![$世界映画博-キツツキと雨](https://stat.ameba.jp/user_images/20120515/14/kitaco127/aa/b6/j/o0170024011974299028.jpg?caw=800)
2012年・日本
快作だ。
木こりが出会う。
映画に。
人に。
巻き込まれていく。
踏み入ったことのない世界に。
映画監督が出会う。
山に。
木こりに。
包み込まれていく。
委ねたことのない世界に。
ゾンビを知らない木こりと、ゾンビ映画を撮りに来た映画監督。
2人が出会って、2人の中にコロリと生まれる。
これから先、何年も何年も、胸の中で転がり続ける宝石。
それがあるから大丈夫だと思える塊。
木こりを見ていて、胸が弾む。
映画監督を見ていて、背中を撫でたくなる。
おかしくておかしくて、笑って笑って、笑う。
シワが増えて困ってしまう。
ずっと浸っていたくなる。
ああ、これは映画なのだった。
思い出して、ふと寂しくなる。
この人たちが、今日もどこかで木を切って、今日も映画を撮っているような。
何かに困って、何かに喜び、つまずいたり、弾んだりしているような。
そんな錯覚に埋もれてしまう。
その時間の、なんと幸せなことだろう。
この映画を作ってくれたのは、沖田修一監督である。
お会いする機会に恵まれたなら、愛していますと言ってしまう恐れがある。
そして、なんだこのババアと思われるだろう。それでもいい。
相変わらず、食事のシーンが秀逸すぎる。
『南極料理人』での落花生に続いて、今回は海苔。
実にうまい、その使い方が。
我が実家の海苔観に似ていて嬉しくなる。
私事で恐縮なのですけれども、当方、岐阜県多治見市の生まれです。
岐阜の山が舞台の今作、訛りが我が家と同一であった。
それが余計に馴染んでまた、嬉しくなる。
撮影あるあるや監督あるあるも実に痛快で、やはり、沖田監督の書く脚本は絶品。
木こりの役所広司。
素晴らしすぎて失禁する。
座っているだけで、こんなにも笑いを生み出すとは。
『CURE』でも触れたように、ここでもまた、木こりなのである。
殿堂入り。唯一無二。
映画監督の小栗旬。
情けない役を演じて、最高。
こんなによい俳優だっただろうかと驚いた。
ボサボサであるのに、カッコよい。
助監督の古舘寛治、今回もよい!
この頃CMでもお見かけするので、もはやブレイクしてるのですよね?
カメラマンの嶋田久作の、ピンポイント芝居にハマった。
この人の使い方の正解を見た思い。
木こりと映画監督が向き合うテーブルに、自分も座っているような。
同じ目線で同じ空気の中で笑っているような、近い近い距離感。
たとえば、無人島に何の映画を持っていくか?
そうだ、コレにしようと思って、思い直した。
この映画を孤島で観たなら悶絶する。
人恋しさに、悶えてしまう。
人は人と一緒に生きるのだ。
これは、とてもとてもよい映画です。
『キツツキと雨』
![映画](https://emoji.ameba.jp/img/user/uk/ukilico/426677.gif)
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