天押雲根命


■表記
天押雲根命、天押雲命、天忍雲根命、天押熊根命など


■概要
天児屋根命と天美津玉照比売命の間の御子神。一般に「若宮」と称され、枚岡神社においては第一殿に天児屋根命が、第二殿に比売御神として天美津玉照比売命が祀られています。春日大社においては第三殿に天児屋根命が、第四殿に天美津玉照比売命が祀られています。そして春日大社には別殿(本殿と同格とされる)として、若宮神社に天押雲根命が祀られています。奈良市最大の祭として「若宮おん祭」が有名。
◎延喜式にある「中臣寿詞」には、以下のようにあります。ニニギ神降臨の際に豊原瑞穂国を「天津御饌」を永遠の御饌として幾千変わることなく尊い土地として治めるように指令が下り、天児屋根神は付き従いました。そして皇孫の御食の水には「天津水」を加えて奉ったのですが、その「天津水」を天上に乞いに上がったのが御子神の天押雲根神。
天神漏岐命(アメノカモロキノミコト)・神漏美命の詔により天玉串を立て天津詔詞の太詔詞を奏上し、「天八井の水」が授けられました。以降、大嘗祭に奉る大御酒を醸す水に、また皇孫のに奉る御食の水にも用いられるようになりました。
この「天八井の泉」があるのは、丹波国の式内名神大社 摩氣神社の境内。
◎以上のように「水神」、あるいは「食の神」と見るのが一般的。ところがその神格を持ち合わせつつも、春日大社の「若宮」として祀られる天押雲根命の神格は、また異なる神格も持ち合わせていると考えています。
神名から判断して「太陽神」とみなされていたのではないかと。これまでこのような説を挙げているのを見たことはありませんが。石押分之子(イワオシワクノコ、磐排別之子)が石を押し分けて現れたとするのであれば、天押雲根命は雲を押し分けて現れた神。つまり「太陽神」ではないかと。
春日大社の東側後方にあるのが「春日奥山」。これを神奈備山と捉えるのであれば、「三輪山」と同様に山頂から朝日が昇る地が祭祀場となります。つまり神奈備山から西側の見通しが良い場所。現在の春日大社ご本殿からでは近過ぎ、若宮神社も同じく近過ぎて、その候補地とは成り得ないかと思います。多くの摂末社から該当するのであれば率川神社ではないかと。現在は大神神社の境外摂社となっていますが、かつては春日大社の末社であったと言います。この謎の神社に天押雲根命が鎮まっていたのではないかと考えています。


■祀られる神社(参拝済み社のみ)
(あまりにも多いので主要社のみ上げます)
[丹波国] 摩氣神社
[近江国伊香郡] 伊香具神社 境外社 一ノ宮神社
[山城国愛宕郡] 吉田神社 境内社 若宮社
[大和国添上郡] 春日大社 別殿 若宮神社
[大和国葛下郡] 當麻山口神社 境内社 春日若宮神社
[大和国高市郡] 小嶋神社