプのキャッチーで親しみやすいロマンティックなサウンドを聴くことができる。ロシア国立響の緩急あるサウンドが功を奏しており、絶妙なキレ味や優雅さなど細かい変化を楽しむことができるようになっている。銅鑼の音が交響曲第1番同様素晴らしく、少々うるさいくらいなのだが駆け抜ける形で終わる終結部は非常に聴きごたえある演奏となっている。


 スケルツォニ短調

・・・ラフマニノフが作曲した最初期の管弦楽作品で、演奏時間も比較的短い曲となっている。モスクワ音楽院在学中に作曲された。後の作品とはまた違う作風で弦楽器と木管楽器が奏でるバランスの良さが効果的に描かれている。推進力も程よく感じることができるため、力強さとはまた別のエネルギーを味わえるようになっている。


 幻想曲「岩」

・・・ラフマニノフが作曲した管弦楽作品の最初期にあたる曲で、今日においては交響詩と同じ立ち位置の扱いとなっている。フランス音楽のように美しく幻想的な響きをまといながら演奏は進行していく。今回の演奏では特徴的な金管楽器の音色というよりも弦楽器および木管楽器に焦点が当たっている。軽快かつ神秘的にすら感じるオーケストラの音色には柔軟性のあるサウンドと伸びやかでまとまりのあるスケールがあるので後の作品とはまた違う美しさに満ち溢れている。


 交響詩「死の島」

・・・ラフマニノフの管弦楽作品の中でも交響曲以外ではよく演奏される傾向にあるこの曲。テンポの緩急もありながらも重厚的で重々しい雰囲気で進んでいく。その中でオーケストラの壮大なスケールや細かいダイナミクス変化が非常に素晴らしい。和音や響きが特に奥深いものとなっており、その際により重厚的なサウンドを楽しむことができる。ロマンティックなラフマニノフ作品とはまた違う世界観で描かれていることもあって新鮮味を持って聴くことができるかもしれない。


 交響詩「ロスティラフ公爵」

・・・ラフマニノフの最初期にあたる管弦楽曲で、モスクワ音楽院在学中に作曲された。陰鬱なはじまりではあるものの、奥深い音色と謎に満ちた響きはより現代的かつ映画音楽のような壮大さを感じることができる。ダイナミクス変化が明確化されているため弦楽器の土台がしっかりとしており、木管楽器と金管楽器(特に中低音パート)が先導して演奏が進行していく。テンポの緩急はあまりないが、岩鮮やかに感じられる箇所もあるため重々しい雰囲気が常に立ち込めているわけではない。


 ヴォカリーズ

・・・元々はピアノ伴奏による歌曲だったが後にラフマニノフ自身によって編曲された。ラフマニノフ以外にも編曲版が存在しており、多種多様な楽器による演奏が行われている。今回はラフマニノフ編曲版である。弦楽器、木管楽器の美しい音色によって演奏は進行していき、有名な交響曲第2番やピアノ協奏曲などとはまた違うロマンティックで優美なメロディーを楽しむことができる。基本テンションは一定ではあるが、細かい楽器の音色の変化は色彩的でフランス音楽を聴いているかのように美しい。金管楽器の音色もここまでの録音で聴いたことがないくらいに甘いものとなっている。


 ラフマニノフの交響曲全集自体久しぶりだったが、スヴェトラーノフによる演奏は十二分に楽しめる代物だった。同じレーベルではワールトによるラフマニノフがすでに発売されているが他のレビューにもあったようにぜひ「Exton」でSACDハイブリッド化してほしいと思っている。オーケストラの特徴も楽しみつつ曲の良さを味わうことができる貴重な名盤である。廃盤になりつつあるようだがぜひ一度は聴いていただきたいラフマニノフ録音だ。


https://tower.jp/item/3242721/ラフマニノフ:交響曲&管弦楽曲全集