加計学園傘下の岡山理科大学獣医学部(仮称)の設置認可が出たとしても、実際に学生が入学するのか、畜産農家が頼りにするのかどうかは、動物病院で実際に、臨床に当たる獣医師の腕次第と予想しています。ドラマ「ドクターX」のような名医は、馬であれば、日本中央競馬会JRA)にはおられるのでしょう。詳しくは公務員獣医師の初任給(続き)(9月4日)を見てください。

 

また、牛、豚も含めて農業共済組合(NOSAI)や独立行政法人の家畜改良センター、農業協同組合の家畜診療所などには獣医師がいます。調べた限りでは、豚専門の千葉にある会社が全国から引っぱいだこのようです。豚は、馬、牛に比べて一頭当たりの単価が安いことと、数千頭単位で飼養している畜産農家が普通なので、病気に罹(かか)らないための「予防」が第一のようでした。

 

人間がお世話になることがある大学附属病院と同じく、獣医系大学の動物病院も評判がよければ、地域の拠点となります。ただ、北関東の某大学病院での腹腔鏡手術で何人も死んだように、大学病院だと言って安心はできないのでしょう。

 

現在は、岡山理科大学獣医学部(仮称)は「絵のない額縁」です。『審査中だから明らかにできない』とのことですが、大手デベロッパーのマンション販売では、普通は「モデルルーム」を作って内覧しますし、HPで完成予想図を見ることができます。今治市の「いこいの丘」に建設中の建物も「本当に」誠意があれば、設計図面の公開だけでなく、完成予想図は出せるでしょう。また、教員予定者も「大学設置・大学法人審議会」や文部科学省の了解を得れば、部分的に明らかにできるように思います。学部長に予定されているY氏は豊富な研究/教育経歴がありますが、70歳を超えています。私には、「審査中」を都合のいい「口実」、「隠れ蓑」にしているとしか思えません。8月上旬までには「認可」が「保留」になることは、関係者は知っていた筈です。ダメ出しをされて、「再提出が9月末を予定している」というのは、余りにも遅いです。「他の獣医系ができない最先端の…」という謳い文句とは、ほど遠いのが現状です。

 

愛媛県の畜産関係者の中は、本当に心待ちにしている方もおられるのでしょう。建物が完成しても、BSL3施設の審査は厚生労働省、動物病院の開設は農林水産省がそれぞれ、所管しています。ケースバイケースですが、折角、作っても「認可」されない場合があります。また、環境省が所管している「動物愛護法」で、動物の治療も最新の注意を払うことが求められています。「国家戦略特区」の絶対主義者は、あらゆる規制を破壊したがるようですが、日本は「法治国家」で、必要とされる法令、告示があります。たとえ、文部科学省のハードルを越えたとしても、厚生労働省、農林水産省、環境省などのハードルが、いくつもあります。また、運よく「開校」できたとしても学生募集のハードル、実際に利用を期待している畜産農家のハードルはさらに高いように思います。学生と保護者、畜産農家は、実際に自分の「金」を出す側です。対価に見合わなければ、ゴールに到達できません。

(9PM、追記)

設計会社、施工会社とも病院建設の実績はあるようですが、MRI、X線CT、X線照射装置ほか、医療・診療装置には、少なくとも設置される部屋の設置基準や、医療法、電波法、労働基準法に基づく申請が必要ですし、認可が下りなければ使用できません。まあ、家庭用の電気マッサージ器とは全く異なる、煩雑な手続きが必要です。

 

それぞれの医療・診療装置の納入業者はプロですから、予め建物の設計図面を見て、必要な工事や提出する書類一式は提供しますが、実際に手続きをするのは大学側になります。

 

大学病院の例では、慶應義塾大学の新1号館は2014年5月から着工し、2015年9月に『各種法令に基づく諸官庁に拠る検査を受検し、合格後順次稼働を開始…』とあります。病院ほどではないとしても、平成30年4月開校というのは、「綱渡り」です。動物病院で実際に働く獣医師、獣医看護師、医療・診療機器の検査技師が決まっていなければ、折角購入した「高価な」医療・診療機器は「宝の持ち腐れ」になります。9月末までの文部科学省とのやり取りは、書類で済みますが、医療・診療機器の設置からは、実務を伴います。MRIに関しては、四国総合通信局が松山市にありますし、X線関係は今治市に労働基準監督署があります。もう、すでに松山市内、今治市内のホテルに常駐スタッフがいないといけない時期だと思います。経営の3要素の「ヒト・モノ・カネ」で一番、大事なのは「ヒト」です。

 

(2018年7月18日追記)
私立大学の経営状況はブラックボックスです。端的に言えば、4大監査法人までは言いませんが、ちゃんとした監査法人の監査報告が全部、出ているか疑問に思っています。

獣医学部については、昨年度に購入されるべき図書が納入されていないような記事があります。どうなんでしょうか?

 

 

(過去のブログ記事)

私立大学獣医学部/獣医学科(8)(9月8日)

私立大学獣医学部/獣医学科(7)(9月8日)

私立大学獣医学部/獣医学科(6)(9月7日)

私立大学獣医学部/獣医学科(5)(9月6日)

私立大学獣医学部/獣医学科(4)(9月4日)

私立大学獣医学部/獣医学科(3)(9月3日)

私立大学獣医学部/獣医学科(2)(9月2日)

私立大学獣医学部/獣医学科(1)(9月2日)

 

高価な動物用診療機器について(3)(9月3日)

 

大学のデューディリジェンス(6)(9月2日)

ほか