『苦役列車』 2012年・日本
まあ、とにかく、どうしようもなく最低で最悪なヤロウであり、まさか、ここでそれは言わないだろうというタイミングでそれを言い、まさか、ここでそういうことはしないだろうというタイミングでそういうことをしてしまう。
大変なバカ野郎。
かなりアウトな男。
なのに、どうしようもなく目が離せないのは何故なのかと考えるに、この卑屈で理屈屋で不器用で横暴で、一方で、弱い犬ほどよく吠えるという言葉通りの臆病さが、どうにも、もどかしくていかんともしがたくて、終いには気になる男NO.1になっているわけなのだ。
どうしようもねぇなあ最低だなもうドン引きですうわああああ。
呟きながらの鑑賞後、当方の手に残ったものはヤル気の塊だった。
なんでどうして?
これは何というマジックですか?
森山未來はマジ天才か!
顔も体も、だらしなく大変貌。最悪な男を演じているのに、あふれる魅力。原作者の西村賢太に見えてくる。
仏のような友人・高良健吾が眩しい!
あちこちの作品に出演中。このままいけば、若手版・光石研も近い。
恋のお相手・前田敦子が天使!可愛じゃないか。
監督との相性が抜群に見える。『クロユリ団地』の汚名返上だ。
同僚・マキタスポーツが、旨い味付け。
脚本いまおかしんじは、ピンク出身な方。だからか、あの切れ味は。
山下敦弘監督は久々の快作!
『リアリズムの宿』が最高傑作と思っているのだけれど、それに次ぐ。
実に汚い男を汚く描いて、後味が爽快とはどういうわけだろう。
原作は、西村賢太の若かりし頃。
今やナベプロ所属の芥川賞作家と分かっているから、観ていられた気もする。そのくらい、ヒドい有様。
私事ながら、同世代なので当時が懐かしく、人材派遣業の採用受付をしていたこともあり、何かと感慨深い。
コケたと話題だったけれど、そもそも動員云々な作風ではない。
西村賢太のダメ出しも、プロモーションだったように思う。
何より鑑賞後、この映画の話ばかりしている観客がここにいる。
それは、男の背中に羽が生えたように見えたからだ。
自分もがんばろう。
そう思ったからだ。
WOWOW
[関連作品]
山下敦弘監督 『マイ・バック・ページ』
森山未來 『モテキ』『北のカナリアたち』
高良健吾 『南極料理人』 『白夜行』『ソラニン』『まほろ駅前多田便利軒』『キツツキと雨』
前田敦子 『クロユリ団地』
マキタスポーツ 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
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