以下の内容は、文献や新聞報道で読んだ内容と、業界の関係者等から聞いた内容などを総合して自分なりに理解したものである。
文献は、以下のものである。
【文献1】福原慶匡「アニメプロデューサーになろう!アニメ『製作(ビジネス)』の仕組み」(星海社新書 2018)
【文献2】増田弘道「製作委員会は悪なのか?アニメビジネス完全ガイド」(星海社新書 2018)
内藤篤「エンタテインメント契約法(改訂版)」は、「一般的には有形物を作成することを『製作』といい、無形物を作成すること『制作』というようだが、本稿では・・・『エンタテインメント業界的な』使い分けをする。すなわち著作権ないし報酬請求権を手にする形で作品の作成をすることを『製作』といい、そうした権利が残らないかたちでの作品作成を『制作』という。」とする。
しかし、アニメーションビジネスにおいては、作品に対する権利を取得するのが「製作」で、取得しないのが「制作」であるという理解は、完全に間違っているというわけではないが、正確ではない。
アニメーションビジネスにおいては、作品を物理的に作ることを「制作」という。これに対して、資金調達、作品の「制作」から作品の利用(流通)など、「制作」の前後も含めて作品に関わる全体を取り扱うことを「製作」という。文献1の表現では、アニメを「作品」として見るのが「制作」、「商品」として見るのが「製作」である。
現在の日本のアニメーションビジネスにおける主流のビジネスモデル(製作委員会方式)では、「製作」は製作委員会が行い、製作委員会から委託を受けたアニメスタジオ(制作会社)が「制作」を行う。したがって、テレビアニメのクレジットを見ると、「製作」として「○○製作委員会」のような表記(または製作委員会の各メンバーを列挙した表記)、「制作」としてアニメ制作会社の名称が記載されている。
ここで、作品に対する権利を取得するのが「製作」で、取得しないのが「制作」であるという説明との関係はどうなのかであるが、現在主流の製作委員会方式においては、権利を取得するのは製作委員会であり、かつアニメ制作会社は通常、製作委員会のメンバーに入らない(入る余裕がない)。したがって、アニメ制作会社は作品に対する著作権を持たないから、この説明でも合っている。
しかしアニメ制作会社が製作委員会に入ることは一応可能であるし、何より、従来のビジネスモデルである「広告宣伝方式」においてはアニメ制作会社が著作権を有する。そして広告宣伝方式はキッズ・ファミリー向けアニメでは現在も使われている。
したがって、アニメーションビジネスにおいては、制作会社(アニメスタジオ)が権利を取得することもあれば取得しないこともあるが(ただし深夜テレビアニメ+製作委員会方式という現在主流のビジネスモデルでは、上記のとおり通常、取得しない)、いずれにしても、作品を物理的に作るという役割を「制作」というのである。