9月20日、安倍晋三が自民党総裁選に圧勝で三選を果たした。
翌21日、文科省の調査報告書が発表され、事務次官と初等中等局長が辞任した。
この2018年9月21日は、朝日新聞の2014年9月11日の屈服が歴史に残る日となるのと同様、歴史に残る日となるだろう。
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2014/09/post-08e2.html
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朝日新聞の9.11吉田調書・吉田証言連続屈服事件は、その後の原発批判の封じ込め・原子力ムラのバージョンアップした復活と、歴史修正主義の蔓延を招く画期となった(後者のダメを押した池上彰をリベラル陣営が未だにもてはやしているのはその神経が知れぬ)。
2018年9月21日は、官僚組織全体が安倍政権に対して、全面的に敗北し、屈服した日として残る。
元々が、自己保身・対米隷属・ネオリベが席巻する官僚組織はろくなものではなかった。
だから、その影響を見通すのは、容易なことではないが、しかし、多少なりとも官僚が果たしてきた良い役割があるとしたら、この日を境に、官邸の意向に反する芽は、ことごとく摘み取られることとなるだろう。
官僚組織と政治家との緊張関係が失われたのである。
もともとが、ろくな組織でなかったために、官僚組織の自律性崩壊の未来予測は不可能だ
(とりわけ文科省はろくなものではなかった。
ロースクールに巨費をつぎ込んで、弁護士を激増させて、日本の弁護士の質を劣悪化させ貧窮化を促進して、弁護士をマネー支配原理の手先に変質させた。
大学の運営交付金を削減して、研究者に短期的な成果を強いて、競争資金獲得書類技術の習得に注力させ、むだな書類の作成に忙殺されるように仕向け、日本の研究水準を劣悪化させた。
何が悲しくてノーベル医学賞受賞者がマラソンで研究資金をチャリティしなければならないのか)。
一つ言えることがあるとすれば、当面の見せしめになったのが、文科省であることから、文科省がもっと悪くなるとすれば、子どもに対する「エセ愛国」洗脳教育が徹底する国になるだろうということだ。
見てみればいい。この金額を。
二代連続事務次官の辞任という前代未聞の歴史的不祥事とされる事件の、この金額のしょぼさを。
6万円、2万円、11万円、10万円。
4人合わせても30万、辞任した二人の合計額は8万円。
日本の歴代不祥事の中で、その金額においてダントツの最下位だと断言して憚らない。
子どもの小遣いが多すぎるという話ではない。
旦那が小遣いをごまかしたという話でもない。
一国の省庁のトップの歴史的不祥事の金額なのだ。
どこの省庁にだって叩けば出てくるに違いない、このしょぼ過ぎる不正を引っ張り出されたのが文科省だったということに意味があることは誰の目にも明らかだろう。
なのに、どうしてだろう。
なぜ大多数の人達が、「なぜ文科省なのか?」を問わないのは。
これを報復(あるいはより適切に粛清)だという声が上がらないのは。
遡れば、6月、報道ステーションは、報復におびえる文科省の様子を報道していた。
4月の朝日新聞のスクープに端を発し、再び勢いを増した加計疑惑追及が一向に収まる気配を見せないのは、文科省からの情報提供のせいだと官邸が激怒し、文科省が報復を恐れているという内容だったらしい。
愛媛県知事と加計学園のやりとりが続く中、加計孝太郎は、大阪北部地震の翌6月19日、わずか2時間前に告知した記者会見を、岡山県で開き2015年2月の安倍晋三との面会について「記憶にも記録にもない」と述べ、最初で最後の会見をわずか25分で打ち切った。
それからまもなく、7月4日、東京医科大学の私立プランディング事業助成金について、息子の同大学合格を見返りに便宜を図ったとして、文科省の佐野太科学技術・学術政策局長が逮捕された。
合理的に考えて、加計孝太郎が記者会見を行った当時、すでにこの捜査の目処が立つ段階に入っていたと見てよい。
手際よく、直ちに録音テープがマスコミにリークされ、メディアの恰好の餌食となり、加計学園問題の幕引きがなされた(今のところ、そのように見える)。
一部に佐野太は、前川喜平と省内派閥が異なるとか、安倍晋三と近い関係にあるとかの情報が流れ、この事件を官邸の報復として取り上げる者は多くはなかった。
7月から、報道ステーションのプロデューサーが交代し、一挙に安倍批判を控えるようになる。
そして、今回の前代未聞のしょぼすぎる不祥事による歴史的な二代連続の事務次官辞任である。
辞任した事務次官と初等中等局長は、加計疑惑追及に力を貸したかもしれないし、貸していないかもしれない。
いや逆に抑えにかかっていたかもしれない。
しかし、そんなことは関係ないのだ。
報復は周到に用意され、総裁3選直後という、これ以上ないタイミングを見計らって、官邸の圧倒的な力を見せつける形で、実行されたのだ。
報復は、加計疑惑の追及に力を貸したか否か無関係に行う方が、より効果的である。
官邸に逆らえば、省内にいる誰もが報復を受け得る。
同僚や後輩に迷惑をかけることになる。
省内に影響を及ぼさないように極力官邸の不正には目を背けるようになる。
上司は、部下に官邸に対する不心得者がいないか常時監視の目を光らせる。
それが監督者の第一の仕事になる。
不心得者は、直ちに官邸に報告されるだろう。
通告されるのではないかと疑心暗鬼になり、省内でも本音は話せなくなる。
見せしめというものは、見当外れな方が効果が大きいのだ。
これは、すでに粛清と呼ぶのがふさわしいレベルに達している。
また一歩、独裁国家に近づいた。
私たちは、止められるのか。
メディアに働く人たちに是非、読んでもらいたい本がある。
太田愛「天上の葦」(KADOKAWA)である。
この時代に生きる全てのメディア人に読んでもらいたい。
この本を読んで、是非、勇気を出してもらいたい。
そして、一歩を踏み出してもらいたい。
この国を救うために切実に、そう願わずにはいられない。
太田愛著 『天上の葦』(KADOKAWA) ネタバレ注意
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