$世界映画博-キツツキと雨

2012年・日本 


快作だ。

木こりが出会う。
映画に。
人に。
巻き込まれていく。
踏み入ったことのない世界に。

映画監督が出会う。
山に。
木こりに。
包み込まれていく。
委ねたことのない世界に。

ゾンビを知らない木こりと、ゾンビ映画を撮りに来た映画監督。

2人が出会って、2人の中にコロリと生まれる。
これから先、何年も何年も、胸の中で転がり続ける宝石。
それがあるから大丈夫だと思える塊。


木こりを見ていて、胸が弾む。
映画監督を見ていて、背中を撫でたくなる。

おかしくておかしくて、笑って笑って、笑う。
シワが増えて困ってしまう。
ずっと浸っていたくなる。
ああ、これは映画なのだった。
思い出して、ふと寂しくなる。

この人たちが、今日もどこかで木を切って、今日も映画を撮っているような。
何かに困って、何かに喜び、つまずいたり、弾んだりしているような。

そんな錯覚に埋もれてしまう。
その時間の、なんと幸せなことだろう。


この映画を作ってくれたのは、沖田修一監督である。
お会いする機会に恵まれたなら、愛していますと言ってしまう恐れがある。
そして、なんだこのババアと思われるだろう。それでもいい。

相変わらず、食事のシーンが秀逸すぎる。
『南極料理人』での落花生に続いて、今回は海苔。
実にうまい、その使い方が。
我が実家の海苔観に似ていて嬉しくなる。

私事で恐縮なのですけれども、当方、岐阜県多治見市の生まれです。
岐阜の山が舞台の今作、訛りが我が家と同一であった。
それが余計に馴染んでまた、嬉しくなる。

撮影あるあるや監督あるあるも実に痛快で、やはり、沖田監督の書く脚本は絶品。


木こりの役所広司。
素晴らしすぎて失禁する。
座っているだけで、こんなにも笑いを生み出すとは。
『CURE』でも触れたように、ここでもまた、木こりなのである。
殿堂入り。唯一無二。

映画監督の小栗旬。
情けない役を演じて、最高。
こんなによい俳優だっただろうかと驚いた。
ボサボサであるのに、カッコよい。

助監督の古舘寛治、今回もよい!
この頃CMでもお見かけするので、もはやブレイクしてるのですよね?

カメラマンの嶋田久作の、ピンポイント芝居にハマった。
この人の使い方の正解を見た思い。


木こりと映画監督が向き合うテーブルに、自分も座っているような。
同じ目線で同じ空気の中で笑っているような、近い近い距離感。

たとえば、無人島に何の映画を持っていくか?
そうだ、コレにしようと思って、思い直した。
この映画を孤島で観たなら悶絶する。
人恋しさに、悶えてしまう。

人は人と一緒に生きるのだ。

これは、とてもとてもよい映画です。



『キツツキと雨』

映画スクリーン


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