日本弁理士会役員のDX孤軍奮闘記
―常議員として挑んだ『JPAAジャーナル』オンライン化への道のり―
本年度に日本弁理士会常議員を拝命した立場から、3年以上にわたって私が孤軍奮闘してきた日本弁理士会のDX、特に『JPAAジャーナル』のオンライン化について報告いたします。
常議員とは
常議員は日本弁理士会の役員ではありますが、どのような職務権限があるかという点について、日本弁理士会の構造との関係で概略を説明いたします。日本弁理士会の構造は地方公共団体の構造とほぼ同様という側面があり、日本弁理士会会長を東京都知事に対応させたとき、常議員会は東京都議会に概ね対応し、常議員は都議会議員に概ね対応します。
常議員は、日本弁理士会会長、副会長などと同様に日本弁理士会の会員による直接選挙により選任されているので、会員に対して説明責任を負っていることになります。そのような観点から2026年5月8日、金曜日に弁理士会館とオンラインでハイブリッド開催されました2026年度第1回常議員会についてご報告いたします。
当日の出席者は、常議員の定員60人の8割となる48人であり、現地で出席した常議員はその約半数でした。
日本弁理士会のDX;月刊『パテント』
日本弁理士会は全ての会員(弁理士)に対して、月刊『パテント』、別冊『パテント』、『JPAA ジャーナル』などを配布しています。以前は、これらの配送物を郵便で配送していました。具体的には 月刊『パテント』と『JPAA ジャーナル』などを一緒に郵送していたのです。
ところが、デジタルトランスフォーメーション(DX)という時代の潮流に鑑み、『月刊パテント』などを郵送からデジタル配信に切り替えようということになりました。
日本弁理士会広報センター会誌編集部で月刊『パテント』の編集長を務めていたとき、年初となる2022年1月号からオンライン配信に変わりました。
この1月号の編集長を務める機会をいただいたこともあり、当時の状況は鮮明に覚えています。例えば、最初のデジタル配信ということで気合いを入れて、月刊『パテント』1月号の特集として実務家にとって最大の関心である 進歩性を選びました。また、髙部眞規子元知的財産高等裁判所長など豪華な専門家に玉稿を依頼いたしました。
DXに抵抗する『JPAAジャーナル』
ところが、大きな問題が発生いたしました。月刊『パテント』がオンライン配信に切り替わったのにもかかわらず、『JPAAジャーナル』は郵送のまま維持されたのです。
2022年度の年間予算としては、月刊『パテント』の印刷費及び郵送費を1千万円以上、削減することができました。1万人を超える会員に月刊『パテント』を毎月、印刷郵送していたのですから、合計金額はそれなりにあってDXの威力を感じます。
ところが、2023年度になって、『JPAAジャーナル』の発送費が新たに発生することになりました。従来、『JPAAジャーナル』は月刊『パテント』と一緒に発送していたので、『JPAAジャーナル』の発送費は予算に計上されていなかったのです。『JPAAジャーナル』の発送費は1000万円を超え、月刊パテントの発送費削減を帳消しにしてしまいました。
ここから孤軍奮闘が始まりました。私は総会や常議員会において、この矛盾を指摘し、「『JPAAジャーナル』もオンライン配信へ切り替えて郵送費を削減すべきだ」と主張し続けました。結局、日本弁理士会のDXを実現するまで年単位の時間がかかりました。
DXの課題;公示送達の改正
『JPAAジャーナル』は会員に対する公示送達としての役割を担っています。公示送達については日本弁理士会の内部規程が設けられているので、この内部規定を改正して、紙媒体による公示送達からオンラインによる公示送達に変更することが求められます。この内部規程の改正が大変でした。
2024年12月の忘年会である役員と会話したときのエピソードになります。
「そういえば、JPAAジャーナルの件はどうなっています」
役員は余裕の笑みを浮かべながら、「任期はあと3カ月、2025年3月までだからね」
「逃げ切りですか」
「そういうわけではないのだが、3か月で規則改正は無理だよ。」
たしかに、日本弁理士会のしくみを考慮すると、3か月の準備期間で内規を改正するというスケジュールは無理なのですが、それにしても…。
転機となった常議員会
昨年、2025年4月から北村修一郎弁理士が日本弁理士会会長に就任いたしました。会長の任期は2年になります。
昨年(2025年)5月上旬に開催された2025年度第1回常議員会で『JPAAジャーナル』のDXについて私が取り上げましたところ、北村修一郎会長が問題を認識するに至り、内部規定を改正する方向に大きく舵を切ったのです。
「オンライン化するだけで1000万円を削減するならやろう!」と英断したのです。
2025年度に北村会長が主導して公示送達に関する内部規定を整備する旨の諮問がされ、担当者が内部規定を検討した後、ようやく 改正案がまとまりました。
先日、2026年5月8日に開催された常議員会で内部規定の改正に関する議案が審議され、無事に可決承認されました。
今月下旬に開催される総会で本議案が議決されると、正式に内部規定が改正されます。周知期間を経過後、今年の秋頃に改正後の内部規定が施行され、ようやくオンライン配信が実現することになります。
今後も引き続き日本弁理士会の発展に貢献する所存ですので、会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。