読者の挑戦が始まったようだ…
momotarokintaroさん,ワタシの使った「問わず語り」という言葉に気づきませんでしたか。基本的に小説というものはすべてを書いているわけではないことをご存知でしょう。そしてこのブログを書いているのが自称「探偵」であることは,どうなのでしょうか?
そう,「本を読んだ」ということはその読者に或る情報が入ったことを意味します。すると,そこから出る言葉に一定の連鎖が生じます。その連鎖の確率を計算することで,情報の漏れや普及度を測る,これがターナーのやっている仕事です。「統計数学」です。もちろん,元情報の出処は自分の側,つまりCIAです。秘匿すべきものも,「操作」の材料にするものもあります。意図的に何かの言葉を混ぜるのです。
すると,誰が狙ったことになるのかが分かります。嘘だろう,と思うかもしれません。嘘であって欲しい。なぜなら,それから逃れる術がないからです。自分すら逃れられない,諸刃の刃なのです。「西棟」がなぜこの時点で問題なのか?
単なる情報収集ということでも,例えばワタシ自身がある経験から,米国がワタシ(こんな小物の取るに足りない男)の身辺について相当詳しく知っていることを,ビザの申請時に思い知らされたことがあります。情報源が当時ワタシが住んでいた下宿だったことも怖い体験の1つです。読者の皆さんも油断は禁物。
襲撃が行われた後のターナーの推理はどうだったのか?先を急がず,流れを追って行こう。ターナーはどこで敵を察知したか?(続く)
コンドル(4)
世田谷一家殺人事件は読者の記憶に新しいと思う。まだ解決していない。警察発表は,無慈悲な刃物の使い方などから犯人がどうも日本人以外のプロ,ないしはマニアとの味方のようだ。結構な時間をかけて書類ならびにデータを調べていた形跡がある。誤解により生じたのかも知れないが,明らかに狙われた理由は,この父親とターナーとで同じであろう。もちろん探偵の想像にすぎない。しかし考えても欲しい。このコンドル自体,フィクションなのである。原作はジェームズ・グレイの「コンドルの6日間」である(映画ではこれが3日間に短縮されている)。フィクションだということは,実際は確実にそれ以上だということを意味している。アメリカならずとも,必要なことをやらずに済ます国家はない。
CIA,Central Intelligence Agency(中央情報局)の名前でInformationではなくIntelligenceが使われていることは誰でも知っている。国務省の管轄下にある,大統領さえ恐れる部署である。
彼らの行う情報工作とはいかなるものか。そもそも「工作」とは何か。そう,作ることである。この工作に当たる英語がOperate,つまり「操作」だ。
インタラクティブという意味が少し分かっていただけだろうか。これはUFO伝説でも名高い「オズウェル事件」のおそらく米国陸軍(ARMY)側の首謀者の1人が死の直前に発表した本の中に「問わず語り」で語られている。彼は死んでもなお情報担当将校(大佐といわれている)だったのだ。情報は収集するものであり,誤誘導情報を含めこちら側から発するものであり,そしてその反応(結果)を分析するものである。彼らの対象には彼ら自身さえ含まれている。
つい最近,エシュロンというスパイ衛星による情報収集が話題になった。現代の水準は地球上のどんな人物でも,その鼻毛や夜の営みまで調べようとすればできる所まで来ていると言われている。単に科学技術が進歩したためでなく,分析力が向上したからである。そして,分析の基本は,シャーロック・ホームズの手法にある。ドイルのシャーロック・ホームズは化学者という設定になっているのを忘れてはいけない。そして,英国がコンピュータの基礎概念を作ったチューリングの母国であることも。チューリングは第二次大戦中の英国情報セクションにおいて,暗号解読に従事していたのである。クロスワードパズルを使って人材発掘したことが知られている。見えて来たろう,喜多郎,いや鬼太郎か。ターナーは姿を変えたシャーロック・ホームズなのだ。ではモリアティ博士は誰か(続く)。
コンドル(3)
キーの1つはターナーにある。ターナーをレッドフォードが演じているから,などどいうツマらない推理ではない。その位置づけ(人間のタイプも含め)と彼の出したレポートである。彼以外にオフィスにいた全員が殺されたわけだが(これから殺されるわけだが),ターゲットがターナーであることは明白だ。他の人間はターナーの意見を聞いた可能性があるので殺されたのである。
局所的に雨が降る時間をきちんと予告できる科学者と同じ情報収集力,分析力を持つ「敵」側の勢力とのぶつかりあいなのだ。表に偽のプレートを掲げ,受付係の女が監視カメラ越しに来訪者をチェックし,場合によってはコルトまで使用することを想定している職業に,ターナーがなぜ就いているのか。募集でやって来たわけが無い。才能を見込まれたのである。
その情報だが,よく考えればおかしい。なぜ海外文献を調べて上司に報告する際に自分の側の情報(ペルシャ湾情報)が必要なのか?それがなぜいとも簡単に否定されたのか。「天」の字はどこにどう使われているのか。読者は「西棟」にもしかして心当たりはないだろうか。読み屋の仕事について,誤解しているのではないだろうか?
サスペンスを進める前に,次回は当時と現在の情報収集方法の同異について怖い話をしたいと思う。こんな風にして日本でも一家全員が一夜にして殺された事件があったが,あの父親の職業は何だったろうか?探偵としては読者の推理が当たらないことを切に願う(続く)