$世界映画博-北のカナリアたち

『北のカナリアたち』 2012年・日本


怖い。
ある意味、ホラーではないか。何がって主演女優である。
この人が67歳だとは!どうしたどうした?ほうれい線はどうした?

吉永小百合の映画をスクリーンで観る。
今作の意味は、主にこの一点にある。
どんなアップにも耐える。毛穴アップも耐えられる。生けるオーパーツ状態。


ストーリーも決して、負けていないわけなのである。
封印していた蛇口を捻ったら、過去が迸り出てくるような。
その思いの水を両手に受けて、それぞれが罪を飲み干していく過程。

ある日ある時間、別の景色を見ていたカケラを寄せ集めると一つの光景が出来上がる。
それを繋ぐ作業が面白い。
こういう仕掛けのミステリーは好きだ。


吉永小百合がとにもかくにも、バケモノ。可憐すぎる。少女にも見える。
相手のセリフを受ける芝居は難しいのである。『夢千代日記』以来のジックリ鑑賞で、上手さを実感。

森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平は持ち味が生き生き。
抑えたり、激情に駆られたり、堪えたり。皆が皆、とてもいい。
各子供時代を演じた子役たちが、これまた満点。年代の継投が自然。

柴田恭兵、仲村トオルは相手が小百合様ゆえに、年齢差も不問。
里見浩太朗が父親設定も、小百合嬢の若さゆえ。

監督名より大きい木村大作カメラマンの名前クレジットに驚く。

阪本順治監督、丁寧な画作り。恋心の演出にハッとした。
脚本の那須真知子は珍作『デビルマン』の方なのだけれど、湊かなえ原案をうまくまとめていたかと思う。


北海道の景色には深みがあり、モザイクのようなストーリーは積み上げ方も真摯。
泣いてしまったりした。
なのに最終盤、あのセリフは何だどうした?

感極まっていたのに、一瞬でスーッと真顔になる破壊力。
石橋蓮司の一言などはとてもよかったのに。せっかくの良作なのに。
監督か脚本か、誰の意思かはわからないのだけれど、あの説明は蛇足。台無し。

もっとも、気にならない方も多いだろう。ご鑑賞の皆様はどうぞお気になさらずに。



映画スクリーン(TOHOフリーパスポート)


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