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ゆっくりめである。

じっくりである。

この映画のスピードはこれでいいのか、少し不安。

学生運動がテーマならば怒涛かもしれないと予想していたら、スロー系である。
途中でお茶を飲んでも大丈夫。
もう松ケンが何しようと、妻夫木がどうなろうと、いいか。

このままだと寝てしま…あぶない。

なのに、眠らずに最後まで観られたから不思議。
そんな感想で終わってはいけない。

学生運動の渦に飲み込まれていった若者、というテーマかと思っていた。
しかしこれは、ごくごくシンプルな青春映画なのかもしれない。


日本の若者が大きな闘争の渦を巻き起こし、市民生活に思想を投擲し、背走していった時代があった。
その中で実際に起こった事件。
学生運動で勇躍しようとした青年が起こした犯罪。

ヨダレもののテーマである。


原作を未読なので、原作がじっくり感なのかもしれない。

思えば、同じく山下敦弘監督向井康介脚本の『リンダリンダリンダ』も『松ケ根乱射事件』も、このテンポだった。
中でも『リアリズムの宿』は、フィルムの進行速度とストーリーが合致した成功例なのだけれど。
ゆっくりめなテンポのコンビ、それが持ち味だ。

なので、これは自然な成り行きなのである。


決して、つまらなくはない。
なぜなら、脇役陣の芝居が輝いているからだ。
ホリプロのスター、妻夫木聡松山ケンイチを食いまくっている。
食おうと思わずに結果、食ってしまっている。

脇役陣が、総・北島マヤ状態である。


妻夫木聡は物静かな芝居。
新聞記者たるものこれで正解で、『悪人』よりも好印象。

松山ケンイチは、まさに青年。
ファンなので贔屓目に見てしまうのだけれども。
原作をあまり読み込まず、時代の意味もあまりわからずに演じていたとインタビューで目にしたのだが、それは淋しいじゃないでしょうか?

『誘う女』を観るように監督から言われた、というエピソードもあるようだけれど。

もう、この映画の意味が曖昧になってしまう。

松ケン演じる梅山という男は、当時の学生運動を具現化したような、衝動的で愚かで青くて滑稽な人物だ。
役者冥利の役である。
だからもう少し、刺さりたかった。


冒頭に青木崇高が出ていたが、カメオ出演であった。残念。

脇はもう皆が皆、とてもよいのだけれども、特筆は古舘寛治
この人がいたから最後まで興味が尽きなかった。


この映画は学生運動の本質ではなく、新聞記者の苦悩でもなく、古舘寛治を見る映画かもしれない。
そう思うと、とても素敵な映画なのだけれど、それはそれで淋しいじゃないですか・・・?


2011年製作/141分/G/日本
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