宣伝会議2006年8月15日号掲載の、電通佐々木氏によるサイバーライオン2006報告を、少しだけ詳細に。以下、佐々木氏談。
◆ 2006年のカンヌ概況
- サイバーは応募数が前年比32%増。2500以上のエントリー。
- むしろフィルムの応募は減っている。
- 特筆すべきこととして、インテグレーションモノが非常に増えた。
- Webとマスとか、色々なメディアを絡めるのは当たり前。
- もはやそうなっていないとキャンペーンとは呼べないぐらい。
- その結果、複数カテゴリへの応募が増加。
- サイバー/ダイレクト/プロモ/フィルム、どのカテゴリがふさわしいのか迷うほど。
- 各カテゴリごとにTシャツまで作って、どこに一番優れたアイディアがあるのかを競いあうような雰囲気。
- カンヌでは2.0なんて言葉は全く出てこない。
- 参加型なんてのは当然。
- キャンペーンの半分以上が広告主や代理店からアンコントローラブル。
- ユーザーが作っていくことでキャンペーンを盛り上げている。
- カンヌの審査は、1週間ぐらい前に現地に到着して、まずはひたすら画面をクリックし続ける。
- みんなで集まるが、朝から晩まで2~4日間はひたすらクリック。
- 冷房も効かない廊下の一番奥。
- そこにパソコンを並べられて、朝9時から夜10時ぐらいまで3日間ずっとクリックしていた。
- それが終わるとようやく残りの2日ぐらいがディスカッションにあてられる。
- マタイアス氏。
- Farfarというスウェーデンの小さいけどもしっかりしているインタラクティブエージェンシー勤務。
- 非常に頭が良くて先見の明があり、とてもやりやすかった。
- 彼が言ったことは2つ。
- サイバーは技術だとかデザインだとかインタラクションに注目しがちだけれども、他の賞のように、アイディアを評価するという原点に戻ろう。
- サイバーは時間を作ることができるメディア。他のメディアは時間を売るメディア。それを踏まえた上で、広告表現がいかに新しいかを評価しよう。
- 何かを押し付けられることなく、非常に自由な雰囲気で審査が進んだ。
- グランプリが決まるまでのプロセスが非常に面白かった。
- 結果だけを見ると、大物だから有名だからということで「なるほどね」と思うかもしれないが、以外に揉めた。
- 裏のグランプリ(心のグランプリ)と真のグランプリは違う。
- サイバーは2つのグランプリを出すというルールになっている。
- Webサイト及びインタラクティブキャンペーンの中から1本。
- バナー、バイラルムービー、ゲーム、Eメール、その他ツールなどのオンライン広告部門から1本。
- まずは3日間クリックし続けて候補作品を出す。
- その候補作品の中から、また1日朝から晩までひたすらクリックし続けて順位付け。
- 順位付けに基づき、残りの2日間で金銀銅を議論して決定。
- 金銀銅が決まったところで、どれをグランプリにしようかを半日ぐらいかけて決める。
- 以下、グランプリ候補に上がったものを紹介。
IKEA "Dream Kitchens for Everyone" Sweden
http://demo.fb.se/e/ikea/dreamkitchen2/site/default.html
- 候補に挙がったもののひとつめはIKEAのドリームキッチン。
- OneShowとかClioなど他の賞も受賞しているためご存知の方も多いと思う。
- 最近、日本の船橋にも進出した家具屋さん。
- 家具とかキッチンを扱っているため、いわゆるEコマースに近い。
- よって、商品をカタログ的にどう見せるかということで作られたサイト。
- 非常にシンプル。
- マトリックスのような映画的手法を使いクリックするとクルクル回る。
- キッチンとその状況が、回りながら楽しい音楽や面白い写真とともに見られる。
- 自分のキッチンを組み立てたりできる。
- 今年はインテグレーテッドなモノが増えているといったが、これは非常にシンプル。
- シンプルなアイディア、かつ、誰もが簡単に使えるということが大事。
- 最近のWebは、参加型にしようとかすぐ何かを応募させようとするけれども、本当にどれくらいの人が参加しているのか。
- そんな中これは、女性でも、ある程度年をとった方でも、簡単かつすぐ使えるということで革新的。
- 音と映像の使い方がうまいところも評価された。
- ということで、グランプリ候補にいいんじゃないかとなったが所詮候補。
http://www.neverinneutral.com/dominatrix/subpage.html
- 次にグランプリ候補ではないかと言われたのが、カナダのMINIのキャンペーン
- カナダの厳しい冬を支配するためにはどういうクルマに乗ればいいのか、それはMINIです。ということで作られたサイト。
- 自動車メーカーというのは今すごくインタラクティブキャンペーンに時間とコストをかけている。
- その中でもMINIは、常に挑戦的な手法をとっている。
- MINIが冬の季節を乗り切るやっつけるために、こういうボンデージのお姉さんをなぜか使っている。
- 車両紹介箇所をクリックをすると、毎回お姉さんが鞭とか羽を叩きながら紹介する。
- なんでこんなお姉さんを使っているのか?とカナダ人に尋ねたら、冬を支配するというのとMINIを支配するというのを掛けている、と。
- よくわからない。笑
- 自動車メーカーのサイトは色々な仕様で出来ているが、どれも似たようにカタログっぽい。
- 写真がベースで、それを色んな角度で見られるとかグルグル回せるとかで終わってしまっている。
- そんな中、1歩進んでブランド体験までさせているところが評価された。
- MINIってちょっと面白いやつだなとか、若いよね、というところまで伝えられている。
- また色々なところをクリックしたくなる。
- 音声を使ってわかりやすく説明している割に、このお姉さんが不思議な存在といったあたりが非常に良く出来ている。
- ということで一瞬グランプリ候補にあがったが、これを選んだら審査員の品位が疑われるかも?!となり候補でキープ。
California Milk Processors Board "got milk? Campaign" USA
http://www.planetinneed.com/
http://www.cowabduction.com/
- 審査員が心からグランプリにしたかったものがコレ。
- カリフォルニアの酪農組合が行った牛乳飲みましょうキャンペーン。
- 非常によく出来ていて、満場一致でグランプリじゃないかというところまでいった。
- 日本でも牛乳キャンペーンは色々とやっている。
- 骨を強くするためとか睡眠を良くとるためとか、普通だったら牛乳の効能を語る。
- ところがこのキャンペーンは変わっていてまず2つのWebサイトを作った。
- ひとつはエイリアンのサイト。
- エイリアンサイトは、どこか遠い宇宙で骨が弱ってしまったもしくは睡眠障害を持ってしまった宇宙人。
- どうやら地球には白い魔法の液体を算出するすごい動物がいるらしい。
- ぜひ地球に行ってこの動物を調査しよう、というようなストーリー。
- アメリカでは、カウアブダクション(Cow Abduction)と言って牛が誘拐されたり内臓がえぐられるという都市伝説がある。
- それが実は、牛乳が欲しいこの宇宙人たちの仕業であると言うストーリーになっている。
- サイトを訪れるとまず宇宙帝国のエンペラーが登場。
- 我々は骨が弱って、睡眠できなくなって、ホワイトワンダートニックが地球と言う星にあるらしいからそれを取りに行こうと言う。
- スターウォーズやスタートレックのように綺麗な映像を使い、細かく凝った作りになっている。
- CMやいろんなメディアとも連動。
- TVCFでは、地球にやってきた宇宙人が、救世主である牛と遭遇したり牛と話すシーンが書かれている。
- Webでは、そのバックグラウンドストーリーがすべて書かれている。
- 牛を宇宙に連れていくまでのストーリーや、宇宙帝国の首相とか大臣とかその設定まで見られる凝った作り。
- イントロからして日本のサイトにはないぐらい細かい。
- 音楽も映像も非常に良く出来ている。
- と平行して、もうひとつ酪農家たちのWebサイトがある。
- 酪農家たちのカウアブダクション報告サイト(牛誘拐報告サイト)というもの。
- うちの牛が誘拐されてしまったとか、目撃シーン。
- 私はエイリアンに対してこういう方法でカウアブダクションを予防している。
- みんなからカウアブダクションを回避する方法があれば送って欲しいという内容で、ブログっぽい感じにサイトが作られている。
- エイリアンサイトと酪農家サイトを全く並行して2つ立ち上げて、TVCMやキャンペーンも行って、全ての完成度が非常に高い。
- さらに、みんなが楽しめて非常に面白い。
- これこそ今年のグランプリではないかと言う話になった。
- ところが、非常に強いフックがあってアイディアも面白いが、やり方はクラシカルな今までの広告キャンペーンではないのか。
- コンシューマーサイトを作ったりしているところはWebらしいけれども。
- このキャンペーンによって、牛乳のブランドが大きく変わったとか牛乳見直した牛乳大好きになったかというと疑問。
- カンヌは、来年の方向性を占わなければいけない場。
- これを1番にしたら、単に面白かったから1番にしましたという話になってしまう。
- というわけで泣く泣くあきらめ、本来のグランプリであるもうひとつを真のグランプリにしたという経緯がある。
VOLKSWAGEN "GTI Campaign" USA
http://www.vwfeatures.com/gti.html
- 真のグランプリは、フォルクスワーゲンのGTIキャンペーン。
- バナー、CM、Webサイトなどを巧みに使っている。
- 例えばバナーはアクセルを踏むと白煙をあげて上のバナーに煙がつながるもの 。
- 日本の自動車メーカーが見たら、音はやめて欲しい煙はやめて欲しいと必ず言う。
- 他にもピンボールでブラウザを走り回るバナー など。
- しかし実は、我々はバナーについては全く評価していない。
- よく見るバナーだよね、という感想。
- では何を評価したかと言うと、このキャンペーンが成し得た事実、フォルクスワーゲンに与えた事実。
- Webサイトが特徴的なので紹介する。
- いわゆるよくあるクルマサイトで、自分の好きな車を選択できる。
- ボディはどうしよう、赤いのにしよう、ホイールはどうしよう、インテリアはせっかくだからレザーシートにしてみよう、など。
- これは日本のカタログサイトやコンピレーションサイトでもよくあるパターン。
- このサイトが優れているのは、この後自分の選んだモデルに対して試乗ができるということ。
- それも、赤いボディの、ホイールをちょっといじった、革ばりの車に試乗できる。
- ただ試乗ではなく、ドイツ人変質的エンジニア「へレナ」というお姉さんと一緒に試乗ができる。
- これは日本ではなかなかできないところ。
- このお姉さんは、ドイツ人訛りで、革が好きで、もっと早く走りなさいよ、みたいなことを言う。
- 選んだタイプによってムービーの展開も変わる。
- ちなみにこれはアメリカのキャンペーン。
- アメリカでフォルクスワーゲンと言うと、どちらかというと古くてダサくてかっこわるいイメージ。
- GTIという車は20年前からあるが、やはりダサい人たちが改造して乗っているようなイメージの車だった。
- ここで大事なことは、代理店とクライアントが、変質的ドイツ人がクルマをカスタマイズするという大胆なサイトを作った。
- その結果、若い人たちがフォルクスワーゲンってちょっとカッコいいかもしれない、買おうかなとなった。
- ブランドのパーセプションが思いっきり変わった。
- ここを何よりも評価した。
- サイバーメディアが、フォルクスワーゲンというブランドに与えた効果がすごくあった。
- これは次のサイバーを示すものではないか。
- 作ったのは有名どころのCRISPIN PORTER + BOGUSKY。
- カンヌへ応募するにあたって、YouTubeを使っているあたりで 結構狙っている感はあるが。
- 等身大のポスターが印刷 できたり。
- mixiみたいなヘレナの個人サイトがあって、お友達とリンク ができる。
- すでに8000人ぐらいがリンクしていてバイラル的な効果があった。
- 手でVWマークを作るのが流行った というのはホントどうかわからない。笑
- サイバーを中心に、色んなメディアを活用して、立体的にインテグレーテッドしたキャンペーンを作り上げた。
- そして何よりも、ブランドを変えるための力を発揮したところがグランプリとしてふさわしいとなった。
- 心ではみんなミルク大好きだったが、あえてこっちをグランプリに選んだ。
- 今年のサイバーの審査員たちが言いたかったこと。
- それは、サイバーと言うのは「続きはWebで」と言って詳しい情報を見てもらったり、細かいところを後で読んでおいてもらうところではないということ。
- ブランディング活動の中心的存在になっていることをあえて宣言した。
- これは皆さんすでにご存知のことなので、今さら言うことではないかもしれない。
- しかし、サイバーの審査員として、サイバーメディアと言うのはフィルムとかポスターとか他のメディアよりも何よりもブランディングの中心的存在なんですよということを宣言するために、これをグランプリに選んだということが今年の特徴。
- もうひとつのグランプリ。
- バナー、バイラル、ゲーム、Eメール、その他の部門について。
- こちらも非常に揉めた。
- 実はグランプリを3つだそうかという話まで出た。
- バナーからひとつのグランプリを出して、バイラルからもグランプリを出そうかと。
- そもそもバナーとバイラルムービーは比べられるのか。
- 面白いバナーは確かに面白いけど、所詮は小枠広告。
- バイラルとかゲームは今のカテゴリの中では新しい試み。
- だから後者の方が価値が高い、という意見があった。
- 反対に、バナーこそ本来の広告。
- 限られたスペースの中でいかに面白いアイディアを出すかと言うところは、プリントと同じで純粋なアイディア勝負。
- バナーが劣ってるという話になればサイバー本来の意味がずれるのではないか、という意見もあった。
- 他にも、ここでバナーを選んだら僕らは来年からもずっとバナーを作り続けなきゃいけないんだぞ、など色々な議論が出た。
- Web&Campaignは、Webの中から面白いもの選ぼうよということで結構候補が絞られた。
- ところがBanner,Viral&Othersは、非常に揉めて、どこからグランプリを出すべきかということだけで1、2時間議論した。
- 以下、その中からグランプリ候補に上がったものを紹介。
http://www.dontzipandrive.com/english/oops/peca_reckitt.htm
- Oopsというタイトルのバナー。
- 無限ループ。
- ブラジル。
- ブラジルのバナーと言うと想像するものがあるかと思うがこれは想像の通り。
- 商品が何かと言うとワックス。
- 木がツルツル床がスベスベになるというワックスで、ピノキオがツルツルになっちゃってパンツがずり落ちるというループ。
- サイバーを毎年ご覧になってる方は、3、4年前の無限ループバナーを覚えているだろうか。
- 強いブラックコーヒーに、ミルクを入れても入れても白くなりません、という無限ループのバナー。
- それの第2号というか、跡継ぎを見つけた、面白いものがでてきた、我々はそれを褒めたい。
- ということでこれがグランプリにふさわしいとなった。
- 非常にシンプルで最高のアイディア。
- しかしふと我に返ると、ワックスをバナーで広告するだろうか。
- こんな変形広告をしないのではないか。
- これはブラジルのフェイクではないか。
- そもそもピノキオは使ってよいのか。
- これを選んだら「これがグランプリかよ」とサイバーの審査員が馬鹿にされてしまうかもしれない。
- そこで、みんな好きだったけど残念ながら消えた。
http://www.judgehere.com/crash/crash.html
- 次もブラジルのバナー。
- 損害保険会社の広告。
- 事故った車が置いてある。
- キーボードを使ってアシスタントを呼んで下さいという広告。
- 押せば押すほど直っていくという非常にシンプルなつくり。
- シンプルだけども非常にわかりやすく表現としても納得できる。
- 「お電話はコチラへ」とか「今すぐ資料請求を」という電話番号の告知は永遠の課題。
- それをこれは、秀逸に番号を押させて覚えさせていると言うことで非常によいアイディア。
- ただしポップアップ。
- 本当にバナーなのか?と言うことで揉め、残念ながらグランプリからもれた。
http://www.interactive-salaryman.com/pieces/past_e/win.html
- 3つめの候補にあがったのがご存知かもしれない日本の広告。
- エイズ検査を受けましょうエイズを予防しましょうというバナー。
- 実はグランプリ候補まで来た。
- ここ何年か日本のサイトがグランプリになることがあり素晴しいこと。
- このバナーもそのテーブルまであがった。
- 日本の作るサイトやバナーは美しく、仕上がりが良いと世界中の審査員がすでに知っているところ。
- 日本は、いつも綺麗で良いサイトを作っていると言われる。
- 音楽の選び方も、アメリカのWebサイトではほとんどがヒップホップ。
- 車でもなんでもヒップホップ。
- それに比べて、日本は音も絵も綺麗で作りが良いと評価が高い。
- ただ日本にも課題はある。
- こういうシンプルなバナーであればディフェンスラインを通過して向こうのゴールまで行けた。
- しかし他のサイトは、綺麗だが意味がわかってもらえていないものが多い。
- 綺麗だけど何の為にやっているのか伝わらない。
- 文化的ギャップ。
- 広告に説明がいるかどうかは別として、何のためのキャンペーンでどんなターゲットにどう効いたかが説明されていないため、綺麗だけど意味がわからないということで落とされてしまっている。
- そこは課題。
- これはアイディアがシンプルだったので、グランプリになりかけた。
- しかし、今年はバナーからグランプリを出すのはやっぱり辞めようというムードになった。
- そこで残念ながらグランプリにならなかった。
http://nikefootball.nike.com/nikefootball/siteshell/index.jsp#,en,0;jogatv
- 次にでてきたのがNIKEのチェーンという仕組み。
- ナイキは、今年Joga Bonitaという美しいサッカーをしようというキャンペーンを展開している。
- チェーンはその中のひとつの試み。
- ひとつのボールですごい長いパスをつなげていこうという、いわゆる参加型キャンペーン。
- 最初はロナウジーニョがボールを蹴る。
- あとは左から右にボールを蹴るというルールのムービーを世界中から投稿してもらう。
- ドンドンつなげていくとひとつの長いパスになる。
- みんなで楽しんで大きな輪を作っていこうという参加型。
- 今、オンライン広告にはどんどん新しい試みが出てきている。
- 例えば携帯電話でWebにアクセスすると、電話でWebの画面の人と話せるものもある。
- もちろん中の人は機械だが、話をしたり息を吹きかけたりできる。
- というように、テクニカルに新しい試みというのは色々ある。
- そんな中、このキャンペーンは技術がすごいのではなくみんなで楽しめた。
- 自分のパスが誰につながるのか、世界中の全く知らない人にパスがつながるという喜びがある。
- という意味で、1本抜けでていたため候補にあがった。
- 投稿者のメッセージも読めるようになっている。
- パスはドンドンつながっていく。
- 左から右にボールを蹴るというルールさえ守れば自由に投稿できる。
- 採用されるかどうかは別にして、51カ国283人が参加し、26分間パスがつながっている。
- ただし、このキャンペーンは実はそんなに成功していない。
- 世界中で試みて、たったの283人26分間しかパスがつながっていない。
- 当然アイディアは良い。
- みんながワクワクして参加できる。
- ただキャンペーンとしては成功していないかもしれない。
- それを加味しても、次のメディアの使い方を占っていくという意味でグランプリに相当するのでは。
- 仕組みとして新しい。
- メディアの使い方として新しい。
- ということで非常に揉めた。
- 心の中ではみんな大好きだったが、議論しているうちに今回グランプリではないかもしれないとなって消えてしまった。
- Joga Bonitaは裏グランプリに近い。
Nike "R10 CROSSBAR" Denmark
http://nikefootball.nike.com/nikefootball/tiempo/viral/high.html
- バイラルの裏グランプリはNikeのロナウジーニョのムービー。
- バイラルムービーとして世界中に流れ、非常に多くの人に伝わった。
- フィルムやダイレクトにも重複して応募された。
- それぞれで賞を獲ったが、バイラルの元祖メディアであるサイバーとしてもこれを評価しないわけにはいかない。
- サッカーに興味のない知人はこの人が誰かを知らなかった。
- けれどもこのムービーは見たことがあるというぐらい広まっている。
- 世界中の人が見てバイラルとしては大成功。
- 合成なのか、ホントなのかウソなのかすごく議論された。
- ここがバイラルの基本。
- ホントかウソかわからないからみんなで議論して盛り上がる。
- ちなみに、審査員の1人がこのムービーを作っていた。
- 「本当なのかこっそり教えてよ」と聞いたが、「それはどうしても教えられない」と教えてくれなかった。
- サイバーメディアが生まれ、新しい広告の楽しみ方というかこうやって盛り上がって広告の世界にお客さんが入ってくることは非常に良い効果。
- ただ、グランプリにならなかった理由がひとつある。
- すごくハッピーで楽しかったけど、Nikeのブランドに何か影響を与えたのだろうかということ。
- これを見てNikeの靴を買った人がどれぐらいいるのかと言えば、もしかしてそんなにいないかもしれない。
- Nikeはすでに完成されたブランド。こういうことをやって当たり前。
- さすがNikeだねと思ってもらえるが、みんなのブランドパーセプションが変わったかというと、あまり変わっていないのではないか。
- 大好きだったけど、次のサイバーを占うためにはグランプリにしてはいけないのではないかという話になりグランプリに選ばれなかった。
Marc Ecko Enterprises "Still Free" USA
http://www.smugglersite.com/CANNES/GETTINGUP.mov
- 我々が最後、これかなと選んだのがStill Freeというムービー。
- このムービーは、メディアライオンで銀賞を取っている。
- それをサイバーではグランプリに選んだ。
- Still Freeというのは非常に小さなブランド。
- グラフィティアーティストでありファッションブランドでもある。
- グラフィティアーティストの教祖みたいな人、かつ、ゲームなんかも作っている。
- そのため、単純にファッションメーカーとしてだけ見ることはできない。
- 言うなれば、Still Freeを合言葉に活動している、ファッション&ライフスタイルカンパニーといったところ。
- では具体的に何の広告かと言うと、プレイステーションのゲームがある。
- みんなの表現の自由を取り戻すため、街に落書き、グラフィティを書いて行く。
- それを邪魔しに来るライバルや警官がいて、それと戦いながら落書きをしていくゲーム。
- このゲームの広告として作られたバイラルムービー。
- ムービーの内容は、アメリカの自由の象徴である大統領専用機エアフォースワンに落書きをする。
- 空港に侵入して、エアフォースワンにStill Freeという落書きをする。
- 警備の厳重な空港に忍び込みその奥に見えるエアフォースワンまでたどり着く。
- 当然、警備は厳重。
- そして最後にエンジンに落書きをするという衝撃映像。
- これはYouTube含め、色々なサイトで広告活動を開始して、瞬く間にアメリカを中心に広まった。
- 本当なのか?という話になった。
- Still Freeと言うグラフィティを書く自由、アートを書く自由。
- スローガンやブランドフレーズを大統領専用機に書くという非常に革新的なやり方。
- 当然、法には反するような映像。
- それを許していいのかという議論がメディアライオンではあったらしい。
- メディアライオンは古き良きメディアエージェンシーの方々が審査員に多い。
- こんなイリーガルっぽいものに賞は与えられないとして良い賞をあげなかった。
- サイバーのやつに審査してもらえばいいじゃないか、という話になっていたらしい。
- 私は知らなかったが後で聞いた。
- サイバーでは当然素晴らしいとなった。笑
- このムービーはまさにバイラルでみんなに広がった。
- かつ、ブランドの意識を変えている。
- さらにすごいのは、アメリカの国防総省がちゃんと記者会見を行って否定のコメントを出していること。
- 実際のエアフォースワンは落書きされていません、と。
- ところが、会見をやったことでますます信じられてしまった。
- 本当に落書きされても絶対に落書きされてませんって言うだろうな、とか。
- さらに話題になり、大揉めに揉めてCNNや新聞でも取り上げられた。
- ホントかウソかということで非常に話題になった。
- これはサイバーメディアにもともとあげられた映像。
- そのサイバーを使った表現がこれだけ話題になった。
- サイバーメディアはちょっとマニアの人がみるインターネットの変な映像だろと思われていたが、表現の場所としてすごいのではないかと注目された。
- サイバーってすごいねと、サイバーメディアに対する見方が変わった。
- そこを評価して、我々はハッピーなNikeではなく、ちょっとポリティカルだけどもこちらをグランプリに選んだ。
- ムービーの種明かしをしておくと、この飛行機は塗ってそっくりに作られたもの。
- ジャンボを1台借りてきて、片面だけ塗ったらしい。
- それでもすごくお金はかかると思うが。笑
- そっくりに塗るための資料は、映画エアフォースワンとかがあって結構簡単だったらしい。
- 塗って作ったムービーだよということは、作者から暴露された。
- 話題が強すぎたからなのか、あえてそれを言うことで、なんだいい奴じゃんと思われたかったのかはわからないが。笑
- 結局、最後に自分たちで暴露したことでこの話は終わった。
- グランプリに選んだ理由をもう一度。
- みんなのサイバーメディアに対する見方が大きく変わったのではないかということ。
- 今までネットのマニア向け映像と思われていたものが、国防総省やCNNまで動かした。
- サイバーメディアはすごいかもしれないと一般の人までもが思うようになった。
- その点をサイバー審査員として今年一押しにしてもいいのではないかということで選んだ。
- グランプリの結果だけを見ると、よく出来たVOLKS WAGENのサイトと面白かったStill Freeのムービーがグランプリでしたという話。
- けれども、選ぶ過程ではたくさんの面白い作品があり、みんなが大好きだったものがある。
- あえてみんなでちょっと気負って、これからのサイバーメディアのあるべき姿を考えた。
- 何もえらそうなことを言っているわけではない。
- カンヌのグランプリがそれなりに意味を持つのであれば、せっかくだから提案しようと。
- 作り手としてこういう使い方を考えよう、こういうブランディングを考えようということを提案している。
- 以上がグランプリ選出のウラ話。
- すでにここ数年言われているが、サイバーメディアは広告キャンペーンの中心的存在になっている。
- フィルムがいりませんと言うつもりはさらさらない。
- フィルムはむしろあったほうがいい。
- 電通だから言うわけではない。
- フィルムとかプリントというメディアは絶対に必要。
- なくならないと思う。
- けれども、それをつなぎとめてさらに広げるのは間違いなくサイバーの役目。そう確信した。
- サイバーメディアがあれば、消費者は自由に時間をかけて参加できる。
- サイバーメディアがあれば、色々な枠を超えられる。
- サイバーメディアがあれば、広告主や僕ら作り手が、思い通りに色々な形色々な時間、ゲームだろうとなんだろうとできる。
- サイバーメディアがあれば、長い良い映像を見せる映画館にもできるし、もっと違うものにもできる。
- 事件を起こすようなメディアにさえ変えられる。
- どんな形にもできるブランディングメディアであるというのが、審査をしてみての感想。
AMANA "Communication Evolved" THA
http://amana.jp/company/tsutawaru/
- 日本からは金賞が2本。
- ひとつはアマナの作った企業サイト。
- 非常に美しい。
- アマナの商品でもある写真を使い、写真の選び方などで企業をブランディングしている。
- 美しくシンプルなサイト。
- 日本のサイトは、フランスから見るとすごく時間がかかるのが痛かった。
- ヨーロッパやアメリカのサイトはすぐ表示されるのに、日本のサイトはずっとローディング。
- 「日本は重たいサイトばっかりだよね」と言われたのがすごい悔しかった。
- 今どきブロードバンド時代でどのサイトも重い。
- 「フランスの回線が悪すぎるだけだよ」と納得させて時間をかけてみてもらったが、救われずに消えていってしまったサイトも結構あると思う。
- カンヌでやるのもいいが、もうちょっと違う場所でやったらどうだったのだろうか。
- ただし、日本でやっても面白くないのでイタリアとかフランスでやって欲しい。笑
- という、このアマナのサイトが金賞。
http://www.interactive-salaryman.com/pieces/past_e/win.html
- もうひとつの金賞が、先ほど紹介したエイズのバナー。
http://www.tfm.co.jp/sweet/
- 銀賞がひとつ。
- Tokyo FMとHondaのGlobal Research Showというサイト。
- ラジオとブログを融合させている。
- 仕組みとして新しく かつ、動きも綺麗だということで入賞。
http://voice.semitransparentdesign.com/10years_seeds/
- 資生堂のシーズオブビューティーが銅賞。
- 資生堂のWebサイト10周年を記念して作られたサイト。
- 種を蒔いて自分の美しさへの想いを語りかけると、それが栄養となって種が育っていく。
- 毎週毎週アクセスすると種が育っていき、最後は花が咲く。
- 自分のかけた言葉によって成長が違う。
- 他の人の植えた種を見ることも出来る。
- 非常に優れたサイトということで入賞。
- ご覧になってわかるように、日本のサイトは大変美しい。音楽も綺麗。
- AMANAも、Her Pastのバナーも、Global Research Showも、Seeds of Beautyも美しい。
- 細かいところまで綺麗に作っているとして、評価が非常に高かった。
- 他にも、Webサイト、バナー、キャンペーンなどが候補作品に何本か入っている。
インテグレーションについて
- 来年に向けて日本の課題。
- 今年はインテグレーションの年だというのに、日本はまだまだインテグレーションが進んでいないのではないかと感じた。
- WebはWeb、マスはマスになってしまっているのではないか。
- それは代理店や僕ら作り手の問題かもしれない。
- 宣伝部が違う、Webは担当が違う、といった別のところに問題があるのかもしれない。
- 理由はどうあれ、結局マスから作ろう、Webは分けて作ろうとなり、インテグレーションというものが進んでいない。
- すごく素敵なWebサイトは多いけれども、そのWebサイトはキャンペーン全体のどこに位置付けられているのだろうか。
- 例えば、みんなで写真を応募して素敵なものを作ろうとなっても、良いサイトがあってすごく綺麗で良かったね、となるだけ。
- そのサイトの位置づけ、どういうブランディングに成功したのかということがパッと見てわからない。
- 綺麗だけどこれはどういう広告なのか。
- 綺麗だけどこれはどういうメディアプランなのか。
- どんな役割を果たしたのか。
- それがわからない。
- 微妙にインテグレーションされていないがために、外国人たちには伝わっていなかった。
- 我々作り手の課題でもあるが、メディアで分けるのではなく、コミュニケーションの軸で一本ちゃんと通して表現することが大切。
- フィルムも使うし、当然Webも使う。
- ただし、単に続きはWebでとか詳しくはWebでとかではなく、流入経路だったり、いったいどこに滞留してもらうか、どこで出会わせて、どこにインパクトがあって、最後どうやって買ってもらうかということを、全体の流れを持ってインテグレーションすることを進めないといけない。
- それに対して、欧米、特にアメリカとイギリスはすごいお金と時間をかけてインテグレーションをするようになった。
- カリフォルニアの牛乳キャンペーンや、今回紹介していないが車のキャンペーンなどものすごいお金と時間をかけて作りあげてきている。
- もちろん日本がお金と時間をかけていないということではない。
- けれどもその効果がうまく出ていないのかも知れない。
- 自分への反省も含めて、ちゃんと詰めていかなければいけないと思った。
- もうひとつ、賞への応募について。
- 日本の市場、文化、キャンペーンの持つ背景、ターゲット、成果をきちんと説明すべき。
- 審査しているときに何度も他の審査員に聞かれた。
- このサイトはすごく綺麗だけど、日本語しか書いていなくて意味がわからない、と。
- 何のキャンペーン?誰に何をやった?のと何度も聞かれた。
- 電通が応募したものだけでなく、日本から応募されたもの全般。
- 英訳はされていても、カルチャーの違いを意識して説明していない。
- キャンペーンのコアな部分が説明されていないため面白くない。
- どうしてこのキャンペーンをやったのかということが抜け落ちてしまっている。
- そんな応募がたくさんあった。
- 広告として良くなかったのではなく、説明不足で落ちてしまっている。
- 本来は意味のないことかもしれないが、せっかく応募するのであれば欧米人たちにわかりやすく応募しないといけない。
- そうしないと、日本のサイトは綺麗だけどなんか戦略がないよね、綺麗だけどキャンペーンとしていまいちだよね、と言われ続けてしまうし、すごく悔しい。
- 日本もこれからインテグレーションが進んでいくのであれば、誰にでも説明できるように構築をしていくべき。
- それが我々の課題。
- そうすれば、日本のサイトはもっともっと賞に入っていくだろうし、日本も結構インタラクティブだよねと思ってもらえる。
- 今は綺麗だよねしか思ってもらえていないから悔しい。
- ましてやアジア全体での応募は非常に少ない。
- 日本の応募は多いが、韓国中国タイとかから応募されているものは非常に少ない。
- アジア全体のパワーが弱く感じてしまう。
- カンヌではまだまだアジアの力は弱い。
- であれば、日本が引っ張れば良い。
- ぜひその辺を一生懸命やっていきたい。
- 今回、中国語のサイトを「佐々木これ日本人だから訳してくれ」と言われた。
- 中国語のサイトは、ほぼ100%英語化されていない。
- いきなり入口とか書いてあってenterさえも書いてない。
- だから外人はどこから入るのかさえわからない。
- 中国語はわからないけど入口は入口だろうということで「これだよ」と教えあげる。
- すると、「お前中国語もできるんだ、すごいな」「まあね」と。笑
- アジアはカンヌではまだまだ弱い。
- チャンスはあるので、頑張りましょう。
- 最後に、みんなが良い言葉を使っていたので引用。
we can create minutes or hours
on the world's greatest
distribution system....
- 私たちは時間を作っている。
- 時間を売っているのではなく、時間を作っている。
- その時間と言うのは、1分にもなるし2時間にもなる。
- サイバーメディアというのは、ただ単にマニアが使うパソコンではなく、
- ワールド グレーテスト ディストリビューション システム。
- 世界共通のすごいコンテンツ配信システム。
- それを使い、我々は無限の時間を作れるはずだ。
- このインダストリーで働き、このインダストリーで仕事ができることは大変素晴らしいこと。
- 最初に言われたことを、最後に改めてみんなで思ったことので、引用した。
- これを心に留めて、これからも仕事をしていきたい。
- そして来年のカンヌへつづく。
- 楽しそうな写真が何枚かあるが、だいたい会議室にいたので海とかにはほとんど行けてません。