今日は成年後見制度について少しお話をします。
相続のブログだと思ってご覧になった方にしてみると「?」かもしれませんが、全く関係ない話、とまでは言い切れない部分もあります。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、家庭裁判所が、認知症や知的障害などの理由で判断能力の不十分な方々の財産が適切に管理されるため、身のまわりのお世話がなされるようにするために、財産管理や身上監護を行う後見人を選任して、このような方々の保護を図る制度です。
後見人は弁護士、司法書士、行政書士等の専門家が任じられる場合もある一方で、娘さんや息子さんなど元々ご本人と同居したり、関係を持っていたりする方々がなる場合もあるのです。
相続の前哨戦?
後見人に一度選任された場合、ある程度の事由がなければその任務を解かれることはありません。
ですので、財産の流用等の問題がある場合を除いて、高齢に伴う認知症から後見開始となった場合、ご本人が天命を全うするまでその任務が続くことがほとんどです。後見人は本人が亡くなった時に財産目録を作成して相続財産とともに相続人にこれを提出するわけです。
そう、後見人が管理していた財産は、ご本人が亡くなった時点から相続財産になるというわけなんですね。
このような事情から、後見開始の審判を申し立てる時には裁判所は被後見人(ご本人のこと)の法定相続人になりうる人に対して、予め後見開始の審判手続が始まりますよ、後見人候補者はこの人になってますけど、ご意見はないですか?と聞くわけなのです。
けしからん!あんな奴に財産を任せておけん!という意見が出る場合もありますし(身内で既に相続の潜在的争いがある場合は大概これです)、そのような場合には身内ではなくて第三者の専門家が後見人として選ばれることが多いのではないでしょうか。
後見人は自由に財産が使えるの?
では、後見人になったら、ご本人の財産を自由に使えるのでしょうか?
答えはNO。確かに後見人は本人に代わって財産を管理するわけですが、自分の財産と同じように自由に使っていいわけではありません。
先ほど申し上げたとおり、成年後見制度はご本人の保護が目的ですので、ご本人のために財産が使われなければなりません(後見人が後見人自身のためにご本人の財産を流用したら、犯罪行為として処罰されますので、要注意ですよ!)。また、後見人に選任された場合には定期的に家庭裁判所に収入と支出について報告をしなければならず、流用などの問題が起こらないように注意をしています。
成年後見開始の申立時点であたかも相続問題の前哨戦みたいになるケースも見られますが、あくまでも成年後見制度はご本人のためのもの。そして、ご本人の財産はご本人のために使われるもの。
そのことを忘れてほしくないなぁと常々思っています。