こんにちは。

今回の担当は行政書士の植松です。


このコラムでは、相続でもめることがないように、いろいろな角度から専門家が書いています。

今回は、究極の問題解決方法である「廃除」のお話です。

「排除」ではありませんので、気をつけてくださいね。


「廃除」とは、たとえ相続人だとしても、こいつにだけは絶対遺産をあげたくない!という場合の最後の手段です。


たとえば、息子は病気の親の面倒を見ないばかりではなく、暴力を振るい、罵詈雑言を浴びせ、そんなことが数年続いている…。


たとえば、娘が怪しい新興宗教にはまり込み、自宅を売却して寄付をしようとして、家庭が崩壊しそうな状態にあるのに何も聞き入れない…。


たとえば、配偶者が愛人宅に入りびたり、財産だけを目当てにしている…。


ドラマの世界のような事例ですが、現実にある話です。

血のつながった身内であればこそ、何とか分かち合いたいものですが、血のつながった身内であればこそ、分かりあえないときには亀裂は決定的なモノになるのかもしれません。


こうした相続人には何も残したくないと思ったとしても仕方ないのかもしれません。

おそらく財産を残しても、有意義な使われ方がなされない以上は、もっと必要としている人に役に立つように使ってほしい。

そう思うのが自然かもしれません。


こうした状況で覚えておきたいのが「廃除」です。


廃除に関する規定は民法にあります。


民法892

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


この規定は、相続権を持つ人間に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に「推定相続人廃除調停申立て」をすることにより推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪するという規定です。


廃除の理由となる場合としては、

被相続人を虐待した場合

被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合

推定相続人にその他の著しい非行があった場合

(浪費、遊興、犯罪行為、異性問題を繰り返すとか、重大な犯罪行為を行い有罪判決を受けているとか、遺産目当てに戸籍上の養子になったとか…)

などが挙げられます。


こうした場合に、被相続人を廃除する申し立てを行うことにより、何も残さない!ということが可能になるわけです。


しかし、生前に廃除の申し立てなどしたら、余計に問題が発生するかもしれませんね。そこで、この廃除は遺言で行うことも可能です。


民法893

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。


これで、安心して廃除できそうです。


しかし…、

現実には家庭裁判所は廃除の申立てに対し慎重に審議する傾向にあります。そのため、実際に相続廃除が認められた事例は多くないのが現状です。まして、遺言で廃除しようとしても、推定相続人が異議申立てをすると廃除が認められない場合がほとんどです。


つまり、制度としての廃除か可能ではあるものの、余程の場合でない限り、廃除は使えませんので、まさしく「最後の手段」であり「伝家の宝刀」です。


「伝家の宝刀」は、抜かずに使うことが最も効果的な使用方法でしょう。


結論としては、廃除の規定の存在は知りつつも、これを使うことなく、相続が円満に進むように、日ごろから仲良くできる関係を構築することが一番良いのでしょうね。


10月に入り、朝晩はかなり涼しくなってきました

日中との寒暖の差がはげしいので、風邪などひかぬようにご自愛ください。

ではまた次回!