快作だ。
これほど心地よい作品に巡り会えるとは、僥倖だ。
これは、はるか遠く南極の話。
昭和基地からでさえ遠く離れた南極ドームふじ基地での、男8人の生活。
その面白いこと。
働いて、食べて、寝て、笑って、喧嘩して、はしゃいで、落ち込む。
どこにでもある日常が南極にある。
その特異さ。
出てくるご飯の美味しそうなこと。
あらゆる種類の多国籍な料理が南極で供されるのは、奇跡に見える。
料理は『かもめ食堂』の飯島奈美さん監修。
どおりでヨダレがハンパない。
ティッシュ必須です。
キャストは適材適役。
気負いのない堺雅人は、とても良い。
豊原功補、高良健吾の可笑しさ。
きたろう、生瀬勝久、俳優陣の真剣さが生み出す笑いの量で、画面の隅々までもが満たされる。
『マイ・バック・ページ』で主演を食った古舘寛治も、良い味を出してくれていた。
音楽はユニコーン。
デビュー時からの大贔屓であるにもかかわらず知らずに観たので、エンドロールで得した気持ちになりました。
無駄な台詞を排した脚本の素晴らしさは、もうタマラナイ。
あれは、沖田修一監督が脚本を書いたからこそ出来たワザだろう。
説明セリフを極力省いて、役者に委ねたり小道具で見せたりするのは、おそらく脚本家は怖くてできない。
できたとして、膨大なト書きが台本を埋めることになる。
それは、役者の芝居を縛ることになってしまい、画面を硬直させてしまったハズだ。
秀逸なセリフが随所にあって、言葉の無い秀逸なシーンがフンダンにあった。
満腹になる。
でもまた、おかわりが欲しくなる。
2度3度と観たくなる。
おいしいご飯があったら、人間は大丈夫。
知らなかった誰かであっても、一緒に囲む食卓があったら人は家族になれると思えた。
震災後に、立ち上がるキッカケをくれた作品。
これは、とてもよい映画です。
2009年製作/125分/日本
『南極料理人』
WOWOW