今回のポーランドとバルト3国の旅は、フィンランド・ヘルシンキ空港で入国審査を行い、同ヘルシンキ空港で出国審査を行った。その間、ポーランドでも、リトアニア、ラトビア、エストニアでも、出入国審査はしていない。
パスポートにポーランドとバルト3国の出入国スタンプはなし
したがってパスポートに4国の出入国のスタンプは押されていない。知らない人が、リブパブリのパスポートを見ても、上記4カ国を訪れたことは分からない。
なぜ4カ国訪問の痕跡がパスポートに残っていないのか? それは、フィンランドを含め、ポーランドとバルト3国が、シェンゲン協定参加国だからである。
シェンゲン協定とは、参加国間の移動の自由を定めたもので、検査なしで国境を越えられ協定だ。
だから我々は、いったんフィンランド・ヘルシンキ空港で入国手続きを受けた後は、再びヘルシンキ空港で出国手続きをするまで、5カ国間の移動はフリーパスであった。
陸路の国境越えはノンストップ
フィンランドからポーランド・ワルシャワにはフィンランド航空機だったが、ポーランド-リトアニア、リトアニア-ラトヴィア、ラトヴィア-エストニアは、バスに乗ったまま通過、エストニア-フィンランド間は2時間のフェリーに乗って渡った(写真=エストニアのタリン港を離岸するフェリーから望んだ旧市街)。
陸路でのバスでの国境越えは、日本の高速道の料金所通過より簡単だった。バーもないし、バスはスピードを落とすこともなく、普通の自動車道を走り抜けた(写真)。
これは、ラトヴィアからエストニアへの国境を超え、エストニア側でトイレ休憩をとった際に、ラトヴィア方面を望んだスナップだ。車は、スピードも緩めず、国境を走り超える。右手前はかつての国境監視所であろう。
複雑なEU加盟国とシェンゲン協定参加国
シェンゲン協定参加国は、複雑だ。EU加盟国が核になってはいるが、EU加盟国でもイギリスはシェンゲン協定に参加していない。これは、賃金の安い旧東欧圏から無秩序に移民が入ってくることを防ぐためなのだろう。
逆にEU非加盟のノルウェー、アイスランド、スイスは、シェンゲン協定参加国である。
ちなみに旧ソ連の傀儡政権だったポーランドと旧ソ連に併合されていたバルト3国は、物価も安い代わりに賃金も安い。
旧西欧圏の3分の1の賃金
ポーランド人現地ガイドに聞いたのだが、経験5年の学校教師で月収は日本円換算で8
万円程度だという。公立病院勤務医は、月収10数万円だそうだ。
ところが旧西欧圏の近隣国のドイツやフィンランドに行けば、語学力さえあり、うまく就職できれば、この3倍は稼げる。そのため失業率が10%ほどの人口3800万人のポーランドでは、100万人以上が旧西欧圏に渡ってしまっている。ポーランドもバルト3国も、流暢な英語スピーカーが多いのだ。
これは驚いたのだが、そのポーランド人現地ガイド氏によると、人口が30万人余りのシェンゲン協定参加国のアイスランドにはポーランド人10万人が定住してしまっているという。人口希薄な国だから、労働力不足のためにポーランド人が国を支えている図式だ。
早朝の街歩きで見たもの
ギリシャやスペインよりはマシだが、高失業率のポーランドでは、実際、厳しい現実を見た。
自由時間のほとんどないパックツアー旅行でも、朝だけは自由である。日本でも朝の早いリブパブリは、今回のパックツアーでも毎朝4時起床、朝食の始まる6時半に戻るために5時に街歩きに出た。
高緯度地帯のポーランドとバルト3国では、朝も5時には日が出て、夜は10時頃まで明るい。午後8時でもまだ西日があるのだ。
共産体制の収容所から野宿の自由に
というわけで、早朝の散歩に出ると、例えばワルシャワのサスキ公園では計4人のホームレスを見た(写真下)。身なりは日本のホームレスよりはこざっぱりしているが、朝の5時から公園のベンチで眠っているのだから、紛れもなくホームレスであろう。
その他、日中、短い自由時間の間、独りで旧市街域をぶらついていると、近づいてきて声をかけられたことが2度あった。これは、物乞いだろう。
人間の尊厳と自由を圧殺した共産体制では、物乞いやホームレスは存在しない建前だった。いれば、公安が「プラトノイ(徒食人)」として警察に摘発され、収容所に送られた。
民主主義と自由を得たポーランド(とバルト3国)では、収容所から野宿する自由に代わったのだ。
それが自己責任を問われる自由主義社会の厳しい現実でもあるのだ。
昨年の今日の日記:「中国の闇:病死ブタ不法投棄事件とPM2.5大気汚染騒動異聞」