こんにちは、弁護士の白木麗弥です。

今日は成年後見制度について少しお話をします。

相続のブログだと思ってご覧になった方にしてみると「?」かもしれませんが、全く関係ない話、とまでは言い切れない部分もあります。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、家庭裁判所が、認知症や知的障害などの理由で判断能力の不十分な方々の財産が適切に管理されるため、身のまわりのお世話がなされるようにするために、財産管理や身上監護を行う後見人を選任して、このような方々の保護を図る制度です。

後見人は弁護士、司法書士、行政書士等の専門家が任じられる場合もある一方で、娘さんや息子さんなど元々ご本人と同居したり、関係を持っていたりする方々がなる場合もあるのです。

相続の前哨戦?

後見人に一度選任された場合、ある程度の事由がなければその任務を解かれることはありません。
ですので、財産の流用等の問題がある場合を除いて、高齢に伴う認知症から後見開始となった場合、ご本人が天命を全うするまでその任務が続くことがほとんどです。後見人は本人が亡くなった時に財産目録を作成して相続財産とともに相続人にこれを提出するわけです。

そう、後見人が管理していた財産は、ご本人が亡くなった時点から相続財産になるというわけなんですね。

このような事情から、後見開始の審判を申し立てる時には裁判所は被後見人(ご本人のこと)の法定相続人になりうる人に対して、予め後見開始の審判手続が始まりますよ、後見人候補者はこの人になってますけど、ご意見はないですか?と聞くわけなのです。

けしからん!あんな奴に財産を任せておけん!という意見が出る場合もありますし(身内で既に相続の潜在的争いがある場合は大概これです)、そのような場合には身内ではなくて第三者の専門家が後見人として選ばれることが多いのではないでしょうか。

後見人は自由に財産が使えるの?

では、後見人になったら、ご本人の財産を自由に使えるのでしょうか?
答えはNO。確かに後見人は本人に代わって財産を管理するわけですが、自分の財産と同じように自由に使っていいわけではありません。
先ほど申し上げたとおり、成年後見制度はご本人の保護が目的ですので、ご本人のために財産が使われなければなりません(後見人が後見人自身のためにご本人の財産を流用したら、犯罪行為として処罰されますので、要注意ですよ!)。また、後見人に選任された場合には定期的に家庭裁判所に収入と支出について報告をしなければならず、流用などの問題が起こらないように注意をしています。

成年後見開始の申立時点であたかも相続問題の前哨戦みたいになるケースも見られますが、あくまでも成年後見制度はご本人のためのもの。そして、ご本人の財産はご本人のために使われるもの。
そのことを忘れてほしくないなぁと常々思っています。
今週の担当は司法書士の木藤です。

$あなたの相続問題に“総合力”でお応えするプロフェッショナル 集団 「絆の会」のブログ


先日、こちらを読みました。

AERA(アエラ)2012年10月8日号
「相続でもめない親族」



現在の相続でもめるケースの大半は「兄弟姉妹」かと思います。今回の特集では、男、女、兄弟の人数など、どのような組合せのケースがもめるか、または、もめないかの統計を出しております。少々紹介すると、

姉、弟の2人兄弟

こちらが最ももめない組み合わせ。また、3人兄弟の真ん中が女性の場合も話し合いが円滑になり易いそうです。

面白いのは同性同士の兄弟の場合でも、例えば、女性2人の姉妹はもめやすいが、3姉妹になると和を形成しやすくもめにくいなど、傾向に違いがあるようです。

今回の特集は大変面白いですが、こちらはあくまで統計です。ご家族・ご兄弟にはそれぞれの歴史があり、もめる/もめないは、まさにその歴史次第です。

遺産分割協議や遺言書作成支援のお仕事をさせて頂く中で、私が思う事も少々ありますのでご紹介したいと思います。

・子供の頃から仲が良い兄弟は相続が発生しても、仲は良い。元々仲が悪い兄弟は、相続をきっかけに仲が悪かった事を思い出す。

・相続財産が高額だからもめるわけでもない。逆に少額の方が解決方法がなく、困惑を極めやすい。

・配偶者(第三者)の「貰える物は貰っておけば」と言う発言は絶対禁句。軽はずみでも使ってはいけない。

・子供の頃に仲が良かった兄弟でも、それぞれが結婚をし家庭を持つと、守るべき最優先順位が自分の家庭になり、徐々に他人の間柄になる傾向もある。

・親の介護をしていた兄弟としていなかった兄弟、実家で親と同居していた兄弟としていなかった兄弟など、親と接する時間の格差、親から得る情報の格差から兄弟間のコミュニケーションにおいてボタンの掛け違えが生じることがある。



また、相続案件をさせて頂く中で、難しいと思うことがあります。

・方程式が無いこと

・「エコノミック」と「エモーション」が絡み合う事案であること


それから自分が当事者になるとどうしても冷静になれないのが、家族の問題です。ビジネスとは違うところです。万能な薬は無いのですが、やはり日頃からのコミュニケーションが鍵となります。

なお、晩婚化、非婚化、少子高齢化などで今後ますます増えるケースが「代襲相続(例、叔父と甥、叔母と姪)」と「相続人不存在」です。こちらは現代社会が抱える問題とリンクし、もはや事前のコミュニケーションなどでは対応しかねます。なかなか悩ましい事案です。

ご家族の問題は結局のところご家族自らが解決するしかありませんが、我々司法書士も交通整理などのサポート業務のお手伝いを引き続き頑張りたいと思います。



皆さんこんにちは、税理士の新井山です。


今回は、というより今回も税務調査のお話をいたします。


この時期実務的にも税務調査が大変盛んですので、


勢いをそのままにお話しします。




 国税庁は、このほど、所得税及び個人事業者の


消費税について、平成23事務年度に実施した


調査等の状況を明らかにしました。




 その調査状況等によると、所得税の調査等の件数は、


高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に


深度ある調査として行われた「特別調査・一般調査」は


57,861件、申告漏れ所得等の把握を実地により


短期間で行う「着眼調査」は40,826件、


文書又は来署依頼による面接等により


計算誤りや所得(税額)控除の適用誤りがあるものを


是正するなどの「簡易な接触」は675,520件となっています。



 これらの「調査等の合計件数」は774,207件であり、


そのうち「申告漏れ等の非違件数」は486,869件と


その調査等の合計件数の62.9%となっています。



  また、消費税の調査等の件数は、「特別調査・一般調査」は


30,324件、「着眼調査」は25,015件、


「簡易な接触」は43,217件となっています。


これらの「調査等の合計件数」は98,556件であり、


そのうち「申告漏れ等の非違件数」は


67,099件とその調査等の合計件数の68.1%となっています。




 よくテレビで見る「マルサ」は上記の「特別調査」というやつです。


現実も同じようなことが繰り広げられます。


更に、今回の調査状況の他に面白いデータをお伝えします。



申告漏れが多額な業界は


堂々1位はキャバレーです。1件平均2896万円です。

 

納税額はおおよそ1158万円です。それで調査は大概7年間


行うので1158万円×7年=8106万円


これに加算税等が発生し大体1億2159万円程度が


納税額になるのかと推測されます。


絶対に払えませんね(笑)


本当はこの後のドラマもあるのですが今回は流します・・・



ここで面白いのが、第3位の情報サービス業です。


おそらくWEB作成とかSEOとかのジャンルが一緒と


なっているのでしょうが、1件平均1425万円!


そんなにITは儲かるのかとびっくりしますね。



そして21年からお目見えするのが「くず金卸売業」


よく街中で「金・プラチナ高価買い取ります!」


と書いてある例のやつですね。


やっぱりといいますか、この3年内から急にランキングです。


もっと詳しく知りたい方は


http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2012/shotoku_shohi/sanko03.htm


こちらを


今回は統計からの報告でした

こんにちわ!今週の担当は、行政書士 濱田 英明の担当です。



今回は、またまた認知症のお話です。


認知症高齢者のご家族から『もう、お義母さんに、どの様に接したら良いのか解らない・・』

この様な、ご相談を戴きました。 認知症は、ご本人も当然、苦しんでいますが、周りの家族も大変な不安と負担を感じています。 深刻なお悩みです。

同様の、お悩みをお持ちの方が、このページにたどり着かれた際、一助になればと、若干ですが一後見人の目線を記載いたします。


私は医師・医療従事者等ではありません。 病気に関する記載は後見職務を行う上での最低限度の当方の理解を記載したものです。 認知症に関する判断は、主治医・専門医に、ご相談ください。 


認知症とは、加齢に伴う脳の認知機能が、低下した方を纏めて認知症と呼んでおります。

認知機能の低下原因として ①アルツハイマー型②脳血管性認知症③レビー小体型が知られておりますが、①②が、認知症全体の7割~9割とも言われてます。 原因が違えば、症状も違ってきますので、脳が、ダメージを受けた箇所によって、失われる機能に違いがあります。


例①・・アルツハイマー型の場合

前頭葉から脳萎縮が全体的にはじまり、時間をかけて徐々に進行した場合、古い事は覚えているが、新しい事が覚えにくく、忘れやすい、といった症状が見られる事も少なくありません。


前頭葉の萎縮が、そこで司どる嗅覚や人格に変化を起こし、臭いが解らない、人柄が変わってしまった

「冷蔵庫内が腐敗したものだらけ等」「無関心・無気力」「暴言・暴力「作話・妄想」 


例②・・脳血管性認知症の場合

頭頂葉付近の血栓が原因で、(酸素・糖分の不足から)脳組織の壊死

梗塞部位によって、知覚麻痺、失語・言語障害等から日常生活動作に影響がでる事も少なくありません。


「電気のON・OFFが解らない」「お箸の使い方が解らない」「喋る事は出来るが言葉が解らない」


記載は、あくまで【例】です。 


さて、前置きが長くなりましたが、認知症の症状は、千差万別。私達も成年後見人として、関わらせて頂く場合など、まさに五里霧中、暗中模索です。 医師・看護師・ケアマネージャー等の専門職の助言を頂きながら、対象者の現存能力を模索します。

「出来る事・できない事・わかる事・わからない事」をオープンクエスチョン・ クローズドクエスチョン 等の手法を用い、日常コミュニケーションに絡め、個別に仕訳・記録していきます。(その間も日々機能低下は、進行しますので仕訳は、何度も繰り返します)

「朝ご飯は、召し上がりましたか?」  ⇒Yes・No

「朝ご飯は、ご飯でしたか、パンでしたか?」 ⇒ご飯orパンorその他

「昨日の晩御飯は、何を召しあがったのですか?」  ⇒〇〇等


目的は、現存能力の模索です。出来る事・わかる事は、可能な限り、ご本人の意向を尊重する為です。


認知症の進行度合いの目安として


【比較的軽度と思われる症状】

・同じことを繰り返す

・趣味をやめてしまう

・物盗られ妄想

・入浴・食事・外出拒否

・無意味な契約(保証契約)を行う(断れない)


【進行していると思われる症状】

・幻覚・妄想

・徘徊

・作話

・収集癖(他者の理解できないものを収集)

・仮性作業(無意味な作業⇒トイレットペーパーを巻き取り続ける・箪笥の中身出し積み上げる等)

・死者を生きてると思い込む


【重度と思われる症状】

・異食(食べ物でないものを食べる)

・弄便(便を壁などに塗る・便を弄りまわす等)


認知症状には、中核症状と周辺症状が、あります。周辺症状であれば、原因の模索・排除に取り組みます。 また、認知症と間違われやすい、加齢による健忘・老齢期うつ・統合失調症、にも注意が必要です。

MMS検査や改訂長谷川式認知症スケールの結果や、お薬手帳・血圧手帳も、ご本人を知る為の、重要な情報資料です。


後見人にも色々な方が、いらっしゃるかと思いますが、少なくとも私は、この様な手掛かりで、活動を行っております。

もし、ご家族の認知症行動で、お悩みの方がいらしたら一呼吸置いて、情報の収集⇒仕訳(仮説思考)⇒検証(専門家への相談含む) この様な事も、お試しになってみて下さい。 どう接したら良いのかの、ヒントが見えるかもしれません。 アメリカのソーシャルワーカー、ナオミ・フェイルさんが、開発されたバリデーションセラピーについて書かれた書籍も(恐らく図書館にあります)お勧めいたします。



長くなりましたので、この続きは、機会があれば・・。

今週は、ちょっと相続からお話が離れ認知症ご家族の方を対象にした内容となり、用語等わかりにくい点も多々あったかと思いますが、最後までご覧頂き、ありがとうございます!


不動産鑑定士の塚田です。

今日は、不動産の価値を下げる施設についてお話します。


嫌悪施設とは、近隣にあると嫌がられる施設のことです。

嫌悪施設には、ごみ焼却場、火葬場、墓地、工場、変電所、鉄塔、高圧線など、危険な施設や健康に悪影響がありそうな施設があります。
このようなものは地図を見れば判るのですが、中には、ゴミ屋敷など現地に行かないとわからないものもあります。
ゴミ屋敷が近くにあると、見た目も悪いですし、悪臭がすることもあします。ゴミを外においている場合、風邪の強い日にはゴミが飛んできたりしますので、危険ですし、通行の邪魔になったりします。
嫌悪施設が近くにあると、居住環境が悪くなりますから、不動産の価格や家賃にマイナスの影響を及ぼします。

事故物件とは、過去にその不動産内で自殺や孤独死、不審死、殺人事件、火災による死亡などが起こった物件です。
事故物件だからといって、気にしなければ居住環境には影響ないと思いますが、なんとなく嫌な気がしますよね。このような心理的な嫌悪感がある不動産の価値も、事故物件でない不動産と比べると低くなります。
事故物件は、このサイトに詳しく載っています。
このサイトは公的なものではないので、あくまで参考にしてください。

なお、嫌悪施設や事故物件は、不動産業者(仲介業者または売主である宅建業者)は買主に対して、重要事項説明義務があり、この事実を知っていて説明しなかった場合には、不動産業者の説明義務違反となり、損害賠償の対象になります。

こんにちは。

今回の担当は行政書士の植松です。


このコラムでは、相続でもめることがないように、いろいろな角度から専門家が書いています。

今回は、究極の問題解決方法である「廃除」のお話です。

「排除」ではありませんので、気をつけてくださいね。


「廃除」とは、たとえ相続人だとしても、こいつにだけは絶対遺産をあげたくない!という場合の最後の手段です。


たとえば、息子は病気の親の面倒を見ないばかりではなく、暴力を振るい、罵詈雑言を浴びせ、そんなことが数年続いている…。


たとえば、娘が怪しい新興宗教にはまり込み、自宅を売却して寄付をしようとして、家庭が崩壊しそうな状態にあるのに何も聞き入れない…。


たとえば、配偶者が愛人宅に入りびたり、財産だけを目当てにしている…。


ドラマの世界のような事例ですが、現実にある話です。

血のつながった身内であればこそ、何とか分かち合いたいものですが、血のつながった身内であればこそ、分かりあえないときには亀裂は決定的なモノになるのかもしれません。


こうした相続人には何も残したくないと思ったとしても仕方ないのかもしれません。

おそらく財産を残しても、有意義な使われ方がなされない以上は、もっと必要としている人に役に立つように使ってほしい。

そう思うのが自然かもしれません。


こうした状況で覚えておきたいのが「廃除」です。


廃除に関する規定は民法にあります。


民法892

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


この規定は、相続権を持つ人間に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に「推定相続人廃除調停申立て」をすることにより推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪するという規定です。


廃除の理由となる場合としては、

被相続人を虐待した場合

被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合

推定相続人にその他の著しい非行があった場合

(浪費、遊興、犯罪行為、異性問題を繰り返すとか、重大な犯罪行為を行い有罪判決を受けているとか、遺産目当てに戸籍上の養子になったとか…)

などが挙げられます。


こうした場合に、被相続人を廃除する申し立てを行うことにより、何も残さない!ということが可能になるわけです。


しかし、生前に廃除の申し立てなどしたら、余計に問題が発生するかもしれませんね。そこで、この廃除は遺言で行うことも可能です。


民法893

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。


これで、安心して廃除できそうです。


しかし…、

現実には家庭裁判所は廃除の申立てに対し慎重に審議する傾向にあります。そのため、実際に相続廃除が認められた事例は多くないのが現状です。まして、遺言で廃除しようとしても、推定相続人が異議申立てをすると廃除が認められない場合がほとんどです。


つまり、制度としての廃除か可能ではあるものの、余程の場合でない限り、廃除は使えませんので、まさしく「最後の手段」であり「伝家の宝刀」です。


「伝家の宝刀」は、抜かずに使うことが最も効果的な使用方法でしょう。


結論としては、廃除の規定の存在は知りつつも、これを使うことなく、相続が円満に進むように、日ごろから仲良くできる関係を構築することが一番良いのでしょうね。


10月に入り、朝晩はかなり涼しくなってきました

日中との寒暖の差がはげしいので、風邪などひかぬようにご自愛ください。

ではまた次回!























今週の担当は司法書士の木藤です。


$あなたの相続問題に“総合力”でお応えするプロフェッショナル 集団 「絆の会」のブログ


今回は前回の続きです。

■【絆・火曜コラム】 その遺言書は登記に使えますか?
http://ameblo.jp/kizunanokai/entry-11345399986.html


例えば、この様な事例

父 山田太郎 :遺言者(被相続人)
母 山田花子 :法定相続人
子 山田一郎 :法定相続人
子 山田二郎 :法定相続人
孫 山田大地 :受贈者


父・山田太郎が生前に作成した遺言書には、「中央区京橋一丁目の実家は、孫の山田大地に遺贈する」と記載がありました。しかし、こちらの遺言書を使用して名義変更のために不動産登記を申請すると・・・、審査をする法務局の登記官からすると、一体、「実家」とはどちらの土地建物を具体的に指すのかが分からず、最悪の場合、登記が不受理という結末にもなりかねない、というお話でした。

さて、それでは不動産登記法上の「形式的不備」と言う理由で、登記が全くできないのでしょうか?

実はそんな事はありません。この様なケースでは、別途、「登記原因証明情報」という書類を作成することにより登記申請が可能になります。


「登記原因証明情報」とは、その名のとおり、「登記」の「原因」となる事実を法務局に対して「証明」する「情報(書面)」を提供する制度です。

例えば、遺贈の場合、不動産の所有権移転の効力が発生するためにはいくつかの要件があります。

(イ)不動産の所有者が民法上の規定通りに形式の整った遺言書を作成した事

(ロ)遺言書に不動産を●●に遺贈する旨が明記されている事

(ハ)遺贈者が死亡し、(その他の条件も成就して)遺言の効力が発生した事。

(ニ)受贈者が遺贈の放棄をしていないこと

などなど

法務局は申請人から提出された資料(情報)から、確かに所有権移転の効力が生じていることを確認します。例えば、(イ)(ロ)などは、提出された遺言書を見れば確認が取れますし、(ハ)は遺贈者の除籍謄本を見れば確認が取れます。

ここで(イ)(ロ)等の確認するための資料ですが、実は遺言書そのものに限定をされておりません。当事者が別途作成した「登記原因証明情報」と言う書面でも代替可能です。

「登記原因証明情報」に(イ)(ロ)などの事実を記載し、こちらの事実に間違えないことを当事者本人があたかも宣誓をするかの如く、署名捺印をします。法務局としては、当事者本人が責任を持って事実の証明をしているので、そちらを信用して登記を受理するという制度です。

この方式を使用すれば、仮に遺言書そのものを使用しなくても登記をすることが出来ます。

ところで、遺贈の場合に責任を持って事実の証明をする「当事者本人」とは具体的に誰を指すのでしょうか?

遺贈者本人はもちろん他界しておりますので、署名捺印による証明作業が出来ません。そこで遺贈者に代わるべき者として、下記の方が認められております。

A)遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者

B)遺言執行者が選任されていない場合は、遺贈者の相続人全員



A又はBが署名捺印をした登記原因証明情報を提出することにより、遺贈の登記を受理してもらえます。

不動産登記法は、重要財産である不動産の名義変更をする手続ですので、要件は時に細かく、時に厳しい印象を受けます。しかし、裏を返しますと、しっかりと事実確認がとれる書面が提出されれば十分ですので、方式は1つに限定されるわけでもありません。

「遺言書の形式に若干不安がある」と言うような時でも、焦らずに我々司法書士などにご相談を頂けますと幸いです。



_______________________________________

<一部訂正>
上記で「この方式を使用すれば、仮に遺言書そのものを使用しなくても登記をすることが出来ます。」とご案内させて頂きましたが、現在は取扱いが統一され、遺贈による所有権移転登記申請時には、遺言書の提出が「必須」となっております。詳細は、平成25年5月21日付の下記訂正記事をご参照いただけますと幸いです。大変失礼しました。

【絆・火曜コラム】 遺贈をするなら公正証書
http://ameblo.jp/kizunanokai/entry-11531756234.html
こんにちは、弁護士の白木麗弥です。

去年から不定期ではありますが、原発事故の被害者の皆さんの相談や情報提供の仕事についております。皆さんが生活を取り戻すのに長い時間がかかってしまうことが何よりももどかしい思いですが、少しでも助けになれたらとサポートを続けています。

さて、平成24年7月20日、ようやく国から(何故か経済産業省だけど)不動産の賠償請求の基準が出て、その4日後、東京電力からほぼこれに沿う形の基準が公表されております。
まだ、現状は説明の段階でこの先区域見直しが決まった自治体から少しずつ具体的手続が始まるものと思われます。

しかし……手続が始まってみると、それ以前の問題で立ち止まってしまう方もおられるかもしれません。


原則として、この不動産の賠償請求が出来る人は不動産の登記の名義人ということになります。

ここで…

1 建物登記していない!という問題がありえます。
 ご相談をお聞きしていると特に母屋は登記しているけど、その他のものは…という方は珍しくないように思います。このあたり、登記がない場合について立法で何か簡易に解決できないか工夫して欲しいところです。

2 相続という問題もあります。

 やっとここで、メインテーマ「相続」です。

 建物にずっとご家族が住み続けている場合、実は相続登記をしていなくても事実上困ることがそんなにありません。処分するわけでもないし、納税のお知らせは相続人のところに行くからです。

 ところが、今回はその「不動産が誰のものか?」がはっきりしなければ不動産の損害賠償請求権者が誰なのかが東京電力にも紛争解決センターにもはたまた裁判所にもわかりません。
 つまり、請求に先立って相続登記が必要だということになりそうです(登記までは…という理論はありそうですが、すくなくとも遺産分割協議書はいることになるんじゃないでしょうか。)。

 となれば、今回は建物の所有権が誰にあるか?ということを改めて相続人の間で協議しなくてはならないというわけです。

 ただ、いつかは戻り生活することを前提とする場合の相続の話し合いと、もう不動産の価値全体を損害と考えて東京電力からお金を支払ってもらうということを前提とする場合の相続の話し合いとでは自ずと混乱の度合いや解決の方策も変わってくるかもしれません。
 生活するとなれば、不動産は特定の誰かの単独相続ということもありますが、賠償だけであれば調停でまとまらなければとりあえず共有にして、皆で請求しなさいということもありそうだからです。

 ただでさえ、辛い毎日をおくっているのに、この問題にも向き合わなくてはならないのかと思うと憂鬱な気持ちを抱かれる方もいらっしゃるでしょう。相続に一人で悩む前に専門家にご相談されることをオススメします。
 

こんばんは、今週のコラム担当、税理士の新井山です。

今回は課税の繰延べについて軽くお話しします。



課税の繰延でという言葉はあまり聞きなれない言葉かと思います。

そのまま噛み砕くと、「税金を払うタイミングを後に延ばす」ということ。


通常税金は担税力あるところに課税するのが原則です。

担税力とは、税金を払う能力のこと


つまり、もうけが出たときに課税するということですね。

ですので、商売で、仕入れたものを売って手残り(利益)があればそこに税金を課し、

納税してもらうわけです。


サラリーマンの方も、給料をもらった時に担税力が発生するわけですから、

税金を払っています。→実際は給料額面から天引きされていますが。


そのように利益があったとき、担税力が生まれたときに納税を課されるわけですね。


では、ここで先ほどの課税の繰延を考えてみましょう。


担税力あったときに課税されず、将来に引き延ばすわけです。


この時点で税金を払わないでいいわけです。


課税の繰延は政策の手段としてよく使われます。


不動産の流動化を図るために、買い替え資産の特例(課税の繰延)というものがあります。


これは、昔買った不動産を売却し、利益が出たら通常税金がかかりますが、

代替資産をすぐに買ったらその代替資産を売ったときに一辺に税金をかけましょうというものです。


この特例を使って、資産をどんどん買換えすると、どんどん納税が繰延べ(先送り)されるわけですね。


税金がかからないのであれば市場が活性化します。そこが政策ですね。


このように政策等による課税の繰延べと、節税手段として行われる課税の繰延べがあります。


節税手段としての繰延べはここでは深くは語りませんが、

一方相続税においても、課税の繰延べはあります。


代表的なのは配偶者控除です。


亡くなった人の妻(または夫)への相続について一定価額まで税金がかからないですね。


これは、やがて(近いうちに)その妻も天寿を全うするでしょう。

その時、つまり代替わりの時にまとめて課税しましょうという内容です。


いろいろな課税の繰延べがありますね。うまく利用すると大変価値のある内容だと思います。


ちょっと専門的な言葉が多かったでしょうか?

今日はこの辺で。


今週の担当は司法書士の木藤です。

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<登記手続に適した遺言書とは?>
当コラムでもしばし「遺言書の形式は厳格」とご案内させて頂いております。特に、自筆証書遺言を作成する際は民法の規定通りに形式が整っているか否か、こちらが最重要となります。形式に不備がありますと遺言書そのものが無効となることもありますので、作成には慎重を期すべきです。

慎重に慎重を期して作成した遺言書。法律的には全く問題が無い場合でも、そちらが不動産登記手続の観点から適切な形式を備えているか否かは、別の議論となります。

例えば、この様な事例

父 山田太郎 :遺言者(被相続人)
母 山田花子 :法定相続人
子 山田一郎 :法定相続人
子 山田二郎 :法定相続人
孫 山田大地 :受贈者


父・山田太郎は生前に遺言書を作成していました。

「中央区京橋一丁目の実家は、孫の山田大地に遺贈する」

遺贈とは、遺言書による贈与です。本来、被相続人・山田太郎の法定相続人は、母(妻)の花子、及び、子の一郎、二郎となります。しかし、法定相続人以外の方に遺言書により贈与することも、もちろん可能です (※但し、遺留分減殺請求という別の議論もあります)。

こちらの遺言書は法律的にもちろん有効です。当事者にとっても「実家」と表記されていれば、どちらの物件であるか特定がつきます。

それでは、実家の名義を山田大地に変更する「所有権移転登記」を法務局に申請する際に、こちらの遺言書は使用できるでしょうか?

申請された登記は法務局の登記官によって調査(審査)されます。登記官は「山田家の実家」と言われても、一体どの不動産のことか、特定がつきません。登記申請の際は土地の地番、建物の家屋番号等でしっかり特定をしないと、対象不動産が不明という理由で、最悪の場合は登記が不受理となります。

つまり、法律的に問題が無い遺言書と言うだけではなく、不動産登記手続にも適している遺言書を作成する必要があります。

せっかく、遺言者の想いを遺言書にしたためても、結局カタチにならないとなると、とても残念な結末です。

※この様な残念な結末を回避するためにも、プロである公証人にお手伝いをして頂く「公正証書遺言」はお勧めです。

ところで、上記の遺言書が登記で使用できないとすると、受贈者である山田大地への名義変更をすることは全くできないのでしょうか?

こちらについては次回にご案内したいと思います。