[大和国吉野郡] 丹生川上神社 下社




■表記
紀 … 闇龗(クラオカミ)
記 … 闇淤加美神
その他、意賀美神、袁加美神 等


■概要
水や雨を掌るとされる水神の一。「龗」は「龍」の古語、「闇」は谷のこととされます。つまり谷底に棲む龍神であると。古来より止雨祈雨の水神として、山峰に棲むという高龗神とともに信仰されてきました。紀では五段一書のみに登場、記にも登場します。

◎紀の五段一書六には、伊弉冉尊は軻具突智を生んだために身を焦がし去ったので、伊弉諾尊が軻具突智を斬った剣の柄頭から血が滴り成ったのが闇龗・闇山祇・闇罔象(クラミヅハ)の三柱とあります。

◎記の記述では、伊耶那美神が迦具土神を生んだことにより神避り、伊耶那岐神が迦具土神の頸を斬ると、刀の柄に集まった血が手の股から漏れ出て成ったのが闇淤加美神・闇御津羽神(クラミヅハノカミ)の二柱とあります。


◎いずれも刀剣の血から化成したことになっています。これは刀剣による「火伏せ」という思想、つまり刀剣の霊気が雲となり水を呼ぶと捉えられていたことによるものと考えられます。

◎火神であるカグツチ神の出生から始まり化成した神々は、刀剣の製造工程を表すという考え方も。そこでは刀鍛冶で灌がれる水の表象が闇龗神であるとされます。

◎谷底に棲む龍神が闇龗神、山峰に棲む龍神が高龗神とされ、対の関係であると考えられます。
一方で同神であるとする説も。山城国愛宕郡の貴船神社の社記には、「呼び名は違っても同じ神なり」とあるようです。
また別に高龗神は和魂で、闇龗神は荒魂とする考え方もあるようです。


■祀られる神社(参拝済み社のみ)
[大和国吉野郡] 丹生川上神社 下社

[紀伊国那賀郡] 岸本神社(岸本丹生神社)

[石見国] 佐毘賣山神社(大田市大森) … 別殿神、記事未作成

*「淤加美神」として祀る神社
[大和国城上郡] 貴船神社(大神神社 摂社)

*境内社等
[美濃国] 七王子神社(南宮大社 回廊内境内社)

[大和国吉野郡] 意賀美神社(吉野山口神社 境内社)


*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。